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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/11 23:14
「あの……馬鹿兄……」

 夜の街を歩きながら。
 私は途方に暮れていた。

「お兄ちゃんを……ザ・ワンを超えろって……どうすりゃいいのよ」

 お兄ちゃんは、日ごろ優しくはあるが……本質的には、究極の実力主義者にして、実戦主義者だ。
 その目線には、一切の容赦も甘さも無い。
 だが、だからこそ……

「私の本当の能力……願望混成(ウィッシュ・オブ・マッシュアップ)……か」

 暁美さんが教えてくれた、私の本当の能力……他の魔法少女の能力を混ぜる事によって、全く新しい能力を創り出す能力。
 だが、実際、幾つか試したモノの、これまで全て失敗続き。しかも、消耗だけは激しくなるというオマケつきだ。

「……何が、いけないのかな?」

 夜の公園。
 幾つか、能力を展開してみる。

 ……もう、最初の頃のような、魔力を無駄に消耗し尽くすような、無様は無い。
 だが……逆を言えば『それだけ』だ。

 『お前の力は、全部、借り物だ。自前で手にした力なんて、ひとっ欠片も存在してねぇ……誰かの夢や希望に安易に乗っかってるダケだ』

「何さ……人間なんて、全部が全部、一個人がゼロからオリジナル『だけ』で構築出来るワケ、無いじゃない。
 どんなオリジナル気取ったって、心だの文化だの何だの……『人間』なんて全ては順序数列組み合わせの産物じゃないの!
 だったら、面倒な事はコピーで十分……なんかじゃ……無いよね、やっぱ」

 『他人の願いを知りたいという願い』……いつしか、私はそれに溺れては居なかっただろうか?

「順序数列組み合わせ……か」

 OK、まず、冷静になろう。
 『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』と言う。

 まず、敵は『ザ・ワン』たるお兄ちゃん。能力は『最速』と『否定の魔力』。

 対する私は、『全願望の図書館(オールウィッシュ・オブ・ライブラリー)』。
 究極のコピー能力。その『無限の蔵書』の中から、お兄ちゃんに通じそうな能力は?

 『速度低下』? いや、否定されたらそれまでだ。
 『遠距離攻撃』? 回避されるのがオチだ。
 『肉体強化』? 否定の魔力を使った斬撃までは防げない。第一、お兄ちゃん、武術(マーシャルアーツ)の達人だし。

「OK、まずは……『速度』ってファクターは無視しよう。
 魔法少女が、お兄ちゃんの『否定の魔力』を攻略する方法は?」

 考える。
 考えて、考えて、考えた結論。それは……

「こっちも、同じ『否定』の魔力を使うしかない……か」

 確かに。
 お兄ちゃんの能力自体は『コピー済み』である。
 もっとも……私個人の『願い』との相性が、『私自身にとって』相性が悪すぎるので、殆ど使用していない。
 ……お兄ちゃんは私の魔力を使う事が出来るのに、私はお兄ちゃんの魔力を使えない。不公平にも程がある気がするのだが……それが現実である。

 ただ……『奇跡や魔法を否定する事』を『否定する』……即ち、『奇跡や魔法の肯定』というのは、アリだと思う。
 じゃあ、『何を以って』肯定するべきだろうか?

 マミお姉ちゃんの、『生存への祈り』だろうか? 幾らお兄ちゃんだって『死にたくは無い』だろう。
 だが……お兄ちゃんは、状況によっては自分自身の生存すら放棄しかねない程、厳しい人だ。誰かのために命を投げ出す事に、全くの躊躇が無い以上、それだけでは弱い。

「……うーん、分かんない。けど……」

 とりあえず、カクテルにする素材の片方は見えた。あともう一つ……決定打になるモノ。

「そういえば……」

 あの時。
 お兄ちゃんは、『右手を大怪我して』帰って来た。

 お兄ちゃん自身は、疑問にも思っていなかったが……これって、意外と珍しい話なのだ。
 何しろ、お兄ちゃんには『魔法を介した物理攻撃』……例えば、チカさんのパワーで岩を投げつけたりする事とかは有効でも、純粋な『魔法そのもの』……マミお姉ちゃんの、ティロ・フィナーレなんかは、かなり通じにくい。

