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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/01 12:45
「……あのよ、一個、いいか?」
「あ? 何だよ?」

 佐倉杏子の質問に、俺は答えてやる。

「あんたの縄張りは、そう広くねぇ。だってのに、なんで、あんたの妹のソウルジェムは綺麗なままだった? 何であれだけのグリーフシードを持っていた?」
「……『魔女の釜』さ。それだけは教えてやる。詳細は生き残ったら、キュゥべえに聞きな」
「っ……なんだよ、インチキがあったのかよ、あんたの縄張りには」

 哂う、佐倉杏子。

「ああ。そいつがあればな……完成しちまえば『魔法少女は永遠に闘い続ける』事も可能なんだ。
 もっとも、今現時点じゃ不完全で不安定極まる代物だがな。
 だが、テメェみてぇなのには絶っ対ぇ渡せねぇ! ……現実に妥協して『世間なんてこんなもんだ』なんて、舐めた事ヌカしてやさぐれたテメェにゃあな。
 こいつは、キュゥべえに……『インキュベーターに逆らうための、反逆のシステム』であって、妥協の産物じゃねぇんだよ」
「どういうことだよ?」
「永遠に生きて、不条理なモノに逆らい続ける。その覚悟を持たない奴に、こいつは渡せない。
 キュゥべえの犠牲になっていく、魔法少女の犠牲になっていく、『奇跡も魔法も関係ない』アカの他人を巻き込まないために! そしていつか生き延び続けて、キュゥべえに……インキュベーターにブチくらわすために!
 ……『永遠に生きて苦しむ覚悟』が無い魔法少女に、こいつは渡せねぇんだよ。『最初の祈り』から逃げて、やさぐれたテメェなんぞに、こいつは意地でも渡せねぇんだ。
 沙紀にだって、その覚悟はある。『一人じゃ何も戦えない魔法少女ですら!』その覚悟持って、『俺ら』は闘ってきたんだ!!」

「っ!!」

「こいつはな、悪用すりゃあ、もっともっともっと『赤の他人を餌に出来る』システムなんだよ。
 お前がやってきた事の比じゃねぇくらいに、おぞましい程に……な。

 ……金や魔法や鉄砲と一緒だよ。『力』ってのは、悪用しようと思えば、幾らだって出来るんだ。
 でもな、俺はそれをしない……赤の他人の奇跡や魔法に巻き込まれて、ヒデェ目に遭ってきた俺は。それでも、赤の他人に助けられて生きてきた俺は、そんな事はしたかぁ無ぇんだよ。

 ……ああ、殺したさ。いっぱいいっぱい殺して、いっぱいいっぱい手を汚したさ。
 だがな、本当は、魔法少女だって殺したく無かった。父さんも母さんも、殺したくなんて無かった!
 でもな、『降りかかる火の粉』は払わなきゃなんねぇ……俺だけならまだしも、家族を守るためなら、俺は鬼でも阿修羅にでもなってやる!
 ……まさか、火の粉の『火元』が、こんな所にありやがるとは、思わなかったけどな」

「あたしは……あんたに降りかかる、火の粉の火元か?」

「……いや? 悪い、俺の間違いだ。
 どっちかっつと……正直、俺個人の怨恨。ワガママだよ。
 何しろ、ワルプルギスの夜が来るってのに、仲間割れしようってんだ。正気じゃねぇさ。
 だからこそ、生まれて初めて。俺は、俺個人の意思で『お前を殺してやりたい』って思った。
 ……その気持ちに、嘘なんざ無ぇんだヨ」

