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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 終幕:「阿修羅の如く その3」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/16 06:33
「ど、どういう……事、なの?」
『それは、こっちが聞きてぇよ!!』

 いきなりチカに向かって『弓』をぶっ放してきておいて、呆然とする、赤いリボンをつけた黒い髪の魔法少女に、俺とチカは絶叫した。

 とっさに反応出来た俺が、魔力を手に集め、チカの真似事で『矢』を打ち消したのだが……正直、手が痛い。ジンジンと痺れて、洒落にならない。
 ……あとで沙紀に……いや、こんな痛み程度で、沙紀の手を煩わせるわけにはいかない。
 今度、病院に行くか。

「ちょっとアンタ! ウチの颯太に何するんだい!」
「うち……の!? えっ!? えっ……まどか、一体、どういう事なの、これ?」
「っ!! 何か、カンチガイがあるみたいだな、そこの奴。
 ……見た感じ、新人とも思えねぇが、まあいいさ。ちょっと『O☆HA☆NA☆SI』しよぉか? アァン?」
「そうだね、颯太……悪さした子には『O☆SE☆KKYO☆U』ってのは定番だもんネェ♪」

 にたぁり、と笑う、見滝原の恐怖の『コワモテコンビ』。
 阿吽の『阿』の斜太チカ、『吽』の御剣颯太の『仁王タッグ』。
 その二人に、何も知らず喧嘩売っちまった、目の前の哀れな黒い髪の魔法少女は、一瞬、引きつった笑みを浮かべ……

「くっ!!」

 後ろを向けて逃げようとしたところを……

『逃がすかぁっ!!』

 快速でカッ飛ばす俺と、チカの鎖で、あっさりと彼女は捕獲されてしまった。



「わけが……わからないわ」
『ワケが分からんのはお前じゃあああああああああっ!!』

 混乱する彼女にチカと声をハモらせて絶叫しながら、俺は彼女を、俺の家……別名『魔法少女の取調室』に連行した。

 ちなみに、この家の中で、悪さをした魔法少女に対して、俺とチカが『SEKKYOU』しつつ、巴さんがそれを最終的に判断して救うという構図が出来上がってたり。
 その結果、なんか最近、巴さんが、実力とは別の人望面で、見滝原の魔法少女の元締めになりつつあるのだが……そこをバシッとキメてくれるのが、流石に巴さんだと、俺は思う。
 年齢は一個年下でも、何だかんだで、凄く尊敬できる人だ。

 ちなみに、佐倉杏子のような『帰る家が無い』孤児の魔法少女は、全員、佐倉杏子の教会に放り込んであり、そこでチカの奴が飯を食わせている。
 俺の方も、金銭面で何だかんだとフォローしてやり、最近はあの教会が、斜太チカと佐倉杏子という肝っ玉母さん二人の仕切る『魔法少女の孤児院』と化しつつある。

 それは兎も角。

「どうぞ」

 沙紀の奴が淹れた茶と、栗鹿子を出しながら、彼女……暁美ほむらは、戸惑いながらそれを口にし……

「っ……これは……変わらない味ね。懐かしいわ」
「は?」

 ワケが分からない事を言う、暁美ほむら。

「もう、どれくらい昔になるのかな、ここの時間軸は? かなり最初の方だったハズだけど……
 随分、特異なループだったし、色々世話になるキッカケだったから、よく憶えてたけど……まさか『御剣颯太の居る並行世界に戻る』なんて。
 ……聞いてないわよ、まどか……」
「何言ってんだ、てめぇ?
 ……まさか、『自分が未来人だ』とでも抜かすのか?」

 もー、吹っ飛んだデンバな事しか言わない、暁美ほむらに、俺は呆れ返った。
 奇跡や魔法の世界で生きている魔法少女たちだが、ここまで吹っ飛んだ思考回路の持ち主とは、滅多に遭遇した事が無い。

