「おいっす♪」「こんばんは」 ふらり、と帰った家の前で、待っていたのは……「巴さん……チカ。二人とも、どうして?」「いや、何。沙紀ちゃん出て行って、寂しいんじゃないかな、って」「ご飯、作ってきましたよ」 手の中には、巴さんやチカの作った料理……というか、酒まであるし。 ……って。「おいおい、待てよ。佐倉杏子がさっきゲーセンに居たって事は……」「ん? ひみかの奴が、鍋振るってる……そろそろ、あいつらにも教会の中の事、させないとな、って」「……ん、そうか」 そういえば、彼女が一番、面倒見てる中では年長だったな。確か、孤児院での虐待から逃げ出してきた子だから。 『本当の両親が知りたい』だったっけか……だから探索系の能力なんだよなぁ。 もっとも、彼女が探し当てた両親は……いや、言うまい。「……とりあえず、一緒に喰おっか?」 黙々と。 俺と、巴さんと、チカと。飯を食って行く。「颯太。美味いか?」「……ん、二人の飯は、結構イケるよな」 その言葉に、二人は微笑む。「魔法少女の『メシ使い』に太鼓判押して貰えるたぁ、光栄だね」「なんだよそりゃあ」「いや、定番じゃないか。 悪さした魔法少女を、あたしら二人が叱って、説教して。そんで、あんたが飯食わせて、巴さんが諭して。 本当に、どーしょーもない魔法少女たちは、教会で面倒見て……さ」「まあな。何時の間にか、そんなパターンになっちまったな」 チカの言葉に、俺は苦笑する。「ああ。だからさ……今回は、ちょっと趣向を変えてみたんだ」「?」 その言葉と目線に、俺は、感づいた。「……なんだ、今度は俺が、取り調べを受ける側か?」「ま、な。趣向としちゃ、そんなもんだ」「そういう事です」 なる、ほど……「まあ、いいこっちゃ無いよなぁ……でもさ、俺のしてきた事って、そんな罪のある話か?」『罪です』 ……言い切られたよ、おい。「……分っかんネェなぁ…… 正直、男なんて幾らでも居る。たまたま、俺はお前らと共に闘える。『それだけだ』ってのに……よ」 その言葉に……巴さんが、逆に問いかけて来る。「では、颯太さんにお尋ねします。 ……もし仮に。沙紀ちゃんに、好きな人が出来たとしたら?」「……は?」 想像もしていなかった。「ま、まあ、恋人づきあい程度なら、いいんじゃないの? 所詮、子供の……」「その先まで行ったとしたら?」「………」 沈黙する俺。 更に、チカの奴までが追い打ちをかけてくる。「そんで、沙紀ちゃんが連れてきた男の人が、『沙紀を、僕にください、お義兄さん』とか、言われたら!?」 その言葉に、反射的に俺は叫んでしまう。「少なくとも、『沙紀を守れる男以外』、嫁にやるなど俺は認めんぞ!」 ああ、兄馬鹿と言うなら言え! むしろ、俺を超えて行く男に、沙紀が嫁いで行くのならば、それは本望! 貧乳に希少価値はあっても資産価値は絶無なのだから、それ以外の側面で勝負するしかあるまい! ……というか、巨乳に和服は似合わんのだからこそ、『御剣沙紀 大和撫子計画』を、わざわざ計画しているというのに! ……いや、『料理』初め、家事炊事洗濯の段階で、色々、躓いてるんだけどさ……正味、2%も計画進行してません。「で、ドコにいるのさ? 『魔法少女の沙紀ちゃんを守れる、アンタ以外の男の人』ってのは?」「……どっかに居るんじゃないのか、そんなの? 男なんて星の数……」 その言葉に、二人揃って一言。『いねーよ、あんたの他に魔法少年なんて』「ぐっ……おーい、キュゥべえ!」『なんだい?』「俺の他に、歴史上、『ザ・ワン』とか『魔法少年』って居なかったの?」『居るワケ無いじゃないか。 