 それを吐き終えて、彼女は溜息をついた。

「そう、か……なあ、あと一つ、いいか?」
「あ?」
「あたしもさ……本当は、使い魔なんて、見逃したく無かったんだ」
「……………」

 彼女の独白に、俺は沈黙で答えた。
 信じられない。でも、話は聞いてやる。その姿勢に、彼女は言葉を吐き続ける。

「死にたく無かった。
 あんたもあたしも、結局は『それ』だったんだろうな……違いがあるとすれば『命がけで守りたい人が居たか、居なかったか』。
 それだけだと、思うんだ」
「そうだろうな」
「だから、約束する……もし、『あたしが生き残ったら』、その『魔女の釜』を横取りするにしても、絶対悪用したりしない。
 寝床はココにして、盗みもなるだけやめる。キュゥべえにぶちくらわすまで……あたしが生きる」
「……そうかい。何の保障にもならねーテメーの言葉だが……ま、無いよっかマシか」
「そうだな……」

 そう言って、彼女も魔法少女の姿になる。

「……なあ、たびたびすまねぇ。いいか?」
「いいさ。どうせ『どっちかが死ぬ』んだ……話くらい、とことん聞いてやる」
「あんた、あたしの事が『小便ちびるくらい怖い』っつったよな? あたしも……あんたの事が、死ぬほど怖えぇよ……」

 意外な告白に、俺は少し戸惑った。
 怖い? 俺が? 生身の人間でしか無い、ただの俺が?

「……そうかい。そりゃ光栄だ。巴さんに続いて、武闘派のエース・オブ・エースのお前さんにまで、そう言われるたぁな」
「ああ。タダの人間のくせに、魔法少女のあたしに啖呵切ってまで、世間に筋を通そうとするアンタが……そんな生き方を続けてきたアンタが、物凄く怖えぇ。
 『殺し屋』なんて言って悪かった……すまねぇ」
「そうかい。まあ、今更手遅れではあるがな」
「……そうだな。
 あたしと、あんたの関係ってのは……『もう既に手遅れ』なんだな」

 そうだ。この闘いは避けられない。逃げられない。

 御剣颯太が御剣颯太として生きるならば。佐倉杏子が佐倉杏子として生きるならば。

 最早、この激突は不可避のモノだったのだ。
 世間の大義正義など、関係無い。『ただそれが、こちら側にあったというダケの話』。
 ……これは私怨であり、復讐なのだ。
 だからこそ、俺は……あの時、『全ての信用を捨ててでも、確実に魔法少女を殺せる』と、確信した手段を選んだのである。

「なあ、アンタとさ……もし……別な出会い方とかしてたらさ、ダチとかになれたと思うんだ。
 あんたはスゲェ男だ……尊敬すんぜ」
「かもな。おめーや暁美ほむらみてぇな、『割り切れた人間』は、俺は嫌いじゃねぇ。
 ……ま、あいつは随分俺の事を嫌ってるみてぇだが、正味そんなのは知ったこっちゃ無いさ。赤の他人だしな」
「そうかい、ずいぶん気が多いんだな」
「馬鹿ぬかせ。『魔法少女に襲われ続けた俺に』、今更、妹以外の女が好きになれっかよ」

 と……

「勿体ないぜ、アンタ。
 ……アンタの周りにゃ、アンタの妹以外にも、あたし以上に『イイ女』ってのはいると思うぜ?」
「知るかよ。俺が大事なのは、沙紀だけだ」
「そっか。勿体ねぇな……まあ、『アンタが生きてたら』考えな。
 ……そうだ、あんた。妹のソウルジェムは?」
「無ぇよ。俺が死んだら、誰がアイツの体に帰すんだ? 他人踏みにじり続けたおめーなら、笑いながら踏み砕くだろ?」
「……っ! そうかい。
 確かに『あんたになら、そう思われても仕方ない』かもしんねぇな。
 ……勿体ねぇよ、本当に……勿体ねぇ。『こんな男を、粗末にしなきゃなんねぇ』なんて、なっ!!」

 次の瞬間、大きく跳躍した佐倉杏子が、手持ちの槍をブン投げて来る! それを……

「おおおおおおおっ!!」

 先端を見切り、思いっきり突き出す。
 牙突一閃。魔力の火花を散らして、真っ二つに投擲された、佐倉杏子の『槍』が引き裂かれる!

