<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.28802の一覧
[0] (SO3)その後のデメトリオ[シウス](2011/07/12 21:57)
[1] 第一部  プロローグ 出会いのキッカケ[シウス](2011/07/12 21:59)
[2]  1章 ここはどこ?[シウス](2011/07/13 22:55)
[3]  2章 地上から隔絶された平穏[シウス](2011/07/13 22:57)
[4]  3章 希望との再開[シウス](2011/07/16 16:15)
[5]  4章 平穏の終わり[シウス](2011/07/17 00:18)
[6]  5章 地底からの脱出[シウス](2011/07/19 22:28)
[7]  エピローグ 新たな旅立ち [シウス](2011/07/19 22:35)
[8] 第2部 プロローグ アリアス村の現状[シウス](2011/08/06 16:29)
[9]  1章 久しぶりの人里[シウス](2011/08/06 16:44)
[10]  2章 パルミラ平原[シウス](2011/08/13 15:22)
[11]  3章 平穏な道中[シウス](2011/08/13 15:26)
[12]  4章 エクスキューショナー:メデューサ[シウス](2011/08/13 15:28)
[13]  5章 平穏な道中(2)[シウス](2011/08/17 14:50)
[14]  6章 最上級エクスキューショナー:代弁者[シウス](2011/08/17 14:55)
[15]  7章 決着[シウス](2011/08/19 21:23)
[16]  エピローグ また次なる旅へ[シウス](2011/08/19 21:25)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[28802]  3章 平穏な道中
Name: シウス◆60293ed9 ID:11df283b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/13 15:26
 翌日。
「おーい! 遠くにリザードマンが出たぞぉー!」
 先頭の馬車からの呼びかけに、ユリウスは竜笛を取り出して吹いた。―――竜のいななきを。
『ギャオオオォォォッ!!!』
 案の定、パルミラ平原の危険生物の代表格とも呼ばれる二足歩行のトカゲは、狂ったように全方向の空を見上げながらも、早足で駆け去っていった。―――昨夜の兵士たちのように。
「あー、やっぱ猛獣にとっても、天敵ってのは居るもんだなー」
 馬車の御者が、のんびりとした口調で呟いた。
 昨夜の騒ぎの後、動物相手に竜笛を吹いても効果があることが判ったので、それ以降、猛獣に出くわすたびにユリウスの竜笛が活躍していた。最初のうちは竜笛を訊いた猛獣たちの反応を楽しんでいた兵士たちも飽きてしまったのか、今では馬車から顔すら出さない。
 ユリウスは感心したように呟いた。
「魔物化する騒ぎが起こってるって言うから警戒してたんだが―――全ての動物が魔物化してるわけじゃないんだな」
 その言葉を肯定するように、アストールが横から口をはさんできた。
「猛獣だって、魔物が危険なものだって分かってるはずさ。当然ながら、魔物に近づこうとする生き物なんて居やしない。その結果、魔物の放つ波動に当たらないから、魔物化しない」
「なるほど―――ま、確かにな。それに全ての動物が魔物化したんなら、家畜まで魔物になって食えなくなっちまうか」
「今日からでも菜食主義者になってみないか?」
「俺は別に構わないさ。アーリグリフでは野菜のほうが貴重でな。肉嫌いと野菜嫌いの数を比べたら、圧倒的に肉嫌いのヤツが多かった」
「へぇ……」
 その時、再び先頭の馬車の御者が叫んだ。
「おい、今度はでかいサソリが街道でふんぞり返ってるぞ!」
 聞いたとたん、ユリウスは顔をしかめた。
「あー、ああいうのには竜笛は効かないと思うっすよ?」
 御者は素っ頓狂な声を出した。
「へ? 何で?」
「昆虫とかサソリとか―――無セキツイ動物って言うのかな? とにかく赤い血が流れてない生物ってのは、頭の作りが違うからな。特定の音に反応する事はあるかもしれないけど、猛獣の声を聞いただけで反応するほど、あいつらは賢くないんだ」
「そーかい、そーかい。じゃ、俺が行ってくるわ」
「へ? ちょ、ちょっと!」
 ユリウスは焦った。いかにも戦闘の素人なこの御者は、この行商隊のリーダーだ。彼が今までどのような人生を送ったのかは分からないし、ひょっとしたら何度も猛獣を狩った経験があるのかもしれない。だが戦うことに関してのプロであるユリウスの勘は、この男が弱いと伝えてくる。
 アストールも気持ちは同じだったのか、
「グラハムさん、危険です! そいつの退治は我々でしときますので、どうか馬車に戻ってください!」
 グラハムと呼ばれた男は振り返って微笑み、
「安心せい。近づいたりせんでも、こんな奴らなんぞ、簡単に追い払えるっての」
 そう言って荷台から適当な薪(昨日拾った。50センチほどの太いヤツ)を引っ張り出し、先端の10センチにボロ布をグルグルと巻きつける。そしてその巻いた布に、調味料や何かの液体を染み込ませ始める。
「これに火をつけて、匂いのする煙を撒き散らす。普段はワシらがやっていることだが、今回はあんたら兵士に任せてもええかい?」
「あ、ああ」
 アストールが薪を受け取り、馬車の外に出る。それをユリウスは追いかけた。
 先頭の馬車の前まで行くと、2メートル級のサソリが、道を塞いだまま佇んでいた。
 一応、ユリウスは至近距離で竜笛を吹いてみた。
『グルルルル……』
 半ば予想はしていたが、サソリに動く気配は無かった。
 アストールに目で合図すると、彼は頷いて施術を唱え、薪に火をつけた。すぐさま液体を染み込ませた布から白い煙が立ち上がる。その薪をサソリの至近距離まで近づけ、大きく息を吹いて、サソリの顔に煙を吹き付ける。
 するとサソリは、2メートルもの巨体をゆっくりと動かし、180度の方向転換をし、走るようにして逃げ出した。
「うおっ!?」
「ほんとに逃げた!!」
 今まで聞いたことも無かった撃退法の効果に、アストールとユリウスは度肝を抜かされた。
 そんな二人の様子に、馬車の御者グラハムは豪快に笑って言った。
「わっはっは! 驚いたか、若いの! 戦う力も無く、護衛を雇う金も無い老いぼれってのはなぁ、こうした知恵をつけるんだ」
 そして目線をユリウスの竜笛に向け、
「時に若造、その笛、俺に譲ってくれねぇか? それがあれば旅が大分楽になる。それなりの額は出すが……」
「あ、すいません。これ親友の形見なんで、売れません」
「お? やっぱそうか。その親友ってのは竜か? ってこたぁ、お前さんは『疾風』の―――」
「―――なんか教えてもないのに、個人情報が漏れてるような気がするな」
「はっはっは! 色々と『特徴』ってのが染み出てるからさ。まず仕草がアーリグリフ人だってバレバレだ……メシの時の祈り方とかな。そして俺ぁゲート大陸を端から端まで旅してるから、各地の特産物だけでなく、伝統や歴史にも詳しい。だから竜笛の形と音、そしてどういう状況のときに作られるかも知っている。―――シランドに行く事があれば、気をつけるんだな」
「………………ああ」
 確かにこの先、元敵対国に近づくことがあれば、気をつけるに越したことはない。戦争前が友好国だったからといって、誰もが友好的な態度を示してくれるとは限らないからだ。
 今後、竜笛の使用は控えたほうが良いかもしれない。
 