 以前、お兄ちゃんがバーサークした時に、逃げ回りながらぶっ放した、マミお姉ちゃんのティロ・フィナーレを『つかまえた』とか言って『食べちゃった』くらいだし……あれはホント怖かったっけ。
 そのまま、一晩中、怒り狂って木刀引っ提げてバーサークしたお兄ちゃんと……よそう。もー、あの出来事は思い出したくも無い。

 まあ、要は。
 純粋な魔法『だけ』でダメージを与えるっていう事が、至難に近いのだ。
 そして、それを成し遂げた人……

「暁美……ほむら、さんだったっけ。ちょっと話を聞きに行きたいなぁ」



「瘴気……魔獣、か」

 ひみかちゃんからコピーさせて貰った、探索系の魔法を使ったモノの……やはり、所詮、コピーはコピーか。
 精度が悪すぎて、暁美さんの姿が発見できなかった。

 ……どうしよう。一度、撤退しようかな……怖いし。いや……

「まずは魔獣を観察、タイプを推定、そして有効な魔法と能力を選択し……」

 慎重に、敵を観察し、油断せず、魔力を運用。
 警戒を厳に……ちょっと私一人だとマズいタイプと数だ。一度、安全地帯への撤退、それから仲間への連絡……

「って、ちょっ!!」

 そこに……ビルから飛び降りた暁美さんが、現れる。

「……翼?」

 一瞬。
 そんなのが垣間見えた気が、した。
 そして……

「っ!」

 『弓』の一閃。
 魔獣たちの群れが、一掃される。

「……強い」

 相当に強い魔法少女だと思っていたが、これ程とは。
 ……どうやってチカさんとお兄ちゃんは、捕まえられたのだろうか?

「あっ、あの……暁美、ほむらさん、ですよね?」
「? ……あなたは……」
「おっ、お話……したい事があります!
 どうやったら、あなたみたいに強くなれますか!?」
「……え?」



「そう……そんな事が」
「もう、その、何と言うか。『売り言葉に買い言葉』が、高くついちゃったなぁ……って」

 事情を説明し、深々と溜息をつく。

「考えてみると、私、『誰かの役に立つ』魔法や能力ばっかしか使ってこなかったんですよ。それで自分自身、前線に出るって事を……あんまり、して来なかったんです。
 なんというか……『誰かに守られるのが、当然になってた』んだなぁ……って。
 そこの所の弱さを、思いっきり指摘された気分です」

 溜息をつく。
 以前聞いた、冴子姉さんの能力と、八千代ちゃんの能力を混ぜた『願望混成(ウィッシュ・オブ・マッシュアップ)』で、ワルプルギスの夜を『自爆させた』のが自分だ、などと言われても……信じようが無いというか、信じられないというか……試したのに、全然出来なかったし。

「……………相変わらず、優しいのね」
「優しいだけじゃ、意味なんて無いんですよ……私は御剣家の子なんですから」

 侠に生き、仁を貫き、義に報いる。
 そのためには、時として、断固たる決意を以って、立たねばならぬ時は、ある。
 例えば……いつものお兄ちゃんのように。
 例えば……今の私のように。

「……考えてもみれば、お兄ちゃん自身が『魔獣と闘う理由』なんて、欠片も無いんですよ。
 ただ、私が魔法少女だから。お姉ちゃんが魔法少女だったから、一緒に闘う。
 それだけの人なんです。
 ただ、『闘う才能があった』だけで……それに胡坐をかいて、押しつけてきた私が受ける報いとしては、当然なのかな、って」

「……………」

「私は卑怯者です。
 誰かに縋ってしか、生きる事すら出来なかった。闘う事すら、出来なかった。
 多分、いちばんワガママで、臆病な……魔法少女です」

「そうね……でも、だからこそ、分かる事もあるんじゃないかしら?」

「え?」

「まどかが救う、『前の世界』の御剣颯太は……それこそ、本当の『鬼』だったわ。
 でも、この世界では、魔法少女を護る側に回っている。……正直、彼と『穏やかな会話が成り立つ』なんて……想像もしていなかった。