「なっ!」

 俺も、跳躍! 接近戦! 兗州虎徹でソウルジェム狙いの一撃を振りかぶる!
 天井を足場に、回避する佐倉杏子。槍を再構築!

「くっ! テメェ! ……そうか、その『刀』かっ! 『テメェのソウルジェムは』それかぁ!?」
「ああ、どうやら、そういうモンらしいぜ! 俺も、つい最近まで知らなかったがなぁ!」

 槍と剣。
 純粋な技術の技量は俺が上、だがリーチは向こう。『速度だけ見れば』五分なようだ。

 被弾=死な、生身の俺の肉体。
 だが、斬魔刀たる兗州虎徹の一撃は、大概の魔力を無効化し、魔法少女の肉体にすら、致命傷を与え得る。
 奇しくも、双方必殺の一撃を持ちながら、決め手を欠く。
 勝負は五分の様相を呈してきた。

「そうか! あんたはソウルジェムっつーエンジン二個積んで、突っ走って『生き急いできた』のかよ! 妹の分まで!
 あたしよっか速えぇハズだよ! 尊敬すんぜ! この馬鹿野郎は!」
「テメェに褒められても、嬉しかぁ無ぇよ!」

 火花が散る。
 奴の槍術は、百戦錬磨ではあっても、我流の域は出無い。
 一方、こっちはひたすら修練を積み重ね、剣理を重ね続けた剣だ。
 さらに、奴よりも『実戦を重ね続けてきた』。その集中力の違いが、だんだんと、攻防に差となって出始める。

「くっ! これで……どうだあっ!!」

 大きく退いた佐倉杏子が振りまわすのは多節棍……否!
 それは……完全に分解され、一個一個が独立した『小さな手槍』となって、俺に降り注ぐ!

 っ……チッ!

 全速力で、大きく回避。
 ……だが、距離が空いたのを幸いに、投擲系で遠距離戦に徹しようとして来る佐倉杏子。

 それに対し……俺は兗州虎徹を口で咥えると、両そでからパイファー・ツェリスカの『ハヤタ・カスタム』を二丁、引き抜いた。

「フっ!」

 無数の降り注ぐ小さな槍を、二丁の『ハヤタ・カスタム』のエッジやピックで、『自分に当たる分』だけ薙ぎ払って回避しながら、俺は佐倉杏子に接近しつつ、まず一発発砲!

 この弾雨を前に。否、高速型の奴相手に、『再装填の隙』なんてない。
 弾は5×2=10発。残り9発!

「っ……てめぇ! 面白い芸持ってんじゃねぇか」

 踊るように、しかし一切の無駄なく、俺はランダムな動きで、佐倉杏子の遠距離攻撃を『斬り払い』ながら、少しずつ近づいていく。
 発砲! 佐倉杏子回避、残り8発!

「だが……終わりだよっ!!」

 突発的に、降り注いだ手槍そのもが、結界となって俺の周囲を囲む。
 ……馬鹿がっ!
 その場でスピンするように、囲んだ結界を『咥えた兗州虎徹で』斬り払う。

「なっ!?」

 驚愕の隙を狙い、発砲! 象狩り用の、600ニトロ・エクスプレス弾が、奴の肩口をかすめる……ちっ、浅いかっ!
 残り、七発!

 双方、高速型だ。
 一発の直撃が、致命傷になる事を承知しながらの、攻防である。
 危うい所で均衡は取れていても、『死』という結末が唐突に訪れうる事は、お互いに理解しているようだ。
 だからこそ……

「くそっ!」

 驚愕にユルんだ隙に詰めた、完全な、必中の銃の間合い……ここは絶対外せねぇ!

 発砲、発砲、発砲、発砲! 残り四発! 左手のカスタムは弾切れ!

「ぐあああああっ!」

 三発までは、振りまわす槍で弾いたものの、四発目が佐倉杏子の右腕を、肩口から吹っ飛ばす!