 ……こりゃいよいよ、本気で黄色い救急車が必要になってきたかも知れんなぁ。

「……相変わらず、鋭いわね、御剣颯太。当たらずとも遠からず、よ」

 その言葉に、俺は呆れ返った。

「っ……!! おい、チカ……すまん、黄色い救急車の用意が必要っぽい」
「ああ、きっと『自分の性格変えてくれ』とか、頼んじゃったんじゃないのか?
 ほら、居ただろ、呉……なんとかって子? ありゃ色々な意味で、やりづらかったじゃないか?」

 以前、頭痛のするような魔法少女と遭遇した事があり、俺とチカは彼女の起こしたトラブルの解決に向かった事があったのだが……ありゃ大変だった。
 速度低下の魔法で、俺の機動力が完全に殺されてしまい、チカのパワーも鎖も役立たず。
 害は無かったものの、完全に弄ばれてしまった。……まあ、相性が悪かった、とも言える。
 結局、巴さんのリボンで捕縛して、保護者役の魔法少女に引き取ってもらったものの……まあ、保護者はともかく、頭痛のするよーな口調とノリに、俺とチカは完全についていけなかったっけ。

「そうね……信じて貰えなさそうね。邪魔したわ」
「おい待てや。
 ……信じる信じない以前に、お前、自分が何やったか、分かってんのか?」

 何しろ、いきなし弓で一撃である。
 ……ほんと、頭オカシイとしか思えないし。

「っ……悪かったわ。
 流石に、ドラッグを使う魔法少女なんて、今まで彼女だけだったし、あの拉致騒ぎを思い出して思わず……」

 流石に、聞き捨てならない言葉に、俺は思わず反応してしまう。

「えっ!? チカ……お前ぇ、まさか……」
「ばっ、馬鹿言うな! 魔法少女になって以降、あんなのに手ぇ出してねぇ!!
 ……おい、てめぇ!! 誰がドラッグに手ぇ出したってぇ!? 颯太や巴さんの前で、イイカゲンな事言ってんじゃねぇよ!!」

 そう吠え叫んだチカが、暁美ほむらの胸を捩じりあげた。

「くっ……ちょっ……」
「おっ、おい、チカ!」

 完全にブチギレたチカが、暁美ほむらの首をミキミキと締め上げて行く。

「ああ、昔、荒れて人間やってた頃には手ぇ出したけどなぁ、魔法少女になって以降、二度とあんなモンに手ぇ染めちゃいねぇよ!!
 ……っつーか、何様だテメェ! スカしたツラしやがって!
 こちとらがヤクザの娘あがりの魔法少女だからって、バカにしてんのかゴラァ!!」
「おい、落ち着け、チカっ!!」
「チカさん、ストップ! ストップ!!」
「放せ、颯太! 巴さん! こいつガチでシメてやるーっ!!!」

 顔面蒼白になった暁美ほむらを振りまわしながら、怪獣の如くガーッと火を吹いて暴れ回るチカ。
 結局、俺と巴さんと沙紀と。魔法少女と魔法少年の三人がかりで、必死に押さえつける羽目になった。



 部屋の隅っこで、巴さんと、巴さんの能力コピーをした沙紀の二人がかりで、リボンにぐるぐる巻きに拘束されたチカを放置しつつ。

「暁美ほむら……率直に聞く。お前は、何者だ?」

 そう言って、俺は暁美ほむらに切り出した。(『がるるるるる』と暁美ほむらを威嚇してるチカは無視)。

「……それを聞いて、どうしようというの?
 信じてもらえるとも思ってないし、私は、出来る事ならば、あなたとは敵対したくは無いわ。
 謝罪なら幾らでもするし、この街を立ち去れと言えば、そうするわ」

「そーいう問題じゃネェよ。お前は、俺たちの仲間であるチカの信用を傷つけたんだ。
 正直、お前の寝言は、洒落になるモンじゃない。……本来だったら、この場でガチで締め上げてやらなきゃいかん。

