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No.28755の一覧
[0] 【習作】迷子の赤い死神 リリカルなのは×鬼畜王ランス[丸いもの](2011/07/09 17:46)
[1] 導入部分のようなもの[丸いもの](2011/07/09 19:12)
[2] 海鳴市に旅立つ そして遭遇[丸いもの](2011/07/16 01:36)
[3] ジュエルシードを取り込んだ怪物[丸いもの](2011/07/25 18:59)
[4] VS魔人四天王、そして「ねんがんのジュエルシードをてにいれたぞ!」[丸いもの](2011/08/30 12:18)
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[28755] VS魔人四天王、そして「ねんがんのジュエルシードをてにいれたぞ!」
Name: 丸いもの◆0802019c ID:c975b3ab 前を表示する
Date: 2011/08/30 12:18
「撤退ー!撤退ー!退却にあらず!!」

 ゼスの首都近郊にて。
 ここでゼスの率いる魔法使いの後方部隊、そしてJAPANの足軽と武士の前衛部隊が魔軍と激突していた。
 ゼス方面の軍はJAPANとゼスの連合軍によって構成されておりその力はリーザスへルマン連合軍に劣らない。
 だが今、魔物の圧倒的物量によって押し込まれ敗退、その中のある一つの部隊が敗走していた。

「負けた負けたー!参ったのう!!」
「・・・なぜお前はそんなに嬉しそうなんだ?」
「お二人ともそんな気軽に会話してる場合ですか!?」

 足軽部隊担当の柴田勝家、武士部隊の乱丸、そして魔法部隊のアレックスが魔物と交戦しながら後退していた。
 足軽が槍衾を作りながら魔物を近づけないようにして魔法使いはその隙を見逃さず攻撃魔法を放つ。
 乱丸率いる武士部隊は酷い損害であったが空から強襲してくる魔物達を撃退して安全をかろうじて確保する。

「くそ!しつこい!!」
「皆の者踏ん張れ!勝負は負けたが生き残る戦は勝敗を決しておらんぞ!!」
「今の私はただ斬るのみ、それだけだ」

 諸将が鼓舞の声を上げる。
 だが負傷者は蓄積して戦線から後退する者が続出していく。
 攻撃の要であった武士が少なくなり、次第に魔法使いや足軽を狙われていく。
 まさに多勢に無勢、絶対絶命の状況であった。

「くぁ・・・!!」
「アレックス殿ー!?」
「・・・チ」

 アレックスが空中からやってきた魔物の槍で肩を貫かれる負傷。
 その魔物を反撃にと光魔法、ライトをぶつけて消滅させた。
 部隊を率いる将が負傷したという事態に一瞬であるが三人の部隊の行軍が止まった。
 その隙を魔物は逃がさない。
 人間を殲滅しようと一斉に群がってきた。

「こんなところで!!」

 アレックスの無念の声が上がる。
 だが、それと同時に男の声が遠くから聞こえたようなが気がした。
 気のせいか?
 ・・・いや、気のせいじゃない。

「・・・徐かなること林の如く」

 戦場とは思えない静けさがその場に訪れた。
 思わぬ戦場の空気の変化に魔物は驚き、そして混乱した。
 これは一体どうしたことか?
 三人の部隊はいつの間にか草むらに退いており、木々に覆われた森を背にしていることに気がついた。
 兵を伏せるには絶好の場所だ。
 再び男の声が戦場全体に静かに広がっていく。

「弓兵部隊、鉄砲部隊構え、左右から矢と鉄砲を浴びせる。然る後、てばさき部隊で蹂躙せよ・・・かかれ」

 森と深い草むらから風を切る矢の音、貫通力のある鉄砲の炸裂する音が聞こえた。
勝家達はとっさに全部隊に地面に伏せるように大声を上げた。
 三人の部隊に群がろうとする魔物達が十字砲火で一気に殲滅されていく。
 目に見えぬ痛烈な反撃に狼狽した所へさらにてばさき部隊が森から駆け抜けて敵を吹き飛ばしていく。
 形勢逆転、絶望的であったがなんとか三人は無事に退却することに成功した
 そして森の中から一人、弓と軍配を片手にゆっくりてばさきをつれて歩いてくる男がいた。

「無事でよかった、あなた方の敗走報告を偵察兵から聞いてとっさにここで待ち伏せ部隊を作りましたが功を奏してなによりです」
「おおー透琳殿!助かりましたぞー!!」
「感謝する」
「透琳さん助かりました!あなたがいなければ今頃どうなっていたか」
「いえ、感謝されるべきものではないです今回の場合」
「え、何故?」

 アレックスが疑問の声を上げる。

 真田透琳。現在のJAPANを代表する軍師の一人である。
 その巧みな用兵戦術は少数の部隊を使ったゲリラ戦や大規模の軍団を操れるなど様々。
 さらには広い戦闘地域を見渡し戦略を練る事が出来る稀有な存在であり、その能力は
 JAPANが生み出した傑物と言われる人物である。
 その武将が何か苦々しげな顔をしている。

「魔物の侵入を食い止めているマジノラインの存在はご存知ですね?」
「はい、それでも魔物は強行して侵入してきますが・・・」
「そのマジノラインの機能が停止してしまった。これにより魔物の侵入が増大、あなた達を始めとする各地の武将の行動に大幅な行動制限、
 最悪敗退している。おかげでウルザ殿と立てていた戦略が崩壊してしまった。」
「そんな!?」

 ありえない。
 あの絶対的な防衛力を持つ要塞が機能停止に追い込まれるなんて。
 外側から破壊するのはまず不可能、出来るとしたら以前この国家の危機に陥った時の様に内部側だが・・・。
 内部?

「まさかマナバッテリーが破壊された!?」
「その通りです。そしてそのマナバッテリーを破壊したのはかつてあなたとランス殿等が相手した魔人」
「・・・魔人四天王、カミーラ」

 最悪だ。
 復活したという話は聞いていたが・・・。
 よりにもよってあの魔人が再びこの地に降臨するなんて。
 またあの時のゼスと同じように全土が戦いの煙に巻かれるのか?
 そんなことは絶対にさせてはならない!!

「想定内の事態ではあったのですがこの戦域にここまで深く影響を及ぼすとは・・・
 これは破壊を止められなかった私の手落ちです。すみませぬ」
「気になされるな透琳殿。全てが全て読み通りいくとは限りませぬ。戦場なのですから」
「乱丸の言うとおりですぞ!全てが万事上手く行ったら世の中面白くないのう!!」
「しかし今回ばかりはそうもいってられません、マナバッテリーを直す技術はありませんし
 なにより今ゼスの首都の奥深くに突撃している部隊が・・・」

 アレックスの言葉に皆が深刻になる。
 現在ゼス方面の軍はヘルマンの救援に向かうためにとゼス一帯の魔物の掃討作戦を開始していた。
 以前と同じように敵を劣勢に追い込んで逃げる魔物は追わず逃がす作戦を取りたかったが今回はそうはいかなかった。
 魔物の士気が異常に高くなっており撤退する者が少ないのだ。
 これも魔人カミーラの復活の影響によるものか。
 乱丸達は首都に巣食う魔物を撃退する為の部隊の補助をするために他の魔物の邪魔が入らないように
 首都への敵の増援を食い止めていたがそれがマジノラインの停止が原因によって魔物の侵入が増大、
 負けるはずがなかった戦に負けたのである。
 これにより首都への敵の増援を許してしまいゼス首都で戦っている人間達は退路を断たれてしまっている状態だ。
 これはゼス各地でも同様の状態に陥っている。
 さらに諸将の反対を押し切ったランスによる作戦の強行の影響もある。
 慎重に手を打って有利に進めていたゼスの戦況が一刻も早くヘルマンへの救援へと考えていたランスの考え、
 その焦り、それが様々な悪条件が重なり裏目に出てしまった。

「私は救援部隊を引き連れて各方面の軍の援護及び武将の救出に向かい、
 その後に首都に突撃して敵を撹乱して首都にいる者達を救出・撤退します。皆さんは後方の安全地帯へ。
 負傷者を収容している陣があります」
「透琳殿、討死されるなよ?」
「死ぬつもりは毛頭ありませんよ。私はあの日、武田家が仲間と共に滅んだ時から人々の為に死ぬと決めた。
 太平の世を作るまで絶対に生き抜く」

 凍てついた氷将の覚悟。
 己の誇り、そして武田の武人の誇りの為に散っていった仲間からの最期の言葉の為にこの男は戦っていた。
 仲間から託された思いを胸に戦場に立ち、戦乱の世を終わらせるために軍配を取る。
 元武田四天王の一人としてその名に恥じないように。

 透琳はてばさきにまたがり駆け出す。
 時間は夕日が落ちかけて夜になろうとしていた。
 落ちかけた夕日の光がてばさきに乗った男を薄く照らして地面に走る影を作る。
 自分達から遠ざかっていく誇り高き名将に思わずアレックスは激励を送っていた。

「透琳さん、ご武運を!!」

 それに応えるように透琳は背を向けながら片手に取った弓を高々と上げて見せた。












「毘沙門天の加護ぞある!!」
「独眼流政宗ここにあり!かかって来い!!」

 ゼス宮殿の奥深く、玉座に入るために解放されている扉前にて。
 上杉謙信を中心とした女性の武士部隊が魔物を玉座に侵入させまいと踏ん張っていた。
 謙信がつむじ風のように舞いながら刀を振るい敵を薙ぎ倒し、政宗がおけらカー小十郎に乗って疾走、
 敵を撹乱しながら不気味な光を発する妖刀で次々に斬り倒していく。
 この二人に負けじと武士部隊も気勢を上げて突撃する。
 倒した魔物の数は数え切れない。
 ありとあらゆる場所に敵が転がっておりそれを見るとなんだか疲れて億劫になる。

「謙信殿、大丈夫か?」

 政宗が小十郎に乗ってすぐ側に近寄って謙信の容態を気遣ってくれる。
 大きな目玉の首元(?)には聖獣オロチの砕け散った大きめな鱗の首飾りが飾られていた。
 本来、妖怪である政宗はJAPANから出られないのだがこのオロチの鱗が発する妖力によって
 大陸でも活動出来るようになっていた。

「問題ない。だがお腹が空いたな」
「それはあなたにとって死活問題だな。しかし・・・」

 目の前にはわんさかと湧いてくる魔物達。
 そして後方の玉座には。

「魔人がいるとなると迂闊に撤退は出来ないな」





 玉座には魔人四天王の一人、カミーラが座りある男と対峙していた。
 そのある男とは皆がいろんな意味で敬服する男、英雄の資質はあるのに英雄の行動とは思えない事を常にする男。
 リーザスの王であり人類の統一王、別名鬼畜王。

「くぉらああカミーラ!!よくもマナバッテリー破壊しやがったな!!
 ただでさえ魔物の侵入が多いってのにさらに増えたじゃねえか!!
 おかげで俺様の偉大なる計画が台無しだ!どうしてくれんだ!!」」
「・・・・・・」

 ランスである。
 過去の事を考えると人の事言えないランスだったがそんなの気にしない。
 彼は膠着状態に陥って思うようにいかない戦況に怒るばかりだった。

 カミーラは無言でランスの声に応えない。
 冷たい瞳でただ、見下している。
 冷静で何事にも動じてないように見えるが目の前の男に心が滾っていた。
 復讐という念。
 それがカミーラの中で激しく渦巻き外に噴き出そうとしていた。

「待ちわびたぞ」
「何?」

 周囲の空気が冷えた。
 比喩的な表現ではない、確かに言葉だけで温度が下がっていた。
 冷徹な意志の元に燃える絶対零度の怒り。
 その怒りが撒き散らされていた。

「貴様をバラバラにすることを何度夢見たことか・・・お前は私から全てを奪った。
 私の愛する使徒達・・・七星、アベルト、そしてラインコック。私は貴様を許さない」
「あーそんなやつらいたっけかなぁ・・・?」
「・・・」

 ランスのあまりな反応にカミーラは宙を爪で薙いだ。
 突風が起きて部屋に大きな空気の流れが生まれた。。
 直感で危険を感じたランスは今まで立っていた場所から飛び退く。
 飛び退いた場所には真空波による爪痕が深く床に刻まれていた。

「お、おっかねー・・・」
「以前の私と思わぬほうが身の為だぞ」
「ふん、それはこっちにだって言えるセリフだ。俺様が今までダラダラ過ごして来たと思ったら大間違いだ」
「よくまぁそんな大口叩けるようになったな心の友。ランス、今のお前さんは確かに強い。全ての人類国家を制して、
 人類最強の称号を手に入れているだけのことはある。だが、相手を考えろ。相手は魔人四天王の一人だぞ?
 しかも見たところ以前と比べてパワーアップ。いや、これが本来の実力なんだろうな。
 こいつに一人では勝ち目は薄いぞ?」
「そんなのはやってみなくちゃ分かんねえだろ?」
「無謀な奴だのう・・・まぁやるだけやってみろ。もしかしたら勝ちを拾えるかもしれんからな」

 それっきりカオスは黙り込む姿勢に入った。
 全くうるせえ駄剣だ。
 俺様が休まずにどんくらい戦場を駆け巡ってきたと思ってるんだ。
 今の俺様は人類史上最強だ、ぜってぇ負けてやるもんか。

「覚悟はいいな?」
「あ、一つだけ思い出したぜカミーラちゃんよぉ」
「なんだ」
「お前の使途のアベルトは最悪だったぜ。色々と。俺様の女を試練と称してヒデェ事しやがって」
「・・・だからどうした?」
「テメェは男を見る目がねえな。他の使途にしてもそうだ、顔だけの男ばっか集めやがって。
 お前を盲信する使途ばかりで中身が空っぽ、使途にしたお前の器が知れるぜ」
「・・・」

 再び無言でカミーラの爪が振るわれる。
 ランスは余裕でかわしたがそのかわした後ろの壁に大きな爪痕が入る。
 少しばかり怒りが入ってたようだ。

「ついでにそのアベルトな、俺様の推測に過ぎんかもしれんがお前も試練の対象として色々と暗躍して・・・」
「戯言はそこまでだ」

 カミーラが大きく飛び空から破壊のブレスを吐いてきた。
 ランスは舌打ちをしてブレスの範囲内から退き余波をマントで身体を覆い防ぐ。
 王の間は一瞬にして瓦礫の世界となり、ありとあらゆる場所が破壊されていく。
 破壊されて粉塵が充満しているところからカミーラが飛び出してくる。

