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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 終幕:「御剣家の乱 その6」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/21 09:25
「……暁美ほむらか」

 夕暮れ時の、河川敷の土手に腰かけながら。
 俺は、背後に現れた人物に、声をかけた。

「沙紀を鍛え上げたの、お前らなんだってな?
 あと、時間停止とか、鹿目まどかの力とか、教えたのも……」
「ええ、そうよ」
「そっか……」

 後々になって話を聞くと。

 暁美ほむらに、能力を教わりながら、色々と銃器の扱い方を、付け焼刃ながら教わりつつ。
 チカや巴さんは、一緒になって事情説明等を魔法少女たちにして、一緒になって頭を下げて舞台を色々と整えてもらい。
 あまつさえ、佐倉杏子には、スピードタイプの俺を仮想敵にした、模擬戦闘(アグレッサー)の訓練まで、積ませてもらったらしい。

 俺を倒すため『だけ』に、どんだけの数の魔法少女巻き込んだんだよ、沙紀の馬鹿。
 ……あまつさえ、魔法少女の女神様まで、引っ張り出しやがって。

「お陰で、全世界に、生き恥さらす事になっちまった……どーしてくれるんだ、コンチクショウめ」

 控室のやり取りまで、観客に生中継だったのは……まあ、まだ許せるのだが。

 あの後……物凄い閃光と共に、ウロブチボウルは半壊。
 沙紀のぶっ放した、極太レーザーのような光の矢が触れた部分は、文字通りコルクを抜いたように、丸く綺麗に『消滅』してしまったのだ。

 そう。
 何故か生身の俺自身『ダケ』を、残して。
 着てた服とか、兗州虎徹とか、ぜーんぶ綺麗さっぱり消滅させて。

 ちなみに、佐倉杏子と巴さんとチカ、それとキュゥべえ全員で、射線上に居る魔法少女たち全員を避難させたらしく、観客に被害は皆無だったそうな。
 ……まあ、溜めが長くて隙のデカい技だったからな。フツーに闘ってれば、そりゃ俺みたいなスピードタイプには、当たらんわ。

 ま、それは兎も角。

 沙紀に起こされて意識を取り戻して、何とか立ち上がり……これが、キュゥべえ通じて、全世界生中継だと思いだした時には。
 俺の生まれたままの姿が、キュゥべえ通じて『ナニの毛まで』既に全世界の魔法少女に、大公開されてしまった後だった。

 その後の騒ぎについては……『チョットいいとこ見てみたい』なんて騒ぎ始めたチカの馬鹿をぶん殴り、辛うじて景品コーナーに残ってたガラクタ山から、ボロボロのTシャツその他を引っ張り出して、何とか隠す所を隠し。

 ……ああああああ、もう、思い出したくも無い。マジで、生き恥だ……

「別に。
 『色々な意味で、借りを返したかった』……タダ、それだけよ。
 ……いい気味ね。御剣颯太」
「何だいそりゃあ?
 俺、お前に何か、酷い事とか悪い事とか、したか?」
「……さあ?」

 とんと心当たりが無いが。
 ま、いいさ……なんか、怒る気力も失せた。

「『おお神よ、彼を、救いたまえ』……か」
「え?」
「いや、何。最強(チャンピオン)じゃ無くなった『タダの男』は、その後、どんな人生歩んだんだろぉな? って。
 何と無く、そんな歌を思い出してな」

 遠い目をしながら、俺は溜息をついた。

「ちょっと想像もしてなかったっつーか……うん。やっぱ……色々とシテやられたよ。
 みんな揃って、よってたかって。
 あまつさえ魔法少女の女神様まで『我が家の喧嘩』に介入してくるなんて、滅茶苦茶もいい所だ。
 全く……」
「本人自覚ゼロの神様を、殺さず叩きのめすんですもの。そりゃ、魔法少女が総がかりになるに、決まってるじゃない」
「『神様』ねぇ……俺は、ホントに『家族を守れれば、それでいい』としか考えてなかった、タダの男なハズだったのになぁ」

 まあ、負けは負けである。
 誰も死ななかった分だけ、まだマシだしな。

「三度目の……完全敗北、か」
「え?」

「『本当に心が折れる瞬間』を、男にとって真に『敗北』と言うのなら。
 俺はもう、三度も負けているんだな、って。

 父さんと母さんの時。
 冴子姉さんの時。
 そして……今回。

 その度に、俺は『誰かに立たせて貰っていたんだ』って……何と無く、そんな気がするよ。
 ははは、ぜーんぜん『最強』なんかじゃネェし」

「そうね。
 そして……あなたは常に、『最速で誰かの前に立って』、剣を振るい、その背中を見せ続けてきた。
 だけど、あなたは、一度も、後ろを振り向く事が無かった……いえ、『振り向けなかった』のね」