君みたいな宇宙の特異点がゴロゴロしてたら、宇宙が今頃どうなっているか、分かりゃしないよ』「……俺は涼宮ハ○ヒか!?」 頭痛がした。 ……おっかしーなぁ……俺は、ふつーに平凡な男だったハズなのに。どうしてこうなった?「なあ、颯太。 一言言わせてもらうけどさ。 女にとって好きな人ってのは、『たった一人の運命の人』って意味じゃ、みんな『ザ・ワン』なんだよ。 お前、自分自身で言ってただろ? 『好きになった人が、好みのタイプだ』って。つまりは……そういう事なんだよ」「……む」「あとな……その。 正直、冴子さんも、酷な遺言、残したなぁ……って、思ったさ」「冴子姉さんが?」「あんたが壊れてる事、沙紀ちゃんも冴子さんも、気付いてたのさ。 そんでね、そーいうタイプの人間は、普通、同情だけの馬鹿な女に引っかかって、その女とトラブルを起こすか……何れにせよ、いい末路は辿らない。 だから、アンタと巴さんを、引き合わせたんだよ。 『颯太に恋心を抱かず、あくまで魔獣との闘いのパートナーとして過ごせる魔法少女が必要だ』ってね……。 だけど、アンタみたいな……いや、男と女が、一緒に過ごしてきて『一度として恋心を抱くな』ってほうが、無茶ってモンさ。 だから、この子は自分から『好きだ』なんて面と向かって言えなかった。『アンタに振り向いてもらうしか』他に方法が無かったんだよ」「っ……!!」 言葉が……無かった。「正直ね……そんな事情知ってりゃ、あたしだっていきなり告白とか、しなかった。 これじゃ、あたしが泥棒猫にしかならないな、って……初対面の時の巴さんの慌てっぷりを見て、ピン、と来たし。 あたしも、必要以上にアンタに迫る事はしなかった。 でも、何だかんだと、あんたはイイ具合に、砕けてきてたんだ……と、思う。 少なくとも、あたしの事を、ちゃんと『異性』として見てくれるようにはなった。 ただ……この子は、巴さんに関しては、あんたは……」「いや、ストップ! その……チカ、それと、巴さん……その、すまなかった。悪かった」 今更ながらに。 俺は……この二人に、色々な意味で支えて貰っていたんだ、と、悟った。 だからこそ……「その……言いわけにしかならないと思うが、一つ、いいか?」「なんだい?」「沙紀の事。 やっぱさ……その、沙紀が一丁前に立てるようになるまでは、俺はあいつを支えないといけないんだな、って。 アイツが将来、誰を選ぶのか分からないけど。 そん時に、アイツは魔法少女として『家族を守りながら』、かつ『誰かを守る』事をして行かなきゃ行けないと思うんだ。 今、俺自身が『代打』とはいえ、その立場に居るから分かるんだけどさ……正直、『重たい』ぜ、こいつは? あの、色んな事に甘えづくしの沙紀に、それが出来るとは……とても思えないんだ」「代打というより、最早『ホームラン請負人』って感じだけどね……現に、野球部の助っ人に入って、アンタ、伝説残しちゃったじゃないか」「……いや、野球、興味無いし。俺、高野連の玩具になる気、無いし」 そーいえば、ビーンボールをワザと俺に投げてきた命知らずに向かって、ピッチャー返しで顔面撃砕してやった彼……死んで無きゃいいけどなー。 それは兎も角。「本当に、そうでしょうか?」「ん?」「沙紀ちゃん、あれでチャッカリしてるというか、シッカリしてるというか……物凄くシタタカですよ?」「……まあ、『末っ子属性』は、しっかり持ってるよなぁ……」 殆ど、計算でやってるとしか思えない、無邪気さとか。 時々、怖いもんなぁ……色んな意味で。「とはいえど、今のままじゃ、独り立ちなんて無理だな。 