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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/12 14:53
「お……」

 全てが石化した、世界の中。

 まず、俺の絶叫で、それが解かれた。

「お兄ちゃんは許しませんよーっ!!
 っていうか、何考えてんだお前ーっ!!」

 絶叫する俺に、沙紀がベーッと舌を出して、一言。

「だったら、お兄ちゃん!
 今この場で、マミお姉ちゃんとチカさんに、告白の答え出しなよ!!
 ……そんな度胸も無いくせに、私の告白に文句言う筋合い、お兄ちゃんに、ひとっ欠片も無いもーん!!」

 ぐばっ!!
 そ、それはぁぁぁぁぁ……

「いいいい、いかんいかんいかんいかーん!! 誰が何と言おうが、沙紀、お兄ちゃんは認めませんよぉぉぉぉぉおっ!!」
「認めてくれなくて結構だもーん!! 上条さんがOKしてくれたら、私、上条さん家に転がり込んで、上条沙紀になってやる!」
「うぎゃあああああ、何考えてるんだこのオバカーっ!!」

 更にもってきて……

「……ずるい……ずるいですわ、沙紀さん……ワタクシだって……私だって、上条さんをお慕い申し上げておりましたのに!!」
「ひっ、仁美っ!!」
「上条さん! こんな泥棒猫の言う事なんかじゃなくて、どうか私を見てください!!」
「ちょっ、おまっ!!」

 ナニゴトですか、この修羅場!?

「へーんだっ! 泥棒猫だろうが何だろうが、愛なんて早い者勝ちだもーん!
 それに、私、上条さんの腕、治せるもーんだ!」
「適当な事を、おっしゃらないでください!」
「適当じゃないもん、嘘じゃ無いもーん! 私! 魔法少女なんだから!」

 そう言って、その場で変身してのける沙紀。

「なっ、なっ……!?」
「その証拠見せてやる!
 ……上条さん、左腕。肘は動くけど、完全に動くわけじゃないですよね?」
「あ、ああ。
 肘から先の神経が死んでるから、全く影響が無いわけじゃ……でも、リハビリ次第で、何とか……」
「見た感じ、肩まで影響が出てます。
 だから……今、『証拠として、そこまでは』、治してみせます!」

 そう言って、沙紀の奴は、上条恭介の肩と肘に治癒魔法を発動させる。

「っ……これは……」
「どうです? 手首から先は動かなくても、肘も、肩も。格段に軽く動くでしょ?」
「だあああああっ、沙紀ぃっ! お前は何考えていやがるーっ!!
 お前、今、魔法少女どころか『魔法悪女』になってんぞ、おい!? それじゃあ、御剣沙紀じゃなくて、『御剣詐欺』じゃねぇか!!」
「知ったこっちゃ無いよ!
 例え『魔法悪女』と言われても『御剣詐欺』と言われても泥棒猫と言われても! 私が一番上条さんを好きなんだからぁっ!!」

 そんでもって……

「ちょ……それなら、キュゥべえ! 今すぐ私が魔法少女の契約して、恭介の腕を……」
「ちょっ!! やめなさい、早まらないで、美樹さやか!! それは悲劇の始まりだって、何度も言ってるでしょ!!
 ……御剣颯太! これは一体どういう事!?」
「知るかぁっ! むしろ俺が知りテェよ!!」

 暁美ほむらに詰め寄られ、俺は戸惑う。

「何とかしなさい!
 これじゃ美樹さやかと上条恭介をくっつける計画が、滅茶苦茶じゃないの!
 まどかの願いを踏みにじるつもり!? 御剣颯太!」
「だから、そんなの含めて、俺が知るかぁぁぁぁぁっ!!」

 と……

「颯太。どーしても沙紀ちゃんを止めたいなら、この場でアンタに出来る事は、一つしか無いよ」
「そうですね。それしかありませんね」
「ゑ? ……チカ? 巴さん?」

 二人揃って。
 なんか怖い顔して詰め寄って来てるんですけど!?

