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No.28792の一覧
[0] 【完結】リリカルマジック ~素敵な魔法~ (リリちゃ箱→Force)[GDI](2011/08/04 07:56)
[1] その2  気苦労多き八神司令[GDI](2011/07/14 16:44)
[2] その3  優しい時間[GDI](2011/07/17 11:24)
[3] その4  たいせつなもの[GDI](2011/07/22 14:06)
[4] その5  魔法の言葉はリリカルマジカル[GDI](2011/07/22 14:06)
[5] その6  決意、新たに[GDI](2011/07/24 13:57)
[6] その7  ただいま[GDI](2011/07/27 01:26)
[7] 番外編 高町一尉の異世界生活[GDI](2011/07/31 13:11)
[8] 番外編 花咲く頃に会いましょう[GDI](2011/08/04 08:02)
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[28792] その3  優しい時間
Name: GDI◆9ddb8c33 ID:97ddd526 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/17 11:24
 その3 優しい時間


次元空間、LS級航空艦 ヴォルフラム内部


 はやてから、申し訳ないがやはり乗って貰うことになった艦船を見たなのはは、その形状にやはり驚いた。どうみてもSF世界の乗り物で、昔クロノと一緒に見た、光の剣で戦う理力の騎士の物語で出てきそうな船だなぁ、と感心してしまう。

 そして案内された部屋はどうやら、乗組員の休憩所、というよりベッドルームのような部屋だ。次元航空艦はほぼ長期航海に出るので、こうした設備も充実している。なのはが宛がわれた部屋は割と広めで、ベッドは1つ、わりと大きめ。

 ちなみに彼女が知る由も無いが、この部屋は士官クラスの部屋である。通常の乗組員は2人一部屋、大型艦だと4人一部屋ということもある。つまりこの部屋は「高町一等空尉」に対して用意されたものだということだ。

 はやてたちの話だと、明日の昼ごろには例の凶悪犯と接触する予定であるそうで、それまではこの部屋でくつろいでくれとの事だった。もしかしたら、というかまず間違いなく尋ねてくる者も現れるだろうから、退屈はしない、とも言っていた。

 時刻はもう8:00をまわっている。まだ眠るには早い時間だが、彼女がここに来る前、つまりもとの世界では午前0:00だったのだ。眠気と、そしてこの事態に対する疲れも出てくる。少し休もうかな、となのはは考えてベッドに身を横たえる。

 「ん……?」

 すると太もものあたりに何かが当たる感触を覚えた。彼女はすぐにソレがなんであるかを理解し、ワンピースタイプの夜着に付けたポケットから一枚のカードを取りだす。

 S2U、本当の名前はSong To You

 歌を、貴方に。そんな意味が込められた、彼女の大切な人から貰った贈り物。貰った時は、それが彼と自分をつなぐ証であったし、彼と一緒になった今でも、絆の証として、レイジングハートと共にいつも肌身離さず持ち歩いている。

 なので、絶対に落とさないように、彼女の服にはどれにもすっぽりとカード状のS2Uが収納されるスペースを作っている。それは今来ている夜着も例外ではない。新品の服を買うごとに、彼女はチクチクと針を動かして収納スペースを作るのだ。

 ある時、その話をきいた姉の美由希は、口いっぱいに砂糖を含んだような表情をしていたという。

 明日になっても夜着のままで歩くわけには行かない。はやてからは作戦が始まったらシャマルという人の側に居るように指示を受けている。なんでもその人なら一瞬で自分をワープさせて安全な所まで送れるという。

 それがなんとも”魔法”らしい話だったので、なのはを少し安心した。彼女の中で、どうしても最初にみた”兵器”の印象が強かったので、こっちの世界でも”魔法”は”魔法”なんだな、と人知れず安堵していた。

 残念ながら、彼女のその安堵は半日後にまた、消えることになってしまうが。

 それはさておき服である、明日そういう状態のときに流石にワンピースのように見えるといってもパジャマでは常識的にも有り得ない。なので着替える必要があるので、なのはは備え付けのクローゼットを開けてみた。着替える時はこの中の物を着て良いと言われていたのだ。

