降りしきる雨は嫌いだけど、私は雨の日が好きだった。
私を求めるお客さんが、雨の日は少なくなったから。
しとしと。窓の外では水滴が落ちる。長い髪の毛が湿気を吸って、体にまとわりつくのが憂鬱だった。それでも、私にまとわりつくお客さんはいなかった。
雨の日はずっとお勉強。賢く見えるように。もっと人気が出るように。商品価値が上がるように。宿の主様や守衛さんに戯れに抱かれる事はあったけれど、お客さんほどには乱暴じゃない。娼婦の人から戯れに苛められる事もあったけれど、お客さんほどには傲慢じゃない。だから、私は雨の日が好きだったんだ。
けれども、雨の日にやってくる人もいる。そういうお客さんは嫌いだった。雨の憂鬱を私にぶつけるから。雨が上がるまで、暇つぶしに長い間居座るから。齢がおそらく十前後だろう小娘が、この宿で一番の人気だなんて、ちょっとおかしいんじゃないかと思うけど、世の中、そういう趣味の人は意外と大勢いるのだという。そして、そういう趣味の人は行為の内容も倒錯してることが多いそうだ。私の客さんは殆どが粗雑で乱暴だった。お腹を殴って、複数人で嬲って、使うべき所じゃない場所を散々使って。
私はそれにお礼をいう。感謝と真心を込めて奉仕する。それこそ正しいルールだった。骨や内臓を痛めつけなければ、顔以外は好きにしていい決まりだったから。いくらお客さんを喜ばせても、私には一ジェニーも入らないけど。
それでも、苛つかれて振るわれる暴力よりはずっといい。
楽しまれて振るわれる暴力の方がずっと楽だ。体の負担もずっと軽いし、なにより心が痛みにくい。人を傷つけ壊そうとする強い想いは、それだけでとても痛いから。だから私は、どんなお客さんでも隷属する。雨の日の仕事はとても嫌いで怖かったけど、顔に出す事はしなかった。
その人も、雨の日にやってきた人だった。
一番初めの印象は、金遣いの荒そうな人だな、とだけ。高そうな葉巻きをくわえていたけど、着ている服はぺらぺらの薄生地。そんなに珍しい人種じゃなかった。たぶん、最近小金が手に入ったんだと思う。貯蓄なんて考えずに、パッと使って一時を楽しむ。そういう考えの人達は、こんな場所ではごろごろしていた。
おかしいなと思ったのは、入れられて数分した時の事だった。口で奉仕していた時は何ともなかった。だけど、突き入れられたとき、妙に痛みが強かった。痛いのはいつもの事だから、そんなに気にした訳じゃなかったけど。
だけど、気付いたら体から湯気が出ていた。私の上で動くお客さんの体も、もやもやしたのに包まれてる。これは一体なんだろう。がつがつと頭に響く営みの中、朧げにそれに目をやった。
「ははっ、なんだよガキ! 開いちまったのか!?」
葉巻きを口にくわえたまま、お客さんが楽しそうに腰を振る。私に応える余裕はないけれど、その人の顔を少し見つめた。どうして上機嫌になったのか、その意図を察しないと逆に不機嫌になる人も大勢いたから。
「しょうがねーな、オイ!」
言って、私のお腹に葉巻きを押し付けて、灰皿代わりに火を消した。よくある事だ。呻き声はあまりでなかったと思う。むしろ優しい人かもしれない。敏感な部分に火を近付けて、怯える私に喜ぶお客さんも沢山いたから。
葉巻きが勿体ないなと、ちょっと思った。
「お前にいい事教えてやろうか。抱き終わるまでの時間でよければな。ほら、さっさと心込めて綺麗にしろ。それが終わったら次は後ろだ。犯しながら教授してやるからよ」
「はい、ありがとうございます。お客さま」
反射的に頷いてお礼をいう。お客さんの股間にかしずいて、体に染み付いた動作で奉仕した。この人は私を気に入ったらしい。笑いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でて、これから贔屓にしてやるぜと告げられた。
しとしと。外では雨が降っていた。
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【ポルカドット・スライム 操作系・放出系】
雨の日限定の能力。
体に触れた水にオーラを流してテニスボール大のスライムを生成する。
スライムはそれぞれが自立した自動型であり、目標の口と鼻を塞いで窒息死させる本能を持つ。
十分な量の水さえあれば膨大な数のスライムを展開可能。
発動は条件を充たした際にオートで行われる。
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次回 第八話「ウルトラデラックスライフ」