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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 幕間:「御剣家の人々 その2」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/17 06:53
「……なんだ? 一体……」

 ある日の事。
 遅れてる学校の勉強を教わりに、あたし――斜太チカは、颯太の奴の家に行ったのだが。

 そこには、門前につけられた土を盛ったダンプに小型のユンボ(パワーショベル)。
 さらに何人かの職人さん。そして……

「よっ、チカ♪」

 直足袋にドカンをはいて、ねじり鉢巻き姿の颯太が、設計図らしきモノを持って、何やら棟梁らしき人物と話をしていた。

「一体、何事だよ、こりゃあ?」
「いや、茶道部に入って、色々凝ってる内に『野立て』とかやってみたくなってな。
 あと、『主夫の友』に乗ってた、ガーデニング部門の『ある一般投稿者』の庭の写真に刺激を受けて……ちょっと庭を日本庭園風に弄ってみようかな、って」
「『風』って……ま、アンタがアンタの家の庭を、どー弄ろうが、文句は無いけどさ」

 颯太の奴は無趣味なよーに見えて、一度『コレ』と決めこむと、無駄に凝り性な側面がある。
 例えば、料理……特に、和菓子作りとか。
 ……まあ、日ごろ、色々と忙しくて慌ただしい奴だし? 趣味を持つのは悪い事では無いのだが……

「にしても、大がかりだね」
「いやまぁ、鯉を飼う池とか作るしさ。ちょっと土掘って掻き出さないといけないし」
「あ、なるほど……まあ、無駄にあんた、金持ってるもんね」

 日ごろ、何をどうやって使って運用してるんだと疑問に思うほど、御剣家の経済力は、底が知れない。
 だが……

「そんな使ってないよー?
 古民家の解体の時に出た、中古の庭石とか……まあ、タダで貰って来たようなアイテムが殆どさ」
「……そういうネットワークとかも無駄に持ってるアンタの、底が知れないよ」

 とりあえず、今日は颯太に勉強見て貰うことは、諦めたほうが良さそうだ。
 ならば……

「巴さん家に行くか……」

 年下に教わるのは、ちょっと業腹だが。
 まあ、気にしたってしょうがない。あたしが、学校の勉強関係について馬鹿なのは、事実だし、ね。



「……お?」

 一週間後。
 完成した、御剣家の庭園は……簡素ではあるものの、設計者のセンスを感じさせる、落ち着いた代物だった。
 小さな池には鯉が二匹泳いでおり、これぞ『和』とも呼べる風情を漂わせている。
 あたしは作法とかは知らないが……確かにここならば、茶道にも、うってつけであろう。

「へぇ、完成したんだ……イイ庭じゃん?」
「ああ、まだ苔とかが定着し切って無いんだけどな……カトリーヌ、グレース、ご飯だよー♪」

 そう言って、池の鯉に餌やりをする颯太……っていうか。

「なんだよ、その……飼ってる鯉につけてる、日本庭園とはかけ離れた、無駄に不吉極まる名前は?」
「ん? いや、食用鯉だからさ、これ。いざとなったら捌いて喰おうかと思って。
 他にも、植えてある木とか草とか、殆どが、食べられたり、実が生ったりするモノばっかだよ?」

 なんというか……トコトンまで本人の気質を表した『質実剛健』さに、呆れ返ってしまう。

「大きく育てよー♪ いつか味噌煮にするか……いや、あらいでもいいかなー♪」
「……ま、15年もの歳月かけて育てた、孫のよーな鯉じゃない分、安心か」
「あっはっは、どっかの高校の最凶用務員様じゃあるまいに。俺にあんな、『面白オカシイ本性』なんて、あるワケ無いじゃないか。
 それに、アホ毛も無いしね。武術の……増して、いちおー程度とはいえ、剣の達人な俺に『隠された暗黒面』なんて、あるわけ無いだろ♪
 明鏡止水っつってな……己の心の動き全てを把握しておけ、って。安直にキレるとか、そーいったのは未熟の証拠だよ」