 ここはそもそも”高町一等空尉”の部屋だったので、すでに彼女の衣類は運ばれていた。なのははいくつか見てみるのだが、どうやらここにあるのはすべて仕事用らしい。なのはとしては自分が普段着ているような服があるのが望ましかったのだが、よく考えれば仕事場にそうした服があるわけ無いか、と納得する。

 そして制服であろう服を着てみたのだが、そこで彼女は精神を揺さぶる衝撃を受けた、それもかなりの勢いで。

 胸が余るのだ

 胸が余ってしまっているのだ

 ”自分”が自分よりスタイルがいいという事実は流石にショックであった。他の部分はピッタリなのに、胸だけ余る。

 確かに自分はスタイル抜群というわけではない。だが人並みにはあるはずだ。それに余ってる分もそんな大きな差ではない。しかしショックなものはショックだ。
 
 このまま着続けるのは精神衛生上よく無さそうなので、元に着替えることにした、結局明日には着るのだから問題の先送りでしかないが、今は夜のなのだ、パジャマを着てなにが悪い。

 そうして着替え、精神を落ち着けせて居ると、部屋に誰か来た様で、ドアの向こうから声がする。

 「すみません、お邪魔してもいいでしょうか?」

 元気そうな女性の声だった。声の感じからしておそらく若い人だろう。

 「どうぞ、入ってください」

 断る理由が全く無いので、なのはは了承の返事をする。そして部屋に入ってきた女性を見て、今日何度目か分からないが目を丸くすることになった。

 「晶ちゃん!?」

 「え、え、ええと、なんでしょうか!?」

 その女性がなのは家族(血縁ではないがなのはの中では家族)の晶にそっくりだったので、思わず大声を上げてしまったため、入ってきた女性であるスバル・ナカジマも思わず素っ頓狂な返事をしてしまった。

 そしてそのスバルの反応から、自分の声で驚かせてしまったこと、そして無論この女性が晶ではないことを悟り、なのははあわてて謝罪する。

 「ご、ごめんなさい、知ってる人にそっくりだったから、つい大声を出しちゃいました。本当にごめんなさい」

 そう言ってペコペコと謝るなのはを見て、今度はスバルが目を丸くする番だった。こんな姿のなのはを見るのは初めてだったから、新鮮な驚きが彼女を包む。そしてそんな様子をみて、本当にわたしが知るなのはさんとは別人なんだな、と認識するのだった。

 「い、いえいえ、別に謝られるようなことは無いですよ! あの、あたしはスバル、スバル・ナカジマって言います。八神司令から話をきいて、僭越ながらなのはさんの話し相手を務めさせていただきます」

 そう言いながら敬礼をするスバル、尊敬する人のと異なる世界の同一人物の前で緊張してるのか、若干動きが堅かった。

 そんなスバルの様子をみて、なのはも落ち着きを取り戻し笑顔で応対する。

 「こちらこそ、お願いします。私のことはもう分かっていると思いますが、自己紹介しますね。ご迷惑を掛けてます、高町なのはです、よろしく、スバルさん」

 差し出されたなのはの手をスバルが握り慌てた様子で握り、その後お辞儀をし合って顔を上げる。

 なのははスバルに笑顔を向けていたが、スバルは自分をじっと見て、そのあと何だかポーっとした表情に変わっていくのを見て、少し不思議そうな顔になったが、やはり笑顔で尋ねた。

 「あの、どうかなさないました? あ、もしかして私の顔に何か付いてます」

 そういわれてハッと我に返ったのか、手をブンブン振りながら「何でもありません、とりあえず立ったままじゃなんですから、座りましょう!」といって自分は備え付けの椅子に、なのはにはベッドに座るよう促がす。

