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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/03 20:17
「…………………………………………」

 白い天井、白いベッド。
 そして白い入院服を着て、俺はふてくされるように寝ていた。
 とりあえず、右手の怪我が思った以上に重傷だったため、それを理由に入院する事にした。
 無論、本来ならそんな大怪我は沙紀に治してもらうのだが……まあ、あんな事件のあった後で、こいつらと顔合わせたいとは思えず。

「あー、その……颯太、機嫌直してくれよ」
「お兄ちゃん、その、悪かったわよ。ごめん」
「颯太さん、その……ごめんなさい」

 とりあえず、三人に背を向けたまま、だんまりを決め込む。
 もー相手しない。相手してやんない。

「あのさぁ、颯太。あたしがアンタの事好きなのは知ってるだろうに……」
「……だから? それがどうして、俺の秘蔵のエロ本漁る事に繋がるんだ?」
「いやさぁ『好みのタイプは?』って聞いても、『好きになった人が、好みのタイプだ』みたいな答えしか、いつも返してくれないじゃないか?」
「……ほぉ? それじゃ何か? 家族として沙紀を愛してる俺は、沙紀が巨乳じゃないといかんのか?
 確かにおっぱい大きいほうが良いなぁ、とは思うが? かといって俺が愛する人は、みんな巨乳じゃないとイカンのか? 誰が決めたんだ、そんな事? あ!?」

 ちなみに、小学生な沙紀は、もちろん貧乳です。というか、ひいき目に見ても、多分、これ以上大きくはならんと思う。
 ……発育悪いし、好き嫌い多いし。などと言うと怒られるので、黙っているが。
 
「いや、そうじゃなくて。
 こう、なんというか、颯太って、色欲の部分が薄いっつーか……こー色恋沙汰に淡白過ぎて、好みのタイプとかが見えてこないんだよ。
 正直、何考えてるか分かんなくて、どうアプローチしていいか分かんなくてさぁ……つい、その……」
「うん。で?
 悪いけど人のプライベートに踏み込んで、意中の男のエロ本漁るような女って、ふつーどんな男でも100%敬遠すると思うよ?」

 なんというか。
 もう俺の中で、この三人どころか魔法少女……いや、女性全部に対しての株価が、大暴落状態でゴザイマス。

「それとも何か? お前らプライベートの部屋漁られてイイ気がするのか? 誰にも見せられないモノなんて、部屋に一切無いと言い切れるのか?
 それを俺は、あえて女所帯の魔法少女共の集まる中で、見せびらかす趣味があるとでも思ってたのか? そういう部分に、一切気を使わない人間だとでも思ってたのか?
 特に沙紀。
 お前、自分の部屋でポテチだの何だの、ボリボリ食い散らかして漫画見ながら貪るのは止めたりはせんが、自分で掃除、一切しないだろ? で、部屋に入ったら入ったでブーブー文句言うよなぁ?」 
「うっ……そ、それは……」
「俺だってお前の部屋なんて入りたくないのに、お前が自分で掃除しないから入らざるを得ないわけだ?
 しかも洗濯だって自分でしないよなぁ? 『俺の下着と一緒に洗うな』とか言うんなら、服とか全部自分で洗えな?」
「あ、あううう……」
「イイ機会だ。一人暮らししてみろ、な? 自分で作ったメシ、自分で喰ってみやがれ」

 あのデス料理を自分で喰って、血ゲロ吐いてみやがれってんだ。

「あ、あの……颯太さん、その……ごめんなさい、本当に、その」
「うん、巴さん。信じてくれてありがとう。そしてごめんなさい、こんな男でした、俺は」
「い、いえ、その……そうではなくて、その……」
「満足ですか? ええ、確かに男ですから、俺は?
 どーぞ、キヨラカな魔法少女様が、あの本お好きに処分なさって結構です。
 俺だって、高校一年生の男子ですからして? 性欲くらいありますよ? 欲望もありますよ?
 ですから、そーいう男の本能の部分を、動物見るみたいな目でしか見れないのでしたら、どうぞ『俺とは関係ない場所で』好き勝手にご自分の正義を貫いてくださいな。
 どこぞの青少年に有害云々とかヌカして、社会的弱者をいぢめるしかストレス発散法を持たない更年期障害のキチガイババァ共の真似でも何でも、ご自由に!!
 ……なんだよ、人のエロ本漁るのが正義かよ……男の頭の中、探って笑い物にして、そんな楽しいのかよクソッタレめ!!」