「ふん」

 すれ違いざまに爪が振るわれる。
 その奇襲にすんでのところでランスは対応、首を持っていかれるところをギリギリかわした。
 だが、頬にうっすらと爪の傷がついて血が頬を伝って地面に落ちる。
 ランスは不敵に笑いながら血を拭う。

「へっ!この程度はお情けってもんよ!!」

 またカミーラが瓦礫で舞い上がった濃い粉塵に紛れて奇襲してくる。
 その速度は例え一流の剣士でも捉え切れない速さで一撃必殺だ。
 だがランスとて今までの戦場を渡り歩いてきた古強者。
 二度目の奇襲は完全に見切りカウンターを入れる。

「必殺、ラーンスアタック!!」

 剣が爪に叩きつけられると同時に衝撃波が発生、カミーラは打ち負けて吹き飛ばされるが
 無様に地面に転がるようなことはせず悠然と空を飛んでランスを眺める。
 その様子から見るにダメージはないようだ。
 全く、本当に力を取り戻して厄介なことこの上ないなとランスは心の中で毒づく。

「・・・確かに以前の貴様とは違うな、単独で私とやりあえるとは。忌々しいが実力を認めよう。
 だが、一人で本当に勝てるとでも思っているのか?」
「ぬかせ、思っているに決まっているだろうが。俺様が勝ったら再びハイパー兵器でお前の身体という身体を蹂躙してやるぜ」

 グッと親指を下品に立てて意思表示を表すランス。
 こういうところは全く変わってないのだなとカミーラは何かおかしさが込み上げてしまった。
 馬鹿馬鹿しいがこの男の愉快な部分だけは褒めてやるべきか。
 羽ばたいていた空から地面に降りてランスを真正面に捉える。
 真っ向勝負だ。カミーラらしからぬ行動だがこの男の挑戦状を受けようというのだろう。
 ランスのプライドを粉砕して血祭りに上げる算段だ。

「よかろう。やれるものならやってみろ。貴様だけで私を倒せるのならな」
「上等、後悔すんじゃねえぞ!!」

 互いに一歩踏み出し魔剣と魔人の爪がぶつかりあった。





「まさか本気で魔人四天王の一人に一騎打ちを仕掛けるとは。謙信殿、助太刀しましょう」
「いや、政宗殿。ここはあの方に任せましょう。ランス殿なら遅れを取ることはないでしょう」
「あなたはランス殿を過剰評価しすぎでは?確かに強いが魔人相手に一騎打ちは・・・」

 実際政宗の言うとおりであった。
 最初こそは互角に見えたがすぐに不利に追い込まれランスは防戦を強いられていた。
 時折隙を見計らってカウンターを打ち込むが攻撃に転ずる事が出来ない。
 振るわれる爪の暴風が辺りを切り刻む。
 その中で致命的なダメージを受けずに戦闘続行出来るのは流石歴戦の戦士と言ったところだが
 このままでは追い詰められて命を落とすのは時間の問題のように見えた。

「やはり危険だ。手助けをする」
「待たれよ。これは二人が互いに誇りをかけた約束の上で行われている神聖な決闘だ。
 それに横槍を入れるなど許されぬことだ」
「だが、ランス殿は人類を統率する重要な柱だ。それが討死となっては人類の戦争自体が危ぶまれる事になる」

 政宗は小十郎に乗って走り出そうとするがそれを謙信の手が制する。

「どうかランス殿を信じて下さい政宗殿。あの方は数々の逆境を実力で乗り越えてきた。今回も同様に乗り越えてくれるはずです」
「いつからあなたは博打打ちみたいな物言いをするようになったのか・・・」

 魔人への参戦を諦める政宗。
 だがそれも仕方ないかと納得することにした。
 ランスとカミーラが戦っている王の間は修羅場だ。
 例え謙信と政宗が助太刀に入っても鎧袖一触、すぐに身体をバラバラにされる。
 常識を超えた戦いになってしまっているのだ。
 その中で防戦一方とはいえ生き残っているランスは人間というカテゴリーを外れている。
 人外、いや化け物と言ってもいい。

「ふぅ、なれば私達は邪魔が入らないように魔物を蹴散らすか」
「はい、それにもうすぐ愛とガンジー殿がこちらに合流するはずです。撤退できるように安全を確保しましょう」

 二人が魔物の群れに突撃する。
 人類の勝利の為に勇猛果敢な武士部隊も突撃する
 ランスとカミーラ、勝利するのは果たしてどちらか?



















「はぁっ!!」
「ギャイン!!」

 海鳴市郊外の神社にて。
 そこでリックとジュエルシードを取り込んだ怪物が交戦していた。
 怪物は大地を踏みしめてリックに飛びつくが相手にならない。
 一方的な勝負になっていた。

「昨日のやつと比べると質が大分落ちているな・・・アルフ殿の言うとおり状況によって強さが変わるのか?」

 怪物は四足歩行の大型の獣だが素早いだけで他はこれといった特徴はない。
 攻撃力は今までの直接攻撃をかわしている感じからすると恐らく並の魔物程度の攻撃力だと思う。
 これならアルフ殿を呼ぶ必要はなかったな。
 彼女に無駄足を踏ませてしまうことになってしまった。

「悪く思うな、これも全ては私の目的の為。石は頂かせてもらおう」

 散々痛めつけられて横たわって動かない怪物。
 それに止めを刺そうとリックは歩み寄った。
 荒い息を立てている怪物の首元に剣を突き刺し命を絶った。

「グルァァァ!!」
 
断末魔の悲鳴が上がった。
 怪物を身体を引き攣らせて血しぶきを上げていく。
 だが、それは怪物の身体が光を発して消滅していくと共に血も同様に消えていった。
 後に残るのは春風の風が残る神社。
 そして例の青い石・・・と子犬が地面に残った。

「青い石は分かるが何故この生き物が一緒に残るんだ?」

 見たところ傷はない。気絶しているようにみえる。
 前回の怪物はそのまま消えたが今回のこの白い子犬は何だろう?あの怪物の幼生体か?

 そこに陽気な女の声、そして拍手がリックにかかる。

「ジュエルシード封印ご苦労さん!空からお前の戦い眺めてたけど楽勝だったじゃないか!!」

 神社の階段を登る音が聞こえる。コツコツと。
 その正体はすぐに現した、アルフ殿だ。
 人にばれないようにちゃんと耳と尻尾をしまって人間になりすましている。

「近くにいたんなら手伝ってくださいよ」
「いやーそれだとかえってアンタの邪魔になるとおもうから見守ってたんだ。悪く思わないでくれよ」
「まぁ確かに、楽な敵だったから別にいいんですが」
「それにしても昨日はてこずってたっていうけど今日の見る限りだと全然そんな風に見えないな。
 本当に昨日のジュエルシードに苦戦してたのか怪しく見えるぞ。
 その被っている赤将の兜っていうの、筋肉増強とかサポート特化のデバイスなんじゃないか?」
「そんな分からない事を言われましても、とりあえずこの石を手に入れたからいいじゃないですか」

 兜を脱ぎ、戦闘後の一息をつく。
 正直身体を持て余したな。
 もっと動き回りたいという欲求が生まれて物足りない。
 それだけ今回の怪物退治は楽だった。

 地面に落ちているジュエルシードを手にしてそれを仰ぎ見る。
 願いを叶える石であり私が元の世界に帰るための手段。
 その為の一歩をやっと踏み出した。
 だがこれで満足してはいけない。
 一刻も早く集めねば。

「やっと念願の物が一つ手に入ったな」
「はい。ところでこの子犬は一体?ジュエルシードと共に一緒に現れたのですが」
「ん?」

 手に持った石と子犬のうちから子犬をアルフに渡す。
 白い子犬は何か眠っているような小さな息吹を繰り返している。
 手渡された犬を両手で優しく抱きかかえてふむふむと一人頷く。

「多分原住生物をジュエルシードが取り込んだ結果だろうね」
「取り込む?」
「そ、聞いた話だから私もよく分かんないけどこの青い石は願いを叶える石だ。多分この子犬が常に願っていたのに
 ジュエルシードは同調、そしてこの子犬ごと取り込んで同化して怪物化したんじゃないかな」
「う、下手すれば私は罪も無いこの子犬の命を奪ってしまう事になってたのですか・・・?」
「それは分かんないなぁ。基本的にジュエルシードっていうのは魔術で封印、そして石に戻す方法を取る。
 リックみたいに物理攻撃を主とする手段で封印ってのはどういう結果が出るのかさっぱり。
 でも、アンタの使う剣は魔力で構成されている感じだし今回は無事に子犬は助かったから多分
 魔術で封印するのと変わらないんじゃないかな。アタシの憶測だけど」
「ふむ・・・」

 とりあえず今まで通りの退治方法で問題はないということか。
 安心して木製の鞘に包まれたバイ・ロードを肩にかけようとする。が、それは失敗して
 危うく地面に落としそうになる。

「何やってんだ?」
「つい、いつもの癖で剣を肩にかけようとしていました」
「・・・その滅茶苦茶長い剣を肩にかけるなんて重くないか?」
「見た目に反して恐ろしく軽いんですよこれは」

 そう言ってあらためて木製の鞘を握り締めて持ち直す。
 いつも鎧の肩に取り付けていたからなぁ。
 今は赤い服を着込んで金属類の装備がないからマグネット式で取り付けている普通の状態のバイ・ロードが身につけられない
 異世界での人目があるから仕方ないとはいえやっぱり鎧が無いと不便だ。
 バイ・ロードも刀身に変化させてその剣を縮めて人目につかないように運ぶしかない。
 意外と剣の長さの調節に気を使いながら移動するってのは精神的に疲れる。
 何があっても動じないようにしないと精神的動揺から剣が長大化してしまうからだ。

「それにしてもこれでやっとフェイトの喜ぶ顔が見れそうだよ、ここんところいい顔をしてなかったからね」
「そうなのですか?」
「鈍感だね。私達の前、特にリックと話する時は表面上は笑っているけどそれは愛想笑いみたいなもんだよ」

 ・・・まぁ確かに私の場合はあの子の母親を殺しかかっている。
 内心では警戒されててもおかしくないだろう。
 こっちの命も賭けた死闘だったのだがそれを言い訳にしても見苦しい。
 殺しかけたのは事実だから。
 ひょっとしたら憎んでいるかもしれない。

「あの子はさ、プレシアが喜ぶ報告がしたいと常に思っている。なんていうか、あの女の為に尽くすのが自分の生き甲斐って感じでさ。
 普通の母親なら報われて幸せな事なんだろうけどプレシアに尽くしてもそれは全然報われない。
 なのにフェイトは酷い仕打ちを受けても母親の役に立ったと思うことなら笑っているんだ。
 ・・・これっておかしくないか?おかしいよな?」
「それはプレシア殿と対峙した時から感じていましたが」

 歪んだ親子関係。
 いつからそのような関係が築かれたのか余所者の私にはわからない。
 しかし、そんな事を考えた所で私に何が出来るだろう?
 問題は深刻な亀裂が入っていてちょっとやそっとじゃ手がつけられない。
 ・・・この世界に滞在している間、余計なお世話だと思うが親子関係の改善、特にプレシア殿をなんとかしたいと思うようになってきた。
 偏屈で悪事を働いてるっぽい犯罪人だが更正させたい。あの子の為にも。
 だが、私の考える浅知恵では更正なんて無理だろうな。仮に出来たところで時間は長くかかるだろうし私も急ぐ身。
 こんなときマリス様ならいいアイディアを思いつくんだろうな多分。

「アルフ殿は難題を抱えていますね、出来ることなら力添えしたいところですが」
「あー・・・ごめん、余計な事を聞かせてしまった。これはアタシ達の問題なのに」
「あなた達とは一時的な、目的が一致してるだけの仲間だけかもそれませんがアルフ殿は私の悩み相談に乗ってくれると言ってくれました。
 なら私とて出来うる事ならアナタの相談に乗りたい。余計なお世話かもしれませんが」
「その言葉だけで十分だよ。ありがとうな」

 ポン、と背中を優しく叩かれる。
 それには親しみの感情が篭っているような気がした。
 ちょっとだけだが彼女達の仲間の枠に足を踏み入れた感じで嬉しい感じだ。

「あ、あのーリックさーん・・・。か、怪物はどうなりましたかー・・・?」
「くぅーん・・・」

 神社本殿の正面入り口から恐る恐る那美達がこちらの様子を覗き込んでいた。
 警戒してるのだろう、顔を左右、左右、そして正面と動かして辺りの様子を窺っている。
 本当に今回の怪物が弱くて助かった。
 とてもじゃないが前と同等の強さの怪物だったら私はともかく那美殿等は無事ですまなかっただろう。

「もう大丈夫ですよ、出てきても」
「はー・・・よかった。久遠で対応しなければならない事態にならなくて」

 よいしょっと本殿から降りてくる那美。
 こちらに近づいてくると同時に見慣れない女性が新たにこの神社に来ていることに気づいた。
 さっきまでの騒ぎがばれていないだろうか?そしてあの怪物を目撃していないだろうか?
 それらの事に少女はわたわたと慌てだす。

「ああああのこんにちは!今日はいいお天気ですね!この神社はとっても平和でいい事です!!」
「さっきまで怪物が暴れてたのに平和?」
「はぅ!?」

 アルフの一言に硬直する巫女さん。
 一部始終目撃されてるー!
 どうしようどうしよう!
 あんなの一般人にどう説明したらいいのー!?

「あ、あの怪物はですね。そう、飼い犬!飼い犬なんですよ!!
 ちょっと今日は興奮気味でしたけど普段は大人しくて・・・」
「ああ成程、そういうことか。怪物の正体についてはアタシ達は詳しいから大丈夫だよ。
 別に言いふらす気もないしこの手の荒事は慣れてるからね」
「え?え?」

 困惑する。
 幽霊のようなもので様々なタイプの怨霊と出会ってきた那美だが先程リックが戦った怪物、
 実体化して肉体を持った化け物とはお目にかかったことがない。
 幽霊じゃない久遠みたいな妖狐のような存在は知っているけどあの怪物はそれとは違う異常な存在だ。
 ・・・新手の妖怪?
 この女性、そしてリックさんはその存在を詳しく知っているというからそれ専門の退魔師?

