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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/29 05:28
※この回には、ゴールドアーム様作『永遠のほむら』に登場する、オリジナル設定の魔女が含まれております。
使用許可を頂いた、ゴールドアーム様に、厚く御礼申し上げます。


「さってっと……」

 『対ワルプルギスの夜戦、作戦会議』の日。俺はキッチンで魚をさばいていた。
 この日のために、冷蔵庫はパンパンになっている。

 とりあえず、今日に至るまで、何度か巴さんや暁美ほむらと組んで魔女退治に赴いて以降、連携という意味ではそこそこのモノになってきている。

 まず、魔女退治のサーチの段階で、俺は資金力を駆使して、狩りの日はハイヤーを借り切る事にした。
 これによって、暁美ほむらと三人で共同戦線を張る事が出来るようになった。勿論、ドライバーは口の堅い、ヤクザ御用達のドライバーさんで、ガラスも黒のスモークガラスだ。
 それによって、彼女と俺の縄張りの中を流してもらい、反応があり次第、物陰で降りて徒歩による索敵、戦闘という行為が可能になった。
 さらに、俺が戦闘中は、馬鹿弟子を死体状態の沙紀の護衛に置いておく事により、後顧の憂いなく挑む事ができるようになる。

 ……実際に一度、トチ狂った魔法少女の襲撃があったそうだが、それを撃退してのけたそーな。



 ……まあ、こっちはこっちで、狩りの最中、色々なトラブルに遭ったりしたのだが……



 まず、いつも世話になってる、スーパー『みくにや』のそばで、ギロチン型の魔女と闘う事になった時は、銃火器は愚か兗州虎徹すらも効果薄で、逃げようとしても俺すら逃げ切れそうになく、俺と暁美ほむらがピンチに陥ったのを、駆けつけてくれた巴さんが助けてくれたりとか。
 何故、俺らの攻撃が無効化され、彼女の一撃……とまではいかないものの、強烈なダメージを与える事が出来たのか、さっぱり分からんが、とにかく彼女に助けられた。



 あとは、逆に巴さんの腕が、忍者マスクに執事服を着たようなスライムみたいな魔女に絡まれた時とか。

 とっさに兗州虎徹で巴さんの左腕をブッ叩斬ってしまい(それ以外、とっさに方法が無かったんだよぉっ!!)、反射的に返す刀でその魔女を斬ったら、何故か思いっきり苦しんだ挙句、『颯太さん! 私はいいから魔女を倒して! ……魔女になった彼女のためにも!』と気丈にも激痛の中叫んだ彼女に答え、俺が火炎放射機を取り出し『汚物は消毒だーっ!』と叫びながら挑もうとした瞬間……いきなり恥じらうように、魔女が消滅してしまった。

 ……スライム型だから、もっと絡んで来るかと思ったし、ああいう『切断』が効かないのって兗州虎徹の天敵なハズなのだが……謎だ。『奇跡殺し』の力でも利いたのだろうか?

 ともかく『兗州虎徹の傷はヤバい』ので、俺が巴さんのリボンを使って止血の応急処置。
 侵食されたほうの腕と一緒に、彼女を抱えて帰宅した後、沙紀と馬鹿弟子二人がかりで、巴さんの斬られた左腕を治す事になったり。
 『魔女の釜』から大量のグリーフシードを引っ張り出してきて、大変だった。完全な大赤字だ。



 あとは、佐倉杏子との緩衝帯にある……その……『ラブホテルの建物の中に』魔女が現れてしまった時は、別の意味で本当に焦った。
 高速型で撤退も容易な俺が、周囲を先行偵察しても、どう考えてもソウルジェムの反応はホテルの中としか思えない。
 幸い、夕方でまだ明るく、全て空室だったため、硬直する彼女たちを尻目に、俺がその場でソウルジェムの中から『変装道具』を出して、彼女たちは変装(俺は女装)し、監視カメラを誤魔化す事に(斜太チカの時のように、稀に魔法だと『機械の目』を誤魔化せない事があるので)。更にラブホテルのフロントに、百万円の札束を積み上げ、全室借り切るという力技を慣行。

 『この可愛い子猫ちゃんたちと、この建物全部使って、今晩一晩、たっぷり愛し合いたいの。お・ね・が・い♪』なんぞと、デタラメこいて、フロントがグダグダ言い始めたのをもう百万追加して黙らせた後、全室の鍵を束で受け取って、更に『録画なんてされたくないの』と、裏の監視カメラや室内の隠しカメラのスイッチも切り、片っ端から鍵をあけて部屋をチェック中……今夜の寝床にしようとして居合わせた、佐倉杏子とバッタリ遭遇。