 ……の、だが……

 どうもな、冷静に思いなおすと、お前自身、そこまで狂ってるとは思えねぇんだよ。
 何か、こう……行き違いがあるんじゃねえのか?」

「信じてくれるとでも言うの? 途方も無い話だというのに」

「少なくとも、俺も巴さんも『話は聞いてやる』って事さ……信じるか信じないかは、俺たちが判断する。
 もし、お前が正気ならば、そこン所を踏まえて、よーっく自分の頭の中を整理して話を転がしてったほうがいいぜ、暁美ほむら」

 じっ、と睨みつけながら。
 お互いに沈黙の時が過ぎていき……

「はぁ……確かに、あなたに隠し事をするのは、リスクが高いわね。
 考えてもみれば、『あの時』だってアッサリと柔軟に私の正体を受け入れてくれたわけだし……話す価値は、ありそうだわ」
「本当に……何か、突拍子も無い身の上なのか?」
「ええ、魔法少年……いえ。おそらくは……『ザ・ワン』、御剣颯太。
 あなたには、色々とひっかきまわされた末に、長い事世話になったわ」
「……は?」

 口を開いた暁美ほむらの言葉に、俺は思いっきり首をかしげた。



「俺が、魔法少女の……殺し屋ぁ!?」
「あっ、あっ……あたしが、ドラッグの売人(プッシャー)で……沙紀ちゃんの誘拐犯!?
 挙句、颯太に成敗されたってぇ!?」

 自称、元『時間遡行者』、暁美ほむらの話は、突拍子も無いを通り越して、荒唐無稽もいい所だった。

 『鹿目まどか』という少女がひっくり返した……魔女と魔法少女のシステム。
 その結果、この世界に生まれてしまった魔獣。
 グリーフシードによる浄化と、現在の穢れの浄化によるシステムの差異。

 しかし、その……魔女と魔法少女のシステムってのは……腐ってるにも程があるぞ!?
 挙句、俺が『魔女の釜』の管理者で、キュゥべえと敵対してて?
 その絡みで魔法少女を虐殺しまくったとか……しかも、『魔力』を一切使わず、生身で、銃器と剣術と罠と沙紀のソウルジェム併用を駆使して!?
 その上で『一般人に誰にも被害を出さなかった』だとぉ!?

「どっ、どんだけ超人なんだよ……お前の見た『俺』ってのは!?
 ……魔力無しの生身で、沙紀を守り続けながら、魔法少女全部と敵対しつつ生き延び続けたなんて。
 正味、想像もつかねぇよ!」
「それでも、『自分は、ごく普通の男』……と、思っていたのよ、あなたは自身は。
 結果、強力な自己暗示がかかり、沙紀ちゃんのソウルジェムを解するか、愛用の刀を介してでしか……あるいは、恐らく危機的状況に陥ってでしか、その身に秘められた魔力を使う事が出来なかった。
 ……でも、あなたの正体は、おそらくは……『ザ・ワン』よ、御剣颯太」

 まーた、突拍子も無いお言葉。
 条理をひっくり返す魔法少女様だからって、こんな豪快極まる話があってたまるか!?
 だが……俺自身の体の事まで知ってるとなれば、タダごとではない。

「『ザ・ワン』って……映画の……アレかい? その根拠は?」
「私が気の遠くなるほど、繰り返し続けてきた時間軸……並行世界の中で、唯一『あなたと直接、一度しか遭遇しなかった』。
 そして、それ以外の全ての時間軸において『あなたは、魔法少女やキュゥべえとの闘いに敗れて、全て死亡している』のよ」
「っ! ……つまり、何か?
 その……並行世界の自分自身が死んで、その死んだ自分の力や体験が、全て、今この世界の『俺』に集約された結果が……今の俺自身、って事か?」
「そう結論せざるを得ない凄腕だったのよ……あなたは。
 でも、この世界では、あなたは何故か、沙紀ちゃんのソウルジェムや愛刀を使わずとも、魔力を使えている……何故?」