 実はこのとき、スバルは今まで見たことの無い雰囲気のなのは(別人であることを考慮すれば当然だが)に見惚れてしまった。優しい笑顔はスバルが知るものと同じだったが、言葉では言い表せない差異があったのだ。

 強いて言葉にすれば”落ち着き”だろうか。それは普段彼女が接する人々はあまり持っていないものだと、スバルには感じられた。

 座った直後は2人とも何を話せばいいのか戸惑いがあったが、口火を切ったのはやはりスバル、元々彼女は人懐っこい性格だ。

 「あの、なのはさん、慣れない場所で大変だと思いますが、あたしたちも出来る限りにことはしますから、安心してください」

 「はい、八神さんからも言われましたし、私は貴方達を信頼します、不安が無いといえば嘘になりますが、でも大丈夫です」

 実際、なのはは全面的にはやてを信頼していた。レンと似た雰囲気があったからかもしれないが、直感的に彼女は良い人だと察していた、これは母譲りの感受性によるものか、それとも父譲りの勘によるものか、それとも両方か。

 そんななのはの返事を聞いて、スバルも笑顔になる。

 「まかせてください! どんな事があっても、絶対守りますから!」

 「はい、絶対守られます」

 冗談っぽく言ういうなのはの返事をして、クスクスと笑いあう2人。もともと人当たりの良い2人だから、打ち解け合うのも早い。

 「スバルさんは、こっちの”私”とはどういう関係なんですか? やっぱり同僚さんでしょうか?」

 「一応今は同じ部隊ですけど、元々は違います。なのはさんは、ええとどうしよう、どっちもなのはさんだから、混乱しちゃう」

 「なんでしたら、私のことは名字とか、呼び捨てで構いませんよ?」

 「そんな! なのはさんを呼び捨てになんて出来ません! でも、そうですね、だったらこっちのなのはさんのことを”高町一尉”て言うことにします」

 「わかりました、じゃあそれでいきましょう」

 そうしてなのはは続きを促がすが、スバルは少し戸惑うような表情をしていた。それが気になったなのははどうしたのかと尋ねる。

 「どうかしました?」

 「いえ、それでですね、高町一尉が戦技教導官をしているのは聞きました?」

 「はい、八神さんからお聞きしました」

 「あたしもなのはさん……高町一尉の教え子の1人でして、あたしにとっては尊敬する憧れの人なんです」

 「はー、そうなんですか」
 
 自分と同じ存在を”尊敬する憧れの人”と言われ、なんとなく気の抜けた返事をしてしまうなのは。はやてから聞いたときも驚いたが、まさか”自分”が戦う方法を教える教官さんだとは夢にも思わなかった。未だに家族内ではもっとも運動が苦手ななのはである。

 それが今香港国際警防で働いてる姉のようなことをしているとは、そういえば父もSPの教官をしていたと母に教えてもらったこともあった。兄もまた然り。すると、自分もそういう才能があったり………しないな、うん、しない。少なくとも未だに逆上がりが出来ない人間にはまさに絵空事だ。

 きっと、この世界の高町一尉さんと自分とでは、何か(おそらく運動神経関係)が決定的に違うんだろう、と自分の中で整理するなのはだった。

 余談だが、笑顔が素敵な翠屋2代目を「ああいう人って憧れるよね」といっている風が丘や海鳴第二の女生徒は多かったりするのだが、その事実は当の本人は知らない。夫は知ってる、そしてひそかに喜んでる。

 「はい、それで…… できればあたしのことはスバルって呼び捨てにしてくれますか? できれば敬語もやめてもらって…… なんだかなのはさんに敬語を使われると落ち着かなくて」

 「あ、じゃあ、こっちの”私”はスバルさんのこと呼び捨てだったんですね」

 「はい、年齢も4つ離れてますし、一時期上官でしたし、階級も上ですので」

 「そうかー、後輩さんだったんですね。でもどうしよう、初対面の人をあんまり呼び捨てにはしづらいんですけど……」

 「ご、ごめんなさい馴れ馴れしくて、そうですよね、貴女とは初対面なんですよね」

 「いえ、実はさっきも言ったように、スバルさんは私のお友達、家族のように仲の良いお友達によく似てるので、あんまり初めて会った人という感じはしないんです。じゃあ、そうですね、その人のことは”ちゃん”付けで呼んでたので、スバルちゃん、でどうでしょう?」