「……………そうだね。『そーいう風に未熟な部分』は、知らないほーが本人幸せだよね」
「ん?」
「いや、何でも無い。それより、颯太、勉強教えてほしいんだけど」

 そう言うが……

「悪い。ちょっと『ドブさらい』のネタが入ってな。そろそろ出ないと晩御飯作るのに間にあわないんだ」
「何だい? あたしも手伝うよ」
「いや、俺一人で十分。晩飯には帰って来るから、それまで待っててくれないか?
 それからなら、いいだろ?」
「あー分かったよ。今日はあたしが料理当番じゃないし、杏子にも連絡は入れておくさ」

 朝飯前のよーな事を言うが……さらっとコイツは、ヤクザの事務所を単独(ひとり)で潰して来たりするから、恐ろしいのだ。
 ……案の定、振り込め詐欺のグループが、借りてる部屋ごとメンバー全員『謎の爆発事故』で丸コゲになって逮捕されたニュースを、後日、あたしは聞く事になる。



「……遅いねぇ、お兄ちゃん」
「そうだねぇ。もー、ご飯間にあわないし。
 沙紀ちゃん、あたしが作ろっか?」

 予想以上に手間取ってるのだろうか? いや、颯太に限って、それは無かろう。
 あいつの用意周到さと恐ろしさは、あたしや杏子よりも遥かに上である。
 何しろ……『証拠一切残さず、基本的に誰も殺さずに、ターゲットが痛い目見た上に、社会的に破滅して行く』のが、颯太の基本パターンだ。
 この間のよーな、教会でのドンパチに至ってしまった場合は、むしろ例外というか仕方ないと言うか。
 『知られたからには、しょーがないよね』って、嬉々としてマフィア屋さんを、深く静かに埋めて行く颯太の表情は……例の『ウォーズマン・スマイル』状態で。

 ほんと、怖かった。
 世の善悪とか以前に、こー……『敵に回してはイケナイ存在』というのを、まざまざと見せつけられた気分だった。
 ……色んな意味で。

「キュゥべえ。前の世界で、あたしとあんたが手を組んで、アイツと対立したっつーけど……案外、あんたも破滅してたんじゃないのかな?」

 ふと、気になり、キュゥべえに問いかけてみる。

『否定は出来ないけど、肯定も出来ない。
 彼の知性や計算高さ、そして底のしれない魔力係数。さらに『見えない魔力』……不確定要素が多すぎて、どうなるか分からない。
 何より、僕らにとって不可解なのは、『感情という精神疾患』に関して図抜けてると言ってもいい、彼の『性格』だよ。
 感情を『無くしている』んじゃない。感情という精神疾患を『完全に制御しているように見える』。
 正直、稀有な存在だよ……彼に指摘された『感情』という精神疾患を分析する上で、彼は僕らにとって興味深い、研究対象でもあるんだ』

 そう言う、キュゥべえ。だが……

「本当に、そうなのかな……」

 少し、考え込んでしまう。
 あいつはあたしと同じ、十六歳だ。あたし自身も、同年代の連中よりは色々経験してると思うが、アイツのほうは、その上を行っている。
 あいつも私も……魔法少女だ、『ザ・ワン』だ何だと言ったって、本質的には、タダの高校一年生である。

 と。

「待った、チカさん! 御剣家の客人をもてなすにあたって、やっぱここは、お兄ちゃんに倣って、私が料理をします!」
「……沙紀ちゃん?」

 颯太と違って、沙紀ちゃんの料理――あれを料理と呼んでいいかどうかは、色々と定義の問題があると思うが――は、恐怖の存在だ。
 ……一度、人を喰らうタイプの魔獣に、冗談半分で沙紀ちゃんの料理食わせたら『一発で倒せた』とかあったしなぁ……

「安心して、チカさん! 自分でも料理の腕前は分かってるから、食べたくなければ食べなくてOKです!
 お兄ちゃんの部屋の本棚の、サバイバルの本に乗ってた、私でも出来そうな簡単な料理でしたから」
「……ま、まあ……じゃあ、やってみ?」

 不安に駆られるあたしを前に、沙紀ちゃんは何やら、ボウルと丈夫そうな布を取りだした。

「まずは、ボウルと丈夫な布を用意します!」
「ほう?」
「次に! フレッシュなお魚!!」
「フレッシュな……お魚?」

 言うが早いか、颯太の作った庭から、網でもって鯉――カトリーヌのほうを掬って台所に持って来る沙紀ちゃん。
 ……って、まさか……まさか!?