「すみません那美殿、紹介が遅れました。この方はアルフ殿と言います。私の友人でさっきの化け物・・・」
(アルフ殿、何て言えばいいでしょう?)
(それ専門の化け物退治を仕事にしているとでも言っておけば大丈夫だろ)
「えーさっきの化け物退治を専門にしています。私はそのお手伝い兼見習いといったところです
 この地に観光と休暇で訪れたのにまさか怪物と出くわすとは、運がいいのか悪いのか」
「災難でしたね・・・。でも凄いです。リックさんとっても強そうなのに見習いなんですか?
 それでアルフさんがリックさんの師匠だから・・・どのくらい強いんだろう?」
「あ、いや別に師匠ってわけではフガ!?」
「フフフ、こいつの師匠だから滅茶苦茶強いぞー。天を貫き地を割いちゃうぞ」
「ひぇぇ・・・」

 
 アルフを師匠にしていると勘違いしているのを正そうとしたリックの顔をアルフは自分の方向に
 片手で抱き寄せそのまま無理矢理手で口を塞いだ。
 それから逃れようとするが意外と力強く引き剥がせない。
 無理矢理剝がす事は可能だがその際に暴れるという挙動不審な行動をしなければいけないので強く出れない。
 怪我をさせてしまうし。
 念話でリックはアルフの行動に抗議する。

(アルフ殿、何の真似ですか?別に師弟って間柄ではないでしょう。那美殿があなたの嘘を純粋な瞳で信じきっているじゃないですか)
(見習いっていうような勘違いを誘う発言したお前が悪い~。それに師匠って信じきっているあの子を見ていると気分がいいからこうやった)
(呆れたものです・・・これからの事ですがジュエルシードの被害者とそのもう片方の手に抱えている子犬が
 気がついたらここから退散しましょう。那美殿の仕事を邪魔しては悪いですから)
(んーそうだな、普通なら放っておいていくけどリックがそういうなら仕方ない。まぁ被害者をほっといてさよならは後味悪いもんな)

 念話を切り、リックの口を塞いでる状態を解放するアルフ。
 全く、こっちは女性の象徴である大きな胸が背中に当たっていたのだから恥ずかしかった。
 もうちょっと恥じらいを持った行動をしてほしい。
 
 とりあえず那美から尊敬の眼差しを集めている二人は許可をもらって神社本殿の縁側でしばらく休憩することになった。
 子犬は本殿の奥でまだ気絶している女性の隣に寝かせつけた。
 まだ残っていたタコヤキをアルフにあげたらよろこんで食い付いていた。
 リックはお茶を飲んで戦闘後の喉の渇きを潤す。
 那美は久遠を肩に乗せて鼻歌を歌いながら竹箒で戦闘で神社の荒れてしまった庭を掃除していた。
 それを見て申し訳ないことをしたなと思ってリックも掃除の手伝いを申し出るが那美はこの神社で広がりそうになった騒動を
 止めてくれた恩人ですから気にしないで下さいと言って辞退した。
 そこまで思われるほど大した事をしてなかったのだが・・・本人がそう言っているからいいか。

「アルフ殿」
「ふぁんだ?」
「タコヤキに夢中になりすぎです。夕食に支障が出ますよ」
「んなこと言ったって美味いし」
「だからといって年頃の女性がガツガツ食うのはどうかと・・・少々みっともないですよ」
「別にいいじゃん。それにこれ残したらもったいないお化けが出るぞ」
「家に持ち帰って皆で食べればいい話なんですが・・・む?」

 神社を登る階段の音が聞こえてくる。
 足音の重さからして子供か。
 何か急いでるように駆け上っている感じだ。
 この神社に来訪者がくるのは珍しいと言ってたが案外そうでもないんじゃないだろうか。

「なのは、注意するんだ。ジュエルシードの反応がこの近くに・・・ってアレ?」
「分かってる。昨日みたいに上手くできるかどうか分からないけど一人でやってみる・・・ってどうしたの?」

 アレ?妙に聞き慣れた声だな。気のせいか?

「・・・おかしい、ジュエルシードの発動した反応が消えている」
「え?」

 階段を上りきり、少女が見た神社の風景。
 それは少々殺風景だが巫女さんがのんびり楽しそうに何かの後片付けをしている光景だった。
 その奥では外人らしき人間二人それぞれがタコヤキを食らい茶を啜っていた。
 おかしいな、確かにジュエルシードの反応がここにあってやってきたのに。
 ちょっと荒れているけど平和だ。
 ひょっとして私達の勘違い・・・?

「あ、なのはちゃん久しぶり。元気にしてた?久遠に会いに来てくれたの?」
「あー!お久しぶりです那美さん、くーちゃんも元気だった?」
「くぅん!」

 那美の肩に乗っていた狐が飛んで姿を変化させていく。
 ポン!と音を立てて一瞬にして狐は一本の尻尾を生やした巫女服の幼女の姿を取った。

 なんと、変化か。正真正銘の妖怪だ。
 愛らしい姿だ。とても穏健に見えて保護欲をかきたてられるな。
 なんだかキングの子供のリセット・カラー様を連想させられる。
 ・・・私もああいう子供が欲しい。もう叶わない願いだが。

「なのはー。なのはー。会いたかった。最近なのはと会えなくて寂しかった」
「ごめんねくーちゃん。最近忙しかったから・・・」
「それはそうとなのはちゃん、その格好は?それに魔法のステッキみたいなの持って。何かの演劇の練習?」
「う、こ、これはその、はい、演劇の練習です!人気の無いここで練習しようと思って」
「そのフェレットさんも魔法使いの使い魔みたいで可愛いー」

 杖に変化した状態のレイジングハートとフェレットと思われているユーノ、
 そしてバリアジャケットを着込んでいる事を聞かれる。
 その説明と嘘を考える為に幼い少女は頭をフル回転させることになった。

 ボロが出ないように必死に説明する子供、なのはをアルフとリックは注視していた。

「リック、ひょっとしてあれがアンタと昨日共闘した魔導師か?」
「はい、魔法使いとしての才能はどうやら昨日目覚めたばかりのようですが怪物封印に一役買っている中々の人物ですよ」
「子供じゃん。それに魔法に目覚めたばかりってなら大したことなさそうだが」
「子供と思って侮ってはいけませんよ。同年代ぐらいのフェイト殿とて驚異的な実力を発揮しているのですから。
 人の成長を甘くみては危険です。・・・私もあのぐらいの年から剣を振り始めたかな」
「おまえの成長過程は興味深いから一度見てみたいな。まぁそれはともかくフェイトの場合は師匠の仕込みがいいから強いんだよ。
 あんな独学で魔法を覚えたようなガキンチョとは違ってちゃんと努力を重ねているんだからな」
「プレシア殿の教育なら否が応でも強くなりそうですね」
「いや・・・正確にはフェイトの師匠はプレシアじゃない」
「え」
「リックが気にするようなことじゃないよ。忘れてくれ。フェイトの師匠はすでにこの世にはいないから」
「そう言われると気になります」
「気にすんなったら気にすんな。今のアタシ達には関係ないことだ」

 全てのタコヤキを平らげてご馳走様とお茶を飲んで一服つくアルフ。
 口元には青海苔がつきまくってて見栄えが悪いので服のポケットに偶然入っていたハンカチで軽く拭う。
 サンキューとアルフはリックに言うとジュエルシードを手にして縁側から降りた。

「どこに行くんです?」
「あのお子様にちょっとした挨拶だよ」
「何か不安ですから私も一緒に行きましょう」
「なんで不安なんだ、別に脅すつもりはないって」

 リックも縁側から降りてアルフに付き従う。
 なんだろうな、なんで猛烈に嫌な予感しかしないんだろう?
 何か縁起が悪いことでも起こるわけじゃないのに。

「やぁやぁやぁ!こんにちはお嬢さん。素敵なカッコをしているね」
「わわ!こ、こんにちは!!」

 那美達に自分の事を嘘を織り交ぜて説明しているところへアルフの声がかかったのでなのははびっくりする。
 慌てて挨拶するがそれは見知らぬ女性。
 なんで言葉をかけてきたか分からない上に那美達がひっきりなしに質問をしてくるから混乱してきていた。

「昨日はリックが世話になったようだね。あたしの仲間を助けてくれてありがとうね」
「え?リックさんって・・・あ」

 アルフの後ろに見覚えのある姿の男性がいた。
 赤の色がとっても特徴的で大きい人。
 昨日の怪物に遭遇して命の危機に瀕していた所を赤い長剣を振るって助けてくれた命の恩人。
 それらしき剣を収めている木の鞘を手に持っている。
 間違いない、リックさんだ。

「こんにちはなのは殿、昨日はお世話になりました」
「こんにちはリックさん!私こそ助けて頂いてありがとうございました!」
「あれ?なのはちゃん、リックさんとお知り合いなの?」
「はい、色々とありまして。複雑なのでちょっと説明できないのですが」
「それよりなのはー。私と遊んで。久しぶりなんだからいいことしよう」
「うわ、いいことしようなんてエロい台詞吐く狐だなー」
「なに言ってるんですかアルフ殿」
「・・・は!?久遠が妖狐だって事を隠すの、このほのぼの会話のせいで隠し忘れてた!!どうしよう!?
 リックさん達はまさか久遠も退治対象に入るんでしょうか!?」
「那美殿落ち着いて下さい、この手の妖怪は見慣れていますから。それに害意のない者まで退治したりしませんよ」
「よかったー・・・のかな?」

 私の世界では経験地稼ぎの雑魚としてやられまくるかもしれないけど。
 その事は心の奥にしまっておくことにした。

(いいなぁ、皆会話に混ざれて。喋ることが出来ないってこんなに不便なんて)
(ごめんねユーノ君。ちょっとだけ我慢してね)

「さて、話は変わるけどあなたがここに来ている本当の目的はこの石でしょう?」
「あ!」
(・・・ジュエルシード!!あの男の仲間だからもしやと思ったけど、先手を打たれたか)
「あら、綺麗な石ですねー」
「あの怪物を退治した時の副産物と言っていいかな。危険だから那美ちゃんは触っちゃ駄目だよ」

 ユーノはしまったといわんばかりに心の中で頭を抱えていた。
 なのはは怪物に出会わなかった事をほっとしている反面、この女性はジュエルシードを一体何の目的で
 手に入れたのだろうと疑問に思っていた。
 この人もリックさんと同じく故郷に帰りたいのかな?
 でも、リックさんとは何か違った考えの持ち主っぽい。
 なにに使用する気だろう?

「もう言わなくても分かるでしょう?ここは大人しく立ち去るのが賢明・・・ん?」

 突然なのはの持っているレイジングハートが輝き出した。
 中核が発光して周りを照らし出すと青い石、ジュエルシードが空中に浮遊した。

「あ、こら!なに勝手に空中に動いてるんだ!?おい、そのデバイスの発動を止めろって!!」
「そ、そんなこと言われても・・・!」
「あらあら、とっても不思議な現象。なのはちゃん本当に魔法使いみたい」
「なのは、すごいすごい」
「・・・さっき感じた猛烈な嫌な予感ってまさか」
『sealing mode.set up......stand by ready.』

 アルフは石を捕まえようとするがジュエルシードは捕らえようとする手から器用に避けていく。
 まるで何かの意思が宿ったかのように。
 そして石はレイジングハートの赤い中核部分の前で止まったかと思うと。

『sealing......receipt number XVI.』
「あ」
「あ」
「「ああーーーー!?」」

 石はそのままレイジングハートに吸収されて消えていった・・・

 アルフは悶えて石を捕まえようとした勢いそのままに地面に突っ伏した。
 リックは嫌な予感が的中したことに空を仰いで嘆いていた。
 神よ、なぜこういう時にかぎって予感は当たるのですか?

「石が吸い込まれて消えちゃった!?・・・けど危険な石らしいけど大丈夫なの、それに触れて身体に異常とかない?」
「その点についてはレイジングハートが安全を保障してくれてるみたいです」
「へー・・・ってなのはちゃん、その口振り・・・もしかしてリックさん達みたいに退魔師の真似事をやっているの?
 そのステッキ、本当にただの杖かとても怪しい。さっきの私への説明も不審な点あったし」
「え!?それはちょっと違うというか当たっているというか」
「・・・やっているのね。子供がこんな危険な仕事に手を出しちゃいけません」
「で、でも危険だけどやれる人間が今のところこの地域には私しかいないから!」
「そういう仕事は私と久遠がまとめて引き受けます。なのはちゃんは家族に心配かけちゃ駄目」
「なのは、危険な目に遭うのは私達だけでいいから危ないのに手を出すのはやめて」
「そ、それでも大事なことを私は託されたから!知ったからには黙って見過ごすなんて出来ない。
 困っている人がいて自分に助けられる力があるのならそのときは迷っちゃいけないってお父さんに教えられたから!!」

 なのはと那美達は問答を始める。
 お互い自分の主張する部分については一歩も引かない様子だ。
 那美と久遠としてはこんな幼い子が命を落とすことになったらと心配で仕方ないのだ
 危険な仕事をしていると知っていてそれを敢えて黙り込むのは高町家の家族に負い目を感じてしまうこともある。
 危険な目にあわせて悲しませたくない。
 私も、久遠も、高町家の皆さんも。
 目の前に立つ幼い少女は何かしら大切な事を知って動いてるのだろうが幼すぎる。
 義理の姉、薫みたいに才能と意志に恵まれた子供であればまだいいのかもしれないがそれでも危険すぎると思う。
 やはり子供は大人しく平和に育っていってほしい。
 舌戦は続くが那美の論説が優勢であり、まだまだ子供のなのはが劣勢になっていた

 そこへアルフが不気味な笑いを上げて割り込んできた。
 その笑いに思わず怯えるなのはと那美。
 なんだかそこらへんのチンピラよろしくな笑い方だった。

「なぁ、お嬢ちゃんよぅ。ジュエルシード返せよ。いきなりやってきて横取りは感心しないなぁ、感心しねぇよ」
「あぅ!?い、今返しますから待って――」
(なのは!前にも言ったはずだ、この人はあの男の仲間だ。いかなる理由でも石を渡しちゃいけな―――)
(とりあえずユーノ君は黙ってて!!)
(ちょ!?ボクの言う事無視しないで!重要な問題なんだから!!さっき言ってたお父さんの教えはどうしたのさ!?)
(別問題!リックさん達が苦労して手に入れたんだからそれを私が横取りなんて許されないと思うの!!)
(そんなこと考えてるレベルじゃないのに・・・楽して手に入れられたのに手放すなんて)
「レイジングハートお願い!さっきの石をあの人に返してあげて!!」
『No, I will not.』(嫌です)
「きょ、拒否られたー!?どうして!?」
(よく言った!流石ボクの所持していたレイジングハート!!)
(ユーノ君・・・家に帰ったらちょっとお話しようか)
「こ、この野郎!その綺麗な赤い宝石をフッ飛ばしてやるぜ!!」
「アルフ殿落ち着いて下され!私も少々頭にくるものがありますがここは冷静に!!」
「止めるなリックー!!」