 その言葉に、俺は暫し、思考を巡らせながら。
 意を決して答えて行く。

「っ……その、昔っからな……少しだけ、不思議な事が出来たんだよ。
 それでも、俺はタダの男で、普通なハズで……だから『こんなの間違ってるよなぁ』って思いながら、ずっと過ごしてきたんだ。

 ……確かに、沙紀の命は救えた。巴さんとも会えた。チカとも会えた。他にも、支えてもらってる、多くの魔法少女たち。それは否定できない。
 でもな、やっぱりこう……魔獣とか、魔法とか、奇跡とか……『祈れば何でも解決できる』なんて、結構間違ってんじゃないかって、俺の心の片隅で、ずっとずっと思ってるんだ。現実って、そんな甘く無いぞ、って」

「それよ。あなたの魔力の正体、祈りの正体は、剣を振るう念から来る『最速』と、現実を肯定して奇跡を否定した『否定』の祈りなのよ。
 『疾く速やかに、魔を否定する』……だから、誰にも観測する事が出来なかったし、あなた自身にも制御なんて出来なかったし、自覚も無かった。
 あなた、ひょっとして……魔法少女……いや、魔法少年としての防御力は、かなり低いままではないの?」
「あ、ああ……スピードは自信があるんだが、純粋な魔法の攻撃はともかく、魔法を介した物理攻撃には、結構弱いんだ。
 増して、回復能力の低さは、常人並み。デカい一撃喰らったら、おそらく一発お陀仏だ。
 そういう装甲と回復力の弱さを、剣術や体術のスキルと速度。それと『魔力相殺』の防御で補ってる状態でな」
「なる……ほど。
 あなたの能力そのもののリスクの高さそのものは、そう変わって無い、って事、ね……少しはマシになってるみたいだけど。
 だから、この世界でも、おそらく……」

 と……

「あのさ、あんた……仮に、その、アンタの話が真実だとして。
 何であたしが、沙紀ちゃんを拉致るとか、って話になったんだ?」
「それが、さっき話した『魔女の釜』に繋がるのよ。
 グリーフシードを介した穢れの浄化のシステムの穴を突いた、再利用のシステム。
 当時、魔女退治と縄張り争いに明け暮れる、魔法少女にとって、とても魅力的で画期的な方法だった。
 つまり……」
「そっか。札束刷れる印刷機みたいなモンだもんな。その魔女の釜ってのは。
 それに目をつけて、あたしが沙紀ちゃんごと奪おうとした……にしても、ドラッグとは聞き捨てならないんだけどね?」
「それは、多分……あなたが『魔法少女の現実に絶望したから』よ、斜太チカ」

 その言葉に、は? ってなるチカ。

「考えても見て? あなたは、『御剣颯太が存在しない限り、魔法少女として存在し得ない』魔法少女なのよ?
 それは分かるわね?」

「あっ、ああ。……確かに、そうだ。
 祈りの動機はどうあれ、キッカケは颯太とキュゥべえの二人だし……あっ、でも待てよ!?
 『魔女と魔法少女』の理屈がもし本当で、かつ颯太が『魔法少女の殺し屋伝説』なんて背負っちまってたとするなら……」
「更にね。
 何人かの魔法少女は、魔女が生み出す使い魔を見逃して『一般人を食べさせる』事によって、肥え太らせて魔女にして、それを狩る事でグリーフシードを得ていたわ。佐倉杏子なんかは、その典型例だった。
 斜太チカ。それにあなたは『更に適応し過ぎた』結果、ドラッグを使って、他の魔法少女の魔力と感情を操作して、それによって暴走して魔女化した魔法少女を、魔女の釜の餌にしようと目論んでいた……『御剣颯太を手に入れるために』」

