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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 幕間:「神々の会話」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/09 04:55
「うーっ、この並行世界は、『ちょっと』苦手だなぁ……」

 全ての宇宙、全ての時間軸の『神』に等しい概念となった、鹿目まどかだったが。

 ……正直、この並行世界の『ある時間以降』に『のみ』に君臨する『神』は、苦手としていた。

 無論、神……概念としての『格』には歴然の差こそあるものの。
 彼女が司るのが『慈悲』と『救済』ならば、その『神』が司るのは『憤怒』と『断罪』だ。『相性が悪い』というより『完全な対極の存在』なのである。

 例えるなら……同じ会社でも『入社数年で肩書だけ地位の高い、本社勤務のエリートの若造』と『現場のアルバイトから叩き上げで出世してきた支店長』の差、であろうか?
 概念としての地位は自分が圧倒的に上でも、だからといって軽視できる相手ではない。

 だが、それでも。
 不完全ではあっても、一部ではあっても、『彼が魔法少女を必至に救済し続けていた』事実に、変わりは無い。
 増して、親友である美樹さやかに関しては……最終的に、彼が手にかけてしまったとはいえ、ワルプルギスの夜を超える事すらも出来たのだ。
 彼が……彼こそが『彼女の親友を救い得る』唯一の存在。

 だからこそ……

「助けなきゃ……『私しか、彼を救えない』のだから!」





「よぉ、まどか……遅かったじゃねぇか……それとも、『早かった』の、かな?
 時間の概念なんて、完全に狂っちまったからなぁ」
「杏子ちゃん?」

 『そこ』に居たのは、佐倉杏子。

 残留思念となってなお……彼は。御剣颯太は、彼女を『解放しなかった』。
 彼の悲惨過ぎる結末を。自分の祈りが犯した罪を、『佐倉杏子の残留思念は、余すところなく見せつけられた』。

 それが、『憤怒と断罪の神』と化した、御剣颯太の裁きだった。

「あいつさ、スゲェんだぜ……『あんたがこうなる事を』予言までしてたんだ。
 『暁美ほむらが居れば、いずれあの子は気付くだろう。そして、この方法に思い至るはずだ』ってさ。
 それで、自分は色んな魔法少女を『魔女の釜』を使って、色々恨まれながらも救ったんだよ。最後まで、キュゥべえに対抗しようとして闘って、さ。

 ……そんで、ブッ壊れちまったんだ……」

「そんな……」

「あいつさ。
 弟子と妹が『師匠なら、このアニメのまどかみたいになれるんじゃありませんか?』って言ったらさ、何て言ったと思う?

 『なんで? 俺が? お前らのような? クソ馬鹿な? 魔法少女共を? 助けるために? 死ぬより悲惨な? 『神様に』? ならなきゃ? ならんの?
 『正義の味方』だって、イッパイイッパイなのに?』だって。

 ……二人の頭にアイアンクローかましながら、お説教だよ。

 『俺が尊敬する魔法少女は、巴さんだけだ』って言いながらね。

 あいつはさ……本当に、本当に……『普通の男』だったんだ。
 だから、こんな結末、想像もしてなかったし、『自分の中に秘められたモノがある』なんて、想像もしてなかったんだ」

「っ……」

 鹿目まどかの胸に、その言葉が突き刺さる。

 自分は、運命に翻弄されながらも、全てを承知で、この道を選んだ。

 だが、御剣颯太は、こんな結末を望んでいたのだろうか?
 目の前のモノ、目に見えるモノを救おうとして救い続け、闘い続け、多くを救えない事を自覚しながら、それでも必至に生きた人間。
 その挙句に、与えられたモノが『正義の味方』という呪いであり、まして『神』……しかも『無意味な神』として、永遠に概念として生きるなど。悲惨にも程が無いだろうか?