 ……とりあえず、いい機会だからと、なんとか四人で連携を取って、アッサリ退治したはいいが……佐倉杏子に『好きな部屋使っていいから、鍵全部、帰る時に正面玄関のフロントに返しておいて。あとルームサービスは適当にタダで頼めるハズだから』と、後始末を押し付けたものの……我が家に帰って料理作ってても、沙紀の目線やら周囲のびみょーな空気やら、何も知らないで状況を聞こうとする馬鹿弟子やらで、もう泣きたくなりました、ホントに。

 『お金って下手な魔法よりも強力で凶悪だよね……』とは、沙紀の言葉でしたが、周囲がうなずいてるのを、俺は否定する事が出来ませんでしたです。ハイ。



 あとは……何があったか。そうそう。

 一度、俺たちが狩りの最中、馬鹿弟子が目を離した隙に、隠密型の魔法少女に『沙紀の体』が拉致されてしまった事があった。
 無論、あの一件以降、念のためGPSと警報装置は沙紀の体につけていたので、誘拐発生と犯人の位置は分かるのだが、馬鹿弟子が追いかけても追いつけそうにないとの状況。
 更に、逃走先に仲間にでも待ち構えられてたら、馬鹿弟子のほうが危険である。

 で、そんな時、とっさに暁美ほむらに聞いた事が……『時を止めてる状態で、俺を動かせるか?』。

 次の瞬間、『最速』+『時間停止』のコンボが発動。
 つまり、その……『暁美ほむら背負いながら、俺が全速力で見滝原の街を爆走』して、GPSの位置取りどおりに、誘拐した魔法少女の前に『出現』。
 ハンパな幻術で姿をくらませて逃げようにも、最速&そんなもん効かない俺に、あっさりとトッ掴まり……更に、高所に陣取った巴さんの遠距離狙撃支援がある事を知った誘拐犯は、あっさりと降伏した。

 ……え、誘拐しようとした彼女がどうなったかって?
 とりあえず正義の味方の手前、『殺しはしなかった』とだけ。
 『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、彼女の判断だが『痛い思い』はシッカリしてもらった。兗州虎徹で。
 もし仮に、仲間がいる所に帰れたとしたら、背中に拷問気味に刀傷で書いた『メッセージ』の意味くらい、理解してもらえるでしょ。……俺も丸くなったなぁ……

 ……ただ、どうしても分からんかったのが一つ。
 ジェットコースターにしがみつくような状態で真っ青な顔していた、暁美ほむらへのフォローのために『安心しろ。まな板に興味は無いから』と言った所、何故か射殺されそうになった。
 『あなたは最悪だわ』って……沙紀にまで物凄く怒られた。

 ……おかしいなぁ? やっぱりあいつとは、能力的にはともかく、性格的に相性が悪いみたいだ。

 ちなみに『彼女の独断』という事で、『あのメッセージ』を見た魔法少女のグループの代表が、直後、巴さん(と俺アテ)に、即座に真っ青になって詫びを入れに来たそうだが……ま、そのへんの『O☆HA☆NA☆SI』の内容は、割愛って事で。

 ……泣いてたな、彼女。色々な意味で。



 ま、そんなこんなのドタバタはあったものの。
 何とか、今日にまで辿りつけた。

 本来は、連携のために作戦会議を何回か重ねるべきなのだが、佐倉杏子と俺との相性が最悪過ぎるので、一回で即決にしなくてはいけない。その分、他のメンバーとの連携もとってきている。
 不確定要素の排除は、可能な限り済ませてあった。
 と……

 ピンポーン♪

「ん? 巴さんか。あがってもらえ」
「早っ……なんで分かるの?」
「気配で分かるよ。
 ……敵だったら殺気立ってるし、馬鹿弟子だったらはしゃいだ気配、暁美ほむらは嫌々って感じだし。
 巴さんはその点、ナチュラルだ」

 説明しながら、俺は鍋を見る。
 とりあえず、全員、飯を食ってから、作戦会議は始めるべきだと思ったので、例によって今の俺は飯炊き男だ。
 無論、和菓子のストックも抜かり無し! 