 そりゃ、魔法少年なんて、魔法少女の相棒(マスコット)ですよ。多少の無茶なら飲みましょう?
 でもね、だからってね……モノには限度っちゅーもんがあるんだっつの!!
 獣欲だとか性欲だとか、そんなの『無い』ほうが不健全だってのに……何考えてんだ、この正義の味方様は!?

 と。

「悪かったって。本当に悪かった……あたしたちが悪かったって言ってるだろ?」

 頭を下げまくるチカの奴に、俺は冷ややかに一言。

「……ふーん? 悪かったの? で、『何が悪かったか』分かって言ってんの?
 言っておくけどさ、他人の頭の中の妄想暴いておいて、今更『悪かった』とか、通じるとか思ってんの?
 思想統制? 思想弾圧? 調教?
 ……男、馬鹿にしてない? お前らも性欲とか無いの? 悪いけど、俺、ちゃんと煩悩持ってる健全な生身の人間ですから。
 それとも何? 『男はみんな狼です』って?
 ああ、そりゃ一皮むけば狼かもしれませんが? ちゃんと大人しく日常生活を羊の皮被って過ごそうと自制している以上、狼呼ばわりされる謂れは無いと思わない?
 それを無理矢理ひっぺがしておいて『狼が出たぞー』とか騒ぎ立てて……最低だ、お前ら」

 はい、酷く傷つきましたとも。本当に。色んな意味で。
 冗談抜きに、精神的再建にひぢょーに手間がかかりそうです。

「誰もそこまで……」
「あー、本気でへそ曲げちゃったよ、お兄ちゃん……こうなると大変なんだよねー、本当に」
「そうなの?」
「うん、お兄ちゃん、我慢強いけど、本来、受動的で繊細な人だから……。
 多分、師匠や魔法少女たちと出会わなければ、魔法少女になる前の暁美さんみたいな、大人しい文学少年になってたと思うよ。
 っていうか、環境に鍛えられたタイプ? でなけりゃあんだけ家事万能で、和菓子作りなんて繊細な事が出来るわけ無いじゃん」
「うわ、ある意味一番厄介なタイプだ。
 ……ああ、うすうす気づいてたけど、やっと分かった。颯太って、こう……『心の中の家の庭には誰でも入れるけど、母屋には絶対入れないタイプ』なのか。しかもその『庭』の範囲が広すぎて、家が全く見えないだけで」
「あ、チカさん、上手い事言った……そんな感じ」
「聞こえてんぞ!! 沙紀! チカ!
 ……っつか、テメーらとっとと出てけっ!!」

 怒鳴って追い返そうとするが……何やら後ろでゴソゴソと話をした末に。

「あー、悪かったよ。悪かったってば! だからお詫びにちょっとイイモン見せてやるから、ちょっとトイレ借りるね」

 そう言って、何やらトイレに入って行くチカ。と……

「えっ、わっ、私も……ですか?」
「いいからいいから。サービス、サービス♪」

 ……?

 何やら、巴さんまでもがトイレに招かれているらしい。
 ……ま、病院の、しかも個室のトイレって、車いすや介護者と一緒に入る事も前提に設計されてるから、そりゃ二人でも問題は無いが……何する気だ?

 ってぇか詫び? 詫びだってぇ?

