これより先、狂った楽屋ネタというか、キャラ的ネタ元のパロディが続きます。 作品世界とか価値観とかシリアスな空気とか、いろんなもんが完膚無きまでぶっ壊される恐れがありますので、そういうおフザケが嫌な御方は、パスして読み飛ばしても全く問題ありません。 OK……後悔しないでくださいね。 多分……わけがわからないよ? CM ナーイスバディとノーバディ!! イカすブロンド、男と駆ける!! ティロ・フィナーレ乱れ撃ち!! 知恵と、度胸と、根性で、あのデカブツ(ワルプルギスの夜)を受け止めろ!! 木曜闇憑プラス『続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-』 死地月二十死地日、発売予定! 野郎主役で、萌えは無し!! ほむほむを見たら、泥棒と思えっ!! CM終わり 荒れ果てた荒野の中。かつて存在したビル群の残骸にすがりつくように、無数のバラックが立ち並ぶ。 そこは、『町』と呼ぶにしても、余りにも荒み過ぎていた。 無造作に打ち棄てられた死体や、あるいは死体になりつつある者を前にしても、人々は何の意識もなく通り過ぎる。 血痕や暴力の痕跡は、それが何かの障害でない限り放置され、消される事も無い。 わきわきマスコット村。 山田中王朝が支配する、『セイント☆まほー王国』の中に数多存在するマスコット自治区の中でも、最も荒み、危険な場所として知られるスラム街だ。 その村の一角の飲み屋で、コーヒー牛乳をちびり、ちびりと飲むマスコットが一人。 歴戦の傷と深い皺。それに鋭い眼光のそのマスコット――ハヤたんは、ただ無言で猪口を傾けていた。 と、そこへ……「兄ぃっ! ハヤたんの兄ぃっ! たっ、たっ、たっ、大変だーっ!!」「……五月蠅ぇよ、ピルル。静かにしろぃ。何があった?」「せっ、セイント☆まほー王国の軍勢が、村の周囲に!」 このところ、過激さを増しているスラムの掃討作戦。 王国のトップである王女の地位が代替わりしてからの、過激なテロリスト弾圧作戦の矛先が、このわきわきマスコット村にも向けられたのだ。 が……「慌てんじゃネェ。連中の目的は、多分、俺だ。 そして……」「久しいな、ハヤたん。相も変わらずの無頼か」 『セイント☆まほー王国』の王女たる、絢爛な衣装。 この国の絶対専制君主にして女王『山田中ふにえ』が、その存在感に比してはあまりにも不釣り合いな、アバラ家の扉を開けて入ってきた。「これはこれは、ふにえ様。 このようなむさ苦しい所に……ああ、申し遅れましたが、女王としての即位、おめでとうございまする」「ふん! ……余に仕えたマスコットとしての栄達栄華に背を向け、セイント☆まほー王国マスコット教導隊の指揮官の地位も捨てて、このような場所でくすぶるとはな」「お言葉ですが、女王陛下。この無頼は生来のもの。 かつて、あなた様が、まだ一介の魔法少女で後継候補の一人で在った頃の事を、忘れたわけではありますまい?」「忘れてはおらぬ。『雲』のハヤたん……魔法少女として、貴様をお供にするのには、文字通り骨が折れたわ。 だからこそ、また、こうして余自らが、足を運んだのだ」 その言葉に目を細め、遠い目でこたえるハヤたん。「お懐かしぅございますなぁ。あれはもう、何年……いや、十何年前の事か。 私との戦いの中で会得された対軍関節技『プリンセス☆ローリングクレイドル』の威力。御身の威光と共に鳴り響いておりますぞ」「ふん、今にして思えば、壮大な無駄であったわ。 先日も、単騎反政府ゲリラの基地に乗りこみ、頭目を締め上げたのだが、秒間七千回転程度で骨格どころか肉片になってしもうてな。 仮にも、元魔法少女としてパンチラシーンのファンサービスこそ忘れぬツモリではあるが、それ以前に技を最後まで決め終える前に『無くなってしまう』相手ばかりでは、意味の無い技というもの」「一介の魔法少女の頃であったのなら兎も角、今の陛下の御力で全力を出されては、耐えられる者などおりますまい。あの当時ですら、私で在ったからこそ耐え抜けたようなモノ。 ……思い出しますなぁ。秒間一万六千回転で、全てを蹂躙する肉車輪となり、かつて王国一の繁華街であった、このわきわきマスコット村を壊滅させた事を」「ふっ。最大威力のナパームストレッチから始め、V-MAXの領域まで耐え抜けたのは、ハヤたん。今までそなただけよ」 ハヤたんの耳には、潮騒の如く今も残る。 砕ける全身の骨格、すり減る肉の感触。そして『AAAALalalalalaie!!』