あいつは、他の誰かと共に何かをするとか、利用するだとか、理解するだとか、そーいった事は出来るかも知れんが。 『自分ひとりで何かが出来る』ってタイプじゃない。 一人だと何も出来なくて、完全に途方に暮れちまうタイプだと見たけどね」 と、その言葉に。「それは、颯太さんも同じではありませんか?」「むっ? そんなことは……」「少なくとも。『何をしていいか分からない』状態に、陥ってしまうと思うのですが……」「それは……」 そうだ。 俺は……沙紀を守るために、家族を守るために、そして……仲間を守るために、魔獣と闘ってきた。 じゃあ、『守る必要が無くなったら?』。「……金はあるし。 今度こそ、和菓子職人にでも、なるかなぁ?」 と。「……あのさ、颯太。 あんた自身、今更そんな『普通の暮らし』をする道、『タダで歩める』と思う?」「どういう、意味だよ?」「一つ聞くけどさ。 あんたは魔法少女と魔獣の闘いの世界を、知っちまった。 そして、世間の皆さんが『普通の暮らし』をしている裏側で、大勢の魔法少女が闘っている。 ……いいかい? 『魔法少女』だ。 自衛官でもない、警察官でもない、消防士でもない。 タダの女の子が過酷な闘いに身を投じている中で、アンタはそれに甘えて安穏と過ごせる程、ヌルい男なのかい?」「っ……それは……」「少なくとも。あたしは闘う。そして、多分……巴さんもね。 で……『魔法少年』。あんたはどうする?」 問われ、言葉に詰まる。 俺が……俺が求めて居たのは、ただ、普通の暮らし、普通の生活。 本当に当たり前に、そこらの家庭にある団欒。 ただ、それだけだというのに……「……なあ。キュゥべえと契約して、お前らは魔法少女になった。そして、願いをかなえた。 じゃあ、俺はさ……知らない内に、魔法少女の女神様と契約した『俺』は、一体全体、『どんな願いをかなえた』んだろうな?」「颯太……」「姉さんが死んだ時、キュゥべえと契約しようとして、出来なかった。時間を戻せるなら、見滝原に引っ越した直後に戻りたいとすら、思ってる。でも、俺自身は……既に、女神様とやらと魂を契約済みの俺には、そんな願いを叶える事すら出来ない。 そのくせ、闘いの義務は負わねばならないって……何なんだろうな? それとも、何かな? 俺が『この世に生まれてきた事そのものが』神様との契約で生まれてきたとか? 闘って苦しみながら生きるだけの人生しか送れないなら、生まれないほうがよかったよ。 ……闘って、闘って、闘って。いつ、終わるんだい、この魔獣との闘いは?」 と……「じゃあさ。あんたは……あたしや巴さんと出会った事すらをも、否定するつもりかい?」「え?」「あんたが、巴さんやあたしと出会えたのは……究極言っちまえば、あんた自身の力が遠因にあるハズだよ? それに、奇跡も魔法も無かったら……巴さんは死んでて。沙紀ちゃんも死んでて。あたしだって、ドーショーモナイ女に成り下がっていたハズさ。 それとも何かい? あたしらじゃ不満かい?」「い、いや……その」「人間と人間の……増して、男女の出会いってのはね、それだけで一つの『奇跡』なのさ。 そして今の今まで、あんたはそんな奇跡を、知らないとはいえ大量に無駄遣いしてきたんだよ! ……きっと、魔法少女の女神様も、限界だと思ったんじゃないの? 『こんな馬鹿の面倒、見切れるか』ってさ」「……………」 言葉が、無い。「あのさ、人生なんてドコに行くにしろ闘いの連続で、逃げ場なんてありはしない。 ……そりゃ、戦略的撤退を否定はしないけどさ。それは『闘い続けるために逃げる』んであって、玉砕よっか辛い道さ。 あんたが昔、自分自身で言ってた言葉じゃないか?」