 「ちゃ、ちゃんですか、わ、わかりました、それでお願いします」

 まさかのちゃん付けに慌てるスバル。21歳になってちゃん付けは少々気恥ずかしいが、このなのはに言われると、不思議とすんなり受け入れられた。

 「敬語のほうは、うん、晶ちゃんと話してる感じで話せばいいかな、じゃあ、改めてよろしく、スバルちゃん」

 「よ、よろしくお願いします」

 「それで、お話の続きなんだけど、スバルちゃんがしってる私の、高町一尉のこと教えてもらえるかな」

 「はい、ええとですね……」

 そうしてスバルは語りだす、自分となのはが出会った空港火災、なのはに救われた自分、なのはに憧れて入った管理局、機動六課の日々、とその後など、自分となのはに関係することを身振り手振りを加えて、実に熱心に。

 そんなスバルの様子に、時には驚き、時には笑い、時には苦笑いして聞いていくなのは。ただ、空港火災の際に助けられたくだりを聞いたとき、彼女の瞳に僅かな悲しみの色が写ったのは、似たような状況で命を落とした父を想ってのことだろうか。

 そして思う、この世界の私は凄いな、と。自分にはとてもできないことをやってのける、なんて勇敢な女性だろう、と。

 そのことをスバルに伝えると、彼女も満面の笑みで同意してくれた。ちなみに、スバルの話のなかでいつのまにか”高町一尉”から”なのはさん”に戻っていた。話し終えてからそのことに気づいて照れ笑いをしたのは余談か。

 「あたしの話はこんな感じですね、まあ、話そうと思えば一杯まだまだ話せますけど」

 「そうなんだ、でもありがとう、自分じゃないけど”高町なのは”のことをこんなに熱心に話してくれて」

 「いや~、ハハハ、と今度はわたしが聞いていいですか? なのはさんは今は何をされているんですか?」

 「私? 私は普通のお菓子職人だよ、まだまだ修行中の身だしね。こっちの私と違って凄い力も持って無いし」

 「じゃあ、魔法も?」

 「実はちっちゃな時はほんの少しの間だけ使えたんだけど、今はどうかな?」

 「もしかして使えるかも知れませんよ、いまからちょっと試し……」

 スバルがやや興奮気味に提案しかけた時、また部屋に訪れる人が現れたことを告げる声がした。

 「すみません、入ってもよろしいでしょうか?」

 若い男性の声だった。男性、というよりは少年から一歩前へ出た青年の声、という印象をなのはは受けたが。

 「アレ、もしかしてエリオ?」

 「知り合い? どうぞ、入ってください」

 なのはが返事を返すと、入ってきたのはやは高校生くらいの青年で、さらにその後ろに中学生くらいの女の子もいた。

 「あ、やっぱりキャロも来てたんだ。というかエリオ! また背が伸びたね」

 エリオというのが青年の名前で、キャロというのが少女の名前だろうとなのはは推測する。なんとなくだが、2人の間にはかつての自分とクロノのような、そんな絆のようなものが伺える。

 「はい、まあ、おかげささまで、と言うのも変ですけど」

 「わたしも、伸びてるんですよ…… ちょっとずつは」

 苦笑しながら爽やかな笑みを浮かべるエリオ青年と、ちょっと恨めしそうに膨れる。その様子が可愛らしかったので、子供が大好きのなのはは、キャロのことを早くも気に入った。