 げげげっ!! という表情になるチカ。

「やっ……やばい……あり得る……そんな理屈が裏にあって、更に『昔のアタシだったら』マジでやってたかもしれない……
 っていうか、夢も希望もありゃしないじゃないか、そんなの!
 世間の仕組みに反抗したあたしの祈りなんて、真っ先に踏みにじられる類のモンだよ!」
「そうね。それに、その……さっき使ってた『鎖』は、私も見た事の無い力だったわ。おそらく、それは……」
「あ、ああ!
 もしそんな理屈がわかったとしたら、多分、この『罪科の錨鎖』は使い物になるワケが無いし、あたしの『奥の手』なんか、絶対無理だ。
 杏子の奴に聞いたんだが、あいつも能力を封印しちゃってる部分が結構あるっていうし……多分、その時のあたしもそうだったんだ」

 ぞっとした表情のチカ。
 だが……

「なんというか、地獄にしか思えねぇな……そんな世界。
 で、時間遡行者様よ。悪いんだが……それを証明する手段、あるか?」
「それよ。それが難しいから、話す事が出来なかったの……キュゥべえに話しても、夢物語としか、受け取られなかったし」
「だよなぁ、俺だってあんま信じられねぇよ」

 と……

「あの、暁美……さん?
 少しお尋ねしたいのですが、その……鹿目まどかさん、って人は。
 言うなれば、『魔法少女の神様』になったようなモノですよね?」
「え、ええ……まあ、言うなれば……」

 巴さんが切り出した言葉に、暁美ほむらがうなずく。
 と。

「颯太さん! その、冴子さんの死に際に見たっていう『女神様』って、もしかして!」
「っ! そっか! それだっ! 沙紀! 色鉛筆かクレヨン。あと何か書けるノートもってきてきくれ!」
「うん、お兄ちゃん!」

 そう言って、沙紀がクロッキー帳と色鉛筆を持ってくる。
 それを手に取りながら、俺は、姉さんの死に際に現れた、女神様というか、少女の姿を思い浮かべつつ描いて行く。

 今でも記憶に鮮明に残る。あの少女の面影……赤いリボンをつけた……そう、目の前の魔法少女と同じような赤いリボンをつけた子。

「その、鹿目まどかってのは……もしかして『こんな子』だったのか!?」
「っ!! まっ、まどか……!! あなたは……まどかを『見た』っていうの!!」
「あ、ああ……その、姉さんの死に際に、な。てっきり、幻覚や幻聴だと思ったんだが……なんってこった」

 それがもし、事実だとするならば。
 俺や魔法少女たちは、知らない所で、その少女にえらい負担をかけてしまっていたのではないか?

「OK、暁美ほむら。
 少し話を色々整理していこう。お互い、有益で有意義な情報が得られそうだ。
 他に、証拠となりそうな知識だとか……例えば、お前だけが知ってて、他の誰もが知らない事とか、あるか?」
「他には……そう、この家の地下には、隠し金庫が」
「待った! ……OK、それで十分だ。ってことは……」
「『KONNNAKOTOMOAROUKATO』……間違ってるかしら?」

 なんて……こった。

「参ったぜ……まったく、何てこった……疑うべき要素が、殆ど消えちまった。
 俺としては疑いたいんだが、否定できる要素が持って来れねぇ……」
「颯太……さん?」
「何か、裏はあるのかもしれない。
 だが……もし、そうだとするならば、合点がいく行動ばかりなんだ。
 勿論『間違ってない』からって『正しい』とは限らないんだが……ここまで合致しちまうと……うーん」

 腕を組んで悩みながら、考え込んでいると……

「……そう。ならば、眼鏡か何か、あるかしら? サングラスじゃない素通しの。
 出来れば、赤くて四角いフレームがいいわ」
「? ああ……確か、師匠の変装道具の中に、そんなのがあったハズだ。持ってくる」