「……なんか、お兄ちゃんの『殺気センサー』が進化してるし」
「そりゃ、連日連夜、『魔女退治だー』なんてたんびに、魔法少女や何やとトラブルになってりゃあ、精度も上がるってモンだよ。
 ……中には『人の時間考えず、夜中に訪問して来る』誰かさんな魔法少女もいるしな」
「……」

 巴さんと一緒にあがってきた、暁美ほむらをけん制しつつ。

「で? 集合時間にゃ、まだ早いッスよ、巴さん?」
「料理の手伝いに来たのよ」
「そういう事です、颯太さん」

 名乗り出る二人。
 ……考えてみれば、確かに二人は一人暮らしだし、暁美ほむらも料理くらいは……と思ったのだが。

「……暁美ほむら。キッチンから退場。ゲラアウト」
「っ……!!」

 考えてみれば、心臓病で寝込みっぱなしだった彼女が、料理なんかに気を払うワケが無かったよーで。
 俺は巴さんと一緒に、必死になって料理を作っていた。もー「アレ・キュイジーヌ!」ってなモンだ。

「……見える……お兄ちゃんの背中に、総若白髪で苦労性で赤コートな、英霊様の姿が……」

 なんぞとボヤく妹様。
 ……よけーなお世話である。

「巴さん! とりあえず出来た奴から、皿に盛ってテーブルに並べてください。俺は続きを」
「はい!」
「沙紀、暁美ほむらに茶でも出してやれ。
 和菓子のストックの中から、余った奴があったろ? 一緒に食ってろ」
「わかった!」

 バタバタと動き回る、俺と沙紀と巴さん。
 そんな中、いつものムッツリ顔のまま、ものすごーく居心地悪そうに茶をすすって和菓子をつまむ、暁美ほむら&呑気に笑いながら和菓子をつまみつつ茶をすする沙紀。

「御剣沙紀……その」
「ん?」
「……大物だわ、あなた……」
「えっへん♪ 沙紀様は、我が家ではさいきょーなのだ♪」

 沙紀が無い胸をそらした瞬間、炊飯器から海鮮釜揚げご飯が出来た音が、ピーッ、と鳴り響いた。



「師匠、おいっすー!」
「こんにちはー」

 所定の時間になり、馬鹿弟子と鹿目まどかが到着。
 そして……

「……ヨォ」

 この中で、一番の招きたくなかった客、佐倉杏子の到着。

「……おう。上がんな、まずは皆でメシだ。最後の晩餐になるかもしんねぇからな」
「!?」
「あんだ、聞いてネェのか? 美味いもん食って腹でも一杯にしなきゃ、人間、イイ知恵もやる気も出るわきゃねぇだろ?
 総力戦なんだよ、この喧嘩は。
 っつーか、喰いもん粗末にすんじゃネェよ。もー人数分作っちまってんだ。……あいつに勝つために、嫌でも喰ってって貰うからな」
「っ! ……分かったよ」

 そして……魔法少女と魔法少年……もとい、欠食児童共の宴が始まった。

「美味っ! 師匠、相変わらずメシが美味いです! お金取れますよ、これ!」
「タコ! 金取る商売やってる人たちは、もっとシビアだ。コストパフォーマンス的に、引き合わねぇよ、こんな料理!」
「『こだわりの逸品』って事じゃないですか!」
「単に手が抜けねーだけさ。特にこんな時の料理にゃあ、な。
 ……お代わり欲しけりゃ言いな。まだあるぜ」

 その一言に、『お代わり』の声と共に差しだされる茶碗の数々。……無言で佐倉杏子が出してきたのは意外だったが、まあいい。

 やがて……複数の『ごちそうさま』の声の後。

「……あんた、料理上手なんだな」

 佐倉杏子が、唐突に声をかけてきた。

「あ? まあな……ガキの頃から、オフクロ手伝ったりしたし。親父とオフクロが無理心中した後は、いつも俺が家族に料理作ってたし。
 ……それに、なんつーか、師匠にも叩きこまれたからなぁ。『戦場で誰が飯を炊ぐぞ』、とか。『喰いもんを粗末にするな。命を頂くのなら、三徳六味を以って、死んだ命に感謝して喰え。料理は成仏よ』って」
「……お坊さんだったのか、あんたの師匠って」
「さあな? 得体のしれない、嘘もホントもごちゃ混ぜのインチキ親父だったから、正体なんざ今でも分かんネェよ。
 俺が知ってるのは、ペテンの達人で、剣術と喧嘩がベラボーに強かった、ってだけだ」