「まあ、怖かったからな……今にして思えば、だけどさ。
 だから、ずっとずっと前だけ見て、背負っちまったモンのために、必死に突っ走って生きてきたからな……あの時から、この年齢(とし)になるまで、ずっと……ヨ。
 だから……その。何なんだろうな、この気持ちは。
 ホッとしてんだか、寂しいんだか、満足してんだか、物足りないんだか……わけがわかんないよ」

 そう、俺は、沙紀のただの代打。ピンチヒッター。
 その、ハズだった。

 だが……改めて、思いなおす。

 冴子姉さんが、魔法少女をやると言った時。
 俺は何故、魔法少年に志願した?

 そう、『家族を守るために』……だ。

 そして、思いだす。あの遊園地で『何の玩具をねだったか』を。
 ……ああ、『沙紀の馬鹿が、入場の時に、コスプレしてブン回してた、オモチャの夫婦剣』じゃねぇか。
 アレ、どこにやっちまったか知らなかったけど、沙紀が隠し持ってやがったのか。

 そーいえば、ヒーローごっことかして、良く沙紀や姉さんと遊んだもんなぁ。

「……なあ、そのさ。
 俺、今まで代打のつもりだったけどさ。
 レギュラー枠って……まだ開いてると思うか?」

「え?」

「いや、さ。
 沙紀が一丁前になったら、とっとと引退しよっかなー、とか前は思ってたんだけど。

 何かさ、こう……昔、ワルやってたチカじゃねぇけどさ。今度こそ『正義の味方として』、俺個人の意思で、魔法少年として、魔法少女と共に立ってみようかな、って。

 今更……色々と、こー……ガラじゃねぇのは分かってるんだけどさ。
 沙紀の奴は、それを、必死になって思い出させてくれようとしてたんじゃねぇかな、って。何と無く……そう思えて来ちまってさ」

「そうね。
 悪くは……無いんじゃないかしら?」

 と……

「え?」

 土手の下。
 三歳か四歳か、幼い子供が、独り遊びで地面に絵を書いて遊んでいた。

 それはいい。だが……

「まろか♪ まろか♪」
「っ……」

 絶句。
 何故、この子が……?

 疑問に思っていると、暁美ほむらがスタスタとその子に近づいて、何かをしゃべっている。
 そして……

「こらっ!! タツヤ。女の人の髪の毛を引っ張っちゃダメじゃないか」
「すみません、大丈夫でしたか?」

 その男の子の両親と思しき夫婦が現れ……って。

「!!!
 あっ……あなたは!!」

 その女の人の姿に……俺は立ち上がった。

「お久しぶりです!
 あの時は……ありがとうございました!!」

「えっ、あの……どちら、様で?」

「あー、四年前っつーか……もう四年経っちゃってるから、憶えて無い、です、かね……すいません。
 目つきも変わってるし、声変わりも体格も、変わっちゃってるから分かんないかもしれませんが……その、路地裏で、路上強盗しようとして、出来なくていじけてたクソガキ。
 ……憶えて、いらっしゃいませんか?」

「あ……ああ! あの時の……少年!」



「行くよぉー!」
「よぉしっ、来いっ!!」

 軽く、手加減しながら相撲で、その子と遊んでやりながら。

「うにゃあああああ」
「そうそう、腰を入れて、足を踏ん張って。すり足で押すんだ」

 そして、適当な所で、投げられてやる。

「だー♪」
「おー、強いなあ、坊主」
「もーいっかい」
「よし、来い!」

 そんな感じで、俺だけ一方的に泥まみれにされながら遊んでいると。

「御剣君、その、服とか……」

「え? ああ、お気になさらず。
 こんなもんハタけば落ちますし、子供と……まして、男の子と外で遊べば、服が泥まみれになるのは当たり前です。
 気にしないでください」

「いや、洗濯とか、大変じゃないかな、って……」

「あー……まあ、洗い物は、全部俺がしてますし。
 大丈夫ですよ。
 うち、両親居なくて、家事炊事洗濯、全部、俺がやってますから……そういえば、見事なガーデニングのお庭でしたね?」