 でも、少し話を聞いてみると、分かる。
 『本質の部分』は、彼は変わっては居ない、と。
 おそらく斜太チカも、そして御剣沙紀。あなたもよ。

 あなたが居たからこそ、御剣颯太は『鬼』になれた。闘う事が出来た。
 ただ、この世界は……『少しだけ優しい』世界だから……元々優しいあなたは、迷ってしまっているのね」

「そう、かもしれません」

 溜息をつく。
 私に無くて、お兄ちゃんや、他のみんなにあるモノ。
 それは……

「考えてもみれば、魔法少女や魔法少年が『鬼』なのは、当たり前かもしれませんね」

「え?」

「ほら。よく、鬼の事を『ナントカ童子』とか言うじゃないですか? 茨木童子とか、酒呑童子とか。
 私たち魔法少女や、お兄ちゃんも含めた魔法少年も。どっか『鬼』なんですよ。やっぱ。
 ただ、お兄ちゃんや……あと、魔法少女の中では、チカさんなんかは特にそうかな? 『鬼』の部分が、普通の人より多いんだと思います。
 そして……そういった『自分の中の鬼』に振りまわされず、しっかり飲み込んで立つことが出来て、初めて私は御剣家の魔法少女として、お兄ちゃんに独り立ちが認められるのかなぁ、って……今、何と無く、思っちゃいました」

「……そうかも、しれないわね。私も、正直、『自分の中の鬼に負けた』って思う経験、あるわ」

 寂しげに微笑む、暁美さん。
 その目に見ているのは、おそらく……自分が辿った、苛烈なループの世界。
 だからこそ……私は話題を変えた。

「チカさんなんかは……文字通り『酒呑』童子かもしれませんね」
「え?」
「あの人、お酒好きなんです。……未成年なのに。
 なんか魔法少女になった段階で、ドラッグだとかタバコだとかでボロボロの体だとか、染めた髪の毛だとか……色々と『綺麗になった』ハズなのに、なんでか知らないけど『お酒だけは辞められなかった』って。
 小学生の頃から、家族に『ウワバミチカちゃん』とか言われて、こっそり飲んでたらしくて……中学あがる頃には、立派な酒豪だったそうです。
 ただ……『お兄ちゃんと一緒で、先天的にお酒に強いんだなー』って漏らしたら『よし、アイツと飲み比べで、本音引っ張り出してやる』ってお兄ちゃんにつっかけっちゃって……」

「……どうなったの?」

「流石のチカさんも、潰されちゃいました。
 ビールから入って、ワイン、焼酎、ウィスキー……ハブ酒やまむし酒、泡盛もあったし……しまいには、90度オーバーの、芋虫入りテキーラとか、ウォッカとか、老酒とか、チャンポンで開けて行っても平然としてるんだもん、お兄ちゃん。
 うちのお兄ちゃんも、お酒強いんですけど……チカさんと違ってあまり酔えない分、面白くないんだそうです」

「……」

「もう少し、お酒に弱ければ……夢とか、幻とか、そういったのに酔えれば、少しはお兄ちゃんも、砕けた性格になってたのかもなぁ。
 お兄ちゃん、真面目な分、逃げ場が無いって思うと、とことんまで自分を追いつめちゃう人だから」

「そして、本当の『鬼』になってしまった……か」
「え?」
「いえ、何でも無いわ。
 それで……一体全体、何の用かしら?
 こんな時間に、わざわざ『お悩み相談の相手』にしては……その、私が向いているとは思えないわ」

 うっ……鋭い。流石、百戦錬磨……

「あの……願望混成(ウィッシュ・オブ・マッシュアップ)が、『私の本当の能力だ』って……教えてくれましたよね?」

「ええ。正直、その……突拍子も無いというか、とんでもない能力だと、思ったわ。
 全願望の図書館(オールウィッシュ・オブ・ライブラリー)でさえ、滅茶苦茶な力だと思ってたけど……さらにその上を行くんですもの。しかも土壇場で」

「出来ないんです。今の私には。
 何となくなんですけど……多分、それ、相当に追いつめられないと、発揮出来ない。
 臆病者の私が……『本当に土壇場の土壇場だからこそ、発揮できた』能力なんじゃないかな、って……思うんです。
 それに……」