 と……

「颯太さん、デザート持ってきました♪」
「え!? 巴さん?」

 そう言って、巴さんが取りだしたのは……やはり、ケーキ。

「『トライフル』っていうケーキです。紅茶とどうぞ?」
「いや、すんませんね……んじゃ、冷蔵庫の和菓子は、会議の茶うけに回すか……」

 そう言って、俺は、斬り分けられたケーキを口にし……

「……っ!」
「お口に、合いませんでした?」
「いえ……その、ケーキと紅茶、舐めてました。美味いッス」

 いや、ホント。シンプルなんだけど、美味しいんだ、これが。
 味の組み立ては分かるけど、これ……俺に作れるかなぁ? 素材を引き出しながらも、究極的なところでバランスが取れていやがる。
 ……って。

「おい、馬鹿弟子、何、ニヤニヤしていやがる?」
「え、いえ、別に♪」
「……見滝原一周、走るか? 腹ごなしに?」
「いえ、結構です」

 ……なんだよ、何か、こう『一本取った』みたいなツラしやがって。皆して……

 ま、いいか。

「んじゃ、食器の片づけは俺がやっておくから、暁美ほむら、こないだ打ち合わせたプランのざっとの説明、よろしく」
「分かったわ」

 そう言って、俺がジャカジャカと台所で洗いもの開始。
 後ろでは、暁美ほむらが説明していく。

 最初の叩き台にする、プランそのものは、結構シンプルだ。
 出現予想地点の中心に、巴さん。そして、両サイドに佐倉杏子と暁美ほむら。距離を置いて、俺。

 もし、中心点に現れたら、快速型の佐倉杏子と、時間停止を持つ暁美ほむらが急行。俺は遠くから銃砲火器で使い魔を排除しながらけん制しつつ、巴さんは撤退しながら全員との合流を目指す。

 佐倉杏子の側に現れた場合は、巴さんが射程を活かして援護しながら、時間停止を駆使して暁美ほむらが急行。俺の仕事もやはり、遠距離射撃。逆も大体一緒である。

 ……問題は『俺が居るポジション』に現れた場合。
 その場合、俺はトットと巴さんの支援攻撃を受けながら、撤退する。……悔しいが、彼女たちと違って、被弾リスクが高すぎるからだ。

「……なんか、チキンくせぇな。殺し屋」
「何とでも言えよ。
 俺は攻撃力と速さはあっても、極端に脆いのは、お前も知ってんだろ? まして、沙紀っつー非戦闘員抱えなきゃ、戦闘にすらなりゃしねぇ。まあ、使い魔の排除をメインに、お前らが攻撃に回る邪魔をしない程度が、せいぜいなのさ」
「っ……!」

 洗い物を終えて、リビングに戻ってきた俺に、絶句する佐倉杏子。
 更に……

「ま、あたしゃいつも通りの御留守番、ってワケですか、師匠」
「御留守番がいなけりゃ、『前』が安心して闘えねぇんだよタコ……こないだの騒ぎだって、憶えてんだろ?」
「……はいはい、分かってますとも」
「師匠への口の利き方が成ってねぇな」

 軽くごつん、と馬鹿弟子の脳天に、拳骨を落とす。

 と……

「お兄ちゃん、その事なんだけど……マミお姉ちゃんと話しをしてたんだけど、ポジションの変更を要求します!」

 唐突に、沙紀が言いだした言葉に、俺は首をかしげる。

「あ? なんだオイ?」
「マミお姉ちゃんと、お兄ちゃん、それと、暁美ほむらさんのポジションを、それぞれ変更すべきだと思います!」
『っ!!!???』

 絶句する俺に、沙紀の奴が続ける。

「具体的には、暁美ほむらさんがFWセンター。
 お兄ちゃんと佐倉杏子が両サイドで、マミお姉ちゃんは射程と火力を活かして後方に。お兄ちゃんは銃火器でけん制しつつ、隙を見て兗州虎徹をワルプルギスの夜に叩きこむ! 
 ……暁美さんは二人の合流まで少し辛くなるけど、時間停止と戦闘経験。マミお姉ちゃんの火砲支援で、何とかしのいで。
 多分、佐倉杏子が辿りつく前に、お兄ちゃんが辿りつくハズだから。そこから佐倉杏子が合流したら、総反撃って事で!」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待てぇっ!! それって!」