「そのお魚を布でくるんで……絞る!!」
「ちょっ!!」

 そのまま、ぶちゅぶちゅと、包んだ布の中で潰されて、色んな液体をだばだば垂れ流す事になる、カトリーヌ。
 ……鯉って確か、潰すとマズいにがり玉とかあったと思うが、そんなもんお構いなしだ。

「さらに、改良を加えて、ビタミンなんかの栄養剤とあれとコレと……」
「…………………………………」

 何と言うか。
 相変わらず、料理というより、禁忌の実験としか思えない所業に、あたしは深々と溜息をついた。

「じゃーん! 『カトリーヌ一番搾り!』です!」

 大き目のコップに、なみなみと注がれた『液体』を見据えながら、あたしは沙紀ちゃんを、お寺の大仏みたいな目で見つつ。

「で、沙紀ちゃん。
 自分で作ったそれを、一ぺん、飲んでみちゃくれないかね?」
「……………………」

 沈黙する、沙紀ちゃん。

「こ、この料理は『封印』って事で」
「ああ、そのほうが賢明だね。
 あと、あたしゃアンタが料理するにあたって、使用した食材や調理法その他の内容について、一切の責任は負わないからね」

 一晩中バーサークした颯太と追いかけっこをする羽目になった、あの恐怖の出来事は……もう忘れ去りたい事実である。

 とりあえず、その禁断の『カトリーヌ一番搾り』が入ったコップにラップをして、冷蔵庫に封印。
 絞った布は、中を開ける事無く、これまたゴミ箱へ。
 この色々と狂った液体を、それでも颯太なら……颯太なら、きっと何とかしてくれるハズ。多分……何かのソースにするとかで。

 と。

「おーう、すまん。ちょっと遅れた。
 今晩はカツオのいいのが入ったからな。捌いてタタキにしよーぜー」
「わーい!!」
「ああ、ありがと。あたしの分も頼むわ!」
「任せろ……っつーか頼むわ、チカ、喰ってってくれ。二人じゃちょっと持てあます量が出来ちゃうかもしれんし。
 ……いや、市場で見かけて、衝動的に買っちまったんだよ」

 そう言って、キッチンに立つ颯太の背中は、もー、無駄に頼もしい事この上ない。
 ……単に、キッチンに立つ沙紀ちゃんの背中が、『頼りない事この上ない』から、ギャップでそー見えてるダケかもしれないが。

「沙紀、倉庫から七輪、外に出しておいてくれ。あと、練炭と藁があったろ?」
「あ、颯太。火はあたしが起こすよ」
「あー、チカ、頼む。
 ……沙紀に任すと、何がどーなるか知れないからな」

 うん、流石、颯太。実の妹の事は、よーく分かってるね。



「ぶはぁ! 喰った喰った!」
「美味しかったー♪ あたしお刺身とか好きー!」

 小ぶりなカツオの頭を、兜焼きにしたり。皮を焼いたモノを食わせてもらったり。
 タタキとは別で、作った料理を、三人揃ってモリモリ食し終えた後。
 あたしはソウルジェムの能力で、勉強道具を取りだした。

「で、さ。悪いんだけど颯太。例によって、みてもらいたいんだ、勉強」
「ああ、チカ。その事なんだが、申し訳ない。今日は多分、無理っぽいと思うんだ」
「え?」

 言っておくが。
 あたしは今日に限って言えば、メシをタカりに来たわけではない。
 あくまで勉強を見てもらいに、夕飯まで待ったのである。

「うん、とりあえずさ。遊び半分に無駄に命を玩具にされた、我が家のカトリーヌの無念を、晴らしておかないと行けないと思うんだ」

 にこやかに微笑む颯太。
 だが……その目が、一切笑ってない!!