「終われっ、佐倉杏子っ!!」

 空になった左手の『ハヤタ・カスタムを投げつけ』て隙を作りながら、俺は兗州虎徹を握り直しつつ、右手で発砲!
 残り三発!

「くそぉっ!!」
「っ!」

 分銅鎖のようなモノを、残った左手で投擲され、再度回避。
 その隙に逃げ出す、佐倉杏子。
 ……チッ……だが……

「……どうした、『お前の右腕は』ここだぜ?」

 兗州虎徹で寸刻みに『奴の右腕を斬り突きながら』、ハヤタ・カスタムの銃口を向ける。

「っ……!!」
「おめぇ……馬鹿弟子と違って、『肉体の再生能力』ってのは、そう高くねぇだろ?
 増して、コイツで斬られたら『そう簡単に再生できねぇ』……ご愁傷様だったな」
「テメェ……」
「終わりだよ、諦めな。
 『片腕一本じゃ勝てねぇ相手だ』ってくらい、分かるだろ?
 せめて、最後は楽にしてやるよ……」

 蒼白な表情で、絶句する佐倉杏子。
 ……と……

「片腕だけで……腕が無けりゃ、『祈れネェ』とでも思ったのか?」
「あ?」
「見せてやるよ……あたしの本当の祈りを……あたしの本当の力をっ!!」

 次の瞬間、世界が変貌していく。
 ……魔女化? 否……

「幻覚魔法かよ……笑止」

 笑わせる……とことん笑わせてくれる。

「うわあああああああああああああああっ!!!」

 『無数に分身した』、片腕の佐倉杏子が、一斉に槍を振りかぶり、俺に襲いかかって来る。

「タカが『心の一方』如きが……天地理念の現実法則を、無理に捻じ曲げた『幻想如き』小細工が!
 剣理究めた達人に、通じるかぁっ!!」

 一喝し、兗州虎徹一閃、さらに、ハヤタ・カスタムを発砲!

「ぐっあああああああぁっ! っ……そんな……そんなっ!!
 てっ、てっ……てめぇ……何で!?」

 今度は、左足を半ばまで斬り落とされ、さらに銃撃で完全に吹き飛ばされた佐倉杏子が、悶絶する。

 彼女には分かるまい。今まで『自分より圧倒的に強い相手』と戦った事なんて、数えるほどしか無かったのだろうし。

 一方的に嬲りつづけてきた者と、常に格上に挑み続けてきた者。こいつとの闘いで、勝敗に差があったとしたら……多分、そんなトコじゃなかろうか?
 俺の闘いには……俺の生き方には『幻想なんて許されなかった』のだから。

「どうした? 祈ってみろヨ。祈りのままに……歪めてみろよ」

 相手が悪かったな、佐倉杏子……

「くっ……くそ……テメェは、何なんだ……一体、『何者』なんだよ!」
「男だよ。誰かの助けが無ければ、何もできやしない……どこにでも居る『タダの男』さ」
「クソッタレ! ……そうかい……じゃあよ、『タダの男のアンタ』に、頼みがあるんだ」
「あ?」

 この期に及んで、何なんだか?

「魔法少女の魂は、ソウルジェムの中だ。
 でもよ、人間のアンタは……死んだら天国にでも地獄にでも、行けるんだろ?」
「馬鹿ぬかせ、人間、死んだら肉の塊だよ。魂の行き先なんて知るもんか」
「そうかい。
 じゃあよ、地獄に落ちるあんたに……多分、行った先で、親父たちが待ってると思うから、そこで『アンタ得意の説教でも』してやってくんねぇか? 酒びたりで狂っちまった、バカなウチの親父に、よ……」
「ざけんなタコ。一応、ウチは仏門だ。地獄に落ちるにしても、行く地獄はもー決まってんだよ」
「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」

 !? まさか……まさかっ!!

「チッ!!」

 そう言って、佐倉杏子は、残った腕で自分のソウルジェムを握りしめ……瞬間、全てが真っ白に染まり、俺の意識はブッツリと途絶えた。


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