「今すぐアンタが、この場で結論を出しゃあいい!」
「その通りです!」
「ちょっ……ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 答えは週末まで待ってくれるんじゃ無かったっけ!?」

 その言葉に、二人揃ってものすげー怖い顔で。

「私は、随分待ったつもりですけど!?」
「私は、結論が早い分には、一向に構わない!!」

 そんでもって、暁美ほむらが、

「御剣颯太! 今すぐ結論を出して、御剣沙紀を……妹を止めなさい!」
「んぎゃああああああっ!! 煽るなーっ!! 無茶言うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 何と言うか。
 沙紀という爆弾が一発爆発した瞬間、変な形で連鎖爆発して、こっちまで火の粉が飛んできたぁぁぁぁぁぁっ!



「恭介! 私も……私も、あんたの事が好きだよ!
 仁美よりも、沙紀ちゃんよりも! ずっとずっと昔から好きだったんだ!」
「さっ、さやか!?」
「上条さん! 私! 上条さんのバイオリン大好きです!」
「……え、えっとぉ……」
「上条さん! どうか……どうか私を見てください!」
「し、志筑……さん!?」



「颯太さん……私、ずっと待ってました。ずっと、ずっと……」
「あ、あの、巴さん?」
「颯太! ……あの時の告白……忘れて無いよね?」
「ち、チカ……」



 追いつめられ。
 ふと、上条恭介と目が会い……お互いにお互いが救いを求めあうように、何かこう、以心伝心といいますか。

「なあ、上条さん。
 とりあえず……息が詰まるまで、やるぞ」
「み、御剣……さん」

 戸惑う上条恭介のえり首を、わしっ、と掴み……

「逃げるんだよぉぉぉぉぉ、スモー○ーっ!! どけ、野次馬共ーっ!!」
『あーっ!! 逃げたーっ!!』

 『追えーっ!』だの『逃がすなーっ!』だのの女性陣の絶叫と……ついでにキュゥべえの『わけが分からないよ』などという軽口を尻目に。

 病室の窓から、跳躍して、俺と上条恭介は、その場から逃亡した。



「とっ、とりあえず……こ、ここまで来れば、ひと安心だろぉ」

 二人ともノーヘル&免許取得一年未満の二人乗り&幾つかの道交法無視という、免停確定の交通違反をカマしながら、何とか警察にトッ掴まらずに。
 俺は上条恭介と、郊外の山奥。
 ウロブチボウルの廃墟に、逃げ込んでいた。

「……と、とりあえず、時間は稼げましたね」
「ああ、だが、いずれトッ掴まるのは確定だ。何時までも逃げ切れるもんじゃない」

 何しろ、向こうには沙紀がいる。
 それに、こんなこじれまくった問題、放っておいていい話ではない。
 とはいえど……

『……どーしよぉ……』

 と、二人揃って溜息をつく。
 というか……

「その、御剣さん……あの時もそうだったんですが……おもいっきり飛び降りましたよね?」
「ああ」
「あの時は、特に疑問にも思わなかったというか、思えなかったというか。
 とりあえず、細かい事は考えないようにしていたんですけど……その、一体、御剣さんは……」

 その言葉に、俺は深々と溜息をつく。

「そのー、何だ。
 ……俺や沙紀。あと、あの場に居た何人かが『魔法使い』の類だと言ったら、信じるか?」
「信じざるを得ないでしょう? 何しろ……ほら」

 左腕の肘と肩を、軽く回してみせる、上条恭介。

「……動かした時に、引きつれたり、麻痺する感覚が、全く無いんです。
 お医者様に言わせると、『バイオリンを演奏する上で、一生ついて回るモノだ』って言われてたのに」
「まあな。
 ……タダ、ひとこと言わせてもらうならな。
 そーいった『奇跡』や『魔法』も、万能でもタダでもねぇ。文字どおり、トンデモネェ義務を、負わなきゃイケネェんだ」
「義務?」
「影から人を襲う、バケモン退治。
 『魔獣』って言ってるけどな。そんで、そいつらとの闘いの中、命を落とす連中も、少なくネェんだ。
 ……俺は、そーいった風に散っていった仲間を、姉さん含めて、何人も見ているんだよ」
「それで……だから御剣さんは、片腕でも稽古に励んでたんですね」