「……それに?」

「『創り出せる能力は、一つだけ』……何と無く、そんな感じがするんです。
 つまり……その……私の中にある『無数の能力の組み合わせの中』で『これが最強だ』って思えるモノじゃないと、成功しないんじゃないかなぁ……って。
 多分、『ワルプルギスの夜を倒せる』=『最強だーっ!』って、その時の私は、思っちゃったんじゃないかな?」

「それで?」

「その、『弓』の力……元々は『魔法少女の女神様の力だ』、って……言ってましたよね?」

 その言葉に、暁美ほむらは溜息をついた。

「呆れた。
 ……あなたは、『まどかの力すらをも』、能力の内に取り入れようと言うの?」
「ごめんなさい。それしか、『お兄ちゃんを超える方法が』見当たらなかったんです。
 『純粋な魔力だけで、お兄ちゃんに打撃を与えた』……かなり珍しいレアケースなんです。……もしかしたら、初めてなんじゃないかな?
 さっきの一撃を見て、確信しました」

「お断りだわ。流石に……いい気分は、しないし」

 ですよねー。だけど……

「もう、手遅れですよ」
「え!?」
「私、一度見てしまえば、能力のある程度の部分、マスター出来ますから。
 ……まあ、そこでマスター出来るのなんて、所詮、上っ面(サーフェイス)なんですけど。
 だから、学校の成績とか、結構いいんです。『一度見れば、大体マスター出来ちゃいますから』」

 もっとも、出来ないモノも、色々とあるのだが。
 例えば、『料理』とか。家庭科実習で、色々と『神話』を作っちゃって……家庭科だけは三段階評価で、唯一、『もっとがんばりましょう』しか取ってこれませんでした(泣)。

「っ!! ……失念してたわ。本当に、『兄妹揃って』喰えない人たちね」

「ええ。だから、喰えないついでに、手伝ってください!

 本当に……お兄ちゃんを救いたいんです。

 親離れできない子供と、子離れ出来ない親……結局、最後は、どっちも不幸にしかならない。
 私にとって、お兄ちゃんは、ただの『お兄ちゃん』じゃなくて……父親でもあり、先生でもあり、魔法少年という従卒(サーヴァント)でもあり……その……『家族の中での男役』を、一身に負った存在なんです。

 だからこそ、お兄ちゃんを解放してあげたい。『私という魔法少女の縛りから』解放してあげたい。

 本当は、お兄ちゃんはもう少し、自由に生きるべき人だと思うんです。
 あれだけ凄い人が、ただ、『家族や私のためだけに生きる』なんて……もっともっと、家族以外の……ううん、一番、自分自身の事に、しっかり目を向けてもらいたい。
 それに、お兄ちゃんが望めば……『世界を救うヒーローになる事だって』出来そうだと思いません?」

 その言葉に、暁美さんが、真剣な目で私に答えてくれる。

「そうね。
 そして、まどかは私を残して、『円環の理』という、概念に成り果ててしまったわ。
 ……憶えておきなさい。御剣沙紀。
 『正義の味方』とか『神様』とか……それは結局、『他の誰かに都合のいいモノ』であって、決して『直接、自分を救う事にはならない』のよ。結局、自分を最終的に救うのは、自分自身しか居ないのだから」

「っ……ごめんなさい!」

 頭を下げた。
 と……

「……羨ましいわね。御剣颯太が。
 本当の意味で『誰かに理解してもらえる正義の味方』というのは……良しにつけ、悪しきにつけ、色々な意味で周りが放っておかないのね」
「え?」
「まどかは……今頃、どうしているのかな……」

 その、どうしようも無い寂しい横顔に。
 私は……

「ごめんなさい。
 やっぱり……『他人の力』なんて、気軽に借りるもんじゃないですよね。
 その……迂闊でした。何か、別の方法を考えてみます!
 だって、私の中には、全部の魔法少女の可能性が、秘められてるようなモノですから。
 だからこそ、無い物ねだりをするよりも、まずは創意工夫から入らなきゃ!」