「……」「あたしはさ、不満があって、この見滝原を出る決意をしたんじゃない。 何かを守るために闘う事の大切さを、あんたや巴さんに教えて貰って……そして、二年後、みんなが生きていりゃあ、もうこの街は大丈夫だ、って思うから『旅に出る』なんて言ったんだ。 アンタの故郷が東京なように! あたしにとって見滝原が故郷なんだよ! 帰って来る港なんだよ! 『帰る場所があるからこそ、人間は旅に出れる』んだ。 杏子やゆまちゃんやひみかちゃん見てれば、分かるだろ!? ……『帰る所が無い人間』ってのは……本当に悲惨なんだよ。 だから、あの教会っつー『帰れる場所』を作ってくれたあんたに。あたしは……いや、あたしだけじゃない。杏子や、ゆまちゃんや、ひみかちゃんたちも、本当に感謝してんだ。 そんでね……あたしゃ馬鹿だからさ。 地図を眺めて心を躍らせるよっか、現地に飛んで、生で人と接して体験して……ついでに、その土地のお酒でも飲めりゃ最高だと思ってね。 ……そして、あたしゃね……いや、あたしだけじゃなく、巴さんも。 アンタっつー『正義の美酒』を、もっと飲んでみたい、味わってみたいと思ってるのさ」 その言葉に、俺は……「俺は……正義の味方なんかじゃない。ただ、『俺がムカつく悪の敵』ってだけの話さ」「それを、勘違いしてるよ。『正義』なんて万人それぞれ誰もが抱えてる。 ……そしてあんたは、誰より『悪』って概念を知って対処出来ている。 分かるかい? あたしは、『誰よりも悪を知り尽くした、アンタの正義に酔ってみたい』。それだけの話なのさ」「……」「会った時に言っただろ! あたしにとっちゃ『酒も、正義も、一緒のモンだ』って!! あんたは! あたしにとって! 巴さんにとって! サイコーに酔わせてくれる『酒』であり『男』なんだ! そんな男が……情けない事、言わねぇでくれよ……」 うつむいて、涙を流すチカに、俺は……「分かったよ。でも……今はだめだ。 二人には本当に申し訳ないし、悪いと思ってるが、まだ結論は出せない。 沙紀の事が片付くまで、俺は見滝原を離れる事は、絶対に出来ないしな。 巴さんを選ぶにしても、チカを選ぶにしても……まず、先に沙紀の奴が本当に魔法少女として一人でやっていけるのかどうか。 それを確信出来なければ……俺は、この場所を離れるなんて、出来るワケが無いのさ」『颯太……』「あいつは、未熟もいい所だ。俺からすれば、年齢的に近いゆまちゃんのほーが、よっぽどシッカリしているさ」「ああ、あの子……沙紀ちゃんと仲が良いんだか悪いんだか、分かんない関係だよね。ちゃっかり者同士の同族嫌悪というかシンパシーというか……多分、嫉妬に近いんじゃないかな? っていうか、『チカさん取っちゃやだー』とか泣かれたしなぁ……あれで結構ワガママだから困っちゃうよ。 ……杏子が居なかったら、どうなってた事やら……」「ああ、お前……ああいうタイプ、叱るの苦手だよな。沙紀なんかお前、めちゃくちゃ甘やかしてただろ?」 どーも、沙紀の奴が酒飲んで帰って来たのは、せがんだ沙紀の奴が原因らしい……というのは、つい最近、知った話。 勿論、沙紀の脳天に拳骨を追加しましたとも。「あ、ま、まあ……ね……っていうかさ。 同じ後方支援型でも、万能型の沙紀ちゃんと、回復特化型のゆまちゃんじゃ、専門分野が全然違うってのにさ。 ……ヒーリングの能力じゃ圧倒的にゆまちゃんが上で、それを超えられない沙紀ちゃんと、回復以外に多彩な芸持ってる沙紀ちゃんに嫉妬してるゆまちゃん。 今じゃ、どっちも欠かせない、後方支援担当なのに、ね」「……何が言いたい?」「いや、だからさ。 