 リックの制止を聞かずにアルフはなのはに向かって拳を振り下ろす。
 なのははそれに思わず反応して杖を正面に出し防御態勢、自動的に防御魔法プロテクションが張られる。
 だが、今まで強固を誇っていたプロテクションにヒビが入った。
 怒りに燃えるアルフはさらに拳を結界内に侵入させていく。
 バリアブレイク。
 アルフが得意とするものであり対象の防御魔法に割り込みの魔力をかけて破壊する技だ。
 そして張っていた防御魔法は容易く破られ、なのはは派手に吹っ飛ばされていた。
 地面を転がり神社内の中心に留まる。
 肩に乗っていたユーノはとっさに攻撃時に離れて回避、すぐになのはの近くに寄る。

(なのは!?大丈夫!?)
(う、うん。この服のおかげでなんとか・・・でもどうしよう。すごい怒っているあの人)
(あの様子じゃ絶対に引く事はなさそうだ。まずい。今のなのはじゃレベルが違いすぎて勝負にならない)

 その怒り狂っている女性は再びリックに取り押さえられなだめられていた。
 だが、それで収まるようなアルフじゃない。
 なにせ目の前で目的であり自分達の進退がかかっているジュエルシードを横取りされたのだ。
 平常心を保て、というのは無理があった。

「やりすぎです!相手は子供ですよ!?アルフ殿はなのは殿の命を奪うおつもりか!?」
「黙ってなリック!子供だろうが大人だろうが私達の手柄の横取りを堂々としやがったんだ。この落とし前はきっちりつけないと腹の虫が収まらないね!!
 アンタは悔しくないのか!?さっきから聞いてるとあっちのガキに味方して、ジュエルシードはどうでもいいって感じだぞ!!」
「私だって石を奪われて湧き立つ感情はありますよ!ですがそれとは別問題です!!貴女は必要以上に力を行使しようとしている!!
 下手をすれば命を奪いかねない力だ!子供の命を奪ってまで石を欲しいと考えているのですか!?」
「流石にそこまで考えちゃいないよ。だが少々おいたが過ぎた。キツイおしおきが必要だと考えているまでさ!!」

 その言葉を最後に口火を切りなのはに向かって駆け出す。
 元は大型獣を素体にしている使い魔のせいなのかその速度は速い。すぐになのはの前に立った。

「そら!歯ァ食いしばりな!!」
「くっ!間に合え!!」

 ユーノが急いで吹き飛ばされたなのはの前に立ち防御魔法を張る。
 魔法陣のシールドが展開されて振り抜こうとしたアルフの拳が宙に浮いて立ち往生、破るか破られないかの拮抗状態となる。

「邪魔するな!お前なんか焼いて煮込んで食っちまうぞ!!」
「ぐっ・・・!やれるものなら・・・やってみろ!!」
「アルフさん!落ち着いて下さい!!なのはちゃんは悪気があってやったわけじゃ・・・」
「那美ちゃんは黙ってな!!」

 アルフとユーノの迫り合いが続く。
 いかん、このままでは本当にあの子達に大怪我をさせかねないぞ。
 反感を買うのを覚悟の上で止めねばならない。

 リックが駆け出そうとした時だった。
 突如晴天だった空が曇り暗雲が漂い集まってくる。
 周囲がどんどん暗くなり、ついには雨まで降り始めてそれが強くなっていく。
 那美が険しい表情をして隣にいる久遠を見つめている。

 なんだ?一体なにが起ころうとしているんだ?

「ふぎゃあああああ!?」

 神社内に絶叫が響いた。
 雷鳴が轟き雷が落ちた・・・アルフに。
 全身を真っ黒にしたアルフが膝をつき、ケホッと灰色の煙を口から吐き出し、片膝をつく。
 魔力に対しての耐性があるのかそれとも雷撃の威力が弱かったせいなのか頭をフラフラさせるだけで
 致命傷には至ってない、よかった。

 しかしこの状況の急激な変化は一体?

「なのはに手を出す奴、絶対に許さない」

 あの小さな妖狐の声が周囲に広がった。
 その声に振り向くと全身に雷を巡らして帯電している久遠がいた。
 光が発生して久遠を取り巻き包み込んでいく。
 その光が神社一帯を一瞬であるが強烈に照らす。
 目が眩んで光が収まった後には五本の尻尾を生やした大人の女・・・この世界では恐らく最強最悪の妖狐がいた。

「なのはは私が守る!!」
「ちょ、ちょっと久遠!?何する気なの!?」
「ごめん那美、ちょっとだけ暴れる」

 雨の中の神社を疾走する妖狐。
 水溜りが跳ねて久遠の走った地面に無数の水の波紋が出来る。
 目標はただ一つ、なのはを傷つけようとしたあの女だ。
 大切な友人に害意を為すことは万死に値する!!

「なんだってのさこれ!?か、身体が痺れて上手く動かない・・・!!」
「うあああああ!!」

 雨と暴風の中、久遠の爪がアルフの身体を切り裂こうと振り抜かれる。
 何者にも目が止まらない一撃は確実に入ると思われた。

「・・・なんで邪魔をする、お前?」

 切り裂こうとした爪がリックの手によって押さえられ危うく血の海になることを防いだ。
 久遠の腕を押さえている手が強力な腕力に耐えようと小刻みに震えていた。
 そのまま睨み合い、時が止まったように二人はしばらく動かず一時的にだが雨の勢いが弱まり静けさが訪れた。

「先に乱暴を働いてしまった私達が言うのもなんですが冷静になりましょう、お互い。
 このままでは本当に死人が出てしまいます」
「それは出来ない。そいつはなのはを傷つけた。だから許さない。邪魔するならお前も一緒にやる」
「困りましたね、アルフ殿は私の大切な仲間だ。その大切な仲間を傷つけるなら私も強行手段に出ないといけません」
「やるのか?」
「やらないといけないというのなら・・・仕方ありませんね」

 その言葉を合図に両者とも間合いを取る。
 久遠の戦闘の意志がさらに強くなりそれに呼応するかのように雨と風が強くなった。
 リックの手に持った鞘が赤く変化する。兜を被り剣を構えてアルフの側に立つ。

(アルフ殿、動けますか?)
(痺れがなんとか取れてきたがまだ動きづらい。それにしたってなんだ今日は。厄日だよ)
(それに関しては同感です)
(しかしどうするんだリック?見たところやばそうだぞあの狐)
(まともに相手をしたら勝利は難しいですね。まともに相手をすればですが)
(うん?何か策はあるのかい?)
(まぁその、策とは言えないんですが)
(勝つ方法あるんならやれ、もうジュエルシードどうこう言ってられない状況になっちまったよあの狐のせいで)
(分かりました。アルフ殿、お覚悟を)
(へ?)

「いきますよ!マリア殿直伝、チューリップ人間大砲!!」
「だぁぁぁぁぁぁ!?」

 アルフの後ろに回りこみリックは豪快に弐武豪翔破を地面に叩きつけた。
 今回は斬れ味のある殺傷力ではなく爆発の衝撃波の特化に工夫した技にアルフは勢いよく空中に飛んでいって空の彼方へと消えていった。

 チューリップ人間大砲。
 それはマリア・カスタードと呼ばれる技師が堅牢な要塞を攻略するために開発したものだ。
 その使い方は文字通り人間を大量に入れた沢山の大砲を用意して要塞に向かって一斉発射。
 その圧倒的人員で侵入して一気に攻略するものである。
 だが、これはあまりにも安全面に問題がある事と戦果が全然上がらなかった事、それに人道的な問題からすぐに廃止されたものである。
 リックの場合は応用版(?)としてマリアから伝授されたが使い道は一生無いだろうと思っていたら
 こんな場面で役立つことになるとは思わなかったのであった。
 だってアルフは空にフッ飛ばしても空中を飛べて平気だから。

 あまりの突飛な行動にその場にいる人間と妖怪一同が呆然とする。
 だがリックのターンは終わらない。

「それではさらば!車懸り――姫鶴!!」
「逃げるのか!?ずるいぞ!!」
「お互いここで争っても利益はありませんよ久遠殿。縁があったらまた会いましょう!那美殿もお達者で!!」
「は、はい!」
「なのは殿!その石は一旦預けておきましょう、だが必ず取り戻します!では!!」

 必殺技を使い、一気にこの死地から脱出する。
 だが悪戯好きの妖精さんはどこにでもいるものである。
 必殺技によって発生したカマイタチが久遠と那美の服を切り裂いた。

「あ!?」
「きゃあっ!?」

 那美殿は白、久遠殿は・・・穿いてないだと!?。
 そんな感想を抱きながらリックはこの場から去っていった。

「ぬあああああああ!?」

 神社の階段を転がり落ちながら。
 さっきも転がり落ちたのに全然反省してなかった。
 それでもリックは不屈の闘志で立ち上がり急いでこの地から逃げていった。
 鼻血を出しながら。

「え、えーと、とりあえず助かったのかな?」
(た、多分・・・命拾いしたと思う)

 へなへなと地面に座り込むなのは。
 雨はまだ強く降っていて地面は大量の水で濡れていたがそれを気にする余裕がなかった。
 服を濡らしていく雨を浴びながらなのはは考える。
 命拾いしたというのがまだ実感出来ずにいた。
 あの女性にまともにぶつかり合ってたらどうなっていたんだろう?
 ミンチにされる?
 そう考えると恐ろしい。
 私はリックさん達の逆鱗に触れてしまうことをしてしまった。
 今度会うときは・・・敵として現れる事になるのだろうか。

「うああああああ!?」
「え!?」

 再び神社内に絶叫。
 雨を降らせている雲の中を閃光が走り、雷が再び落ちた・・・今度はユーノに。
 真っ黒焦げになりつつもかろうじて地面に立ち続けて何が起きたのか把握しようとするが混乱していた。
 というか雷落ちて生きているのが不思議だが。それ故に混乱するのだろうか。
 ユーノ君も丈夫だなぁ。普通なら倒れているのに。
 ってそんなこと考えてる場合じゃない!!

「くーちゃん落ち着いて!もう私は大丈夫だから!!」
「久遠!やりすぎよ!!下手したらさっきの人の命を奪っていたのよ!!今すぐ普通の姿に戻りなさい、お説教よ!!」
「こんな結末認めない!せっかくなのはを守ろうと本気出したのにすぐに逃げられて勝ち逃げ行為された!!納得いかない!!」
「べ、別にそれでもいいんじゃないのかな・・・ていうかなんでボクに雷落とすの?」
「お前は本来私がいるべきポジションに居座っている!許せない、私のなのはを返せ!!」
「いや!ボクはそんなつもりでなのはの側にいるわけじゃ!?君の言ってることおかしいような・・・ってぎゃあああ!?」
「こら久遠!八つ当たりはやめなさい!!ってフェレットさんが喋ってる!?」

 神社内はパニックに陥った。
 降り注ぐ豪雨と暴風。轟く雷鳴。落ちる雷。
 建物や木々、そしてユーノに恨みがあるかのように集中砲火する雷撃の嵐。
 久遠を止めるためになのはは必死に説得、那美は止むを得ず自分の使える神咲一灯流最大奥義まで行使することになってしまった。
 事態は夕方にやっと収束。そうなるまで大体3~4時間かかったと思われる。
 ボロボロになってしまった巫女服を着替えた那美は元の状態に戻った久遠に対して一言。

「久遠、罰としてしばらくなのはちゃんに会うの禁止」
「くぅーん・・・」

 それにしても色々物珍しい光景と人物を目にしたなぁ。
 赤い剣士にその師匠、喋るフェレットさんに魔法を使えるなのはちゃん。
 それぞれが様々な特技を持って災厄を祓える力を持っていた。
 私も早く一流の退魔師になりたい。

 色々と受難のあった一日だったけど学べる点もあったかな?
 そんな事を考えながら警察から請け負った仕事を解決すべく那美は現場に向かったのであった。



 ちなみにリック達はどうなっているかというと。

「おいリック!アレのどこが策なんだ!?単にアタシを空にかっ飛ばして自分も逃げてきただけじゃないか!!」
「だから策とは言えないって言ったじゃないですか」
「確かにそうだったけど・・・他にまともなアイディア思いつかなかったのか?」
「無理ですよ。正論を言わせてもらいますと手負いのアルフ殿というハンデを負ってあの妖狐相手に戦うのは厳しい。
 あの状況では戦略的撤退しかありません。石を取り返そうと必死になったらさらに手痛い傷をもらいます」
「私を吹っ飛ばした後、リック一人で戦えば勝ち目あったんじゃないか?」
「正直苦しいかと。あの久遠殿という狐は天候操作を出来る上にフェイト殿やプレシア殿と同じく瞬速の速さの雷撃、
 凄まじい攻撃性能を持っています。肉体性能も見る限りレベルが高い。単純な戦闘能力だけならプレシア殿より上かもしれません。
 勝てない事はないですが正直無事じゃすみませんよ」
「お前をしてそこまで言わせるかあの狐。戦わなくて正解だったってことか」
「ナポレオンの書や信玄の書にはこう書いてあります。逃げるのも勝ちの一つだと。私は戦略的撤退と無理矢理解釈しますがね。
 敵に背を向けて逃げるのは臆病者な気がして」
「時と場合によるだろそれは。頭固いぞ」
「以前と比べればマシになったほうですけどね。我が主、キングとその仲間達と一緒に冒険して逃げるのも勇気の一つだと学びました」
「なんだかなぁ・・・とりあえず帰るか。せっかくジュエルシード見つけたってフェイトに念話飛ばしておいたのに。
 何も収穫なくてぬか喜びさせるのが目に浮かぶよ」
「あの子をガッカリさせるのはちょっと心が痛みますね」
「分かるのか私の気持ち?」
「アルフ殿の態度を見てたらなんとなく、ですが」
「そうか、あんがとな。今回頑張ったお前にご馳走してやりたいけど生憎あの狐の雷撃の痺れがまだ残ってて料理出来ないや。
 コンビニ弁当で我慢してくれ」
「食べれるものであれば私は構いませんがフェイト殿の食事はどうします?」
「うーん、リック。料理は出来るか?」
「軍隊式の料理なので味の保障は出来ません。栄養はあると思いますが」
「むむぅ、仕方ない。今回ばかりはフェイトにもコンビニ弁当で我慢してもらおう」
「今日は色々疲れましたね」
「全くだよ」

 アルフを背負って買い物。そのまま帰路についていた。









「・・・フェイトの方は結局空振りだったか」
「うん、それでリックさんがジュエルシードを見つけたという話がありましたが結果は?」

 フェイトがわずかではあるが顔に期待の色を浮かべていた。
 参ったな、これは。
 心の中ではとんでもなく期待をしていたらと思うと心苦しい。
 でも正直に失敗してしまった事を詫びなくてはならない。
 アルフ殿の気苦労が何となく分かってくる。

「申し訳ありません。入手に失敗してしまいました」
「そうですか・・・」

 落胆の色が見える。
 やはり期待してたんだな。こんな顔をされると罪悪感が湧き上がってくる。

「フェイトー。今回のリックの失敗の責任は私にある。責めるんならアタシにしてくれ」
「え?」
「アルフ殿?」
「いや、だってそうだろ?調子に乗ってジュエルシードを見せびらかしてあのガキに横取りされちまったんだ。
 悪いのはアタシだって。それを取り戻そうとしたら予想外の伏兵がいたし。運の悪さもあるけど全面的にアタシの責任だ」
「そうなのリックさん?」
「いえ、これは・・・」
「リック、別に庇わないでくれ。庇われると自分が惨めになってくる.決定的に最悪な事態を作ったのはアタシだよ」
「・・・むぅ」

 言葉に詰まる。
 そう言われた以上フォローをすることが出来ない。

 フェイトの機嫌をうかがってみる。
 うかがった顔は無表情、だが心なしか優しさがあるようなのは気のせいだろうか?