 そう言って、彼女に四角い赤いフレームの眼鏡を手渡すと、彼女は髪の毛をみつあみにし……は…じ……め……

『あああああーっ!!!!!!!!』

 絶叫する、俺と沙紀。

「これで、信じてもらえるかしら?」

 そこに居たのは……沙紀の病室の隣に、以前居た、病弱な眼鏡をかけた女の子だった。



「参ったぜ、ホント……わけが分からねぇよ……まったく」

 物凄い展開についていけず、俺は頭を抱えてしまった。

「……つまり、何か? 俺が契約したのは……おそらく、その『鹿目まどか』って子だったのか?」
「ええ、あなたは、前の世界では、他の魔法少女の力を介してでしか、キュゥべえが見えて無かった。
 なのに、今ではちゃんと魔力として自分の力を行使出来ている……そして、本来見えるハズの無い、まどかが見えていた。
 そして、『魔法少年は、魔法少女と契約して成る相棒(マスコット)』という定義のもと、あなたは動いていたわけで……だとするなら、契約相手は、まどか以外に思いつきようが無いわ」

 もう、ぶっ飛びまくった俺自身の身の上の話に、頭痛がしてくる。
 ……なんだよ、『ザ・ワン』で? しかも、魔法少女の女神様の相棒(マスコット)だとか?
 ありえねぇー!!

『なるほど。御剣颯太、もし仮に、君がザ・ワンで、しかも『否定の祈り』なんてモノを祈っていた。その上、宇宙の因果律そのものを書き換える『神』とまで契約済みだとしたら、君の魔力の底が読めないのも、合点がいく話だ。
 ……君は本当に、空恐ろしいほどの不確定要素だ。イレギュラーにも程がある存在だよ。
 もし仮に、前の世界で、君を敵に回したいと望む存在が居たとしたら、それは愚かにも程がある話だ』

 キュゥべえまでが、俺の事を絶賛しやがる。

「いや、そん時に俺を一番、敵に回したのは、キュゥべえ。お前だったらしいぞ?」
『それは君が、君自身という存在に対して、誤解を受けるような、状況と行動を、繰り返したからじゃないのかな?
 君がもし、ザ・ワンだと知っていれば、流石に手は出さなかったと思うよ?』
「いや、多分、俺の気性からして、一度でも家族に手ぇ出しやがったら、トコトンまで喧嘩したと思うし。
 ……っていうか、本当にお前、人間の感情を知ろうとしないんだな?」
『だって、わけがわからないじゃないか? 感情なんて精神疾患でしかないんだから、僕らにとっては』

 その脳天気な物言いに、俺は忠告する。

「あのなぁ、そうやって『わけがわからない』で済ませてるから、俺がザ・ワンと見抜けなかったんじゃないのか?
 それに、仮に姉さんが死んだ時に、そんな事実が分かったとしたら……あの時のお前との契約の段階で『俺の命と引き換えに、お前の存在を母星から何から、並行世界も含めて、歴史上からも一片残さず全て消滅させろ』とか願ったら……お前、どうしてた?」
『………………』

 流石に、究極の選択を迫られたキュゥべえは、沈黙してしまった。

「キュゥべえ。『分からないのを知ろうとしない』ってのは、本当に恐ろしいぜ?
 第一、感情を『病気』と定義するなら、その『病気』を研究する事くらいは、したほうがいいとおもうぞ? でなけりゃ『病気を治す』どころか『病気にかかってる自覚』すら、出来なくなっちまうぜ?
 気付いたら、種族全部病気にかかってる自覚が無いまま、手遅れになってたってケースとか、あり得るんじゃないか?
 増して、お前、記憶も魂も、種族全部繋がってるような存在なんだろ? それでいて『感情が無い』って事が正常だと定義するならば、それをどこの誰が監督して保障するんだい?」
『……忠告感謝するよ、御剣颯太。
 確かに、君の言うとおりだ……何か対策を考えてみるよ』

 そう言って、キュゥべえは俺に頭を下げる。

「しかし……色々と合点が行かない所が、いっぱいあるんだ。
 まず、第一に……俺が、ザ・ワンだとして、だ。
 全ての並行世界が変わっちまったってのに、何で俺が、まだ魔法少年なってやる羽目になってんだ?
 俺はもう、平凡な生活に戻れても、おかしく無かったんじゃないのか?」
「恐らくは……美樹さやか、じゃないかしら?」

 誰だ、それ?