 確かに、そのシフトのほうが、『攻撃力』は増す。だが……

「俺が一発でも被弾したら、それでアウトだぞ!?  命が惜しくて言ってるんじゃねぇ! 計算がガタガタに狂っちまうから言ってるんだ!
 そんな博打みたいなプラン、有り得るか!?」
「じゃあ、逆に聞きます。暁美さん、今まで何度も繰り返してたそうですが、この戦力で『博打』も打たないで『確実に勝てる』と思いますか?」
「っ! ……その……正直、ここまで整った戦力で、事前準備の打ち合わせまでしてワルプルギスの夜を迎え撃った事が無いから、なんとも言えないわ」
「OK、『不確定』と判断します! じゃあ聞くよ、お兄ちゃん?
 ……『美樹さんが、鹿目まどかさんの護衛についている』『鹿目まどかさんが、魔女や魔法少女の真実を知ってる』状況である以上、最悪の事態は、ほぼ回避できると思います。
 つまり、お兄ちゃんが目指した『負けない喧嘩』に拘る必要は、もう無いんじゃないかと思われます!
 あとはもう『如何にワルプルギスの夜を倒すか』のみに、傾注すべきじゃないのかと」
「っ!!」

 確かに。沙紀の言っている事は正しい。だが……

「だめだ、お前は生き残る義務が」
「無いよ、そんなの」
「なっ!」

 あっさりと言い捨てる沙紀。
 更に……

「この間も言ったでしょ! お兄ちゃんと一蓮托生なんだって!
 あたしだって『生き残った年数で考えれば』十分ベテランの魔法少女なんだから!」
「……っ!!」

 絶句。
 ……沙紀、お前は……

「『全員戦死しても、美樹さんと鹿目さんは残る!』 ……最低限の保障は、これで十分だよ」
「っ……それは……それは!!」

 下を向いて、絶句。
 ……分かってる。分かってはいる。だからこそ……納得が出来ない。

「分かってるよ。お兄ちゃんがどれだけ私を大事にしてくれたか。
 ……自分を粗末にしちゃいけないのは、分かる。だから、違うの!
 命を粗末にするんじゃない! みんな大事で、全員生きて帰るためにも……『誰に理解されなくても、奇跡も魔法も関係ないカタギのみんなを守る』魔法少女と、その相棒(マスコット)の魔法少年として! 『私とお兄ちゃんが行かなきゃ行けない』の!
 お兄ちゃん、あたしの『命の使いどころ』は……ソウルジェムの使いどころは『ココ』だよ。
 そう決めちゃったんだ。……ごめん! だからワガママに付き合って! お願い……私の、魔法少年!」
「―――――っ!!」

  ……お願い、私の魔法少年! 逃げ遅れた街の人たちを救って!

 そう言って、散って行った冴子姉さんの記憶が、蘇る。
 誰にも理解されず、誰にも褒められず……ただの『ご町内の魔法少女』として普通に生きてきた、頼りない姉さん。
 だというのに……あの時、圧倒的に絶望的な状況下。勝算も何も無い闘いで見せた表情が、なぜ今の沙紀とダブる!?

「冴子姉さん……俺……俺……どうすりゃいいんだよ! 俺は……俺は……あの時、姉さんを守れなかったってのに!
 何で沙紀まで同じような事を言うんだよ! この期に及んで!」

 混乱する。わけがわからない。涙が……止まらない。
 だが……

「大丈夫だよ! お兄ちゃんも! 私も! もう『願いを叶えてる』じゃないの!」
「っ!?」
「私は『死にたく無かった』。お兄ちゃんは『家族を守りたかった』……お兄ちゃんはもう、願いを叶えてるんだよ?
 私を守って、『守り続けて』……ずっとずっと、今の今まで、生きてきたじゃないの!」
「待てよ、それは……」

 当たり前の話だ。
 そう言おうとして、沙紀が叫んだ。

「当たり前なんかじゃない! あんな地獄に放り込まれて、逃げ出さない人なんていない!
 お兄ちゃんは一度も逃げなかった! 一度も諦めなかった! 負けなかったとは言わないけど、負けたらどんな形であれリベンジ果たしてた! 誰が理解してくれなくても、あたしが一番、お兄ちゃんを理解してる! 今日の今日、最後まで『生き残り続けた』お兄ちゃんは『最強』なんだから!」
「っ………」

 絶句。言葉が、出ない。

「私の知る限り! お兄ちゃんが負けっぱなしだったのは、ただ一つ、ワルプルギスの夜だけ!
 しかも、あの時とは状況が違うじゃない! これだけ戦力整えて! 仲間が居て! 下準備済ませて! あとは一体何が不満なの!?
 守れなかった? だったらもう一度『私を守ってよ』!!
 これはチャンスだ、って……お兄ちゃん、自分で言ってたでしょ? 『お兄ちゃん自身の願いをかなえる』チャンスなんだよ、これは!」