「頼むよ……あたしからも頼む! 魔法少女の神として管轄外なのは、分かってる。
 だけど、あいつを救ってやってくれないか、まどか! あいつの人生は、あたし含めて、魔法少女の玩具にされたようなもんだよ!
 悲惨過ぎるよ! 可哀想過ぎるよ! あたしの親父なんかよりも、よっぽど救われないよ、あいつ!!」

「分かってる。そのために、私は『ここ』に来たんだから!
 救わなきゃ。魔法少女の管轄外だけど……やっぱり放っておけない。
 魔法少女が夢と希望を司る存在ならば……それの『盾』となって、現実の因果を受け止め続けた、魔法少年の彼自身だって、夢と希望なんだから!」




「何しに来た? 鹿目まどか……慈悲と救済の女神よ」

 『そこ』に座っている、御剣颯太……憤怒と断罪の神に睨まれ、鹿目まどかは……慈悲と救済の神は、引きつった表情になる。

 左腕が無い。全身、顔まで傷だらけ。
 右腕だけで、抜き身の兗州虎徹を肩に担ぎながら、黒いダンダラ羽織姿の御剣颯太が、問いかける。

 分身でしかない自分と、神そのものの本体である御剣颯太。
 『この状態ですら』どちらが格上かといえば、自分なのだが……正直言って、怖い。おっかない。
 カミナリ親父を前にした、子供の気分。……怒った時のママを前にしてるようだ。

 でも、彼を救うためには、躊躇ってはいられない。

「あなたを……魔法少年を。魔法少女として、助けに来ました」
「失せろ。
 俺に……『魔法少女様に』救われる資格は無い。救うべき存在は、他にもっとあるハズだ」

 そっけない言葉に、鹿目まどかが問いかける。

「あなたは……自分が救われたいとは思わないのですか?」

「思わん。
 俺は咎人だ。咎人には『裁き』が必要だ。それは『俺自身も例外ではない』。

 言ったハズだ。
 『知らなかったでは済まされない』と……安易な救済や慈悲に、何の意味も無い。
 知ろうともしない。理解しようともしない。無知を言いわけにし、無理解を肯定する輩を、俺は許す気は無い。

 それは『俺自身も例外ではない』」

「それは……」

 分かっている。
 慈悲や救済だけでは、人は進歩しない。
 時には、鉄拳をもって、暴力をもって断罪をせねば、人は前に進めない。

 事実、彼の司る宇宙は、二十一世紀以降は、魔女も魔法少女も存在せずインキュベーターも居ないが、それなり以上に発展していっている。
 人類が宇宙の他の種族と、積極的な交流を果たすのも、時間の問題だろう。

 そして……自らに都合のいい、奇跡や魔法のシステムに、再び手を出そうとした、傲慢で無知な者には『容赦なく御剣颯太という、断罪の刃が下る』。
 それが、『颯刃の理』……この小さな世界の絶対法則。

 だが、だからこそ……

「もう一度、やり直したいとは思いませんか?」
「思わん。結果がすべてだ。それは、俺の信念に対する冒涜だ」

「誰かを救いたいと、思いませんか?」
「俺が救える者は救った。あとは知らん」

「誰かに話を聞いてもらいたいとは、思いませんか?」
「自分のしたことの言いわけに、ベラベラ回る舌は持ってない」

 とことん、無骨で不器用な返事しか返してこない御剣颯太。

「では『人として、死にたくは、ありませんか?』『人として生きたい』とは……思いませんか?」
「っ!!!」

 その質問に、初めて。
 御剣颯太の表情が、変わった。

「別に。地獄というなら、現世もココも、大差はあるまい」
「では、問い直します。
 ……『愛する誰かと、生きたい』とは、思いませんか?」
「冴子姉さんとなら生きた。沙紀となら生きた。そして俺が殺した。それが全てだ」
「……さらに、問い直します。
 『家族以外の愛する誰かと、共に過ごしたいと思いませんか』?
 『家族を増やしたい』とは、思いませんか?」
「っ!! その『愛する誰か』を手にかけた俺に、その資格は無い!」