 やがて……

「じゃーん♪ どーだぁ!」
「っ……あ、あの……」
「!!!!!」

 何と言うか……スポーツタイプのビギニ姿のチカに、メイド服の巴さん。
 しかもその衣装は、『憶えがあり過ぎる!!』

 ……そう、例の秘蔵本の……

「だからねぇ……颯太、機嫌直してよぉ♪」
「そ、その、本当にごめんなさい、『ご主人様』」

 ピキピキピキピキ……

「でっ……」

『で?』

「出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 十六歳の健全な青少年の妄想を、具体的、かつ客観的に見せつけられ、恥ずかしさの頂点に達した俺は、思わずアタリにあったモノを、ところ構わず投げつけてしまった。

「うにゃああああっ!」
「あわわわわわっ!」
「きゃっ、ちょっ、待っ……」
「人の妄想からかって、そんな楽しいかっ! 最低だ、最悪だお前らあああああああああああっ!!」
「うわっ、たっ、ちょっと待っ……うわわわわわわっ!!」
「やばい、ちょっと待った、颯太、ストップ、ストップ! ナイフはヤバイ!」
「やかましいいいいいいいっ!! 消えろチクショウがああああああっ!!」

 と……

「ちょっと!! あんたたち何騒いでんの! ここ病院……ひっ!!」

 ダンッ! と、病室の扉を乱暴に開けて入ってきた少女の顔の脇に、投げつけた果物ナイフがブッ刺さり……彼女はヘナヘナとその場に座り込んでしまった。




『その、お騒がせしました……』

 その少女に真剣に頭を下げて謝罪した後、近くの病室に頭を下げて回ってた時の事だった。

「あれ? さっきの……」
「あ……どうもすいませんでした。お騒がせしまして」

 四人揃ってペコペコと。
 最後に回った右隣の病室に居た、さっきの少女と、その病室の主である少年に頭を下げた。

「あっ、いえ……気にしてませんので……」
「いえ、本当に申し訳ありませんでした」

 と……

「あのさ、その……何があったかあたし知らないけど。刃物投げるのは、やめたほうがいいと思うよ?
 っていうか……ごめん、何があったの? 聞いていい?」

 ふと。
 そんな彼女の質問に、俺はさらっと。

「いえね、この後ろの三人が、俺の……まあ、なんだ。男として言うに言えない秘蔵本を漁ろうとしてね。
 んで、抵抗したらバランスと弾みですっ転んで、右手がこの有様になって入院する事になっちゃって……しかもこっちが悶絶してるの、そっちのけで、本を漁られて……」
『ちょっ!』
「さらに、病室にまで押し掛けておいて、俺の事からかうもんだから、ちょっとその……ね。流石に逆セクハラにも、色々限界で」
「はっ、颯太さん? それは誤解です、その……」

 慌ててワタワタと説明しようとしてる巴さん以下、全員を額にカンシャクスジ浮かべながら睨みつけ。

「何か! 俺の! 言ってる事に! 間違いが?」
『……いえ、大体あってます』
「と、まあ、そういうわけで……本当にお騒がせしました。すいませんでした」

 などと、頭を下げる。と……

「ああ、それは、何と言うか……ご愁傷様でした。
 ところで恭介。……まさか、そんな本、あたしに隠して持ったりとかしてないよね?」
「……無いよ、そんなの」
「本当に?」

 キラーン、とかいった感じで、目を光らせる少女。
 だが、それに対して……

「……さやか、僕をからかって、そんなに楽しい?」

 もう、何と言うか、冷めに冷めきった目線を向けて来る、少年。
 ……いかん!

「おい、やめてやれ! ……お前ら女って、一体全体マジで何考えて生きてんだ!?
 っていうか、男のプライベートに、気軽に遊び半分で踏み込んでんじゃねぇよ! 一度全員帰れ! マジで!
 ……男傷つけて遊んで、楽しいのかまったく! 悪趣味も程々にしろ!」

 と……

「そ、そうだね……ちょっと……本当にやり過ぎたよ、颯太。ごめん」
「そうね、ちょっと、今日は帰りましょう」
「う、うん……ごめんね、お兄ちゃん」

 などと、謝っていく三人。

「えっ、ちょ……」
「あのさ、アンタも今はやめといたほうがいいよ……多分、彼、凄く傷ついてる」

 去りぎわ、チカの奴が例の少女を手招きする。

「え、でも……」
「多分、男同士のほうが上手く行くんじゃないかな……少し、間を開けたほうがいいよ」
「うん、じゃあね恭介……ごめんね」
「………………」

 こうして、女共は立ち去って行った。




 結局、その場で解散し、謝罪の挨拶もソコソコに彼の部屋を出て、時間になって病院の食事を終えた後。
 まんじりともせず、俺は天井を見ていた。

「いかんな、これは」

 とりあえず、入院に際して、こっそり持ち込んだ兗州(えんしゅう)虎徹を手に、屋上へと向かった。
 何だかんだと、毎日稽古は欠かしていない。それに、怪我したのは右腕であって、左手で剣を振るう分には問題は無い。片手一刀で標的を叩っ斬るのは、俺の十八番(おはこ)だし。