「一体何があったのか分からないけどアルフを責めるようなことはしないよ。アルフは大切な仲間なんだから」
「罵倒された方が気楽なんだけど・・・今回は本当に酷かったんだから」
「まぁまぁ、あまり自責されずに」
「そうだよ、チャンスはまだあるんだから元気を出して」
「二人とも・・・ごめん」

 どうやら気のせいじゃなかったみたいだ。
 リックは弁当のぺペロンチーノを食べながら会話を続ける。
 今回は運が悪かったというかなんというか。
 色んな想定外の状況が発生してしまったからアルフ殿を責めるわけにもいかない。
 もしかしたら自分がやり方次第で取り戻せるチャンスもあったのだから。

「それにしても続けて石を取られましたか・・・これについてプレシア殿は何か言ってきましたか?」
「母さんにはまだ成果をあげてないから報告には行ってません。逆にこんな有様を報告したら怒ってしまうので」
「確かに、あの鬼ババァがどんな行動を起こすか分かったもんじゃないね」

 雷撃による不調と戦いながらも食事するアルフ。
 自己嫌悪に陥っているのか溜息をついてスパゲティをフォークでグルグル回すのを眺めながら遊んでいた。

「引き続き探索、アルフ、リックさん、頑張ろう」
「はい」
「あいよー」

 今日のフェイト達は徒労に終わって報われなかったが気を取り直して。
 一生懸命やろうと心を固めた。

「ちなみにジュエルシードは見つけたのに横取りされたのはどうして?リックさんとアルフの二人組みなら簡単に取り返せると思うんだけど」
「聞かないでくれ・・・」
「嫌な出来事でしたね・・・」
「???」












 数日後・・・


「やっと次のジュエルシード反応を見つけたか」
「うん」
「今度は発見するのになかなかてこずりましたね」

 とある豪邸の近くに広がる森の中にて。
 フェイト達は身を潜めてジュエルシードの発動を待っていた。
 リック、アルフ、フェイトそれぞれが目立つ格好をしているのでこそこそと隠れている。
 フェイトに至っては露出が多い黒のバリアジャケットに身を包んでいて一際目立つことこの上ない。
 この娘の戦闘服のデザインした人は一体誰なんだ?
 そういえば・・・初めて青い石の怪物と交戦していた時になのは殿が魔法使いに覚醒するためのプロセスが
 聞こえてきたような?
 確か・・・戦闘服となるバリアジャケットと武器はイメージして作るってのがあったかな?。
 とするとフェイト殿の今の格好は・・・。
 こちらの魔法文化は進んでるいろんな意味で、子供がこういう格好をイメージして戦闘服に仕立て上げるんだから。
 私の世界の文化も人の事言えないか。
 特に山田千鶴子さん、あの人はやばい。

「どうしましたかリックさん?難しい顔をして」
「異文化同士の人々の服のセンスについてちょっと考え事を」
「なんじゃそりゃ。今はジュエルシードに集中しろよ」
「はい、すみません」
「なんだか分からないけど私が馬鹿にされたような気がする・・・」

 三人ともじっと草の茂みに伏せる。
 とにかくジュエルシードの発動を待つ。
 待つのだがいつまで待てばいいんだろうか?
 反応があるなら発動する前にしらみつぶしに探したほうがいいんじゃないだろうか?

「あの、ジュエルシードが発動する前にこの辺りを探索して見つけたほうがいいんじゃないでしょうか」
「手間がかかりますから効率的ではないです。一応見つける簡単な方法がありますがそれには問題が」
「問題?」
「辺り一帯に手当たり次第に魔力を打ち込んでジュエルシードを強制発動させるんです。
 しかしその方法だと派手すぎて人目についてしまうんです。結界を事前に発動させて抑える事は出来ますがどうしても限界が」
「おまけに被害も大きくなっちゃうしね。それにあの例の魔導師が結界の発動を嗅ぎつけて邪魔してくるかもしれないし。
 出来る事なら自然発動、被害がでないように速やかに入手したほうがいいのさ」
「ふむ」

 結局発動を待つしかないのか。 
 いつ発動するか考えると気の遠くなる話だが仕方ない。
 茂みに伏せ続けるのも疲れたので豪邸の人間に見えないように立ち上がって木に寄りかかった。
 腕組みをして気長に待つ。

「む?」
「お?」
「あ・・・」

 三人がそれぞれの反応をする。
 リックの胸元の三日月のペンダントが発光していた。
 フェイトとアルフも感じ取っていたがアルフは嫌そうな顔をしていた。

「ジュエルシードの発動と同時に結界の発動・・・またあのガキか」
「アルフ、それってリックさんから二連続で石を奪ったっていう魔導師?」
「間違いないよ。つうか私達以外で魔導師がいるのはアイツ一人しかいない」
「・・・皆行こう」
「あいよ」
「御意」

 三人がそれぞれ臨戦態勢で石の発動場所に走り、そして張られた結界内に侵入する。
 そこで見たものは。

「にゃおーん・・・」

 巨大な穏健そうな猫の姿だった。
 フェイト達三人が一瞬硬直して目の前の物体がなんなのか見直す。

「にゃーん・・・」

 ・・・どう見直しても猫だった。 
 無害そうに見えるので放っておいても大丈夫な。
 フェイトは無表情、リックは物珍しげに、アルフはげんなりした顔で巨大な物体を見上げていた。

「アタシ帰っていいか?」
「駄目だよアルフ」
「ジュエルシードを手に入れる為ですから帰っちゃ駄目ですよ」
「なんかやる気なくなったんだが、見物してていい?」
「まぁ、それなら。今回は私一人でも大丈夫そうだから。でも危なくなったら助けてね」
「分かってるさ」
「私はフェイト殿の近くに隠れてすぐに救援に入れるようにしましょう」
「お前が出張ると使い魔のアタシの立場がなくなるなー・・・」

 苦笑しつつも頑張ってこいとアルフは手を振って見送る。
 フェイトは飛翔して猫の元へ、リックは身体を屈めてサポートポイントを探る。

(リックさん)
(なんでしょうフェイト殿?)
(今度こそは絶対手に入れましょう、ジュエルシードを)
(分かっていますとも)

 短い念話のやりとり。
 それっきり会話がなくなりリックはいい隠れ場所の大木を見つけそこに隠れる。

 そしてフェイトは・・・あの例の魔導師といきなり交戦していた。

『Photon lancer Full auto fire』
『Wide area Protection』

 複数の雷の弾丸を弾く白の魔導師。
 フェイトは特に気にすることも無くただ呟く。

「例の魔導師・・・」

 フェイトの放った魔法が巨大な猫の足元に命中した。
 猫はバランスを崩し、慌ててその上に乗っていた白の魔導師――高町なのはは空中を浮遊して地面に降り立ち、杖を正面に構える。
 それを見てリックは感嘆の声を上げる。

「空を飛べる魔法を使えるようになっているとは、なのは殿の才能は未知数だな」

 だがまだまだ未熟だろう。
 あの子は実戦経験が足りなさ過ぎる。
 才能で足りない経験を補っているようだがそれにも限界がある。
 同じく才能があり、鍛錬を積んでいるフェイト殿に立ち向かうのは無謀だ。
 どちらが勝利するかは決まっている。

「同系の魔導師・・・ロストロギアの探索者」

 木の枝に降り立ったフェイトを見てユーノはその正体に少しだけだが勘付いた。

「間違いない・・・ボクと同じ世界の住人。そしてこの子はジュエルシードの正体を・・・」

『Scythe form Setup.』

 フェイトは有無を言わさず光の鎌を展開して斬りかかった。
 足を薙ぎ払おうとするも間一髪なのはは空に上昇して回避した。
 だが攻撃の手は止まらない。

『Arc Saber.』

 三日月の光の刃が放たれた。
 楕円状に軌道を描き襲い掛かる。

「くっ!」

 それも辛うじて防御する。
 だが瞬時にフェイトはなのはの目の前に現れバルディッシュを振り下ろす。
 
「あう!?」

 何とか受け止め鍔迫り合いに入る。
 だが形勢は悪くなっている。
 なのはには今のところこれといった攻撃手段が少ないため魔導師相手の場合には防御に回らざるを得ないのだ。

「なんで・・・なんで急にこんな?」
「・・・答えても、多分意味が無い」

 鍔迫り合いが解かれ、フェイトは先程と同じように木の枝へ。
 なのはは地面に着陸する。

『Device form.』
『Shooting mode...Divine buster Stand by.』
『Photon lancer Get set.』

 両者が睨み合う。
 それぞれが自分の得意とする技を放とうとしてデバイスを構える。

「にゃおーん・・・」

 巨大化した猫の声になのはは一瞬気を取られた。
 その隙をフェイトは見逃さない。
 ただ、一言。

「ごめんね・・・」

 懺悔とも思える声と共に雷撃弾が発射された。

「きゃあう!?」
「なのは!!」

 爆撃で空中へ舞い上がったなのはを受け止めようとユーノが走った。
 なのはは意識を失っているのか無防備。
 このままでは大怪我をする。
 一刻も早くなのはを助けようとする一心で地面を駆ける。

「ふっ!!」

 ユーノが展開した三重の魔法の円陣が落ちてくるなのはを優しく受け止める。
 怪我はどの程度か分からないが回復魔法を施さないと!!

 その間にフェイトは巨大な猫の元へ接近していた。
 
『Sealing form.Set up.』
「捕獲!」

 バルディッシュが地面に振り下ろされた。
 それとともに雷が地を走り、猫に向かって一直線。そのまま直撃した。

「にゃおおおん!?」
『Order.』
「ロストロギア、ジュエルシードシリアル14、封印」
『Yes sir.』

 雷が空に向かって発射され、それが虚空に消えていく。
 そして小さな暗雲が漂い、そこから雷撃の雨が降ってくる。
 ジュエルシード封印には少々荒っぽい方法だ。

『Sealing.』

 最後にバルディッシュの声と共に光の柱が猫を包んだ。

『Captured.』

 フェイトは倒れて元に戻った子猫の近くに寄る。
 猫の側に転がってあるジュエルシードをバルディッシュに収納した。

「やっと・・・やっと手に入れたジュエルシード」

 自分が、そして母が望んでいた物を手に入れることが出来た。
 引き続きこれを集め続ければ母さんは喜んでくれる。
 そして・・・昔の優しい母さんに戻ってくれるはずだ。

 目的達成したフェイトはなのはを一瞥してそのまま去ろうとしたその時だった。

「待って・・・」

 フェイトの足が止まった。
 振り向けばよろよろと立ち上がる少女の姿。
 服等の外面の傷は少ししか見受けられないが初めての魔導師同士の戦闘に内面、精神の消耗が激しい。
 荒い息をついている。
 元々は平凡で優しい少女だ。
 こんな暴力のぶつかり合いは精神を削るのだ。しかも見知らぬ人間と問答無用ならなおさらである。

「なのは!立っちゃ駄目だ!!怪我の治療を施すからじっとして!!」
「その石を・・・返して。それはとっても危険なものなの」
「・・・それは出来ない」

 フェイトはマントを翻し再び森の奥へと消えていく。 
 もう無力化はしてある。
 このまま無視をしても問題ないと決めて仲間の下へ帰ろうとした。

 だが。

「話を・・・聞いて!!」

 力を振り絞ってなのはは素早く飛び上がりフェイトの肩を掴んでいた。
 これにフェイトは少々驚きを隠せなかった。
 速さを自慢としている自分が反応出来なかったのだ。
 リックに続いて二度目だ。背後を取られるのは。

 この子は潜在的に恐るべき力を秘めている。

「お願い、お話しよう?どうしてジュエルシードを狙うの?その目的は?あなたは一体何者なの?」
「言ったはずよ、答えても多分意味が無いと」
「そんなの聞かなくちゃ分からない!!」
「・・・まるで駄々っ子、話をしたところで平行線なのに」

 フェイトがなのはの腹に鋭い掌底を打ち込んだ。
 その勢いで近くの木に叩きつけられる。
 木にぶつかった衝撃でなのははうめき声を上げている。
 意識も朦朧としているようだ。

 これじゃただの弱いものいじめだ。
 もうこの子に付き合ってられない。
 一刻も早くここから退散しよう。

「まだ、だよ・・・まだ終わってないよ」
『Shooting mode...Divine buster Stand by.』

 しかし相手はしつこかった。
 木に寄りかかりながらも立ち上がり杖を構えて砲撃モード。
 ディバインバスターを発射しようと力を蓄えていた。
 これにユーノは焦ってなのはの前に立つ。

「やめるんだなのは!今の状態で撃ったらただじゃすまない!!」
「その子の言うとおりだよ・・・自滅してしまう」
「無理矢理にでもあなたと話をする!その為だったら手段を選ばない!!」

 無茶苦茶だ。武力行使をしてまでの話に冷静な話し合いなんて出来ない。
 さっき頭を木に打ちつけたのだろうか?
 錯乱状態に陥っており人の話を全く聞こうとしない。
 あのまま魔法を撃てばあの子は心身に深刻なダメージを受けるだろう。
 もう戦いの決着はついているんだ。
 無闇に傷つけるのは不本意だ。止めに入ろう。 

「受けてみて!これが今の私の全力全開!!」

 駄目だ、相手の方が一手先んじて間に合わない。
 このままじゃあの子が・・・。


「ディバイーン・・・」
「そこまでですなのは殿」

 業風一閃。疾風と共に目に見えない剣の影が走った。
 なのはの持っていたレイジングハートは空中に跳ね飛ばされ回転、そして地面に突き立つ。
 杖を弾き飛ばした剣はなのはの首元に突きつけられていた。
 それで正気を取り戻したのかなのはは自分に突きつけられている剣を見て震えていた。

 間一髪。
 魔力の暴発を防ぎなんとか少女の暴走を止める事が出来た
 穏やかな風がその場を和ますように吹き始めて草がたなびく。
 フェイトは溜息をついてこの場に割り込んできた赤い男に声をかけた。

「・・・リックさん、助太刀に入るのならもっと早くして下さい」
「すみません、フェイト殿一人でも大丈夫と思っていたので。それにこの子がこんな無茶な行動を取るとは思わなかった」
「後の処理は任せます。その子達はあなたがよく知っている人物だと思うので」
「いえ、私はそれほどなのは殿等と親しいわけではないのですが・・・っていっちゃった」

 そのまま森の奥へと消えていくフェイト。
 困ったな、処理といっても後は私も帰るだけなんだが。
 石は手に入れたんだし。
 他にこの子達に何をしろと言うんだろう?