「え?」

 今度は、俺を鉄棒代わりによじ登りらせながら、パパさんと会話する。

「『主夫の友』に投稿されていたでしょ、お庭のお写真?
 あれ見て、自分なりにちょっと刺激を受けて庭イジリに目覚めましてね……完全に『俺流』ですけど」

「ああ、あれか。
 詢子が写真とって、勝手に投稿しちゃったんだよなぁ……僕としては、ちょっと照れくさいんだけど」

「いえ、見事ですよ。
 友達に俺の作った庭見せたら、『質実剛健過ぎる』って言われちゃいましてね。
 あまつさえ、妹が、イタズラで庭の鯉を捕まえて、キッチンで勝手に裁いちゃって。鯉ってニガリ玉があるから、さばくの難しいのに……案の定、大失敗しやがりまして」

「妹さんが、居るのかい?」

「ええまあ……外面に似合わず、腕白盛りというか、反抗期というか、無茶やらかすというか……毎度毎度、生意気通り越した馬鹿を繰り返すので、もう、兄妹喧嘩が絶えないんですよ。
 大体は、俺の勝ちで終わるんですけど……ついこの間、もう、コテンパンに負けてしまいまして」

「負けた? 君が……妹にかい?」

「ええ、完敗です。
 真っ向勝負で、グウの音も無く……何というかこう『踏み越えられたな』っていうような事が、ありましてね。
 俺としては、嬉しい反面、寂しいというか……『どうしようかな』って感じ、ですかね。
 おっと」

 ずり落ちそうになるたつや君を支えながら。俺は、彼が髪の毛やら顔やらを弄るに任せる。

「そっか……君にとっては、『妹さん』というより、『娘』で『息子』だったのかな?」
「……かも、しれません。
 俺としてはその……両親が死んで以降、『親代わりだ』って意識で沙紀……ああ、妹と接して来てたんで。
 考えてもみれば『兄妹の会話』というより、『親子の会話』って感じになっちゃってたかもなぁ」

 と。

「御剣君。それは多分……とても幸せな事だよ」

「え?」

「多分……妹さんは、君に『子供として』じゃなくて、自分を『並んで立つ存在だ』と見て欲しかったんじゃないかな?
 だから、反抗を繰り返したんじゃないかな?」

「かも……しれません。
 でもね、やっぱり……俺、親代わりだからって意識があって」

「うん、それは御剣君が正しい。
 だからこそ、僕は君が羨ましいよ」

「え?」

「少なくとも、その妹さんにとっては、君は絶対に超えなきゃいけない『壁』だったんだろうね。
 そして、その『壁』を、その妹さんは真っ向から飛んで、超えてみせたんじゃないか?
 だったら……それは。『親で在ろう』とする君の願いは、『叶った』って事にならないか?」

「っ……そう、ですね……そうかも、しれません」

 と、タツヤ君を、俺から引き剥がして肩車しながら。パパさんは微笑む。

「タツヤが大きくなって……そんな風に自分が出来て、『反抗して来るのは』何時になるのかな?
 その時、僕は……立派に、たつやが超えるべき『壁』になれるのか。少し……自信が無いな。
 詢子のほうが、そういう意味じゃよっぽどシッカリしてるからなぁ」

「ああ、奥さん……凄いですよね。
 こう、優しいんだけど、カッコイイっていうか。
 本当に強い女の人なんだなー、って。俺、あの人に凄く励まされましたし」

 と……ポケットのケータイから、着メロの音が鳴る。

「……あ、すいません、失礼します。
 もしもし?」
『もしもし、颯太かい、助けてくれ! 杏子が、杏子が!!』
「どうした!?」

 切迫した声のチカに、俺は何事かと思いきや……

『『食い物を粗末にするわけにはいかない』っつって……『沙紀ちゃんの手料理』食べちゃったんだよ!!』
「なんだとぉっ!! あれは料理じゃなくて生物(ナマモノ)兵器だって、知ってんだろうが!」
『い、いや、その……色々あって』
「吐かせろ! トイレで吐かせろ! とにかく吐かせておけ! 今すぐ俺も、家に帰る!!」

 ぶつっ、とケータイを切って。

「すみません。
 妹の奴が、またバカをやらかしたみたいで、とっちめてやらんと。……ほんと、俺を超えたと思ったら、何も変わってネェでやがる!!
 お話、ありがとうございました、失礼します!」

 そう言って、俺は駆け出そうとし……

「あ、そうだ。これ……奥さんにお渡しください。四年前、借りたお金です」

 そう言って、財布から二万円を取りだして握らせる。

「み、御剣君?」
「本当に、ありがとうございました!! 御恩は忘れません、失礼します!」

 そう言って、その場からダッシュで駆け出すと、なんか洵子さんと穏やかな会話してる暁美ほむらを尻目に……とりあえず、会釈だけ頭を下げて、俺は止めてあったバイクに飛び乗り、我が家へと全力ダッシュで走らせた。