 入院中。
 たまたま、屋上で剣を振るっていた現場を見られた事を思い出す。

 ……そういえば、調子に乗って、五百円玉を薄切りスライスにして、こいつに手渡してやったっけ。

「まあな……。
 で、美樹さやか、居ただろ? あいつにも『素質』があるんだ」
「さやかに? 素質が?」
「そう、俺らみたいな『魔法使い』の素質。
 そういう奴はな、何でも一個だけ、悪魔みたいな宇宙人と契約して願いをかなえてもらえる代わりに、こんな力を手に入れて、魔獣と闘う義務を負う羽目になるんだ……勿論、契約して願いを叶えなければ、そんな風になる必要は無いがな。
 ……もっとも、俺はちょっと……いや、かなりの特殊ケースなんだがな」

 遠い目をして、つぶやく。

「特殊? どんな風に、ですか?」
「いや、それがな……俺は何も願いを叶えて無いのに、生まれつき闘う力『だけ』はあったんだ。
 だけど、姉さんと妹に、その素質があってな。
 で、二人とも、家の問題や命の問題を解決するために、『魔法使いにならざるを得なかった』。だから俺は、姉さんや妹を……家族を護るために、彼女たちと一緒に闘ってきたんだ」

「……つまり……」

「そう。俺個人にはな。
 何か特別に叶えたい願いなんて、元々特に無かったし、闘う理由も義務も無いんだ。
 ついでに言うなら、そうなれるのは、本来女性だけでな。
 だから、基本、全員『魔法少女』って呼びならわされてる」

 その言葉に、上条さんが納得したようだ。

「ええっと……もしかして……ならば、御剣さんの場合は、『魔法少年』って事になりません?」
「ご名答。『魔法少年』御剣颯太……かっこわりぃだろ?」

 苦い笑顔を浮かべる。

「いえ……その、なんか、正義のヒーローみたいじゃないですか」
「そんなイイもんじゃねぇさ。
 五人家族のうち、一人しか……しかも年下の沙紀しか護れなかった、しがない男だよ。

 ……それより、どーすんだ、お前? こーいうのって、返事は可能な限り、早い方がいいぞ?」

 その言葉に、上条恭介が縋るように問いかけてきた。

「……御剣さんは、どうするんですか?」
「俺は……べ、別に、どうだっていいだろうが?」
「いえ、参考に聞きたくって」
「参考に、って……こっちは二人、お前は三人だろうが?
 ……むしろ俺だって、お前がどーするのか、参考に聞きたいくれぇだよ」

 途方に暮れる、男、二人。

『……ですよねぇ』

 なんぞと、溜息をつき。

「……正直、その……迷ってるんです。
 『どれもアリだな』と思って……」
「あ?」

 上条恭介の言葉に、俺は耳を傾ける。

「分かってるんです。
 今の僕の左腕と、変形バイオリンでは、目指せる所なんてタカが知れている。
 本来なら、とっくに夢をあきらめるべきで、今のままでは、結局、誰かの同情だけのイロモノで終わっちゃう。
 だからこそ……正直、腕が元に戻るなら、心が揺れないと言えば、嘘になります」

「……………」

「それに、志筑さんの家は……言っては何ですが、上条家と『家と家のお付き合い』をする上で、またとない縁談になるでしょう。
 妥協と言われそうですが、入院や……まして、あんな変則のバイオリンを作るお金を出して貰ったり、家族や周りの人たちに迷惑をかけ続けている以上、父さんや母さんに『恩を返して安心させたい』という思いも、あります」

「……………」

「そして、さやかは……僕の一番身近で……ずっと一緒に居てくれた女性(ひと)です。
 僕の一番、無様なバイオリンを……子供のころから、ずっと聞いてくれた。
 さやかが居たから、僕はバイオリンっていう夢にうちこめたんだ、って……多分。ずっと一緒に居て、安心できるんじゃないかな、って。
 ……身近すぎて、最近まで、全然気付かなかったけど……その、もし、僕の思いに答えてくれるのなら、って……