 そう言って、立ち上がる。

「お手数をおかけしました。失礼します」

 と。

「一つ。聞かせてほしいの。あなたは『まどかの力』を、どう扱うつもりだったの?
 私の力だって、その……正直、まどかの力の『一分に過ぎない』と思うのに? それが、御剣颯太に通じる、とでも?」

 暁美さんの質問に、私は、素直に答える。

「簡単な事です。『最強を混ぜちゃえば、それが一番最強なんじゃないか?』……そう思ったんです」
「?」
「神様たちの願望混成(ウィッシュ・オブ・マッシュアップ)。
 『御剣の血』を引く『魔法少女』ならば……私ならば、可能なんじゃないかな? って」

 その言葉に、暁美さんが目を見開いた。

「まさか……」

「あの頑固者のお兄ちゃんを『否定してやる』ためには、もう『女神様の力を借りるしか無い』な、って。

 『神に等しい魔法少年』御剣颯太と、『魔法少女の女神様』鹿目まどかの『願望混成(ウィッシュ・オブ・マッシュアップ)』。これなら何とか通じそうな気がしたんだけど……ごめんなさい。あなた自身の事を、全然考えて無かった。それじゃ、魔法少女失格です。
 お兄ちゃんに怒られるのは、ある程度慣れっこだけど……女神様に怒られちゃうのは、ちょっと怖い、かな」

「……」

「ありがとうございました。色々、悩みの相談に乗ってくれて。
 もう少し、私自身、色々考えて、頑張ってみます」

 そう言って、私はその場を立ち去ろうとし……

「待って」

 暁美さんに、呼びとめられた。

「そうね……あなたたち兄妹は『知らない』のかもしれないけど。
 ……あなたたち二人には。特に御剣颯太には『色々な意味で』借りがあるのよ」

「暁美……さん?」

 そこに……何か、不敵な笑顔を浮かべる、暁美さんの姿が、あった。

「いい機会だし。
 あの、傲慢な御剣颯太に、『一発痛い目』を見てもらう、いいチャンスかもしれない。
 ただ……」

「ただ?」

「御剣沙紀。これだけは約束して貰いたいの」
「約束?」
「佐倉杏子の事……『彼女を、あなたは許せる?』」

 その言葉に、私は苦笑した。

「許すも何も……『私たちが怒る筋合い』なんて、無いじゃないですか?
 そりゃあ、ちょっと会った時は無駄にグレててムカつきましたけど……悪いのは、佐倉杏子のお父さんであって、彼女に罪なんて、あるワケ無いんですから。
 盗みとかもやめてる……というか悪党限定になってるし、魔法少女として後輩のみんなの面倒見ながら、物凄く頑張ってる。

 それに、親の罪って、子供には及ばないようになってるんですよ? 日本の法律って。
 それって……正しい事だと思います。

 生まれた時から、身に憶えの無い罪を背負って『お前は犯罪者の子供だから、犯罪者だ』って言われたら……誰だってグレちゃいますよ。チカさんみたいに。
 特にチカさん、結構あれで純粋な人だから。だから、一番自分で自分が許せなかったし、周りの大人も許せなかったんだと思います。そんな連鎖……犯罪者を増やすだけで、間違ってますよ」

 だからこそ、チカさんはそれを断ち切るために、魔法少女になったのだ。

「そうね。彼女は……佐倉杏子とはある意味、間逆かもしれないわね」
「え?」
「自らの願いで、『誰か他人を救えた』。
 そして魔獣との闘争の日々にすら、何の後悔も抱いていない。……むしろ、嬉々として飛びこんで行く。
 ……意外と珍しい、レアケースな気がするわ」

 その言葉に、私は首をかしげる。

「そう、ですか?」
「ええ。
 そして……私は、今、この『優しい世界のあなただからこそ』、話を振る事が出来る。
 だけど、いい?
 まどかが作り替える前の世界で、この話を聞いた時……あなたはソウルジェムを濁らせ尽くして、危うく魔女になる所だったのよ?
 この世界ならば、恐らくは……死ぬ事になるわね」

 死。

 その言葉を聞いて、私は背筋が凍る。

 あの日。
 お兄ちゃんが助けてくれなければ、私は父さんと母さんに、殺される所だったのだ。

「それを約束出来なければ……御剣沙紀。私はあなたに協力出来ない。
 これも一つの試練……いえ、取引。そう思ってもらおうかしら?」

「死ぬとか……冗談じゃ、無いんですね?」
「ええ。
 あなたたち風に言うならば……『本気と書いてマジと読め』って所かしら?」

 さて。
 杏子さんは一体、何を我が家に……御剣家にカマしてしまったんだろぉか?
 教団内部のゴタゴタに、御剣家を巻き込んだとか……そんな内容だろうか?