「親父が……親父とオフクロと妹が……なんか川の向こうで」

 ガクガクと震えながら、トイレで盛大にゲロ吐かせた末に、ソファーでグッタリしながらうわ言を述べる佐倉杏子を、チカと巴さんが介抱してやりながら。

 俺はビクビクと怯えてる沙紀を、問い詰める。

「で……今度は何をやらかしたのかね?」
「え、えっと……今度こそ、動画掲示板の料理タグを見て『間違いない』と思って……」
「思って!? 何だ?」
「『グレース一番搾り』をベースに、『ハイポーション』っていう馬の被り物をした人の『料理』を参考にしつつ……」
「チョエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 鬼のような蹴り技連打で空中に蹴り上げて浮かせると、正に飛天の如くそれを追って跳躍し、切れ味鋭いサマーソルトキックを、回転ノコギリの如く九連発で叩きこむ、『御剣家式、九頭龍閃』を、沙紀にぶち込んで沈黙させる。

「……相変わらず、教育方針に容赦が無いね、颯太」
「うん、とりあえず、魔法少女としては兎も角。
 こいつには、本格的に花嫁修業させん事には、色んな意味で安心が出来ん事は、よーっく分かった!」

 だが……

 俗に。
 メシマズ嫁は三種類に分類されると言う。

 不器用な奴。
 味音痴な(味見しない)奴。
 いーかげんな奴。

 この三つだ。

 だが、沙紀は……

(『全部』だから、手に負えネェんだよなぁ……)

 仮に、俺が『ザ・ワン』で神様だとしても。
 最早、ここまでメシマズ女としてイッちってる沙紀に、料理を教え込むなど……最早、不可能である。

「……今度、暁美ほむらに、鹿目まどかって料理得意だったかどーか、聞いてみるか」

 最早、もう一人の神様に、おすがりするしかない。……俺には……無理だっ!!

 某、掲示板で『マズニチュード(maznitude)(単位は[Mz])』 とか言って、見た目、香り、味を指標とするマズメシの尺度があるそうだが。
 沙紀の料理は間違いなく、問答無用のトップランク『15Mz 一口で神仙を殺す料理』の域に達していやがるのだ。

 その証拠に、魔法少女たる佐倉杏子すら、一口であの有様。
 マジで死に至るほどでは無いが、ソウルジェムが濁り始めてすらいる。

 ……おお、神よ、魔法少女の女神よ。
 世界に夢と希望を振り撒くハズの魔法少女が、何故、食卓というささやかな日々の希望の舞台に、マズメシという命への冒涜としか言えぬ『絶望』と『呪い』を撒き散らすのでございましょーか!?
 こんなの絶対おかしいよ、女神様! どーしてそのへんまで、フォローして下さらなかったんですか!?

 と……

「まあ、颯太の心配も分かるよ。食いしん坊の杏子ですら、こんな有様だもんなぁ」
「ええ。心得てますからね、颯太さん」

 にっこりとほほ笑む、巴さんとチカ。
 ……なんだ? 何か、嫌な予感がすんぞ?

「まあ、あたしは二年っつー期限つきだけど。教え込む時間、そんだけ時間があれば十分だろ?」
「そうですね。だから、『どちらを選ぶにしても』問題はありませんよ♪」
「えっ……?」

 絶句。

「沙紀ちゃんは、もう『一人前の魔法少女』、だろ?」
「あとは、颯太さんご自身の問題の解決、ですよね?」

 二人とも、さらっとその場で変身。

 リボンをさらっ、と構える巴さん。
 鎖をジャラッ、と構えるチカ。

 どっちにせよ、トッ掴まったが最後。
 何かこー……色んなモノが『最後』な気がしてならないのは、気のせいでございましょーか!?

『で、お返事は?』

 何でしょーか? 何かこー……無駄にダクダクと脂汗が止まらないのは?
 正味、魔法少女の女神の力を借りてる状態の、沙紀よりもオッカナイモンを目の前にしてる気がしてなりません!!

「ふぅ……」

 とりあえず、遠い目をして、正直に一言。

「即答不能だし怖いから、とりあえず今は戦略的撤退って奴で、逃げていい?」

 その言葉に、にっこりと二人は怖い笑顔で微笑み……問答無用で、黄色いリボンと黒い鎖が乱舞する隙間を掻い潜って、俺は『最速』で我が家から逃亡したのだった。

 ……どっちもある意味、『文化の神髄』なんですけど!? 助けて、クーガーの兄貴。


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