 僕は……どうしたら、いいんでしょうか?」

 頭を抱える上条恭介。
 それに……俺は、溜息をつく。

「あのさ……『周りがどーだ』とかじゃなくて。
 恋人にしたいなら、『自分が惚れた、一番好きな女を選びなよ』。
 男が命っつーチップを張るにゃ、それが一番だぜ? どーせ負けたらスッちまうしか無ぇんだし、さ」

「……御剣さん?」

「打算とか、そーいったのダケじゃ、結局、『愛情』ってのは成り立たねぇよ。
 そして、あの三人に対して、『そんだけ理屈で考えられりゃあ』、おめー何だかんだと、『結論出てるも同然』じゃねぇか?
 バカくせぇ……聞いて損したぜ。おめーに足りネェのは、その『結論を信じる勇気』だけだ」

 その言葉に、むっとした上条恭介が、問いかけて来る。

「じゃあ、御剣さんの場合は、どうなんですか?
 あの二人に、突っ込まれてましたよね!?」

「俺は……おめぇ……その、よ。
 どっちも大切な人だな、っていうか……『どっちも好き』っつったら、怒るか?」

「怒りますよ。何ですか、その都合のいい、ハーレム願望は?」

「ショーガネェだろぉが! 両方とも大事で、結論なんて出せやしねぇんだから!
 好きだとか、愛してるだとか、そういった気持は、理屈じゃねぇんだよ! ……でなけりゃ、俺が家族を護るために、魔獣と喧嘩なんかするもんか。
 ……たまたま、本当に好きな人が、二人出来ちまった。そして、二人とも俺に告白してくれた。

 確かに、男として生きてりゃ、アリエネェ程の幸運さ!

 だから、どっちにも答えてやりたいけど……どっちかを選ばなきゃいけない。
 それこそ……コインを弾いて、裏か表かで決めちまったほうが、いっそ楽なくらいだ!」

 と……

「だったら、それでいいじゃないですか」
「あ?」
「どんな理由や理屈や感情を並べても決められないのなら、最後は運任せですよ」
「運任せって……お前なぁ、それ、俺が一番嫌う言葉なんだけど?
 っつーか、俺、確かに『悪運』はあるほうだとは思うけど、普段はそー『運が良い方じゃ無い』んだよ……」

 何しろ、沙紀や男友達とポーカーやって、スリーカード以上の役、作った事ネェし。
 ババ抜きや七並べ、大貧民や、麻雀みたいな、計算や『読み』が働くモノなら、なんとか五分で展開出来るが……純粋な『運だけの勝負』だと、かなり弱かったりするのだ。(ちなみに21(ブラックジャック)は、生身でカウンティングが可能なので、結構、好み)。

「だからって、他に方法なんて無いなら、それしか無いんじゃないですか?
 そうしたら、一緒に、彼女たちに返事を持って、逃げた事を謝りに行きましょうよ。
 ……『悪運はあるほう』なんでしょ?」
「なる……ほど。確かに……『運以外を塗りつぶしたのなら』、あとは運しか残らない、か」

 上条恭介の言う事にも、一理、ある。
 俺は、ポケットの財布から、五百円玉を取りだす。

「表が巴さん、裏がチカ。……何かこじれたら、お前が証人だ、いいな?」
「はい」

 そして、コイントス。
 高々とコインは宙を舞い……そして……運命の結果は、出た。




 やがて。
 ウロブチボウルの廃墟に居ると知った全員が、集まって来るのに、さほどの時間は要さなかった。

 だがもう、俺たちは、逃げも隠れもしなかった。

「みんな、ごめん。
 ちょっと、パニックになって御剣さんと逃げちゃった。
 本当に、すまない。
 それで……色々と、御剣さんと相談したり話しあったりして、結論……出せたよ」

 そう言って、上条恭介は……真っ直ぐ、美樹さやかと向き合った。

「さやか、君が好きだ。僕と……付き合って欲しい」
「っ……」
「こんな、無様で……もう、バイオリンの天才なんかじゃない。『天才の残骸』でしか無い僕だけど。
 もし、こんな僕でよければ……友達や幼馴染じゃなくて、恋人として、付き合ってくれないか? さやか」
「恭介……」