 滅茶苦茶だ。本当に……滅茶苦茶である。
 そりゃあ、俺だって……沙紀がそう言ってくれるのは、正直、嬉しい。
 だが、だからこそ……

「……だめだ。
 お前が死んだら、誰がインキュベーターに抗い続けるんだ?
 ……誰も彼もが、俺ら含めて、テメェの事だけしか考えてなくて私利私欲で動いてる。
 そして、真相を知っても『宇宙の果てなら仕方ない』『どーしょーもない』で済まそうとしていやがるのが、大半だ。
 そーいう奴はな、そのうちヘラヘラ笑いながら、キュゥべえと一緒になって『他人を騙す側』に回っちまうんだ。斜太チカみてぇにヨ。
 ……俺は、そんな連中を助けるために『魔女の釜』をデッチアゲたんじゃねぇ……『私利私欲でインキュベーターに喧嘩を売り続けられる』のは、お前しか居ねぇんだよ、沙紀!」
「そんな事無い! マミお姉ちゃんが居る! 美樹さんが居る! 暁美さんが居る! ……佐倉さんは信じられないけど、私は、この三人なら信じられるから!
 だから、美樹さん。この中で多分、一番生き残る確率が高い、美樹さんにお願い!
 もし、私たちが死んでも……お兄ちゃんと私の遺志を、継いでくれる?」

 いきなり、話を振られた馬鹿弟子が、戸惑いながら絶句する。

「っ!! ちょっ、ちょっと待って! あたしは……その、馬鹿だよ……何も見えてない、馬鹿だよ?」
「馬鹿でもいい! 間違ってもいい! 生きて、生きて、生きて! インキュベーターに一矢報いてやるって覚悟、今、決めてくれる?
 お兄ちゃんだって、何度だって騙されて間違って、それでも前に進んできたんだから。
 騙されて、失敗して、それでも『過ちを認めないで格好つけようとせず』。謙虚に自分と向き合って。『失敗した自分』を放っておかず、素直に反省しながら、ヤケにならないで、前に進める?
 誰に理解されなくても、誰に嘲笑われても、自分なりに闘い続けられる、って……美樹さんが『上条さんのバイオリン』に誓ってくれれば、私はお兄ちゃんと安心して、闘いに行けるんだ」

 沙紀の言葉に、美樹さんが溜息をついた。

「なんていうか、その……あたしはその、あたしの前を進んできた人たちが『失敗して死んだ分』まで、背負って行かなきゃいけないのか。
 ……今更だけど、重いな、『御留守番』の仕事って……誰かの弟子になる、って……」
「さやかちゃん……」

 うつむく、鹿目まどか。
 ……彼女にしたところで、負わねばならないモノは、同じである。
 正味、洒落にならないモンだ、これは。
 それでも、この馬鹿に負ってくれる覚悟が無ければ、俺たちは前に進めるもんじゃない。

「先達が達せられなかった事に挑むのは、後輩の務めだよ。
 ……もちろん、私たちはここで『死ぬつもりは無い』。でも、人間も魔法少女も魔法少年も、いつか死んじゃう。
 その時に、『何を爪痕として後に残していくか』。それだけは真剣に考えて、生きて行く必要があると思うの。
 もちろん、美樹さんなりのやり方でいい。全部が全部、やり方をトレースしろなんて、お兄ちゃんもあたしも、望んでない。
 だけど、『後を継ぐ』って……『意思を継ぐ』って……『人間が生きる』って、究極的に、そう言う事なんじゃないかな?」

 沙紀の言葉に……馬鹿弟子が、力強くうなずいた。

「……うん。分かった、だから……マミさんも、師匠も、転校生も……ついでに、あんたも。全員、生きて、帰ってきてね」
「当然! だって私のお兄ちゃんは最強なんだから!
 『当たらなければ、どうという事は無い』……昔の人は、いい事を言ったものね♪」
「……そりゃ、当たっちまった事、何も考えてネェ馬鹿だとしか思えネェんだよなぁ……」
「お兄ちゃんみたいな『そういう戦い方』を続けてきた人が言っても、説得力絶無だよ」

 ぐは、否定できません。
 ……だから……

「……分かった。シフトはそれでいい。
 だが……そうだな、前線部隊の二人……とくに暁美ほむら、この中で一番、サバイビリティの高いお前に頼む。もし、間合いが近ければ、巴さんでも、誰でもいい。

 俺は、俺の戦い方しか出来ん!