 「エリオ・モンディアルです、始めまして、高町なのはさん」

 「キャロ・ル・ルシエです。よろしくお願いします」

 そうしてなのはもまた自己紹介を済ませて、2人を座らせた。エリオはもう一つの椅子に、キャロは自分の隣に座らせる。

 「2人も、もしかして”私”の教え子さんなのかな」

 「はい、期間は1年間でしたが、本当に色々と教わりました」

 「はい、厳しかったけど、その分とてもためになりました」

 そうか、厳しいのか私は、そういえばお兄ちゃんもお姉ちゃんに教えてる時は厳しかったなぁと思い返す。スバルとの話を統合してみて推察するに、どうやらこの世界の自分は兄と姉を足して2で割ったような性格らしい・

 「そういえば、キャロは今回はティアと一緒に別件の方で動くんじゃなかったっけ?」

 「それなんですが、えと、その」

 なのはを見ながら言いよどむキャロの様子をみて、なのははおおよその経緯を理解した。

 「ゴメンなさい、高町一尉が居なくなったから、だよね?」

 その声を聞いて3人は驚いた。おそらく民間人であろうこのなのはがそういったことをいち早く理解するとは、驚き且つやっぱりなのはさんと同一人物なんだなぁと納得した。

 「で、でもなのはさんが気にすることなんか無いんですからね! なのはさんがこっちに来たのは何かの事故だと聞いてますし、責任を感じることなんか全然無いですから!」

 「そうです、不慮の事故であって、貴女が気に病む必要なありませんよ。本来なら、この艦に乗ってもらってるこっちが謝らなくてはいけませんから」

 手に握りこぶしをつくって力説する可愛らしいキャロと、しっかりと諭すように言うエリオのギャップが少々微笑ましかった。自分に詰め寄るような体勢のキャロの頭をそっと撫でて、なのはは微笑を浮かべながら礼をいう。

 「ありがとう、キャロちゃんにエリオ君、いい子だね」

 フェイトにされることは慣れていたが、なのはにこうしたことをされる事がほとんど無かったキャロは、ちょっとビックリして固まったが、すぐになんともいえない心地よさを覚えた。




 「スバルちゃんが今回は昔のメンバーの特別招集だって言ってたけど、普段2りはどんなお仕事をしているの?」

 そうして2人も交えて雑談が再開された。

 「辺境自然保護隊に所属してます」

 「自然保護区で管理する希少生物の生態系が狂っていないかとか、おかしな病気が流行っていないか、とか密猟者から動物さんを守ったり、とかが普段のお仕事なんです」

 自然がいっぱいでよい所ですよ、というエリオの言葉で、レンジャーさんのような感じかな、となのはは推察する。しかしある事に気づいてスバルに聞いてみる。

 「スバルちゃんはさっきレスキュー隊員だって言ってたよね、それで八神さんから聞いた話では凶悪犯を逮捕する作戦だってことだけど、3人とも普段のお仕事と全然違うような気がするんだけど……」

 自分で例えるなら、いきなりレンや晶の変わりに中華料理点や和食料亭の厨房にたてといわれたようなものじゃないかな、となのはは思う。お菓子職人だが喫茶店のシェフでもあるから、普通に料理は出来るが、その専門の道のプロには到底及ばない。せいぜい下ごしらえの手伝いをするくらいだろう」

 「管理局は人手不足なので、こうした召集もけっこうあるんですよ」

 言い出したらきりが無いので、そういって短く纏めるエリオ、体制に不満があったとしても、それをなのはに聞かせる必要な無い、と判断した彼だった。

 そうしたエリオをみて、なのははこの青年が、兄の親友である赤星勇吾さんに似てるな、と思った。爽やかな笑顔や颯爽とした動きが、昔よく家に遊びに来ていた時の赤星青年を髣髴させる。

 「でも、本当に背が伸びたよね、エリオ。あのちっちゃかった男の子が今ではあたしより大きくなってるんだから、時間が経つのは早いなぁ」

 しみじみと言うスバルの様子には、最初の頃の遠慮した様子がなくなっていた。また、エリオとキャロにしても初対面の女生と話すにしてはかなり打ち解けた様子だった。

 それは無論、”高町なのは”と話していることに起因するが、3人の中ではもっとも感受性の強いキャロは、目の前のなのはは自分が知るなのはより、さらに優しい雰囲気があるように感じられた。もっと言えば”母性”だろうか。

