「お……」 全てが石化した、世界の中。 まず、俺の絶叫で、それが解かれた。「お兄ちゃんは許しませんよーっ!! っていうか、何考えてんだお前ーっ!!」 絶叫する俺に、沙紀がベーッと舌を出して、一言。「だったら、お兄ちゃん! 今この場で、マミお姉ちゃんとチカさんに、告白の答え出しなよ!! ……そんな度胸も無いくせに、私の告白に文句言う筋合い、お兄ちゃんに、ひとっ欠片も無いもーん!!」 ぐばっ!! そ、それはぁぁぁぁぁ……「いいいい、いかんいかんいかんいかーん!! 誰が何と言おうが、沙紀、お兄ちゃんは認めませんよぉぉぉぉぉおっ!!」「認めてくれなくて結構だもーん!! 上条さんがOKしてくれたら、私、上条さん家に転がり込んで、上条沙紀になってやる!」「うぎゃあああああ、何考えてるんだこのオバカーっ!!」 更にもってきて……「……ずるい……ずるいですわ、沙紀さん……ワタクシだって……私だって、上条さんをお慕い申し上げておりましたのに!!」「ひっ、仁美っ!!」「上条さん! こんな泥棒猫の言う事なんかじゃなくて、どうか私を見てください!!」「ちょっ、おまっ!!」 ナニゴトですか、この修羅場!?「へーんだっ! 泥棒猫だろうが何だろうが、愛なんて早い者勝ちだもーん! それに、私、上条さんの腕、治せるもーんだ!」「適当な事を、おっしゃらないでください!」「適当じゃないもん、嘘じゃ無いもーん! 私! 魔法少女なんだから!」 そう言って、その場で変身してのける沙紀。「なっ、なっ……!?」「その証拠見せてやる! ……上条さん、左腕。肘は動くけど、完全に動くわけじゃないですよね?」「あ、ああ。 肘から先の神経が死んでるから、全く影響が無いわけじゃ……でも、リハビリ次第で、何とか……」「見た感じ、肩まで影響が出てます。 だから……今、『証拠として、そこまでは』、治してみせます!」 そう言って、沙紀の奴は、上条恭介の肩と肘に治癒魔法を発動させる。「っ……これは……」「どうです? 手首から先は動かなくても、肘も、肩も。格段に軽く動くでしょ?」「だあああああっ、沙紀ぃっ! お前は何考えていやがるーっ!! お前、今、魔法少女どころか『魔法悪女』になってんぞ、おい!? それじゃあ、御剣沙紀じゃなくて、『御剣詐欺』じゃねぇか!!」「知ったこっちゃ無いよ! 例え『魔法悪女』と言われても『御剣詐欺』と言われても泥棒猫と言われても! 私が一番上条さんを好きなんだからぁっ!!」 そんでもって……「ちょ……それなら、キュゥべえ! 今すぐ私が魔法少女の契約して、恭介の腕を……」「ちょっ!! やめなさい、早まらないで、美樹さやか!! それは悲劇の始まりだって、何度も言ってるでしょ!! ……御剣颯太! これは一体どういう事!?」「知るかぁっ! むしろ俺が知りテェよ!!」 暁美ほむらに詰め寄られ、俺は戸惑う。「何とかしなさい! これじゃ美樹さやかと上条恭介をくっつける計画が、滅茶苦茶じゃないの! まどかの願いを踏みにじるつもり!? 御剣颯太!」「だから、そんなの含めて、俺が知るかぁぁぁぁぁっ!!」 と……「颯太。どーしても沙紀ちゃんを止めたいなら、この場でアンタに出来る事は、一つしか無いよ」「そうですね。それしかありませんね」「ゑ? ……チカ? 巴さん?」 二人揃って。 なんか怖い顔して詰め寄って来てるんですけど!?「今すぐアンタが、この場で結論を出しゃあいい!」「その通りです!」「ちょっ……ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 答えは週末まで待ってくれるんじゃ無かったっけ!?」 