 だとしたら……いや、もっと根本的な事では無いのか?

「もしかして、杏子さんの『願いごと』に絡んだ話とか、ですか?」
「鋭いわね、佐倉杏子は……」
「待って、ストップ! 推論を働かせてる真っ最中! まだ心の準備が出来てません!」

 そういえば。
 杏子さんは『能力を封印してしまっている』と言っていた。前の世界でのチカさんも、そんな状態だった、と。

 つまり……『最初の願いを踏みにじられた』魔法少女は、元々の能力を失ってしまう事がある、という事だ。

 考えろ……考えろ……能力を封じるのは『願いが間違っていた』という『自責の念から』というのが大半だ。
 そして彼女の両親や妹……家族も、無理心中をしている。

「杏子さんの『願い』は……『家族に関する問題を解決したい』って事だったのではありませんか?
 ……多分、冴子お姉ちゃんに近いモノな気がします」
「正解よ。で?」

 考えろ。考えるんだ、御剣沙紀!
 我が家の問題は……御剣家の問題は……そう、お金。お金だった。
 じゃあ、佐倉家の問題は?

 考えろ……考えろ。
 彼女の家は、お金を欲したか? いや、違う……あの一家はウチとは違って宗教家だ。
 宗教家にとって、大切なモノ。それは……

「もしかして……もしかして……『自分の家の信者を増やしたい』とかいう願いだった……とか?」

 考えてもみれば、彼女の父親は、本部から破門されているのだ。
 それで居て、あれだけの信者を集められたというのは……よくよく考えたら、異常である。

「ほぼ、正解よ。彼女の願いは『父親の話を聞いて欲しい』……そういうモノよ」
「そっ……そんなっ!!」

 愕然となる。

「じゃあ、父さんと母さんは……いや、冴子お姉ちゃんも、お兄ちゃんも……」
「さて。それを踏まえた上で、もう一度聞くわ。
 あなたは……佐倉杏子を、許す事が出来る?」

 愕然となり……私は、天を仰いだ。
 なんて……事。
 あの時の、カツ丼を食べていた時の、彼女の涙の意味は……

「正直……分かりません。でも……」
「でも?」
「私に、佐倉杏子を怒る資格は、ありません。
 だって……私も魔法少女だし。お兄ちゃんが居なければ、死んでいた人だし」

 迷う。
 本当に、頭がぐちゃぐちゃになってくる。
 落ち着け、御剣沙紀。クール・アズ・キュークだ……理性をもって、ちゃんと答えを導け!

 沈黙。
 やがて……幾つかの結論に、至る。

「……チカさんが、言ってました。
 ヤクザ屋さんたちの『任侠道』って……元々は『武士道』から派生したモノだ、って。そして、その内容は、江戸時代の大昔から、基本的に普遍のモノなんだそうです。
 『札付きのワル』って言葉、あるじゃないですか? アレってね……悪さした人は、昔、戸籍簿に赤い札つけられちゃった事から着たそうです。
 そうなると、もうその人は、村から……世間から爪弾きにされて、旅ガラスとして生きて行くしかない。

 でも、人間は誰とも関わらず、生きて行けるワケが無い。

 そういった……世間から爪弾きにされた『人間として扱ってもらえない人間の最後の拠り所』として。
 『それでも俺たちは人間なんだ!!』って主張するために、守るべき『掟』が『任侠道』って概念なんだそうです。だから、武士道より、ある意味でずっと厳しいんですよ。