「まどかの親友よ。
 『結果的に』とはいえ、『魔法少女の彼女』を救えたのは、あなたしか居なかったの。
 ……全ての時間軸において、彼女はあなたや斜太チカ程ではないけど、不確定な存在だったわ。
 魔法少女になったり、ならなかったり……思えば、彼女は様々な末路を辿っているけど、決してどれも『幸せ』には、なれなかった。
 恐らく、まどかにも救いようが無かったからこそ……」
「俺を引っ張り込んだ、と? ……ずいぶんワガママな女神様だな、おい!?」

 呆れ返る。
 だが……

「そっかなー? お兄ちゃん、だって私たちの家ってさ、お父さんお母さんが狂っちゃったのは、変わらなんいじゃない?
 だったら、冴子お姉ちゃんが魔法少女になるのって、多分、止められなかったと思う。
 私も心臓病で倒れるのは、変わって無かったみたいだし。だったら、女神様に助けてもらった、って思えなくない?」

 沙紀の言葉に、俺は納得する。

「うっ……まあ、確かに……って、でも……待てよ?
 するってぇと、他の並行世界の『御剣家』は……」
「多分、お兄ちゃんが居ない時点で、破滅の末路、辿ってるんじゃないかな? 少なくとも、あの日の夜以前に死んでたとしたら、冴子お姉ちゃんと私が無理心中に巻き込まれて、御剣家そのものが無くなってる。
 それ以外にも、お兄ちゃんの幻覚殺し……たぶん『現実肯定』というか『奇跡否定の魔力』からきてるんだと思うけど、それに随分といろんな場面で、みんな助けられたりしてるじゃない?
 全員、幻覚に狂わされたみんなの中で、ただ一人で魔獣を倒してチームを救った、なんて場面……何回かあったでしょ?
 それに私だって……お兄ちゃんが居なかったら、ソウルジェム併用なんて出来なかっただろうし、少しずつでも前に進めるなんて、思えない。多分、自分の能力の扱いに困ったまま、自滅してたハズだよ?」

「なんてこった……」

 いや、そりゃさ……我が家の大黒柱の自覚はあるけど。
 だからって、そこまで重いもん背負わされてたとは、思えなかったのだ。

「結局、何だ……俺の力ってのは、『アカの他人の破滅』を前提に成り立ってるのか……重いなぁ」
「え?」
「だってそうじゃねぇか? 『並行世界の自分』なんて、結局、アカの他人だろ?
 そいつ自身の勝手とはいえ、最後の最後に自分の生きざまを、俺に託して死んで行ったなんて……重すぎるにも程がある。
 あの映画みたいに、自分から殺して回るんなら兎も角、俺の場合は、完全に偶発的な……っていうか、『偶発的に起こり得る事を前提とした必然の結果』みたいな感じじゃねぇか?」
「っ……そうね。確かに……そうとも言えるわ」

 脳天気な事を言う、暁美ほむら。
 だが……

「何言ってるんだ、暁美ほむら。
 もし俺が、ザ・ワンだとするなら、お前の方がよっぽど重罪だとおもうんだが?」
「……どういう、事?」
「お前、最初にその……鹿目まどかが神様になったのは、自分が因果の糸を、彼女を軸に束ねたからだ、って言ったよな?
 俺、それとは別の仮説を立てたんだが……ちょっと怖い話になるんだが、聞くかい?」
「っ……何なの? どういう、事?」

 とりあえず、順を追って説明していく。

「まず、お前自身はその……元々は、魔法少女としては平凡で並みだったワケだ? 能力が『時間停止』なんて特殊なだけで」
「ええ、そうよ」
「更に、それは『何度繰り返しても変わらなかった』」
「そうよ。だから私は、この世界に戻るまでは、銃器を手にしてきたわ。そして、御剣颯太、あなたに助けられた」
「ああ、まあ、それはいい。
 重要なのは、だ……『お前が何回繰り返しても、魔力的な強さが変わらなかった』って事なんだ」