「そうだな・・・」

 馴れ合いじみたやりとりはやめるべきか。 
 フェイト殿は明らかな敵としてなのは殿の前に現れ、戦った。
 私もいい加減甘い考えは捨ててこの子とは敵として相対すべきだろう。
 なのは殿は恐らく私達よりジュエルシードを多く確保しているはずだ。
 少しづつだが邪魔者となってきている。
 もう遠慮はしていられないだろう。
 私達の目的の為にも。

「怖いですかなのは殿?」
「・・・」

 なのはは無言で答えない。
 ただ首元に突きつけられている剣に、
 そして目の前の、以前は丁寧で優しかった男の顔が冷徹に変貌していることに恐怖して震えていた。
 ユーノがなんとか隙を窺ってなのはを助けようとしていたが身動きを取れずにいた。

「これが本来の私の正体だ。剣を取り敵対するものは例え女子供であろうと切り捨てる悪鬼だ」
「・・・ち、違う。リックさんそんな人じゃない」

 声を絞り出して否定する。
 だが現実はどうだろう?
 死神は容赦なく幼い少女に剣を突きつけて脅迫に等しい行為をしているではないか。
 幾千の人間と魔物を斬り捨てた剣が赤く禍々しく発光して恐怖を煽る。

「だ、だってリックさんは故郷に帰りたいからジュエルシードを集めているんですよね?
 他に手段がないから仕方なくて。
 さっきのあの子だって何か大切な目的があって私と戦ったはずなの。
 そうじゃなければあんな暗くて、悲しそうな目をしていない・・・きっと悪い子じゃない」
「甘いですね。本当にそう思っているのですか?私は確かに故郷へ帰るために集めていますがあるお方の願いの成就のために集めてもいる。
 その願いの成就とは恐らくあなた達にとって許せない絶対悪だ。さっきの少女もその願いを叶えるべく動いている私の仲間。
 そんな人間達をあなたは善人と言い張るのですか?それは否、でしょう」
「違います!リックさんは嘘をついています!!だったらなんで最初私がジュエルシードの怪物に襲われた時、身体をボロボロにして、
 死にかけてまで助けてくれたんですか!?そんな人が悪人なんて絶対違う!!」
「あの時は色々事情を知らなかったんですよ。あなたの魔法使いとしての才能の覚醒など予想外の出来事もありましたしね。
 ジュエルシードを封印できるなのは殿は邪魔だ。命をかけてまで助けるべきではなかった」
「ぜ、絶対嘘ですその言葉は!事情を知らないのに私を助けてくれたのならそれは純粋に人を守りたいという気持ちがあったからじゃないのですか?
 リックさんが冷酷な人間だったら私の命なんてどうでもよくて見捨てていたはずじゃ・・・命をかけてまで助けるべきではなかったなんて
 きっと偽りの言葉。あなたは悪い人じゃないです」
「なのは殿は故郷にいた頃の私を見てないからそんなことが言える。軍を司る者として時には仲間を見捨てる、もしくはわざと囮にして
 自軍の被害を最小限に抑えた事は何度もやってきた。その人間が冷酷でないと?悪人でないと?」
「そ、それは・・・リックさんが特殊な事情でそうしなければいけないからやったんだと思います。本当はその事実に心を痛めているはず、なの・・・。
 自分にもっと力があれば皆を助けたい、あなたはそういうタイプの人間に見えます」
「やれやれ、あなたは他人という者に対していささか好意的に見過ぎている。そのままでは私達と戦う前から負けます」
「・・・戦うんですか、リックさん達と?」
「お互い譲れないものがあってジュエルシードを集めているのですから薄々は感じていたでしょう?」
「命を助けてくれた恩人と争うのはとっても悲しいです・・・回避出来ないんですか?」
「いずれそんなことを気にする余裕はなくなります。そしてあなたも覚悟を決めて戦いに望むはず」
「でも私は・・・私は・・・」

 考えは巡り回り迷いを見せるなのは。
 精神的に達観しているフェイトと違ってなのははまだまだ青い。
 果たしてこの子の精神はこの先の戦いに耐えられるのだろうか?
 ・・・考えてももう敵同士だ。
 アトバイスを送る必要は無い、戦いの決意は自分でなんとか決めるべきだろう。
 遅くなったが宣戦布告の狼煙は上げられたのだ。

 首元に突きつけていたバイ・ロードの刃をなのはから遠ざける。
 そのままゆっくり現れる木の鞘に剣を包み込ませ脅迫状態を解いた。
 気を張り続けていたのだろう、剣をどかした途端少女の身体は地面に崩れ落ちた。
 バリアジャケットが解除されて地面に突き立ったレイジングハードが赤い宝石に戻って持ち主の手に収まる。

「なのは!?」
「スクライア殿、この子の治療を」
「言われなくても分かっている!なのはから離れろ!!」

 リックは黙ってなのはから遠ざかる。
 ユーノはそれを確認すると急いで駆け寄り治癒の光を施した。

 溜息をつく。
 宣戦布告したとはいえこの幼い少女を敵に回すには気が引ける。
 明確な敵意がないのだ。おまけに敵方の事情を考え、それを心配する。
 正直、最初に出会った時のフェイトやアルフ、プレシアの方がやりやすい。
 それに戦力は明らかにこっちの方が上だ。
 ジュエルシードを巡って戦った場合、どちらが勝利するかは決まっている。
 不謹慎だがなのは側にももうちょっと仲間がいて欲しいとおもう。
 お互い対等な条件で戦ったほうが気が楽だ。
 ・・・こんなことを考えている自分は甘いな。人の事はいえないか。
 未だに騎士として正々堂々戦いたいと願っている。
 アルフ殿にこの精神からくる矛盾で自分は押し潰されると忠告されているのに。

「よし、応急処置は施した。なのは、立てる?」
「う、ん・・・」

 立ち上がろうとするが足がおぼつかない。
 ふらふらと数歩歩きこむと地面の石につまづいて転びかけていた。
 なんだか最初のジュエルシードの怪物を退治した後、この子が家に帰ろうとした時の光景を思い出すな。
 仕方ない。

「失礼します」
「あ・・・」
「あ!なのはに何をする気だ!?」

 リックはなのはを抱え込んで歩き出していた。
 なのははそれに抵抗する気力も無くただリックの腕の中に身を任せていた。
 ユーノはこの男が何をするか分かったものじゃないと慌ててリックの足元を走り回って歩行を邪魔していた。

「スクライア殿、歩けませんからやめて頂きたいのですが。踏んづけてしまいますよ」
「うるさい!なのはを離せ!!」
「今はあなた達に害意はありません。一刻も早くこの子を休ませたいのでしょう?ならばこのまま運んだほうが安全だ」
「・・・よく分からないな。あなたはボク達に敵として対峙するのでしょう。それなのに今、なのはを助けようと正反対の行動を取っている」
「以前に私達三人はジュエルシードの怪物を退治した仲間です。その仲間の最後の好意ですよ」

 そのまま無言で三人は豪邸へと向かっていった
 共に戦った仲間の最後の温情は暖かさがあると同時に敵になる重苦しさが混ざって全員が複雑な心境であった。
 途中で両腕に抱えられたなのはがぼんやりした目でリックの顔を見上げていた。

「・・・やっぱりリックさんは酷い人じゃない、優しい人です」
「そう思っていられるのも今のうちです、その考えは早く捨てたほうがいい」
「捨てません、色々脅されて怖かったけどなんだかんだで心配してくれてる気がしますから」
「・・・困った子だ、どう見たら私をそんな風に見れるんですか?」
「にゃはは・・・」
「ちゃんと現状認識してください、笑い事じゃないですよ」
「やっぱり心配してくれてます」
「はぁ・・・」


















 月村家正面、その正面の庭で少女達がティータイムを楽しんでいる場所にて。

「なのは!?」
「なのはちゃんどうしたのその傷!?」
「うん、ちょっと転んじゃって・・・」
「それのどこが転んだ傷なのよ!?腕に酷い擦り傷を負ってるじゃない!!」
 
 なのはの友人、月村すずかとアリサ・バニングス。
 リックが抱えてきた友人の姿にその二人が何事かと血相を変えていた。
 すずかが急いで近くにいたメイドのファリンという人物に救急箱の手配及びメイド長を呼んでくるよう伝える。
 
「ちょっとあなた、何者なの?もしかしてなのはに何かやったんじゃないでしょうね?」
「ある物を賭けて決闘を申し込みました。結果、私が勝利してなのは殿は怪我を負われた」
「・・・ハァ!?」
「け、決闘・・・?」

 実際はフェイト殿が戦ったのだが私も最後には助太刀したのだから同じようなものだろう。
 事実を伝えると血気盛んな感じの金髪の少女、アリサがリックに詰め寄る。

「ふざけないで!なーにが子供に向かって決闘よ!!大体月村家の私有地に勝手に侵入して何やってたのよ!?」
「そうですね、泥棒さんでもやろうとしてたんでしょうかね?」
「適当な事言うな!なのはに喧嘩を吹っかけておいて・・・ただで済むと思ってるの?
 アタシが一声かければ怖ーい人達がアンタをボコボコにしちゃうわよ」
「ほう、どれくらい怖いのですか?楽しみですね」
「この・・・!舐めるな!!」
「アリサちゃん落ち着いて!」
「そうだよアリサちゃん・・・この人は色んな事情があって私と戦ったの。だから責めないで」
「こんな得体の知れない部外者の事情なんて知ったことか!この馬鹿なのは!!」
「あぅ」

 軽く頭をアリサにはたかれる。
 それに酷いよーと力なく笑うものの嬉しそうななのは。
 見てすぐ分かるな。
 この子に声をかける二人の少女はなのは殿とは良き関係だ。
 片方は友人を傷つけられた事に対する怒り、もう片方は引っ込みがちだが友人の怒りをなだめつつも静かに冷めた視線で私を非難している。
 根底にあるのは友情、か。この幼い年代でそれを築き上げられるのは素晴らしいことであり羨ましい。
 キングも友人関係だったという今は亡き信長殿とはこういう感じだったのだろうか?
 ・・・私はキングとはただ家臣の関係でありそれ以上の関係ではない。
 出来うることなら固い絆で結ばれた理想の王と家臣の関係でありたいものだ・・・。

「大変です大変です!とにかく大変なんです!なのは様が深い傷を負って・・・!!」
「落ち着きなさいファリン。メイドたるもの、常に冷静かつ優雅に振舞いなさい」
「恭也!なのはちゃんに怪我させた奴をこの館から逃がさないようにトラップフル活動させたわ!!半殺し、いや全殺しにしよう!!」
「やめろ忍!お前が本気出すとろくな事にならないから今すぐ停止させろ!!」
「えー」
「えーじゃない!!」

 館正面の門が大きく開かれる。
 そこからいますぐ戦闘に臨める態勢で飛び出してくる四人がいた。
 両手にブレードを装着して拳を握り締めるメイド二人。
 鋭利な爪を輝かせ腰を低くして飛び掛る姿勢を作る長髪の美女
 そして・・・見覚えのある男性が短い剣、確かJAPANでいう小太刀二刀を両手に持って構える。
 あのちっちゃいメイド、どういう説明したらこんな武闘派集団を呼び出すんだ?
 怪我の手当ての為の救急箱はどこへいった。

 おまけにトラップと思われる細長い棒が各地の地面及び館の外面から数え切れない程伸びてきた。
 先っちょに何かの発射台と思われる穴が空いた球体がついている。
 牽制射撃なのかそれとも試射したのか分からないがリックからみて右側から光の光線が足元に飛んできた。
 焦げ臭い匂いを発して草が燃えて黒い煙を出している。
 ・・・もしかしてとんでもない場所に踏み込んでしまったか?