 ぼろぼろと。
 美樹さやかは涙を流して、抱きついた。

「……さやか。ごめんね……今まで、気付いてあげられなくて」
「ううん、恭介……いいの。私も……大好き」

 と。

「上条さん。
 もう一度だけ、お尋ねします。
 ……天才としての、過去の栄光に、興味は……本当に無いんですね?」
「沙紀っ!」
「黙って!」

 進み出た沙紀の言葉に、上条恭介は、首を横に振った。

「ありません。僕は……さやかを選びました。
 だから、志筑さん。沙紀ちゃん。本当にごめんなさい」

 そう言って、頭を下げる上条恭介に……

「よろしい! 合格!!」
「え?」

 そう言って、つかつかと沙紀は上条恭介に近づき……左手に、治癒魔法をかける。

「上条さん。
 これは……この『奇跡』と『魔法』は『上条さんのバイオリンの大ファン』からのプレゼントです!
 だから、絶対に……絶対に、さやかさんを離さないであげてくださいね!」

「沙紀……ちゃん?」

 そのまま……沙紀の顔から、涙が落ちる。

「だって……ずっと一緒に過ごして来た、美樹さんの気持ちを袖にして……過去の栄光に縋って私や、増して志筑さんに走ろうモノなら、もうそれは、『私の好きな上条さん』なんかじゃないもん。
 だから……だから……私は、『上条さんに思いを伝えた上で、ちゃんとふって欲しかった』。
 それだけなんです……」

「っ……君は……」

「だから、分かってたんですよ……『勝ち目なんて、全く無い』って。
 だって……だって、私を選んだりしたら……多分……上条さん、ぶん殴ってた。

 でも……気持ちが抑えられなかった。
 だから……だから、ちゃんと『私の恋を、はっきりと終わりにして欲しかった』。

 どんな理由があったって……泥棒猫が、ハッピーエンドなんか迎えちゃ……やっぱダメじゃないですか」

 そう言いながら……ボダボダと涙をこぼしていく沙紀。

 そう、か……

「沙紀。お前は……『スッて悔いのない博打』を選んだんだな?」

「うん……だって、石ころの私が、『普通の人』相手に恋をして、幸せになんて、なれるワケが無いじゃない。
 だから……」

「そんな事は無い!!
 沙紀! お前は石ころなんかじゃない! 魂の在り処に拘るような、心の狭い男なんぞ、男じゃネェよ!
 今回は……たまたま、運が悪かった。相手が悪かった。それだけだ!」

 そのまま、俺は沙紀を抱きしめてやる。

「お、兄…ちゃん?」
「言ったよな? お前は一丁前の魔法少女だ、って。『家族とみんなを守れる』魔法少女だ、って。
 沙紀! お前は、一度とはいえ、ちゃんと『そうやって生きてきた』俺を超えたんだ!
 だから……お前は、誰に恋をしたっていい。『魔法少女として誰かを愛する資格』は、俺が保障してやる!」

 そして……

「お兄……ちゃん……うわあああああああああああああああああああああああ!!」

 俺の腕の中で沙紀の頭を撫でてやりながら。
 いつまでも沙紀は、嗚咽を漏らし、泣き続けていた。



「さて、と……そんで、巴さん、チカ。すまないが……俺もさっき、答えを」

 と、俺が切り出した時だった。

「あ、あのさ……颯太。
 その……週末、だったよな、返事は?」
「チカ?」
「ご、ごめん。やっぱ、フライングは無しだよ……週末まで、答え、待つからさ」

 そう言って、チカの奴は、その場を立ち去ってしまった。



 ……なんだよ、チカの奴。コインは……裏って出たんだぜ?



 まあいいさ、週末に、結論を伝えりゃいいか。

 そう、甘く考えていた事を。俺は、一生涯、後悔する事になる。

 そう、魔法少女に……時間なんて、無かったのだから。


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