 と……

「?」

 屋上に向かって上がって行くエレベーターに、俺は首をかしげる。
 ……誰だよ、こんな時間に? 俺と一緒で、運動でもしに上がるのか? いや……

「……なんか、ヤな予感がするぞ、おい」

 ふと、そんな気に囚われた俺は、階段を一気に駆けあがった。
 そして……

「チッ!!」

 案の定。車いすから、柵を乗り越えようとしていた人影に、俺は絶叫した。

「やめろぉっ!!」

 無我夢中で、自殺しようとしていた奴の襟首を引っ掴んで引き戻す。

「放して! 放してください! 放して!!」
「ああ、運が悪かったなお前! 俺が見てない所で自殺すりゃ良かったな!」

 左手で首根っこひっつかみながら、屋上の内側に引き戻す。
 ……って、おい、隣の病室の奴じゃねぇか?

「っ……うっ……うっ……」
「ったく! 何があったか知らネェけどヨ。人生死んだら負けだぜ? バカヤロウが……」
「だって……だって、もう……僕には生きてる価値なんて、無いんです!」

 泣きながら絶叫するソイツに、俺は溜息をついた。
 ……あーあー、助けるんじゃ無かった。面倒なの拾っちゃったなぁ。

「あのさー、『生きてる価値』なんて、元々人間にあるわけ無いだろ? 馬鹿かテメェは?
 人間が生きる価値なんて『生きて何が出来るか』って事だろうが!? お前、生きてんだから、何かやってやろうとか、カマしてやろうとか、無いのかよ?」
「だから……だからもう、僕は死ぬしかないんです!」
「馬鹿かお前は!
 世の中『死ぬしかない奴』や『死んでもいい奴』なんて、他人食い物にのうのうと俺様面で生き延びてる、ヤクザかマフィアくらいなモンだバカヤロウ!」
「っ……だって……だって……」
「だってもクソもあるか! 馬鹿が!
 ……よし、そんなに死にたいなら、いっぺん『死の淵』って奴を見せてやる!」

 そう言うと、今度はそいつの襟首を引っ掴んで、逆に持ちあげた。

「ちょっ……なっ……」

 そのまま、柵を乗り越え……

「せぇのっ!!」
「うっ、うわあああああああああっ!!」

 ポイッ……と。屋上から、空中に放り投げる。
 そして……

「ほいっ、と……」
「……っ……あっ……あ……」

 魔法少年の力で、先回りして、地面で受け止める。

「……どうだ? いっぺん『死んでみた』感想は?
 なかなか出来る体験じゃねぇぞ?」
「っ……っ……」

 顔面蒼白になって、ガチガチと震えるソイツの目からは、もう死を望むような暗い光は消え去っていた。



「その……ご迷惑をおかけしました」
「ああ、迷惑かけられたよ」

 結局。
 騒ぎになる前に、俺はその場から撤退し、彼と車いすを病室に戻しに行った。

「っていうかさー、その年齢でどんな事故とか事情とかあったにせよ。
 死ぬには早すぎるだろ、おい?」
「左手が……もう、動かないんです。もう、もうバイオリンが弾けないって……そう思うと」
「あ? そんだけか?」

 呆れ返った。
 なんなんだか……全く。

「あのさー、バイオリンが弾けないんだったら、ギターでも何でもやりゃいいじゃねぇか?」
「それじゃダメなんです! 僕にとって、バイオリンは……命より大切なモノなのに……もう、二度と弾けないって」
「はぁ……あの、さ……バイオリンってのは、絶対に二本の腕じゃなけりゃ弾けないモンなのか?」