 「ハハハ、でもスバルさんも変わりましたよ。最初にあった頃よりもとても綺麗になりました」

 いきなり投下された爆弾発言に、一瞬停止したスバル、すぐに復帰を果たしたものの、若干慌てている様子がみえる・

 「な、何をいうかなこの子はもう、お世辞が上手くなっちゃって。そういう事はキャロかルーに言ってやりなよ」

 「お世辞じゃなくて、本当ですよ。スバルさん、前会った時と化粧変えましたよね」

 「え゛、なんでわかったの?」

 「一目瞭然ですから、でも、そのほうが前よりスバルさんに似合ってると思います」

 「そ、そうかな、アハハ」

 うん、間違いなく勇吾さんだ。このあまりにもナチョラルに女性を褒める事ができる特技は、学生時代のあの人も遺憾なく発揮していたものと同じだ、となのはは感じた。ちなみに、赤星が気づく女性のちょっとした変化は、兄の恭也が気づくことは一切全くなかった。

 と、そんな様子を見ていたキャロがちょっと膨れてる。その様子に母性本能を直撃されたなのはは、そっと後ろからキャロを抱きすくめて聞いた。スバルとエリオには聞こえないくらいの小さい声で。

 (エリオ君が取られちゃわないか、心配?)

 そのなのはの行動に驚くキャロだったが、やはりすんなりと受け入れてしまった。なんというか、彼女には人の心の壁をすぐに取っ払って和やかにさせる、不思議な雰囲気を持っている。

 (……はい、心配です。わたしはもう16歳になるのに子供っぽいし、ただでさえ強力なライバルもいるのに……)

 キャロが思い浮かべるのは紫の髪が美しい、同年代の少女。しかも”女”としての魅力は圧倒的に向こうが上なのだ。

 (でも、大丈夫、エリオ君が見てるのは貴女だから)

 「えっ?」

 なのはの言葉につい声が大きくなるキャロだったが、向こうの2人は聞こえなかったようだ。

 (どうして、そう思うんですか)

 (なんとなく、かな。単に、昔の私と旦那様は、きっと貴方達のようだったんだな、ってそう感じたから)

 その答えにキャロは喜びと驚愕を覚えた、驚きはむろんなのはが結婚していると言う事実に、そして喜びは夫婦になった2人の雰囲気に似てるということは、将来自分とエリオもそうなることが出来るのかな、ということに。

 そしてキャロはその結婚相手はどんな人なのか問おうとした時、彼女の心を鷲づかみにする事をなのはは口にした。もうこれ以上は声を潜める必要性がなくなったと判断したのか、声の大きさを戻して。

 「それに、キャロちゃんはきっとこれからもっともっと女の子らしい身体になると思うよ」

 「え、ほ、ホントですか!」

 「うん、少なくとも私はそう思う」

 なのはは何の根拠もなく言っているわけではない。彼女の記憶の中にそう思わせる要因があった。

 それははやてがレンに、スバルが晶に、エリオが勇吾に似ていたことから、キャロも自分が知っている誰かに似ている気がして、記憶の中を掘り起こしてみて分かった。

 それは、なのはの記憶の中ですぐイメージできる姿ではなく、何度か見せてもらった写真のなかいあったその人の姿にキャロは似ていた。

 綺堂さくら

 義姉である月村忍の、親戚の、忍にとっての姉のような存在。名字のようにとても綺麗な人で、落ち着いてた雰囲気の静かな印象が強いが、たまにするお茶目が本当に可愛らしい人である。