『あんたと専門分野が全然違うんだ』って事さ……沙紀ちゃんは沙紀ちゃんで、少しは認めてあげたら、って事。 ゆまちゃんの回復魔法に、あんたもひとかたならぬ世話になったろ?」「む……」 それは……否定できない。 だが……「まあ、な。それは認める。 だが、一つだけ、俺が腹が立つのは、だ……あいつはもう、前線に立とうと思えば立てる能力を持ってるんだ。 分かるか? 『いざって時に闘えばいい』みたいなグータラこいて、自分にできる事を放棄してたら、その『いざって時に本当に闘えなくなっちまう』。 それは……御剣家にとっちゃ、恥もいいトコでな」「あの子は、何というか……能力特化型だから、身体強化に関しちゃ、並み以下だよ。 回復能力はあっても、ゆまちゃん以上に前に出れるタマじゃない」「だったら、飛び道具使えばいいだろうが? 暁美ほむらの弓でも、巴さんのマスケットでも、何でも! いいか、『やらない』と『出来ない』は違う! ゆまちゃんだって、あのピコハンで魔獣を殴ったりしたろ? なのにあいつはオタオタと、誰かの後ろで回復だの支援だの『しか』やって来ない! ……いい加減、ちょっとお灸を据えてやらんとイカンと、常々思っててな」『……………』「後方支援の重要性は理解している。ひみかや、八千代、ゆま。それに沙紀。 彼女たちが居なければ、前線型の俺やチカ、杏子の奴が危なかった事だって、何度もあった。 だがな……巴さんや暁美ほむらみたいな、長距離攻撃型なら、いざ知らず。支援型の魔法少女たち専門に狙う魔獣とかが現れたら、どうする?」『っ……』「その時、奴らのポジションに居て、かつ、魔獣に対処できる現実的な攻撃能力を持ってる魔法少女っつーと……沙紀しか居ないんだよ。 いいか? もう一度言うぞ。『出来ない』と『やらない』は違う! 増してあいつは……俺を超えてそれを見せてやるって、啖呵切って出て行ったんだ。 なら、やってもらうだけさ……あいつを。『御剣沙紀を、俺に見せつけてみろ』って……」 その言葉に……沈黙が落ちる。 ……やがて。「……分かりました、颯太さん。 ただし。 颯太さんと沙紀ちゃんが決闘するにしても、私とチカさんは、沙紀ちゃんのセコンドに回らせて貰います」 今まで、沈黙を保っていた巴さんが、決然と言い切った。「なっ! おい……」「それだけね、あたしも、巴さんも……抱え込むのが限界なんだよ。『あんたへの恋心』って奴が……さ。 愛ってのは真心で、恋ってのは下心さ。そして人間は、下心無しに生きて行けるほど、綺麗なモンじゃないんだよ。 だからさ……眠れない夜を過ごす、どっちかの女の恋心に、アンタは早くトドメを刺さないといけないのさ。 それがモテる男の義務ってモンだよ、颯太」 そう言って。 二人は、御剣家を出て行った。「だから……モテた憶え、無いんだけどね……俺」 一週間後。 御剣家に、キュゥべえが手紙を持ってきた。『果たし状 今晩、12時。 見滝原郊外の廃ボウリング場、ウロブチボウルにて、待つ。 ――御剣沙紀 追伸:逃げるなよ、ヘタレ馬鹿兄貴。巴さんやチカさんよりも、エロ本抱いて溺死しろ』 あまつさえ、なんかみょーにデフォルメされた、ボコボコにされる俺を踏みつけてる沙紀のイラストまで書いてあった。 ……ピキピキピキピキピキ……「上っ等だ、あの馬鹿!! お尻百叩きだけじゃ済まさん!! どこぞの超人直伝の、48の殺人技+ワンと52の関節技で、徹底的に締め上げてやるーっ!!」 自分でも額にカンシャクスジが浮かんでる事を、自覚出来る程に。 俺は拳骨握りしめて、我が家のリビングでブチギレて絶叫した。……それが沙紀のトラップで挑発だと知りもせずに。