 俺の質問に、彼はきょとん、とした顔になる。

「思いだしたよ。あんた、上条恭介だろ? 沙紀の奴が、一時期あんたのファンやってたよ」
「僕の……ファン?」
「ガキが同じ学校の年上の上級生に憧れるようなモンだ。クラシックのCDとか買いこんで、不思議に思ってたさ。
 ……まあいい。
 俺、前に見たんだけどさ。
 路上のパフォーマーがバイオリン……だと思うんだが、アレってサイズによって変わるみたいだし、多分、バイオリンだと思うんだけど。
 それをな、左手と右足で弾いてたんだよ」
「足で!?」
「ああ。そのオッサン、右手が無かったんだ。
 で、な。もしアンタがそんなにバイオリンが大切だー、って言うなら、足ででも何でも弾けばいいんじゃねぇの? 確か、体に障害を負った人たちの楽団ってのも、あったハズだぜ?
 それともナニかい? あんたにとってバイオリンってのは『周りにチヤホヤされてないと弾けない』程度の代物だったの? だったら辞めちまった方がいいぜ、マジで」
「っ……!! あなたに……何が分かるんですか!」
「分かんネェよ! 俺は芸術だの何だのとは縁遠い無骨者だ! あんたがどんな天才クンだったかなんて知ったこっちゃ無い!
 だがな……死んでいい命なんて、どこにも無い。あるとすりゃ、それは『他人を一方的に食い物にし続けないと生きらんない』、仁義もクソも何も無い、ヤクザとかマフィアとかインチキ宗教家みたいな連中だよ。
 そんでな、そんな無骨者の俺でも分かる事はな、『腕一本動かないくらいで諦めるようなら、所詮それはそこまでの夢だった』ってこった。向いてるとか、向いてないとか、才能があるとか無いとか、そんなんじゃねぇ!
 人生『やる』か『やらない』かだ!
 ……じゃあな。自殺すんなら、俺の知らない所でやってくれ。寝覚めが悪すぎる」

 そう言って、俺は病室から立ち去った。
 その目……絶望の色が払拭されるほどに激しい、完全に『火のついた男の目』をしている事を、見届けながら。



「あんた……恭介に、何を吹き込んだの!?」

 病室で、雑誌を呼んでいた時に。
 唐突に踏み込んできた少女に、襟首を掴まれて俺は首をかしげた。

「あ? あいつがどーかしたのか?」
「リハビリ中に倒れたのよ!
 ……最近、恭介がますます無茶なペースでリハビリにのめり込んで……お医者さんからもオーバーペースだ、って言われてるのに、全然効く耳持たなくて!
 何があったか問いただしてみたら、隣の病室の人がって……あんた、恭介に、何吹き込んだの!?」
「何を、って……むしろ俺は『彼を止めた方』なんだけどな?」
「止めた!? 一体何をどう止めたってのよ!」
「自殺」

 その一言に、彼女の顔面が蒼白になる。

「なっ……何よ、それ……恭介が、自殺?」
「あいつの左腕、もー治らないって、知ってるか?」
「っ!! そっ……そんな! そんな事……恭介、一言も……」

 だろう、なぁ。
 元々、外面的な人当たりはイイのだろうが、あの目つきを見る限り、本性は繊細でプライドが高くて激しいタイプだと見た。
 しかも、彼女が、腕が動かない事を知らなかった所を見ると……おそらく、そういった『努力してる姿を見せる事すらをも嫌う』タイプなのだろう。

「で、な。自殺しようとしたあいつ引き留めてな……ついでに教えてやった。
 『腕一本動かない程度で諦めるなら、その程度の夢だったんじゃないの?』って……体に障害持った人たちで構成される楽団とかもあるんだし、本当にバイオリンが好きならば、そっち目指せば? って。
 案の定、完全に『男のプライドに火がついた』目ぇしてたぜ?
 も、自殺とかは考える事は無いだろーな」

 肩をすくめて、手を離させる。

「あっ……あんた……それ、本気で言ってるの!?
 腕が動かないバイオリニストが大成出来るなんて、本気で思ってるの?」
「まあ、無理だろうな。普通で考えたら」
「そんな!」