 そんなさくらは、今もスタイル抜群の美人だが、写真に残る高校性時代の彼女は、一見中学生に見えるほど小柄だった。

 夏のビーチのような場所で、小学生の頃の忍(本人はこの頃は可愛げのない子供だったなーと笑っていた)と、ショートカットが似合う茶髪の美人な女の子と(そのことをいったら何故かさくらはクスクス笑っていた)一緒に写る白いワンピースのさくらは、ちょうど今のキャロのように小柄だったのだ。

 しかし、今の桜はロングヘアが似合う美人で、身長も自分より高い。さくらが身体が女らしくなっていったのは高校3年、18歳になってからだという話だから、きっとキャロも女らしい身体になれる、となのはは思う。

 そうしたことをキャロに伝えると、少女は喜色満面の態で、うん、うん、これからこれから、と呟いて、元気がでました、となのはに礼を言った。
 



そしてまた4人で会話に戻る。依然キャロはなのはの腕の中にいるのは、なのは離さない為である。彼女の子供好きは母親譲りだろう。6年前のエリオとキャロを見て境遇を知ったら、即座に引き取っていたこと疑いない。

 「そういえば、なのはさん、最初にあたしのこと誰かと見間違えてましたけど、そんなに似てたんですか?」

 そのスバルの問いに、なのはは晶の姿を強く思い浮かべて、スバルと比較してみた。

 「やっぱり見た目は凄くにてる。でも晶ちゃん、あ、その人の名前なんだけど、とスバルちゃんを比べたら結構違う所は多いよ」

 「わたしも気になるなぁ、どんな人なんですか」

 キャロも交ざり、なのはは晶の人となりを述べていく。

 「性格は大雑把な所もあるけど、とってもしっかりしてる。ただ、すごく男の人っぽいところがあるの、というか並の男の人の2倍くらい漢気があるというか、とにかく気持ちいいくらいサバサバした性格だね。でも、作るお料理はとっても繊細で、やっぱり女の人らしい細やかな気配りもする人、かな」

 「聞いた感じでは、スバルさんとは少し違うタイプですね」

 エリオの言葉になのはも賛同する。

 「うん、スバルちゃんは可愛い感じが強いけど、晶ちゃんはカッコイイ感じが強いね、なんと言っても一人称が”俺”だし」

 「お、俺ですか……」

 自分と似た顔の人が自分を”俺”と呼んでいる事実に、スバルはなんともいえない表情になる。

 「空手、私の国での格闘技の一つなんだけど、それも凄く強いの。多分晶ちゃんより空手が強い女の人って、両手の指で数えるくらいしかいないんじゃないかなーって思うくらい」

 スバルはさらに考え込む表情になる、なんかそういう人物を自分はよく知ってるような……

 「凄い方なんですね」

 「僕が思うに、スバルさんよりノーヴェさんの方が似てるように思えましたね」

 「あーー!! それだよエリオ! 聞いた感じだとノーヴェにソックリな性格なんだ!」

 「スバルさんに顔が似てるってことはノーヴェさんとも似てることになりますしね」

 「ノーヴェ?」

 「あ、あたしの妹です。髪と目の色は違いますけど、それ以外はよく似てるって言われます」

 実際、ノーヴェの一人称を”俺”にしたら晶になる。

 「じゃあ、その晶さんは見た目はスバルさん、中身はノーヴェさんですか、うーん…… あ、わりと簡単に連想できた」

 「僕も」

 「あたしはちょっと自分のことなんで上手く連想できないなぁ」

 「ふふふ」

 

 なのはの微笑みにつられるように3人も笑顔になり話を続ける。明日の昼には命を賭した作戦が行われる艦内とは思えない穏やかな空間がそこにあった。



あとがき

 おかしい、話がどんどん長くなってる。当初の予定では1話完結の短編のはずだったんだが……

 だけど、この先は間違いなくあと2話で終わらせられる筈です。短編であることには変わりません。次はティアナとフェイトが登場、今回よりほのぼのとした話にはならず、割とマジメな話になる予定、なにせ執務官2人ですから。もともと1話に纏める所をまた2つに分けたから、次はきっと短めの話になるかと。



 

 


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