と叫ぶ、目の前の王女……かつての魔法少女の、王気溢れる蛮声が。「して。用向きは? 何も、かつての己のマスコットと昔話をするために、女王となられた御身自らが、このようなむさ苦しい場所に足を運ばれたワケではありますまい?」 先を促すハヤたんに、絶対専制君主ふにえが、とうとう本題を切りだした。「……ハヤたん。 うぬは、近頃、魔法少女たちを震え上がらせている『キュゥべえ』なる存在を知っているか?」「噂程度には。 なんでも、魔法少女に契約を迫り、絶望と奈落へと堕としめるペテン師。……噂によると、かの暗黒筆神、虚淵の眷族とか」「うむ。どう思う、ハヤたん?」「はてさて……かの偉大なる神々に連なる者に対し、一介の無頼マスコットたる私が、どうこう言う余地などありませぬな」「……では、そなたがキュゥべえで在ったとして、余を魔法少女にしようとは思うか?」「思いませんな。そもそも、元より『魔法少女』な存在を、さらに魔法少女にしようなどとは」「用向きは、それよ」 怪訝な顔で、かつての主を見つめるハヤたんに、ふにえが続ける。「ハヤたん。元、魔法少女として命ずる。 かの世界に赴き、キュゥべえに誑かされた魔法少女たちに、生き抜く修羅を叩きこめぃっ!!」「っ!! バカな……確かにキュゥべえは虚淵の眷族かもしれませぬ! しかし犠牲者の魔法少女は、全て天帝うめの生み出せし萌えキャラたち! 我々の如き外道修羅道を征く者とは、根本の構造が違いまする! 星を軽く撃砕する砲撃冥王ならば兎も角……」「構わぬ。誰かに救われたいなどと望む甘えた心根を断ち切り、己自身を救う事を憶えねば、かの暗黒神に連なる存在の食い物にされ続けるだけよ。どのみち、遅かれ早かれ壊されるのなら、早い方が良かろう」「世界が……いや、全てが崩壊しますぞ!?」「安心せい。貴様が赴くのは、かのキュゥべえがはびこる、無数の並行世界の一つ。 一個や二個壊れたところで、問題など生じぬ。それで一つでも結果を出せれば、上々よ」 その言葉に、ハヤたんが凄絶な笑みを浮かべて、嗤う。「……死地、でございますな」「苦労をかける」「それだけではございませんでしょう? 最近、反山田中フニエ体制運動が、形を作り始めてまする。 私を無頼にして野に置くと、いつその旗頭にされるか……」「ふっ、読んでおったか」「読めませぬからなぁ。私が、私自身をも。 次にどこで何をやらかすやら」 どこか楽しそうに遠い目をするハヤたんに、この冷酷な絶対専制君主が、また薄く嗤った。「では、その『雲』の動きを縛るとしようではないか」 そう言うと、トテトテと一人の少女がやってくる。「ハヤたん♪ 久しぶり!」「こっ、これは! サキ姫殿下! 何故ここに……はっ! ふにえ様、まさかっ!!」 かつて自分になつき、また憎からず思い、可愛がっていた少女の姿に、驚愕するハヤたん。 その二人に、更にふにえが冷酷に告げる!「連れて行けい! 我が末娘も、そろそろ『魔法少女』としての修行の時期よ」「……かっ、かの虚淵の眷族がはびこる修羅地獄に、あえて叩きこむとおおせか!?」「それを乗り越えられぬのならば、我が血族に連なる者とは言えぬ!」 きっぱりと言い切る絶対専制君主。 かつて、マスコットとして使えた主の姿に、ハヤたんは戦慄した。「それに、こうでもせねば『雲』の動きを縛る事など不可能よ。のう、ハヤたん?」「……はっ、ははぁっ!」 平服するハヤたん。せざるを得ない。 と、同時に、自分が魔法少女のマスコットとしての本懐を遂げたのだ、という思い。そして、また新たなるマスコットとしての任地に、胸が躍るのを抑えきれなかった。 ……それが、自らの命を捨てねばならぬ、死地と知って、なお。無頼を気取る彼もまた、真の『マスコット』であった。「征けぃ! ハヤたん! 立ちふさがる全てを薙ぎ倒し、かの地に赴き、豆腐メンタルな魔法少女たちに、修羅の心得を叩きこめぃっ!」「はっ!! これより、ハヤ・リビングストン、サキ姫殿下と共に人間として転生し、任地に赴かせていただきます!」「うむ。侍従長のサエコが先に行っておる。先任の下士官として、存分に使いこなすがよい! ……ふっ。かつての魔法少女からの、余の芳心。存分に受け取るが良いわ、くはははははははは!!!」 ばさりっ、とマントを翻し、扉から出て行くふにえの姿を、ハヤたんは姿が見えなくなるまで平伏しながら見送っていた。 ……芳心っつーか、ぜってーありがた迷惑だろーなー、多分……とか思いながらも。