 『もし、俺が死んでも、沙紀のソウルジェムがまだ生きていたら』。沙紀の体に帰してやってくれ。ああ、間違っても、ソウルジェム併用なんて考えるなよ?
 ……俺の場合は、被弾=即、死だと思うから、死ぬ時は唐突だと思う。
 心構えはしておいてくれ」
「……承ったわ、御剣颯太」
「そんでな、馬鹿弟子……もしもの時はすまんが、沙紀の面倒を頼む。
 ……こいつはこいつで、俺の戦い方を見てきたハズだから、良いコンビになれると思う。
 暫くは頭脳労働専門になるだろうが、だからといって甘やかしすぎないでくれ。いつかこいつも独り立ちして行かなきゃいかんから……そうだな、銃器を使えるようになれば、一丁前だと思う」

 と……

「御剣颯太、その時は、私が彼女に銃を教えるわ」

 不意に……予想だにしない申し出に、俺は戸惑った。

「暁美……ほむら?」
「勘違いしないで。
 ……この時間軸が、今までで一番、まどかが生存する見込みがあるから、言ってるの。
 流石に、ね……私だって、そこまで不義理では無いわ。
 ここまでまどかが生き延びられるお膳立てを整えてもらって、自分だけ何も返せないなんてのは、ね……ただし、私のはあなたのと違って、多分に我流混じりよ? それでも」
「構わん。撃てて使えりゃそれでいい……それに、インキュベーターにムカついてんのは、テメェも一緒だろ?」
「当然」

 考えてみれば……インキュベーターのおぞましさを、一番知っているのが彼女である。
 ……単に、俺とのウマが合わないだけで、沙紀とは中々いい感じみたいだし……ああ、完全に盲点だったわ。

「よし! それじゃ、改めてポジションの確認をしよう。
 FWレフト御剣兄妹、FWセンター暁美ほむら、FWライト佐倉杏子。MFに巴マミ。DFが美樹さやか……ほんと、超攻撃型シフトだな、オイ。
 ……何か他に意見はあるか?」

 と……

「あの、さ」

 不意に、佐倉杏子が、手を挙げた。

「そのポジション……FWのセンターが、一番ヤバいんだろ?」
「まあ、可能性としては、高いしな。でも、FWのポジションがヤバいのは、どこも一緒だ。
 他のFWが集合するまで、MF……巴さんの支援攻撃だけで生き延び無きゃいかん。
 むしろ、可能性としてはサイド寄りに現れた時が、一番やべぇ。集結し切るまで、手間がかかるからな。
 そう言う意味で、高速型の俺とお前二人を、両翼に振るのは定石だよ。最悪、逃げながら合流する事も、視野に置いておく事だ」

 佐倉杏子の疑問も、もっともだ。
 何しろ、彼女は俺に対する負い目だけで、付き合ってもらってんのである。
 正味、彼女一人だったら逃げたっておかしくないのだが……。

「……じゃあ、あんたはドコが一番ヤバいと思ってる?」
「ドコもヤバいに決まってんだろ? むしろDFまで含めて、ヤバくねー場所探すほうが大変だよ……馬鹿じゃねーのか、お前?」

 呆れ返る。
 負い目があるからって、入れ込み過ぎだぜ、オイ。こりゃあ、ガス抜きしといたほうがいいな。

「なぁ、おめーが俺にどんな負い目があんのかなんて、俺は正味、知ったこっちゃネェよ。
 確かに、俺の家を破滅させたおめーの親父にゃムカついてっけどヨ。
 おめーにゃ正味、なーんの罪もねぇ。『親の罪』ってのは子供に及ばねぇようになってんだよ、日本の世の中ってのは。
 っつーか、親がバカなあまりに地獄見たのは、お前も俺も、一緒だろ?
 それでも、あン時の事気にしてんだったら、悪いのは筋も道理もわきまえず、正義気取って八つ当たりカマした俺が悪いんだから。しかもお前は『俺には』リベンジ果たしてんだ。遺恨は無しにしようぜ?
 そんな事よっか、全員生きて還るために、俺たちは全力を尽くさにゃならん。そんだけの話だろ?
 おめーがいつも、人間様や魔女相手にやって生きてきた事と一緒。違うとすりゃ『お前が普段喰いもんにしてきた魔女や人間』よりも『歯ごたえがあり過ぎる』ってダケの話だよ」
「っ……!」
「人間を魔女が喰って、その魔女を魔法少女が喰う。おめー、自分で言ってたじゃねーか?
 まさか、今更『歯ごたえあり過ぎるから食べられません』ってか? 天下の佐倉杏子様は、そんなモンだったのかい?
 餓えたガキみてーに、俺の飯食っておいて、今更、一飯の恩義も無しか?
 それとも、アレだ。
 『俺の師匠的』に言うなら、おめーは完全に餓鬼道に堕ちてんのか? 俺がやった事は施餓鬼供養なのか? 修羅道でゴロ巻いてる俺より上等な、天道行って、やりたい放題、空まで飛べる魔法少女様がヨ?
 天人五衰で魔女化する前に、やることやってから死ねっつんだヨ……って、切支丹に六道輪廻で解いても意味ネェか。
 まあ……なんだ。気楽に考えろ、って事さ。『いつも通りだ』って……ヨ」