 絶句する彼女に、俺は指摘してやる。

「だけど、あいつは普通じゃない。違うか? ……何と無く、そんな気がするんだよ」
「っ……あんたに、恭介の何が分かるって言うの!?」
「少なくとも。
 視野の狭さはあっても、『腕が動かない』状況でなお、前のめりに我武者羅に夢に突き進もうとする根性があるだけで、『並み』とは程遠いんじゃね?
 目が見えない天才ピアニストも居るって話だし……腕が動かないバイオリニストだって、気合と根性と創意工夫でアイツならひっくり返してのけるんじゃないの?」
「だからって! あんな無茶を繰り返したら、恭介自身が壊れちゃうよ!」
「ぶっ壊れても本望なんじゃね? そこで倒れるなら『所詮自分はそこまでだった』って事さ。
 夢に向かって前のめりにぶっ倒れられるんなら、それは男の生き様としちゃ、至極まっとうなモンだぜ?」
「ふざけないで! そんな死に急ぐような事、させられるワケが無い!」

 どこまでも『女の目線』でしか叫ばない彼女に、俺は溜息をついた。

「ふざけちゃいねぇさ。男なら、無理や無茶の一つ二つ、乗り越えて行かなきゃ大きくなれやしねぇんだし。
 っていうか、全然分かっちゃいねぇから、教えてやるよ。男がどーいう生き物か、って。

 例えばそうだな……野球やってる奴。
 とくに投手が、甲子園に出て、無茶苦茶にハード極まる試合日程に押し潰された結果、肩とか肘とか腰とか、体壊して二度と野球が出来なくなるなんて、ザラな話なんだ。
 よく漫画にある『弱小高校にエース投手が転入して~』なんてパターンのチームは、甲子園に出れないほーが実は『幸せ』だったりするんだぜ? 『エース投手の一人にかかる負担が、通常の人間の耐えられる限界を超えている』からな。

 それでもな、甲子園目指す奴は、全部を承知で目指すんだよ。
 高野連が教育をお題目に、裏でどんな利益優先の薄汚いソロバン弾いていたりとか、プロ野球の現実がどんな厳しくて、裏側がどんなドロドロした世界だとか承知していたとしても、な。
 男ってのは本来、そーいう全てを承知して、上を目指して夢を追う。そんな馬鹿な生き物なんだよ」

「っ……そんな……」

「まっ、アレだ。アイツが本当に絶望して挫折するには『少しまだ早かった』って事じゃねぇの?
 男には、下手な同情よりも、黙って見守っていてやる事のほうが、重要な時期ってのがあるんだよ。
 だから、恋人としては辛いだろうが黙って見守っててやれ。そんで、完全にどうしようも無くなった時に、手を差し伸べてやりゃあいい。
 『下手な優しさ』はな、かえって男を傷つけるし、腐らせるモンなんだよ」
「こっ、恋人……に、見えたの?」
「なんだ、違うのか? 男と女が一緒に居れば、そー勘ぐるのは当たり前だろ?
 ……ああ、悪い。
 俺とあいつらとは違うから。世話になってる友人や恩人、あと妹だ。誤解すんなよ?」

 と……

「……ほんとにアンタ、そう思ってるの? 告白とかされたんじゃないの?」
「ん、まあ、『今のところは』って感じか? って……何で知ってんだよ?」
「あの後、あんたの『知り合い』と話しをしたんだよ」

 あ、納得。
 そーいう事ね……

「分かったよ。
 男って……ほんと、馬鹿ばっかなんだね」
「そーとも限らんが……ま、本質の部分は、そーいうモンさ。それを『貫ける奴』がザラにゃ居ないだけで……よ。そういう意味で、上条恭介って男は、貴重だぜ?
 まぁ、よ。トコトン正面からぶつかって、挫折や絶望を繰り返してなお、必死に立ち上がろうとすんのが、男ってモンなのさ」
「んっ……分かった。私……まだ、魔法少女にならない事にする」
「そうかい。……あ!? 今、なんつったテメェ!?」