 溜息をつく、鹿目まどか。
 ……最後の手段だ。

「では、『約束を果たそう』とは、思いませんか?」
「!?」
「『魔法少年が信頼する魔法少女に信頼されている限り、その魔法少年は決して魔法少女を裏切らない。
 魔法少女を傷つけてでも魔法少女の命を救い、魔法少女を欺いてでも魔法少女の心を救う。
 あらゆる手を尽くし、己の命を度外視して』
 御剣さん。
 あなたは魔法少年として魔法少女と『果たしていない約束』が、まだ一つ、残っていたハズです」

 それは、最後の心残り。
 それは確かに。
 概念と成り果てた今でも、御剣颯太の心に刺さり続けた、一本のとげ。

「そして……そしてまた、俺に魔法少女を殺させようというのか?
 沙紀や巴さんや馬鹿弟子を含めて。全ての魔法少女を?
 随分と残酷な慈悲だな」

 と……

「『殺させません』
 御剣さん……『御剣さんは、魔法少女を手にかけたりはしない』。
 あなたがこの宇宙を明け渡してくれれば、私はそんな世界を……御剣さんの人生を、約束します」

 真剣な目で見る、鹿目まどか。
 だが……

「それは、つまり…『俺が何も救えない』事に、変わりは無いという事か?」
「いいえ。『御剣さんが救ってきた魔法少女たち』は、全員救えます!」
「つまり、『俺が殺してきた魔法少女以外の人間は、俺が手にかける事は確定している』という事だな?」
「っ……それは……」

 躊躇う鹿目まどか。

「自惚れるな、鹿目まどか。
 正直に吐け。
 『お前は魔法少女となった親友を救いたかった。でも出来なかった』……だから俺に縋ろうというのだろう?」
「っ……!!」

 心の内を見透かされて、戸惑う、慈悲と救済の女神。
 それは暗に。
 ……神としての自分の無能を、指摘されたようなモノだから。

「何故、お前が親友を救えなかったか、分かるか?」
「えっ? そっ……それは……」

 分からない、という表情を浮かべ、戸惑う鹿目まどかに、御剣颯太は無言のまま立ち上がる。

「ついてこい。
 俺の管轄する『宇宙』を見せてやる。それが答えだ」



 その宇宙には、魔獣は居なかった。魔女も居ない。その代わり、奇跡も魔法も存在していない。
 宇宙全てに存在する全ての人々は、己の中の呪いを、己の内で処理する術を、自然と心得ていた。

 己を信じるよりも、他人を信じ、信用と信頼とで人々が結ばれる関係。

 『みんなが見ている』『恥ずかしい事は出来ない』『泣きたくなるけど踏みとどまる』

 逃げ出したい。忘れたい。目をそらしたい。
 でも……『それは許されない』世界。

 争いは、ある。
 闘いも、ある。
 誤解も、すれちがいも、苦悩も、苦痛も。

 だがその一方で。
 平和も存在し。
 安寧も存在し。
 愛も、友情も、喜びも、確かに存在していた。

「分かるか? これが『現実』だ。
 確かに宇宙が始まったのは、一つの『奇跡』かもしれん。
 だが奇跡というのは、一度起こってしまえば、あとは『結果』でしかない。
 そこを受け止めて、どう進んで行くか。
 『もう一度、奇跡や魔法』に縋るか、それとも『それを元手に自分の足で立って歩くか』。
 それは、人として大きな違いでは無いのか?」
「っ……それは……」

 甘えるな。甘やかすな。
 暗にそう言われている事に、鹿目まどかはたじろいだ。

「『自分を信じて』無謀な行為に走る魔法少女を、お前は引き止めなかった。
 最後まで『希望を信じて』暴走する魔法少女を留めなかった。
 確かに、『魔法少女は絶望しては居ない』。

 だが、その結末に至ってしまった責任は?