 と……

「違う……違うんだ……」
「あん、何だヨ? 俺の見立て、何か間違ってたか? 言ってる事、なんか間違ってたか?」

 考えてみりゃ、彼女は切支丹だ。仏門の寝言なんぞ、通じるワケが無いか。

 と……

「佐倉杏子! だめよ!」
「ちょっと、だめだよ、あんた! 今、それは言っちゃいけない!」
「ダメだ! あたしゃもう耐えられない! 腹が一杯なんじゃない!
 こんなスゲェ奴から、あんな美味い飯を食わされて……もう、胸がいっぱいいっぱいなんだよ!」

 な、なんだよオイ?
 馬鹿弟子と暁美ほむらの奴が、引き留めるのもきかず、涙を流しながら。佐倉杏子はその場で、ひざまづいた。

「あたしが……あたしが悪いんだ……」
「あ?」
「あたしが、馬鹿な『祈り』をしたせいで……あんたたちまで、巻きこんじまったんだ!!」
「……!?」

 何を……言ってるんだ、こいつは?

「あたしが、魔法少女になった祈りはね……『みんなが、親父の話を真面目に聞いてくれますように』って……」
『っ!!!!!!!!』

 ……な、ん、だ、と……

 ぐらり、と世界が傾く。
 ……理屈で理解できる事が、頭で理解できない。

 俺は。いや、俺だけじゃ無い。
 沙紀も、姉さんも、父さんも、母さんも。
 今まで……今の今まで、あの日から……見滝原に来てから。『親父やオフクロが狂って行った時から』、魔法少女に人生玩具にされてたってのか?

 俺の家族は……俺自身も含めて『魔法少女の玩具』だったってのか?

「だから、あんたたちは闘う必要なんてない! あたしがその分闘って償う!
 だから、あたしを一番ヤバい所に置いてくれ! 頼むよ!」
「……なんだよ、それ……おい……なんなんだよ……」

 と……

 バタリ……

「沙紀っ!
 ……おい、グリーフシード! 『沙紀のソウルジェムがやばい!』」
『っ!!』

 ショックのあまり気絶したまま、物凄い勢いで濁って行く、沙紀のソウルジェム。
 俺たちは慌てて、手持ちでありったけのグリーフシードを使う。

 ……間に合え……間に合え……

「沙紀っ! 戻ってきてくれ! 家族だろ! 俺たち家族だろうがっ!! 
 頼むよ! 俺まで置いていくな! 一緒に生き残るんだろう!!」

 次々に使い捨てにしていく、グリーフシード。……だめだ、間に合うのか、間に合わないのか……ギリギリだ!

「っっっ……くそぉっ『姉さん』ごめん!!
 沙紀! 姉さんだよ! 姉さんがそっちに行くなっつってんだ! だから返って来い! 沙紀ぃぃぃぃぃ!!!!!」

 最後の最後……『姉さん』だったグリーフシードを使い……それで、ようやっと、沙紀のソウルジェムの濁りが止まって行く。

「ん……ぁ……お、兄ちゃん?」
「沙紀……お兄ちゃんだよ! お兄ちゃんはここにいるから! 勝手に行くな! 勝手に絶望したりしないでくれ、沙紀!」

 あたりに散乱する、孵化しかけのグリーフシード。もう、『魔女の釜』で処理してしまえば、『姉さん』の見分けなんて、つかない。
 今、本当に。最後の最後の希望のために取っておいた、姉さんは『死んで』しまったのだ……

 沈黙。
 そして……

「……少し……二人で考えさせてくれ」

 沙紀を抱きかかえ。
 俺はみんなを残して、二階の自分の部屋へと上がって行った。


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