「夜の一族の科学力は世界一!このままケチョンケチョンにしてやるわよ!!」
「だからよせ!目の前の男の近くにはアリサちゃんとお前の妹のすずかちゃんがいるんだぞ!!
 おまけになのはは敵の術中に落ちて・・・む?」
「・・・参りましたねこれは」

 リックが苦笑いをする。
 なのはの肉親、高町恭也も気づいたのだろう。この場をどうするべきか迷っている。
 現状では多分彼がこの殺気立った場で話が通じる人物だろう。
 今は争う気はないのだから停戦すべきだ。

「なのは殿の手当てをしたい。剣を収めて場に平穏をもたらしませんか?」
「・・・分かりました、なのはは大切な妹だ。いかなる理由があったにせよあなたの行動は今は不問としましょう」
「ちょっと恭也!あいつを私の家に入れるつもり!?」
「そうよ恭也さん!なのはに傷をつけたやつなんて信用出来ない!!ここにマシンガンあったら蜂の巣にしてやるとこよ!!」
「似たようなのあるから貸そうかアリサちゃん?」
「お姉ちゃん!問題を煽らないで!!」
「ゴホン・・・とにかくなのはの手当てと保護をするためだ。それに彼とは面識があるから安心しろ。後、あの人は剣を抜く等という敵意をこちらに示してない。
 その礼儀にいちゃもんつけるなら赤っ恥だぞ。皆落ち着くんだ」
「なのは様を傷つけた時点ですでに敵意を示しているような気がするんですが」
「ファリン、余計な事を言って事態をややこしくするのはやめなさい」
「す、すみませんノエル様・・・」
「あ~あ、せっかく改造に改造したトラップちゃんのお披露目だったのに。ダブルロケットパンチとかファリンの性能も試す機会なのについてない」
「忍、時々お前のそういうとこについていけなくなるからやめてくれ・・・」












「どうぞ、紅茶です。よかったらケーキもいかがですか?」
「いえ、お茶だけで十分です。ありがとうございます」

 月村邸のある一室にて。
 そこでリックは恭也と忍、二人と向かい合って話をしていた。
 メイド長のノエルは三人に紅茶を配り、邪魔にならないように忍の側に立つ。

 リックによって運ばれたなのはは怪我の手当てをして別の部屋で静かに眠っている。
 身体的に問題はないが精神的な消耗が激しい。
 フェイトとの慣れない魔導師同士の戦いで意識が飛んでいてもおかしくない状態なのに今まで
 気絶することなく自我を保っていたがこの屋敷に入ると安心したのか眠りに入ったのであった。
 不屈の精神というべきか、やせ我慢というべきか・・・。
 アリサやすずかは友人の心配をして看病している。
 
「改めて名前を名乗りましょうか。俺は高町恭也と言います。そしてこっちは・・・」
「恭也の内縁の妻の月村忍で~す」
「真面目に名乗れ。内縁の妻じゃないだろう」
「・・・私はノエル・綺堂・エーアリヒカイトと申します」
「リック・アディスンです。よろしく・・・というわけにはいきませんね。この場合は」
「確かに。以前なのはを救ってくれた時は感謝しましたが今回はその逆だ。なぜ俺の妹に害を為したのです?」
「なのは殿は私にとって邪魔な存在となった。それだけですよ」
「随分直球な答えだ・・・あのなのはがあなたほどの武を誇る方にとって何故邪魔な存在に?想像出来ない」
「ある物を集めているのです、それはなのは殿から聞けば分かるとは思いますが」
「ふむ・・・」

 気難しげに、そして顔を険しくしていく恭也。
 腕組をしながら考えを巡らしこの男が今、どのくらい危険かを推し量る。

 なのはのやつめ。
 最近、隠し事をするのが多くなったりやたらと外出が多くなったと思ったらこの男に関する事が原因か?
 なのはとリックという男、互いに何をやっているかは分からないが危険性を帯びている。
 特に俺の目の前の男、初対面では敵意といったそういうやばいものを感じなかったが今は少々違う。
 邪魔する者がいるならば少々痛い目を見てもらう。
 そういう気配が漂っている。
 温厚そうな顔をしているが見た目とは裏腹に黒い。
 予感だか・・・この男になのはが関わり続けていたら斬られる、冗談抜きで。
 今回は手加減してくれていたようだがこいつは一度本気を出せば周りにいるどんな人間だって一瞬で斬り伏せる鬼だ。
 まだ御神の剣士として若造である俺がこんな判断を下せるんだ。その実力と剣の使い手としての資質は計り知れない。

「今後も私はそのある物、正式名称はジュエルシードといいますがそれを集める。それでまたなのは殿が妨害してくるならば我が剣を持って打ち払う」
「そうですか・・・なら」

 恭也は席から立ち上がり、近くのテーブルに置いてあった小太刀の一振りを鞘から抜きその刀をリックの目の前に突きつける。 

「俺はなのはの剣となってあなたの目の前に立ちふさがる」
「・・・何故です?普通ならなのは殿に私に関わるのをやめさせるように進言するべきですが。命を落とすかもしれないと
 説き伏せる行動をしないのですか?」
「俺だってそうしたいところなんだが・・・我が高町三兄妹はそれぞれが頑固者でな。一度決意を決めたら最後、何を言っても止められない。
 多分だがなのはもなにかしらの目的、ちゃんとした意思があって動いてるはずだ。なら、サポートに回って被害を最小限に食い止めるしかない」
「厄介な兄妹ですね・・・面倒くさいことこの上ない。痛い目にあっても知りませんよ?」
「その言葉、そっくりそのままあなたに返しましょう」

 恭也が小太刀をしまい、元の席に座る。
 そして注がれていた紅茶を一口飲んで一息をつく。

 内心では恐怖で震えている。
 この男に勝負を挑むなど愚の骨頂だ。今の俺が戦ったら間違いなく破れる。
 だがこいつを放っておいたらなのはが危ない。
 もし、死んだりなんかしたら・・・以前父さんが病院で死の境を彷徨っていた時以上の悲しみが家に訪れる。
 それは絶対にさせない。
 例え無茶だと分かっていても守らなければいけない。兄としてなのはを・・・そして家族を。
 
「さて、話すべきことは話しましたかね」

 紅茶を飲み終わったリックが席から離れる。
 壁に立てかけておいたバイ・ロードを取り、その柄に吊るしてあった赤将の兜をスポーツバッグに入れる。

「帰るんですか?」
「ええ、次に会った時は敵同士です。あなたの剣士としての力量、どの程度か試させてもらいますよ」
「お手柔らかに頼みたいものですね、こっちとしては」
「それではリック様、この館の門まで見送りをさせていただきます」
「ありがとうございますノエル殿」

 話は終わった。
 恭也は立ち上がり男の後姿をじっと眺めていた。
 なのはは今まであの男の相手をして俺達に泣き言も言わずに戦ってきたのか。
 我が妹ながら賞賛に値するぞ。



 ・・・だが、実際の交戦回数は今回のを含めて二回しかない。
 おまけにその内の一回、八束神社での戦いは本格的に事を構えてないのではあるが。
 恭也はなのはが今まで幾度もなく激戦を繰り広げているという誤解をしていた。

「は~い、ちょっと待った」

 突如帰るリックの腕が掴まれた。
 後ろを振り返るとあの内縁の妻とかとぼけていた月村忍が笑顔で引き止めていた。
 ・・・いや、笑顔ではあるがわずかに身体を突き刺す冷たい感覚、殺気がある。
 何か穏やかではないな。

「なんでしょうか忍殿?」
「いや~あれですよ。あれ。リックさんがせっかくなのはちゃんに挨拶代わりの怪我をさせたのにこっちも
 なんかしないと失礼だと思いまして」
「おい、忍?」
「・・・忍お嬢様?」

 掴まれた腕に力が篭った。
 とっさにリックは振りほどこうとしたがそれが出来ない。

 とんでもない怪力だ。
 常人ならすでに骨を折られて粉々にされている。
 この女はやばい!!

「恭也は今のところは不問にすると言ったけれど私は納得できない!よくもなのはちゃんに怪我をさせたわね!!」

 もう片方の拳が顔面に向かってくる。
 逃げようにも手を拘束されている上に密着状態、しかも相手は人間ならざる力と速さを持っている。
 回避出来ない。
 ならば。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「がは!?」

 拘束されてないほうの片腕で忍の服の襟を掴んだ。
 そして自分の身体を丸ごと後ろに飛ぶように倒れこみながら片足を忍の腹に突き刺す。
 腹部による蹴りによってリックの腕を掴んでいた忍の手の力が緩む。
 そのまま転がる力を利用して思いっきり片腕と片足に力を込めて無理矢理投げ飛ばした。
 出鱈目であるが巴投げに近い技だった。
 投げ飛ばされた忍は恭也のほうに飛んでいって受け止められるが投げ飛ばした力が強いせいで上手く受け止められず
 床に崩れ落ちた。
 その際にテーブルやら席やら多くの高価な調度品が壊れてしまっている。
 ・・・これは弁償したらどのくらいかかるのだろうか?

「ぐ・・・!まだよ!!」
「やめろ忍!あの男に本気を出させるな!!死ぬぞ!!」
「なによ恭也!?このまま黙って帰せっていうの!?」
「いいから言う事を聞け!」

 痛む腹を擦りつつもこちらに攻撃の意志を示し続ける忍。
 鋭い爪がこちらに向けられて臨戦状態だ。 
 さっきまで怪力で締め付けられていた腕が痛む。
 あのまま掴まれ続けていたら本当に腕を砕かれていたかもしれない。

 なのは殿を傷つけると恐ろしい連中が出てくるな・・・。
 あの神社での妖狐といい、この館の武装メイドと人間ならざる力を持つ目の前の女性といい。
 ひょっとして私達はとんでもない子を敵に回しながらジュエルシードを集めているのか?

「それではまた会いましょう」

 ノエルの横を横切り扉を通り抜ける。
 リックは一目散にこの館から逃げ出すことを決めた。
 これ以上こんな所にいたら何が出てくるのか分からない。
 用件は済ませたのだから一刻も早く帰らなければ。
 
「ノエル!そいつを逃がさないで!!」
「恐れながら申し上げます。リック様の戦闘能力は私の戦闘限界地を超えています。対処しきれません」
「諦めろ忍、相手が悪すぎる」
「い~や、絶対に諦めない」





 館を走っていくリック。
 玄関口までのルートを思い出しながら走るが迷路だ。
 この館はこんなに広かったのか?
 複数の部屋や曲がり口があって道を間違いそうになる。
 まぁ、とにかくフェイト殿等の元へ一刻も早く帰らなければ。
 敵にとっ捕まったとか誤解されそうだ。

 そんなことを考えながら次の曲がり角を曲がったその時だった。

「うわ!?」

 突如足元の床がぱっかりと開いた。
 慌ててリックは床が開ききる前にジャンプをしてトラップを回避する。
 床から穴になった場所を覗いてみると深淵、底が全然見えない。
 館内にまで罠を仕掛けているのかと呆れるリック、そこへ高笑いが館中に響き渡る。


 これはまだ序の口よリック・アディスン!!さぁ、忍ちゃんの数々のトラップから逃げ切れるかしら!?


「む!?」

 光の光線がリックの身体を掠めた。
 飛んできた場所を見るとそこには砲台がついたクレーンアームが複数天井から伸びてきているではないか。
 ガチャガチャと機械音を立てて狙いをこちらに定めて来ている。

「・・・どうやら本気だな、あの女」

 バイ・ロードを展開して兜を被る。
 しかしこの程度のトラップ、今まで踏破してきたダンジョンの罠と比べればまだ軽い部類に入る。
 本気で殺しにかかってこないトラップなど子供だましだ。

 クレーンアームを容易く撃破して再び駆け出そうとしたその時だった。
 今度は通路の両側の壁が迫ってきてリックを押し潰そうとする。
 咄嗟に前転して回避したが連鎖するかのように天井から大きな鉄球が頭上に落ちてきた。
 まるで回避されるのを予測されたかのように仕掛けられている。
 ギリギリのところで剣を斬り上げて一刀両断、割れた二つの鉄の塊が左右に転がる。

 前言撤回、子供だましじゃないな・・・







「で、最後になんでアナタが立ちはだかるんですかね・・・」
「うっさい!なのはに怪我をさせたアンタを許さないわよ!!」

 数々のトラップを突破してやっと辿り着いた玄関口前にはアリサ・バニングスが待ち構えていた。
 何やら武器らしき物を小柄な身体に抱えている。
 チューリップ?いや、違うな。
 大砲型のチューリップじゃなくてJAPANの人間が使う鉄砲に似ている。
 形状は大幅に違うが。

「アリサちゃん!危ないからやめて!!」
「そ、そうです!アリサ様に何かあったら私がメイド長に怒られます~!!しかもそのやばい武器を持ち出して!!」
「徹底的にこいつを叩きのめす為よ・・・それに忍さんからこのマシンガンの使用許可をもらったって事は殺れって合図よ」
「む、無茶苦茶です~!!忍お嬢様は何を考えているんですか~!?」
「考えても駄目よファリン・・・お姉ちゃんは一度火がつくと見境無しだから」
「さぁそこの赤いの!戦闘開始よ!!」

 アリサが持つ忍お手製の武器、子供用に小型化、軽量化されたマシンガンが火を噴いた。
 どういう原理か分からないが反動というものがないらしい。
 連続で銃弾が発砲される衝撃に振り回されることなく使いこなしている。
 腰溜めに撃ってきて辺りの物が破壊されていく様に思わず嘆息する。

「全く、物騒な物を」

 リックはすぐさま床を剣でくり抜いてそれを防弾障壁代わりにした。
 だが驚くべきことに連続で乱射される銃弾の一撃自体が強烈だ。
 瞬く間に障壁が穴だらけになって用途を為さなくなっていく。

 なんて武器だ。
 防壁代わりに切り出した床は斬った感じではそれなりの強度を持っていた。
 それがあっという間にぼろぼろにされていく。
 こんな殺傷性のある武器を子供に持たせるとは・・・忍という人物は恐ろしい。
 アリサという子にしてもそうだがそこまでなのは殿を傷つけた事が許せなかったのか。

「こそこそ隠れてんじゃないわよ!男なら正面に出てきなさい!!」
「・・・ではそうさせもらいましょうか」
「え?」

 すっかり穴だらけになってしまった障壁をアリサに向かって思いっきり蹴飛ばした。
 
「ふぎゃ!?」

 蹴飛ばした障壁は見事命中。
 顔面を強かに打ちつけたらしく少し赤くなっている顔の痛みをやわらげようと手で擦る。
 この仕打ちにアリサは怒りをさらに燃やした

 女の子の顔にこんなことするなんてあの男、絶対土下座させてサブミッション地獄の刑を与えてやる。
 アリサは再び銃を構えて狙い撃ちにしようとする、が。

「あ、あれ?」

 赤い男の姿が消えていた。
 目に見えるのは自分が破壊尽くした調度品と穴だらけにした床と壁。
 どうやらさっき障壁をぶつけてきたのは目眩ましの為のようだ。
 しかしアイツは一体どこに? 

「くっ!どこに消えたの!?」
「ここです」

 頭上からの声。鳥肌が立った。
 見上げれば剣を肩に抱えて振り下ろそうと落ちてくるあの男。
 かなり距離があったのにいつのまに頭を取ってくるなんてどういう運動能力しているのよ!?