その言葉に、二人揃ってものすげー怖い顔で。「私は、随分待ったつもりですけど!?」「私は、結論が早い分には、一向に構わない!!」 そんでもって、暁美ほむらが、「御剣颯太! 今すぐ結論を出して、御剣沙紀を……妹を止めなさい!」「んぎゃああああああっ!! 煽るなーっ!! 無茶言うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 何と言うか。 沙紀という爆弾が一発爆発した瞬間、変な形で連鎖爆発して、こっちまで火の粉が飛んできたぁぁぁぁぁぁっ!「恭介! 私も……私も、あんたの事が好きだよ! 仁美よりも、沙紀ちゃんよりも! ずっとずっと昔から好きだったんだ!」「さっ、さやか!?」「上条さん! 私! 上条さんのバイオリン大好きです!」「……え、えっとぉ……」「上条さん! どうか……どうか私を見てください!」「し、志筑……さん!?」「颯太さん……私、ずっと待ってました。ずっと、ずっと……」「あ、あの、巴さん?」「颯太! ……あの時の告白……忘れて無いよね?」「ち、チカ……」 追いつめられ。 ふと、上条恭介と目が会い……お互いにお互いが救いを求めあうように、何かこう、以心伝心といいますか。「なあ、上条さん。 とりあえず……息が詰まるまで、やるぞ」「み、御剣……さん」 戸惑う上条恭介のえり首を、わしっ、と掴み……「逃げるんだよぉぉぉぉぉ、スモー○ーっ!! どけ、野次馬共ーっ!!」『あーっ!! 逃げたーっ!!』 『追えーっ!』だの『逃がすなーっ!』だのの女性陣の絶叫と……ついでにキュゥべえの『わけが分からないよ』などという軽口を尻目に。 病室の窓から、跳躍して、俺と上条恭介は、その場から逃亡した。「とっ、とりあえず……こ、ここまで来れば、ひと安心だろぉ」 二人ともノーヘル&免許取得一年未満の二人乗り&幾つかの道交法無視という、免停確定の交通違反をカマしながら、何とか警察にトッ掴まらずに。 俺は上条恭介と、郊外の山奥。 ウロブチボウルの廃墟に、逃げ込んでいた。「……と、とりあえず、時間は稼げましたね」「ああ、だが、いずれトッ掴まるのは確定だ。何時までも逃げ切れるもんじゃない」 何しろ、向こうには沙紀がいる。 それに、こんなこじれまくった問題、放っておいていい話ではない。 とはいえど……『……どーしよぉ……』 と、二人揃って溜息をつく。 というか……「その、御剣さん……あの時もそうだったんですが……おもいっきり飛び降りましたよね?」「ああ」「あの時は、特に疑問にも思わなかったというか、思えなかったというか。 とりあえず、細かい事は考えないようにしていたんですけど……その、一体、御剣さんは……」 その言葉に、俺は深々と溜息をつく。「そのー、何だ。 ……俺や沙紀。あと、あの場に居た何人かが『魔法使い』の類だと言ったら、信じるか?」「信じざるを得ないでしょう? 何しろ……ほら」 左腕の肘と肩を、軽く回してみせる、上条恭介。「……動かした時に、引きつれたり、麻痺する感覚が、全く無いんです。 お医者様に言わせると、『バイオリンを演奏する上で、一生ついて回るモノだ』って言われてたのに」「まあな。 ……タダ、ひとこと言わせてもらうならな。 そーいった『奇跡』や『魔法』も、万能でもタダでもねぇ。文字どおり、トンデモネェ義務を、負わなきゃイケネェんだ」「義務?」「影から人を襲う、バケモン退治。 『魔獣』って言ってるけどな。そんで、そいつらとの闘いの中、命を落とす連中も、少なくネェんだ。 ……俺は、そーいった風に散っていった仲間を、姉さん含めて、何人も見ているんだよ」「それで……だから御剣さんは、片腕でも稽古に励んでたんですね」 入院中。 