 その言葉に、暁美ほむらが怪訝な顔を浮かべる。

「どういう……事?」
「お前さんの願いってのは『鹿目まどかとの出会いを一からやり直したい』だったよな?
 だが、お前自身の魔法少女の素質は、並みだった。
 結果、並行世界の中で、『鹿目まどかと遭遇可能な、別の世界の暁美ほむら』という『アカの他人の人生を乗っ取って』、繰り返してきちゃったダケなんじゃないのか?」
「っ!!」

 その発想は無かった、とばかりに絶句する、暁美ほむら。

「もし、そうだとするならば、お前がこの世界に来たのも、合点が行くんだよ。
 おそらく……『お前が繰り返した数だけの、全ての並行世界の暁美ほむら』が、『鹿目まどかとの顛末』の記憶をもったまま、元に戻ってるんじゃないのか?
 『ザ・ワン』との再遭遇なんて確率論的にありえないなら、そーいうオチを考える方が、妥当なハズだぞ?」
「そん……な……」
「更に、だ……『魔法少女の魔力の量は、因果の総量で決まる』って言ってたな?
 だとするならば、お前さん個人が、途方も無い因果を背負い続けてるのに、何度繰り返しても、魔力の量が変わらないってほうが、おかしいんだ」
「……?」
「具体的に言うぞ?
 『お前は鹿目まどかとの出会いを、最初からやり直したい』って望んだ。結果、無数の鹿目まどか含めた他人を救えず、さらに自分自身も『救えなかった』。
 そして……『それでもお前は一からやり直し続ける』事を望んだ。そのデタラメな程、重たい因果の行き先は……言うまでも無いな?
 つまり、『お前が魔法少女として成長して変わることを拒否しつづけた』末に、鹿目まどかが途方も無い素質を……」
「も、もういいわ! わかった! やめて! 御剣颯太!!」

 耳をふさいでしまう、暁美ほむら。
 ……まあ、無理も無いか。

「ああ、悪かったな。
 ……まあ、仮説は仮説だ。あまり気にするな。
 間違ってるかもしれないし、どっちにしろ、お前が原因だって事に変わりはなさそうだし」
「っ……そうね。確かに……その通りだわ」

 ぶるぶると震えながら、暁美ほむらはうなずいた。
 と……

「あ、やっべ……もー結構な時間じゃねぇか。チカ、教会のほうは!?」
「あっ!」

 と……案の条、我が家の電話機のコール音が鳴り響く。

「はい、もしもし……」
『っ……颯太……あんたかい。アネさん、そっちに居る!? 今日の料理当番、あんただったろ!?』

 電話越しの佐倉杏子の声に、俺はしどろもどろになる。
 ……ジャージャーという音がする所から見ると、なんか台所で作ってるらしい。

「あー、すまん。ちょっとな、魔法少女絡みで、結構、デカい話が分かっちまったんだ。代わりに俺が……」
『っ!! いいからアネさんに代わって!! 教会の事にあんま首突っ込むな!』
「あいよあいよ……チカ、杏子の奴から。カンカンだぞ」

 その言葉に、チカの奴も頭を抱える。

「あっちゃー……やっちまったね、また……」
「因果応報だ、諦めろ」

 そう言って、電話に出たチカだが……案の定、受話機から怪獣みたいな佐倉杏子の怒鳴り声が聞こえて来る。
 そして……

「すまん、颯太。今晩、あたしの分、飯抜きになっちまった」
「りょーかい……えーと、五人前、か……ま、いいか。
 とりあえず、なんか適当に作るか……肉じゃがとサラダとみそ汁くらいでいいな?」

 そう言うと、俺はキッチンに向かう。
 で……

「手伝いましょうか?」「手伝うか?」

 名乗り出るチカと巴さん。

「いや、とりあえずまだいいよ。簡単に作っちまうから、座ってて適当に話でもしててくれ。
 ……女子トーク、苦手なんだよ、俺」

 そう言って、俺はキッチンに立つと、いつものように料理を始めた。


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