 迎撃しようとアリサが銃を天井に向ける。
 だが思わぬ奇襲の為に上手くトリガーを引けず発砲出来なかった。

「せいっ!!」
「きゃあ!?」

 落下と共に剣が振り下ろされた。 
 迎撃は間に合わないと悟ってアリサは剣を防ごうと武器を横にして頭上に掲げる。
 だがそれは無力。
 銃は真っ二つ、武器を構成していた部品がバラバラになって床に転がっていった。
 無力化したのを確認すると剣を鞘に戻して戦闘態勢を解く。

「私の勝ちだ。子供がそんな危ない玩具を振り回すのは感心しませんね。あなたも女性であるならばそれ相応の振る舞いを・・・」
「い、イヤァァァア!!」
「へ?」

 アリサが地面に座り込んで顔を真っ赤にしていた。
 よく見ると・・・彼女の上半身の服から下半身のスカートにかけて切れ込みが入り肌が露出していた。
 服を斬られ正面の身体を両手で必死に隠そうとするが見えている肌色の面積が多すぎる。
 隠そうにも隠せない。

 しまった、手加減する力を見誤ってしまった・・・。

「・・・すみません、やりすぎました」
「やりすぎました、じゃないわよ!!エッチ!スケベ!変態!色情魔!エロ兜野郎!!」
「え、エロ兜野郎・・・」

 ちょっとだけショックを受けた。
 これは事故、事故なんだ。確かに私が悪いけどここまで言われると傷つく。
 だが、それにしても。

「ふむ」
「な、なによ・・・?」
「最近の小学生ってブラジャー着けているんですね、昔の世代の私としてはちょっとしたカルチャーショックです」
「アタシの裸を見た感想がそれかー!!」
「へぶ!?」

 そこら辺に転がっていた花瓶がリックの頭にぶつけられた。
 幸い赤将の兜のおかげで大怪我を負わずにすんだが衝撃でクラクラする。
 
 いや、だって小学生がブラジャーつけるなんて・・・おかしいですよね?

「責任取れ!!」
「な、何の責任ですか?」
「うるさい!とにかく責任取んなさいよ!!」
「え、えーと・・・じゃあ私の養子として迎えましょう。剣の才能はありそうに見えませんが第14代リーザス赤の将候補として鍛えますよ」
「どういう責任の取り方だ!?誰がアンタの養子に入るか!!何よリーザス赤の将って!?」

 そんな問答をしているところへ念話が入った。

(おいリック!帰りが遅いぞ、なにチンタラやってんだ?)
(アルフ殿、もうちょっとしたらなんとか帰れますので安心してください)
(なんだ、何か面倒臭い事になってんのか?)
(まぁ、ちょっとだけ・・・)
(まだるっこしいなぁ、よし。アタシが乗り込んで解決しよう)
(いや、あなたが来たら余計に・・・)
(もう遅い、お前がいる館の正面扉にいるぞ)
(ちょ・・・お待ち下さい!?)

「ちわーっす!奥さん米屋でーす!!」
「ぷぎゅ!?」
「あ・・・」

 爆砕開門。
 アルフが大声と共に玄関正面扉を蹴破り館に侵入してきた。
 蹴破られた扉の破片が舞って散らばっていく。
 謎の侵入者にすすか達は何事かと驚く。

 そしてアリサは・・・蹴破ってきたアルフの足に扉の大きな破片ごと身体を押し潰されていた。
 か細い声で何か言っているようだが分からない、ただ理不尽な現実に罵倒、抗議でもしているような気がする。

「あーあ・・・」
「ありゃ?もしかして間が悪かった?」
「いえ、ある意味では助かりました。この子との問題を後回しにしただけかもしれませんが」
「よく分からんが無事でよかった。さ、帰るぞリック」
「承知しました、今回は疲れたなぁ」
「それ、前も言ってたぞ」
「・・・言われてみれば確かに」

 とりあえずなのは殿は恐ろしい人達と交友関係を持っているのは分かった。
 子供でありながら人徳というものを備えているのかな・・・。
 なんにせよ現れる敵は撃破するのみだ。
 まぁ、殺さない程度に倒すとしよう。

 アルフとリックは月村邸から出てそこを後にする。
 走っている二人の後ろに向かって少女の大きな声が一言。

「覚えてなさいこのロリコン野郎―――!!」


「・・・お前、あの屋敷で何したんだ?」
「ちょっとした事故がありまして・・・ってアルフ殿、何ですかその目は?」
「フェイトに手ぇ出したら殺すぞ」
「私に幼女趣味はありませんって」
「へいへい」
「信用して下さいよ・・・」










「やっと手に入れたね二人とも」
「おう!やったねフェイト!!」
「おめでとうございますフェイト殿」

 ジュエルシードを入手した事により三人は気分が高揚していた。
 その記念としてささやかながら料理が豪華になっていた。
 アルフがジュースの缶を開けてぐびぐび飲んでプハーっと息を吐いていた。
 ・・・一仕事終えた後の酒飲んでいる親父みたいな行動だ
 フェイトは微笑を浮かべながら嬉しさを噛み締めている。
 手に取ったジュエルシードを大切に胸に抱きしめて。
 この子の本来の笑顔なのかな、初めて見たような気がする。

 そんな二人の様子を見ながらリックはステーキをフォークとナイフで器用に切り取って口に運ぶ。
 うん、温かくてやわらかくて美味い。久しぶりに肉を食べたという感覚にとらわれる。
 戦場じゃまともに食べる機会が少なかったからなぁ。
 こういう日常で食べる食べ物がとても恋しく感じられてより一層美味だと舌が感じる。

「嬉しそうですねリックさん」
「え、そう見えますか?」
「はい、見えますよ。意外と表情が顔に出るんですね」
「うーん・・・私が帰る手段の為の物がやっと手に入りましたからそのせいかもしれません。
 後、料理が美味いというのもありますかね」
「・・・でしたら私の料理を半分あげますね」
「あ、いや、それは辞退します。子供から料理をたかるのはちょっと」
「いいんですよ。元々私は少量しか食べれませんから」
「ちゃんと食事を取らないと身体に悪いですよ」
「フェイトー、無理にとは言わないけどアタシの作った料理食べてくれると嬉しいよ、それに今日は腕を奮って作ったんだし」
「・・・それじゃあ食べて食いきれなかったらリックさんかアルフ食べて」
「んーまぁそれならいいか」
「無理に食事を取るのも身体に悪いか、分かりましたフェイト殿」
「リック、お前用に酒とか買ってきたんだが飲む?」
「いただきましょう」
「酔っ払って暴れんなよ」
「ちゃんと節度を持って飲みますよ」

 冷蔵庫に入っていた缶ビールが手渡される。
 フタを開けて冷えたビールを少し一気飲み、一息をつく。
 うーむ、世界は違えどこういう大衆向けのお酒の味ってちょっとしか変わらないんだな。
 美味さはなのは殿の世界のほうが上かもしれないが。
 もう一口、酒を飲む。やっぱり美味いな。 

「おー全然酒飲めなさそうな顔をしてんのに結構飲むなお前」
「以前は任務上に支障が出ると思ってお酒を避けていたんですがある人のおかげによって結構鍛えられましてね。
 最初こそお酒の味に慣れませんでしたが徐々に美味しさが分かってくると飲むようになりました。流石に戦時中は飲みませんが」
「ふーん、私も一口いいか?」
「未成年は飲んじゃ駄目ですよ」
「固いこと言うなって」

 そういってリックが飲んでいた缶ビールを取ってグビグビ飲みはじめるアルフ。
 間接キスになっているんだがこの人はそういうの気にしない性格なんだな。

 そして飲み終えると微妙な顔をしていた。

「うへー苦い・・・これ、お前にとって本当に美味しいのか?」
「慣れればその苦味もまた美味しさの一つなんですよ。アルフ殿はまだまだ子供ですからしょうがないです」
「年上とはいえその童顔の顔で言われるとなんか悔しいなー」
「ははは」

 笑ってもう一缶開けて飲む。
 久しぶりに解放された感覚だ。こうやって平和にお酒を飲むのは心地いい。
 元の世界の仲間もここにいれば賑やかで楽しいだろうな。

「リックさんとアルフ、何だか仲良しですね」
「はて、そうか?」
「ここ最近はアルフ殿とよく会話してたからそう見えるんじゃないんでしょうか?」
「そうなんだ・・・うん、とってもいいことだね」

 ジュエルシードが見つからないこの数日間、よく暇を見つけては二人は話をしていた。
 内容はお互いの抱えている不満や悩み、その相談だった。
 リックは故郷に帰れない、一刻も早く戦線復帰したいがそれが出来ないジレンマや戦争で起きた出来事の悩み。
 アルフはフェイトの今までの身辺状況に対する悩みや愚痴、そしてテスタロッサ親子の関係に関する事で
 どうやったらフェイトが今までの努力が報われて自然に笑ってくれるようになるかという話だった。
 リック自体の悩みはジュエルシードを集めれば何とかなるし、戦争の悩みはリックの精神の強さもあって話すことで幾らか解決できた。
 問題はアルフであった。
 フェイトに関する事柄は思った以上に暗く根深い。
 愚痴を聞いてはなんとか相槌を返すもののプレシアの話題が出てくると一気に重苦しくなる。
 テスタロッサ親子の関係にはどうやっても現状のリックとアルフでは解決出来ないのだ。
 アルフはリックに話した所で解決方法が無いのが分かっている。
 だが、話さずにはいられないのだ。自分の苦しみ、葛藤を誰かに聞いて欲しい・・・。
 アルフもある意味フェイトと同様プレシアに蝕まれている。
 リックはとにかくジュエルシードを集めて新たな状況を打開するしかないと言ってアルフの心に活力を与えようとするが
 今までのプレシアのやり方を見ている影響なのか効果が薄い。

 どうしたものか・・・元の世界に帰ることを第一にと考えていたがこの二人を見ているとそれが揺らいでしまう。
 別の世界の住人の問題なのに、その問題に首を突っ込む暇はないはずなのに。
 私はこの人達を救いたいと思っている。


「・・・」

 レイラさん、申し訳ありません。
 あなたの仇を取るのに遠回りの道をとってしまいます、許してください。
 キング、魔人戦争という人類の命運をかけた戦争にしばらく加われない事をお詫びします。
 騎士として二君に仕えることは許されない事ですが今の私はこの二人の力になりたい。
 出来うる事ならハッピーエンド、幸せに大団円でこのジュエルシードに関する冒険を終わらせたい。
 剣士として血塗られた道をこの世界でも歩んでしまうかもしれませんが・・・。


「フェイト殿、アルフ殿」
「・・・はい?」
「なんだ?」
「このリック・アディスン、リーザス王国軍赤の将の名にかけてあなた方が願い求めるものを叶えさせる事を約束します。
 あなた方二人が本来の笑顔で笑っている姿を見るために。そのために私はこの剣を取り邪魔するものは斬る」

 バイ・ロードを手に取り、鞘を横にして顔の正面に構える。
 そして鞘から少しだけ剣を抜き赤い光の刃を見せて意志を示す。

 そのリックの行動に二人はちょっと呆然。
 そして少しずつおかしさがこみ上げて笑い出していた。

「な、なぜ笑うのです二人とも?」
「だ、だってリックさん大真面目な顔で恥ずかしい台詞を言うから・・・」
「全くだ、突然何を言い出すかと思ったらくさい言葉を言うんだ。聞いてるこっちが恥ずかしい」
「う・・・」

 自分の発言した言葉を振り返る。確かに恥ずかしい。
 私は数々の戦場と街を血で染めた薄汚れた騎士なのに何言ってるんだろう。
 こんなこと言える真っ直ぐな人間じゃないのに。

「でもリックさんの決意は大事に受け取ります。ありがとうございます」
「同じく。しかし余所者のお前が無理にそこまでする必要はないよ。限界だと思ったらやめろよ」
「いえ、やめません決して」
「この堅物め。まぁいいか、その決意に免じて肉を一切れやろう」
「私からもステーキをプレゼントしますね」


 そうしてフェイト達三人の夜は更けていく。
 ジュエルシードを巡るリックの戦いが本格的に始まる。
 この先、赤い死神の前にはどんな敵が立ちはだかっていくのだろうか?
 そしてテスタロッサ親子を取り巻く闇を打ち払うことはできるのだろうか?
 
 歴代の赤の将を守ってきた赤将の兜、バイ・ロードは静かに鎮座してリックを見守っていた。





























 後書き

 更新大幅に遅れてすみませんでしたorz
 原因はストーリー書いてる途中で物語をちょっとだけハッピーエンドに終わらせたいと考えたのが発端で。
 ハッピーエンドの為にシナリオちょっと修正→アレ?少しおかしくなったぞ→もう一回修正→さらにおかしくなったぞ?
 →さらに修正→ギャアアアシナリオ破綻!!キャラ設定も無茶苦茶!?いや、元からそうだけど。
 おまけに座っている姿勢が長く続いて尻痛めたり、PCクラッシュでデータ吹っ飛びかけたり焦りました。

 今回はなのはがディバインバスター覚えるアニメ第三話を省略しています。
 スタートダッシュの第一話第二話はともかく第三話は話を書く上で余計な部分だと思ったので。
 それといつまでも横道に逸れないで本格的になのはとフェイトが事を構えて話を進行させたかったというのもあります。
 というわけで数日後→いきなりアニメ第四話からスタートという展開に。(第三話で手に入るジュエルシードはちゃんとなのはがこっそり取っています)

 月村邸が刻○館よろしくトラップハウスになってたり忍が暴走しすぎてしまいました。ちょっとだけ反省。
(それに忍って戦闘特化じゃなく知能特化した珍しい夜の一族だから強く書きすぎたかも?)

 しかし・・・話を書き続けていると何か言ってることが矛盾している場所が出てきて大変です。
 前回の話と照らし合わせながら書いているのですがそれでも知らないうちに出てきちゃって・・・
 書いてるうちは正しいと思っている→後になってチェックすると間違っている。というのがきついっす。

 リックの目的がだんだん変な方向に行き始めています。
 元の目的はジュエルシード集めて元の世界へ帰還からジュエルシード集めつつテスタロッサ親子の問題解決。そして元の世界へ帰還と変化したわけですが
 上手くいくかなー・・・。
 そしてちゃんと話完結できるかなーorz
 更新遅くなってしまったし・・・

 ランス側の話も合わせて書いていこうと思っています。
 ランスシリーズのキャラクターがやっぱり好きですからリリカルなのは側を食わないように注意して書きたいです。
 ・・・本気カミーラにランスが一騎打ちってランスを強く書きすぎたかな?でも戦闘を怠らなければレベルはすごい上がってるだろうし、うーん。

 色々と反省点があると思いますがこれで。読んでくれてありがとうございました。




 それとアリサ・バニングスには決して恨みはありません。アレは事故だったんだよ・・・



 


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