「あ、あの……颯太!?」
「安心して。
 犯人が誰で、やらかした事が何で、どーいう動機かも、大体推察がついてるから。
 な、沙紀?」

 わしっ、と沙紀ちゃんの頭が、颯太の手で引っ掴まれる。
 ジダジダと暴れ回る沙紀ちゃんだが、脳天をアイアンクローで引っ掴んだ颯太の手は、巌の如くビクともしない。

「ま、そういうワケだ。御剣家の恥晒しに、ちょっとお仕置きしてやらんといかんので……すまないが、今日の所はカンベンしてもらえないかな? そう急ぎってワケでも無いだろ、テストはまだ先だし?」
「あっ、あ、ああ。そうさせてもらうよ」

 ワーニン、ワーニン、ワーニン。
 頭の中で、警報装置がバリサン状態で鳴り響く。

 これ以上、この場に居残るのは、危険極まりない。
 そう判断したあたしは、可及的速やかに御剣家から撤退し……

『ぎみゃあああああああああああああああああああああああああっ!!』

 あたしが、御剣家の敷地から外に出た瞬間。
 沙紀ちゃんの絶叫と、何かこう……御剣家から、玩具箱をひっくり返したような轟音が響きわたる。

「南無」

 とりあえず、色んなモノの冥福を祈り、手を合わせる。

 沙紀ちゃん……颯太は優しいんじゃない。
 怒りという感情を『人一倍制御出来ているダケ』であって、『怒り』そのものが無いわけじゃないんだぜ?
 むしろあたしは……あいつの人格の中にある、根本的な本質の部分を占めてるのは、『怒り』だと思うのだが……どうだろうか?



「仏像? 仏像って……あの?」

 ある日。
 颯太の奴が、何か別な趣味を見出したらしい、という噂を確かめに、沙紀ちゃんに聞いてみると。

「うん。ノミとか彫刻刀とかで、木彫りの仏像作ってたよ。ほら」
「ほー……こりゃまた、本格的な」

 なんかの如来像だか何だか知らないが、よく出来てるのは、あたしにも分かる。

「でも、『何かが足りないなぁ』って言って……ちょっと郊外を超えて、山奥で土地と小屋借りて、何かやってるみたいなんだ」
「借りたっつーか、あいつの事だから、もしかして……」
「……うん。土地だけ借りて、許可貰った雑木林を切り開いて、自分で掘立小屋みたいな家、作っちゃったみたい……」

 また、無駄に凝り性な事を……
 まあ、アイツ……今時、鉛筆にトーテムポール刻んでたし。鉛筆をナイフで削るとか、凄い上手だし。
 こーいう細工物とかそういったのは、手先の器用さから、向いてはいると思うのだが……。

「しかし、仏像ねぇ……らしいっちゃらしいけど、実用重視なアイツが、それだけでそんな事をするかなぁ?」
「なんか、頼まれたらしいよ? 『仏像彫ってみたら?』って言われて、作ってみたら出来が良くて。
 それで追加を……って」
「……またいつものパターンか」

 お人よしの颯太だが……ちょっと今回に限っては、事情が違う。

「にしても、それをキッカケにして、自分からのめり込むとは珍しいね?」
「でしょ? あたしも不思議に思って……」

 さて。ちょっと興味が湧いてきた。
 颯太の奴が、一体、あたしたちにも黙って何をやっているのか?

 そういえば、以前、『金庫の二層目』に踏み込んだ時、『前に溜めこんでいたエロ本』は、一冊も無かった。
 あれらをドコにどー処分したのかは、永遠の謎のままだが……もしかしたら、その掘立小屋の中に、置いてあるのではあるまいか?

「……チカさん。なんかあたしたち、同じ事考えてません?」
「そうだね、沙紀ちゃん」

 お互いに、キュピーンと目が輝く。
 何だかんだと……隠されたモノがあると、見に行きたくなるのは、お互い似通った性分らしい。

「沙紀ちゃん、ヘルメット持ってる?」
「無問題♪」
「OK♪ おまわりにバレないように行くからね」

 そう言って、あたしは沙紀ちゃんを、愛車……『カワサキ・ZEPHYRχ(ゼファーカイ)』の後部座席に乗せて、颯太の作業場へと向かって行った。



「このへん……だと、思うんだ」
「ほいほい、っと……あ、あったあった」

 郊外から山道を抜けて、雑木林の近く。
 ちょっと珍しいヨシムラカラーの颯太の愛車『スズキ・GSX400S・カタナ』を発見。
 ……って、なんか、エンジン音が聞こえるんだけど?。