 そういう意味で、中国の『武侠』とは、ちょっと違うんですよね。
 あれは全部『個人の正義』であって、究極を言えば『俺がムカツクからぶん殴る』なんですよ。
 だから、殴る相手が聖人君子だろうが皇帝だろうが大魔王だろうが、関係無いんです。

 対して、日本の『任侠』っていうのは、『世間に迷惑をかけるな』って概念から来てるんです。
 自らを『悪』の立場と置きながらも『悪』を憎む概念……それが『任侠』なんですよ」

「……で?」

「御剣の家は、臥煙の家系です。
 その上で、話の筋を考えてみるとですね……『強制的に信者になる』とか、そういった事は、していないワケですよね?」
「ええ、まあ……」
「だとするならば……ああ、やっぱりお兄ちゃんが正しかったんだ」

 私は、思いっきり苦笑した。

「結局は、『うちのお父さんとお母さんが馬鹿だった』……そういう事です。
 だって、お兄ちゃん。あの神父様の説法聞いて『なんか間違ってネ?』って……ズバッと言いきってのけたんですから。
 当時、小学生ですよ、お兄ちゃん?
 小学生でも分かるくらい、ちゃーんと『王様は裸だ』って言ってるのに……お父さんとお母さんは、金ピカの衣でも見ちゃったんじゃないかな?」

「それは……」

「まあ……自殺した神父様の気持ちも、分かる気がしますけどね。
 自分が本当は裸なのに、金ピカの服を着てるつもりで、街を練り歩いていたなんて知ったら……まあ、死にたくなるくらい恥ずかしくはなりますよ。

 結局……杏子さんのお父さんも、うちの父さん母さんも……ううん、チカさんとか、あの教会で暮らしてるゆまちゃん八千代ちゃんとかの面々。あと、ついでに、巴さんの両親とか。
 なんで、『そういった家庭の魔法少女や魔法少年たちが強いのか』。分かった気がします」

「え?」

「大人がフラフラしてたり、死んだりしててアテにならないからですよ。だったら、子供がしっかりするしか無いじゃないですか?
 特に、お兄ちゃんやマミお姉ちゃんみたいなタイプは……物凄く、責任感が強いから」

「そう、ね……確かに、その通りかもしれないわね」

 そして、一呼吸。

「あの神父様の言っていた、『新しい時代』なんて、やっぱり永遠に来ないんですよ。
 いつだって『今』は『過去』と繋がっている。
 今を生きて、ベストを尽くす事で……初めて『未来』はやって来るんじゃないかな?

 夢や希望だけじゃない。現実も見据えて。それを踏まえた上で、ようやっと『真実』が見えて来る。未来が切り開ける。

 だって、夢や希望が無ければ、飛行機なんて作れるワケが無かったんだし。
 まして……未来に、鉄腕アトムが出来るわけがない。
 ……私、信じてるんですよ? 魔法少女だって現に居るんだし、いつか『鉄腕アトム』が開発されるんじゃないか? って。
 この間、原子力で物凄い事故とか起こっちゃったけど、それでも、手塚修虫先生が見せてくれた、鉄腕アトムって夢は間違ったモノじゃ無いんじゃないか、って。

 力なんて……願いなんて。要は、『使い方次第』なんです。
 それを一度間違っちゃったからって、完全に全否定していたら、人間は一歩も先に進めなくなっちゃう。
 ……今のお兄ちゃんみたいに」

「……沙紀ちゃん」

「勿論、杏子さんの願いは『理不尽』の部類です。だって……『家族も救えない人が、どうやって世界を救おうっていうんですか?』
 そんなの間違ってますし、誰も話なんて聞いてくれるわけがありません。東京に居た頃の下町には、そんな『負け犬』の人たち、いっぱい居たんですよ?
 それに、色んな会社がTVに15秒のCMを流すために、どんだけお金払うかって、以前お兄ちゃんに教えて貰って……私、気が遠くなりました。
 宣伝とか、そういったのにも。『話を聞いてもらうだけでお金って、かかるんですよ』。

 そういう意味でも……杏子さんの願いって『世間を馬鹿にしてるなぁ』って思います。

 だから私は……私は多分、杏子さんを許せないけど。
 堪(こら)えます。
 憤りはあります。理不尽は許せません。
 でも……今ここで、杏子ちゃんを殺すとかしたら。多分、ゆまちゃんとか、ひみかちゃんとか、八千代ちゃんに私たちが恨まれる。
 そんなの繰り返してたら、ずっとずっと、『全部が破滅するまで』終わらないじゃないですか?