たまたま、屋上で剣を振るっていた現場を見られた事を思い出す。 ……そういえば、調子に乗って、五百円玉を薄切りスライスにして、こいつに手渡してやったっけ。「まあな……。 で、美樹さやか、居ただろ? あいつにも『素質』があるんだ」「さやかに? 素質が?」「そう、俺らみたいな『魔法使い』の素質。 そういう奴はな、何でも一個だけ、悪魔みたいな宇宙人と契約して願いをかなえてもらえる代わりに、こんな力を手に入れて、魔獣と闘う義務を負う羽目になるんだ……勿論、契約して願いを叶えなければ、そんな風になる必要は無いがな。 ……もっとも、俺はちょっと……いや、かなりの特殊ケースなんだがな」 遠い目をして、つぶやく。「特殊? どんな風に、ですか?」「いや、それがな……俺は何も願いを叶えて無いのに、生まれつき闘う力『だけ』はあったんだ。 だけど、姉さんと妹に、その素質があってな。 で、二人とも、家の問題や命の問題を解決するために、『魔法使いにならざるを得なかった』。だから俺は、姉さんや妹を……家族を護るために、彼女たちと一緒に闘ってきたんだ」「……つまり……」「そう。俺個人にはな。 何か特別に叶えたい願いなんて、元々特に無かったし、闘う理由も義務も無いんだ。 ついでに言うなら、そうなれるのは、本来女性だけでな。 だから、基本、全員『魔法少女』って呼びならわされてる」 その言葉に、上条さんが納得したようだ。「ええっと……もしかして……ならば、御剣さんの場合は、『魔法少年』って事になりません?」「ご名答。『魔法少年』御剣颯太……かっこわりぃだろ?」 苦い笑顔を浮かべる。「いえ……その、なんか、正義のヒーローみたいじゃないですか」「そんなイイもんじゃねぇさ。 五人家族のうち、一人しか……しかも年下の沙紀しか護れなかった、しがない男だよ。 ……それより、どーすんだ、お前? こーいうのって、返事は可能な限り、早い方がいいぞ?」 その言葉に、上条恭介が縋るように問いかけてきた。「……御剣さんは、どうするんですか?」「俺は……べ、別に、どうだっていいだろうが?」「いえ、参考に聞きたくって」「参考に、って……こっちは二人、お前は三人だろうが? ……むしろ俺だって、お前がどーするのか、参考に聞きたいくれぇだよ」 途方に暮れる、男、二人。『……ですよねぇ』 なんぞと、溜息をつき。「……正直、その……迷ってるんです。 『どれもアリだな』と思って……」「あ?」 上条恭介の言葉に、俺は耳を傾ける。「分かってるんです。 今の僕の左腕と、変形バイオリンでは、目指せる所なんてタカが知れている。 本来なら、とっくに夢をあきらめるべきで、今のままでは、結局、誰かの同情だけのイロモノで終わっちゃう。 だからこそ……正直、腕が元に戻るなら、心が揺れないと言えば、嘘になります」「……………」「それに、志筑さんの家は……言っては何ですが、上条家と『家と家のお付き合い』をする上で、またとない縁談になるでしょう。 妥協と言われそうですが、入院や……まして、あんな変則のバイオリンを作るお金を出して貰ったり、家族や周りの人たちに迷惑をかけ続けている以上、父さんや母さんに『恩を返して安心させたい』という思いも、あります」「……………」「そして、さやかは……僕の一番身近で……ずっと一緒に居てくれた女性(ひと)です。 僕の一番、無様なバイオリンを……子供のころから、ずっと聞いてくれた。 さやかが居たから、僕はバイオリンっていう夢にうちこめたんだ、って……多分。ずっと一緒に居て、安心できるんじゃないかな、って。 ……身近すぎて、最近まで、全然気付かなかったけど……その、もし、僕の思いに答えてくれるのなら、って…… 僕は……どうしたら、いいんでしょうか?」 頭を抱える上条恭介。 それに……俺は、溜息をつく。「あのさ……『周りがどーだ』とかじゃなくて。 恋人にしたいなら、『自分が惚れた、一番好きな女を選びなよ』。 男が命っつーチップを張るにゃ、それが一番だぜ? どーせ負けたらスッちまうしか無ぇんだし、さ」「……御剣さん?」「打算とか、そーいったのダケじゃ、結局、『愛情』ってのは成り立たねぇよ。 そして、あの三人に対して、『そんだけ理屈で考えられりゃあ』、おめー何だかんだと、『結論出てるも同然』じゃねぇか? バカくせぇ……聞いて損したぜ。おめーに足りネェのは、その『結論を信じる勇気』だけだ」 その言葉に、むっとした上条恭介が、問いかけて来る。「じゃあ、御剣さんの場合は、どうなんですか? あの二人に、突っ込まれてましたよね!?」「俺は……おめぇ……その、よ。 どっちも大切な人だな、っていうか……『どっちも好き』っつったら、怒るか?」「怒りますよ。何ですか、その都合のいい、ハーレム願望は?」「ショーガネェだろぉが! 両方とも大事で、結論なんて出せやしねぇんだから! 好きだとか、愛してるだとか、そういった気持は、理屈じゃねぇんだよ! ……でなけりゃ、俺が家族を護るために、魔獣と喧嘩なんかするもんか。 ……たまたま、本当に好きな人が、二人出来ちまった。そして、二人とも俺に告白してくれた。 確かに、男として生きてりゃ、アリエネェ程の幸運さ! だから、どっちにも答えてやりたいけど……どっちかを選ばなきゃいけない。 それこそ……コインを弾いて、裏か表かで決めちまったほうが、いっそ楽なくらいだ!」 と……「だったら、それでいいじゃないですか」「あ?」「どんな理由や理屈や感情を並べても決められないのなら、最後は運任せですよ」「運任せって……お前なぁ、それ、俺が一番嫌う言葉なんだけど? っつーか、俺、確かに『悪運』はあるほうだとは思うけど、普段はそー『運が良い方じゃ無い』んだよ……」 何しろ、沙紀や男友達とポーカーやって、スリーカード以上の役、作った事ネェし。 ババ抜きや七並べ、大貧民や、麻雀みたいな、計算や『読み』が働くモノなら、なんとか五分で展開出来るが……純粋な『運だけの勝負』だと、かなり弱かったりするのだ。(ちなみに21(ブラックジャック)は、生身でカウンティングが可能なので、結構、好み)。「だからって、他に方法なんて無いなら、それしか無いんじゃないですか? そうしたら、一緒に、彼女たちに返事を持って、逃げた事を謝りに行きましょうよ。 ……『悪運はあるほう』なんでしょ?」「なる……ほど。確かに……『運以外を塗りつぶしたのなら』、あとは運しか残らない、か」 上条恭介の言う事にも、一理、ある。 俺は、ポケットの財布から、五百円玉を取りだす。「表が巴さん、裏がチカ。……何かこじれたら、お前が証人だ、いいな?」「はい」 そして、コイントス。 高々とコインは宙を舞い……そして……運命の結果は、出た。 やがて。 ウロブチボウルの廃墟に居ると知った全員が、集まって来るのに、さほどの時間は要さなかった。 だがもう、俺たちは、逃げも隠れもしなかった。「みんな、ごめん。 ちょっと、パニックになって御剣さんと逃げちゃった。 本当に、すまない。 それで……色々と、御剣さんと相談したり話しあったりして、結論……出せたよ」 そう言って、上条恭介は……真っ直ぐ、美樹さやかと向き合った。「さやか、君が好きだ。僕と……付き合って欲しい」「っ……」「こんな、無様で……もう、バイオリンの天才なんかじゃない。