「なに? バイクの音……じゃないよね?」
「あー、こりゃ芝刈り機か何かの音だよ」

 作業場を確保するために、雑草でも刈っているのだろうか?
 ……あいつ、そーいう所の作業を、地味に厭わないからなぁ。

 とりあえず、バイクをその場に置いて、林道を歩く。

 そして、そこには……

「「―――――はい!?」」

 ホッケーマスクを装備してチェーンソーを携えた、もー、どー見てもホラー映画に出て来る『アレ』としか言いようのない生き物が、突き立てた材木に向かってチェーンソーを入れてる所だった。

「……あ? 何だお前ら? どーしたんだよ、こんな所まで?」

 ホッケーマスクを、ひょい、と持ちあげた颯太が、首をかしげる。

「い、いや……あたしたちに黙って、何やってんのかなー、って……」
「そ、そう、気になって……」

 とりあえず、エンジン音が怖すぎるチェーンソーなんぞを携えつつ、颯太が肩をすくめてみせる。

「ああ、いや、その……ちょっと、仏像彫りから発展して行って、興味があって挑戦してみた事があるんだが、どーも上手く行かなくてな。
 納得行かない、出来が悪いモノを見せるのもアレだから黙ってたんだが……すまんなぁ、気を使わせちまって」
「……で、何やってんだい?」
「いや、『チェーンソー・アート』とか『チェーンソー・カービング』って奴なんだが……ほら、『ジェイソンさん』とか、動画掲示板であるだろ?」
「あー……いや、それは分かったんだけど……」

 何と言うか、マジで怖い。
 あのバーサーカー颯太が、もし『木刀ではなくチェーンソーを持っていたとしたら!?』。
 冗談抜きに、魔法少女どころか神だってバラバラに出来そうである。

「っていうか、何だい、これ……? 女神像?」
「んー、あー……その、俺が姉さんの死に際に見た『魔法少女の女神様』なんだが……どーも出来が悪くてなぁ。
 没作品が、むこーに山ほど転がってるんだ」

 颯太の指差した先には、ばらばらにされた木片の山。
 ……なんとなく、『理想の結末に至るまでループを繰り返した』とか言う、どっかの魔法少女の姿が頭をよぎってしまったのは、あたしだけだろうか?

 そっから、マスクを下ろして、真剣な表情で材木にチェーンソーを入れて行く颯太だが……

「だめだな、こりゃ……没」

 はやたは チェーンソーで
 めがみを こうげき!
 めがみは バラバラになった。

 っていうか、目が……目が!!
 何かストレス発散してる時の、ウォーズマンスマイルの怖い顔してる時の目だって、颯太!!
 沙紀ちゃんなんか、あたしにしがみついて、プルプル震えてるし!!

「はぁ……また、やっちまったぜ……どーも芸術とかの才能、無いのかな、俺?」
「ちょっ!!」

 逃げてぇぇぇぇぇっ!! 魔法少女の女神様、超逃げてぇぇぇぇぇぇっ!!!
 あたしは、心の中で叫ぶ。 

「あ、あのさ、颯太。何も、道具をチェーンソーに拘る必要は、無いんじゃないのか?」
「いや、多分、この獲物、性に会ってると思うから……こー、なんというか、作って行くうちに、いろんなもんが発散されて行くと言うか……」

 冗談では無い。
 タダでさえ、本性は憤怒の化身のよーな颯太に、『かみ殺し』の武器を持たせるなんて。
 ある意味、核爆弾より危険すぎて涙が出て来る!

「い、いや。ほら……あー、そうだ、暁美ほむらの奴が、この作業場見たら、怒りだすと思うぞ、ホントに。
 やめとけ、な?」
「む、むう……まあ、しょうがないか」

 そう言って、颯太は、仏像彫り……もとい、チェーンソー・アートの趣味を、放棄してくれた。

 ……いや、だって……夢も希望も無さ過ぎて、怖いんだもん。マジで……



「ところで、動画掲示板で見たんだが、V8エンジンで動く超巨大チェーンソーとか、面白いのがあってな。魔獣退治用にひとつ……」
『や・め・と・く・れ』
「……チッ!」


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