 お前は、『救おう』とするばかりで、『導く』事をしなかった。
 親友と共に泣く事は出来ても、親友に手を上げてでも、間違ってる事を間違ってると言えなかった。

 結局お前は、『魔法少女を救う』事は出来ても、『世界を救う』事が出来なかったのは、それが原因だ。
 奇跡と魔法によって成った、魔法少女の救世主(セイヴァー)よ……それがお前の『限界』だ。
 憶えておくがいい」

「っ……………!!」

 遥かに格上の『神』に対しても、この御剣颯太という『神』は……隻腕の憤怒と断罪の神は、全くの容赦が無い。
 間違ってるモノは、間違ってる。
 そう叫び続け、闘い続け……ついには、全てを否定して、『神』に至ってしまった男の言葉だけに。
 その言葉は、真実を貫いていた。

 あらゆる神々が、この男を敬遠したがるのも、分かる気がした。
 本当に、容赦が無いのだ。色々な意味で。自分自身にすらも。
 だから……

「分かりました。
 だから……『私に出来ない事』を、御剣さんに、お願いしたいんです。
 一個の魔法少女として、一個の魔法少年に」
「……それは、俺が管轄する宇宙を、放棄してでも、か?」
「はい! 魔法少女としての、私のワガママです!」

 ……そして、再び睨まれる。

「救えぬ者は、救えぬぞ? おまえが完璧ではないように、俺も完全ではない。
 むしろ、お前よりも極端に色々なモノを欠いている存在だ」

「構いません! 御剣さんが救えなかったモノは、私が救います!
 だから……これは、取引です!
 私は御剣さんを信じます。だから……御剣さんも、私を信じていただけますか?」

「お前は親友を救いたい。俺は約束を果たしたい……なるほど、『俺個人にとっては』悪くは無い取引だ。
 だが、それは、俺が管轄してきたこの宇宙を『無かった事にしろ』と言ってるに等しいのだが?
 必至になって、現実と向き合って生き続けてきた、俺も含めたすべての人間……いや、生き物たち。それを含めた、冒涜ではないか?」

「それも含めて、私が救います! 責任は……責めは、私が負います!」

 その言葉に……御剣颯太は、深々と溜息をついた。

「俺は……今の俺は、お前が取ろうとしている方法が、『大体読めている』。
 だが、そんな事が可能なのか? 出来るのか?」
「やります! やってみせます!」

「『その方法』は、俺に断る必要もなく、お前には可能だったハズだ。俺以上に力はあるのだから。
 ……何故、ここに来た?」
「それは……その。
 今、自分でも気付いたのですが……一方的な『助けてあげる』という救済では、救われない。
 多分、御剣さんは、そういう人だから……だから、『筋を通しに』来たんだと……思います。
 その……自分でも、自信が無いんだけど」

 そう言われて……さらに、深々と御剣颯太は、溜息をついた。
 ……まったく、こいつは……『こいつら』は……この魔法少女という存在は……

「……貰い過ぎだ」
「え?」
「お前は人が良すぎる。いや、『魔法少女は全部、いい奴過ぎる』奴らばっかだ!
 はぁ……まったく!
 放っておけるかってんだチクショウが!」

 そう言うと……御剣颯太は、『神となって初めて兗州虎徹を鞘に納める』と、鹿目まどかに跪き、それを差し出した。

「不肖、御剣流師範、御剣颯太。魔法少年として、七生を以って、御身、御守護を勤めさせていただきます。
 ……悪魔の俺を、今更、現世で踊らせようってぇんだ! 下手ぁ打つんじゃねぇぞ? 女神様ヨ!」

 そう言って。断罪の神ではなく、魔法少年の不敵な笑顔を、鹿目まどかに御剣颯太は向けた。

「っ……はい!! 私に出来ない事……よろしくお願いします!」


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