『天才の残骸』でしか無い僕だけど。 もし、こんな僕でよければ……友達や幼馴染じゃなくて、恋人として、付き合ってくれないか? さやか」「恭介……」 ぼろぼろと。 美樹さやかは涙を流して、抱きついた。「……さやか。ごめんね……今まで、気付いてあげられなくて」「ううん、恭介……いいの。私も……大好き」 と。「上条さん。 もう一度だけ、お尋ねします。 ……天才としての、過去の栄光に、興味は……本当に無いんですね?」「沙紀っ!」「黙って!」 進み出た沙紀の言葉に、上条恭介は、首を横に振った。「ありません。僕は……さやかを選びました。 だから、志筑さん。沙紀ちゃん。本当にごめんなさい」 そう言って、頭を下げる上条恭介に……「よろしい! 合格!!」「え?」 そう言って、つかつかと沙紀は上条恭介に近づき……左手に、治癒魔法をかける。「上条さん。 これは……この『奇跡』と『魔法』は『上条さんのバイオリンの大ファン』からのプレゼントです! だから、絶対に……絶対に、さやかさんを離さないであげてくださいね!」「沙紀……ちゃん?」 そのまま……沙紀の顔から、涙が落ちる。「だって……ずっと一緒に過ごして来た、美樹さんの気持ちを袖にして……過去の栄光に縋って私や、増して志筑さんに走ろうモノなら、もうそれは、『私の好きな上条さん』なんかじゃないもん。 だから……だから……私は、『上条さんに思いを伝えた上で、ちゃんとふって欲しかった』。 それだけなんです……」「っ……君は……」「だから、分かってたんですよ……『勝ち目なんて、全く無い』って。 だって……だって、私を選んだりしたら……多分……上条さん、ぶん殴ってた。 でも……気持ちが抑えられなかった。 だから……だから、ちゃんと『私の恋を、はっきりと終わりにして欲しかった』。 どんな理由があったって……泥棒猫が、ハッピーエンドなんか迎えちゃ……やっぱダメじゃないですか」 そう言いながら……ボダボダと涙をこぼしていく沙紀。 そう、か……「沙紀。お前は……『スッて悔いのない博打』を選んだんだな?」「うん……だって、石ころの私が、『普通の人』相手に恋をして、幸せになんて、なれるワケが無いじゃない。 だから……」「そんな事は無い!! 沙紀! お前は石ころなんかじゃない! 魂の在り処に拘るような、心の狭い男なんぞ、男じゃネェよ! 今回は……たまたま、運が悪かった。相手が悪かった。それだけだ!」 そのまま、俺は沙紀を抱きしめてやる。「お、兄…ちゃん?」「言ったよな? お前は一丁前の魔法少女だ、って。『家族とみんなを守れる』魔法少女だ、って。 沙紀! お前は、一度とはいえ、ちゃんと『そうやって生きてきた』俺を超えたんだ! だから……お前は、誰に恋をしたっていい。『魔法少女として誰かを愛する資格』は、俺が保障してやる!」 そして……「お兄……ちゃん……うわあああああああああああああああああああああああ!!」 俺の腕の中で沙紀の頭を撫でてやりながら。 いつまでも沙紀は、嗚咽を漏らし、泣き続けていた。「さて、と……そんで、巴さん、チカ。すまないが……俺もさっき、答えを」 と、俺が切り出した時だった。「あ、あのさ……颯太。 その……週末、だったよな、返事は?」「チカ?」「ご、ごめん。やっぱ、フライングは無しだよ……週末まで、答え、待つからさ」 そう言って、チカの奴は、その場を立ち去ってしまった。 ……なんだよ、チカの奴。コインは……裏って出たんだぜ? まあいいさ、週末に、結論を伝えりゃいいか。 そう、甘く考えていた事を。俺は、一生涯、後悔する事になる。 そう、魔法少女に……時間なんて、無かったのだから。