 聞き捨てなら無い言葉に、俺は首を向けた。

「いやね、『魔法少女になって恭介を助けるしか無い』。そう思ってちょっと話を漏らしたら、あんたの仲間全員に止められたんだ。
 『あんた石ころになるつもりか!?』って……ああ、名乗って無かったね。
 あたしの名前は、美樹さやか。
 ……なんか、自分でも知らない所で、変な話が転がってるみたいだけど……」

 げっ!
 思わず、絶句。

「あのさ……あんた『鹿目まどか』って人間に」
「憶えなんて無いよ。
 はぁ……あんたの仲間もそうだけど、あの転校生も含めて、これで三回目。どうしてみんな、あたしに同じ質問をするのかなぁ?」
「い、いや……まあ、ちょっと、人知を超えたモン、色々見ちまって……な」
「それにあたしが絡んでるんだろ?
 なんか色々聞いたけどね……まあ、『あんなモン』見せられたら、自分にトンデモナイ運命が降りかかってるのかなぁ、とか、考えたりしちゃうよ」
「あんなモン?」
「えっとね……『魔獣』っていうの? アレを狩る現場。
 たまたまね、以前、あんたの仲間に助けられたんだよ。忘れてたというか、魔法で『忘れさせられてた』んだけど。
 ……ほら、チカさんって居たでしょ? あの豪快そうな、こー、いかにも『姐御』って感じの人」

 ……頭痛がした。
 チカぁ……よりによって、そんな重要情報を!

「あいつ……新人のくせに、何なんだかみんなに慕われるんだよなぁ。
 アネさんアネさんって……佐倉杏子の奴にまで言われてるくらいだし」

 まあ、佐倉杏子の場合は、殆どからかい文句のよーだが。
 俺が一度フザケて『アネサン、今日はどちらに行きやすかぃ!?』とか言って仁義を切るポーズとったら、真っ赤な顔で殴られたし。『あたしはもう、カタギで魔法少女なんだーっ!!』って……以来、そーいった事はしていない。

 あいつの傷……というより『業』の深さは、それなり以上だし……な。

「人徳はあるタイプじゃない? 面倒見とか、気風とか良さそうだし」
「かもな。あいつは、俺らの中じゃ実力面よりもムードメーカーな部分、あるし。
 ……色々とトラブルメーカーでもあるけどな。短気で喧嘩っ早いし」

 おかげで『ドブさらい』のペースはウナギ登りの絶好調であります。
 むしろ、『業界』のほうで、何か伝説……というより『怪談』になりつつあるのは、気のせいだろうか?

「あは、あははは……なんか、他人って気がしないな」
「あ?」
「よく言われるんだ。『人の話をよく聞きましょう』って通信簿に書かれたり……誰かとすぐに喧嘩になっちゃったり。
 仁美や恭介なんか、そんなあたしに、よく付き合ってくれてるなぁ……って」
「あー、まあ……そういうタイプは、いるよな」

 ……何と無く、過去の自分を思い出して、思わず目をそらす。
 いや、自分から望んで喧嘩はしなかったけど、その分『やる時はトコトン徹底的に』やったからなぁ。それで『誤解だった』とかって事があって、物凄く気まずかった事とか、あったっけ。
 あの乱暴者のチカの奴にも、『あんたが本当に怒ってる時は物凄く怖い。好き嫌い以前に、絶対敵に回したくない』って言われるくらいだし……案外、後先考えたブレーキがかかってるだけで、俺も元々は喧嘩っ早いタイプなのかもしれん。……血筋的に考えても、かなりアレだしな。

「……まあ、その……何だ。とりあえず、キュゥべえとの取引はやめておけ。
 それに、どうしても……どうしても、どうにもならないと、アイツが……上条恭介が思い知って挫折したら、俺たちに一声かけてくれ。一人、『癒しの祈り』の使い手がいる。
 ただし、それは最終手段だ。奇跡も魔法もタダじゃない事は……あんた分かってるよな?
 いまのあんたに必要なのは、『あえて手を差し伸べず、見守り続ける優しさ』って奴だ。OK?」

「ん、分かったよ……そうする」

 そう言って、承知した美樹さやかだったが……俺は完全に、色んなモノを失念していたと思い知る事になる。
 そう。俺の妹が『誰にお熱を上げていたか』を。


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