 多分……鹿目まどかさんの。『魔法少女の神様の願い』って、そういった因果を断ち切りたかったんじゃないかな? 究極的には。
 だから、この世界で、奇跡や魔法の『いいとこ取り』をしてやろう、って考えてたんじゃないのかな?
 私は、直接合った事は無いけど……欲張りな神様だなーって。何と無く、今、思っちゃいました」

 それは、私が……一番『ワガママ』な魔法少女だからこそ。
 至った、結論だった。

「そう。やっぱりあなたは……優しい子ね」
「ええ、でも、その……正直、それが、お兄ちゃんに分かってもらえるかは、別問題です。
 だから、その……黙っていてください」
「分かってるわ。斜太チカに、思いっきり釘を刺されたんだから」
「チカさんが?」

 考えてもみれば、チカさんは杏子さんと暮らしているのだ。事情を知っていても不思議ではない。
 ……単に、性格的にウマが合うから組んでたと思ったのだが……そっか、マミお姉ちゃんの家を出て行ったのは、そういう事情があったのか。

「『堪える』と言ってくれたついでに、教えておくけど。
 私が辿ったループの中で、御剣颯太は、佐倉杏子と『決闘』にまで至っているわ。
 ワルプルギスの夜との闘いを目前に控えてなお……彼は、佐倉杏子への復讐を選んでしまった。そして、彼女を惨殺している」
「それ、分かります。お兄ちゃんは、優しいけど……その分、物凄く、激しくて厳しい人だから」

 私が一番、危惧した事態は……どうやら、一度、現実のモノとなってしまっているらしい。

「斜太チカがね……私が全てを話そうかと思ってた時に、言ってたの。

 『あんたの話を聞く限りだと、状況がまるで違う』
 『時間が欲しい。ぶっ壊れた颯太を治して、あいつが真実と向き合えるようになれる時間が』。
 『あいつにこれ以上人殺しなんて、させたく無い。増して『魔法少女殺し』なんて……魔法少年として最悪じゃないか』。
 『誰よりも厳しい奴だけど、魔獣相手に救えなかった仲間や被害者に、一番心を痛めているのはアイツなんだ。だから鬼にもなるんだ』。

 ……改変前の世界で、美樹さやかに接してきた彼の態度を見てて……今度は私は、斜太チカに、賭ける事にしたの」

「そう、ですか……」

 溜息をついた。
 本当に……私は、知らない事ばかりだったんだなぁ。

「あ、そうだ。で、その……」
「いいわよ。この『弓』の……まどかの力、写させてあげる。借り物の、借り物だけどね」
「それで十分です。
 むしろ、本来の女神様の力なんて……一介の魔法少女の私には、手に余るモノなハズですから。
 だから、コピーのコピーくらいで、丁度いいんですよ」

 何しろ、お兄ちゃんはまだ、神様じゃないし。『ザ・ワン候補生』だって言ってたしなぁ。

「『大幅劣化した女神様』の力+『未熟な神様候補生』の力……さあて、どんなのが出来るかなぁ」

 そう嘯きながらも、私は……少々頭を抱えていた。

 お兄ちゃんの力。その本質の部分は、『憤怒』と『断罪』だ。
 そして、女神様の力は……多分……『慈悲』と『救済』。

 そう。
 完全に相反する概念に属する力を、私は扱わねばならない。
 だが、それを踏み越えねば……乗り越えねば。『私は私だ』と主張する事すらも出来ない。

 今、私は……生まれて初めて。最初にして、おそらくは最大の試練に、挑もうとしている。
 だが。それを乗り越えなければ、お兄ちゃんは……いや、私は、一歩も踏み出せない。

 考えてもみれば。
 お兄ちゃんを超えられなければ、お兄ちゃんを救えるワケなんて、無いのだ。
 だから……

 魔法少女、御剣沙紀。見滝原小学校、小学六年生。
 覚悟キメて……挑みます!!


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