 
 
 
 
「お兄ちゃん、笛吹いて!」
 笛を吹くのを控えよう―――と心に決めたコンマ5秒後、旅人親子の子供の方からねだられた。まだ小さな女の子だった。
(ま、この道中のみんな、俺の持ってる笛の音を聞いてるしな……)
 今さら彼らに隠す意味は無いと思い直し、適当な音を思い浮かべる。
 すると女の子が、
「音楽じゃなくて、あのガオーって音をやって」
「ん? ああ、竜の鳴き声か」
「うん! あの音がね、なんか落ち着くの」
 変わった女の子だな―――と、そこまで考えて、思い出すものがあった。かつての『疾風』の部隊の中に、『娘のエッタが俺の竜に懐いてて、しょっちゅう会いに来る』と言っていた男を思い出したのだ。
 しかし考えて見れば、この子の両親もこの馬車に乗っており、父親と思しき人物に見覚えは無かった。
 それでも念のためと思って聞いてみる。
「なあ、エッタって名前の子、知ってるか? オヤジさんが竜騎士なんだけど」
「うん、知ってる。王都に住んでたときの幼馴染みだよ。よくエッタのお父さんの竜に会わせてくれたの。カルサアに疎開してからは―――あ」
 少女は急に怯えた表情になり、ユリウスとの距離を開けた。
「ど、どうした?」
「あ、うそうそ。カルサアじゃなくて、えーと―――」
 慌てて言い訳する様子に、ユリウスは気付いた。この少女の家族はおそらく、これからアーリグリフ人であることを隠して旅するように、少女に言い聞かせているのだろう。ユリウスは努めて優しい口調で言った。
「安心しなよ。俺もアーリグリフ人さ。『疾風』の副団長だぜ?」
「――――え? なんで?」
「俺は……そうだな。シーハーツの『水』―――じゃ分からないか。『水』ってのは、シーハーツの中の『疾風』みたいな騎士団さ。その『水』の副団長と駆け落ちする旅の途中」
 少女はポカンとした顔のまま硬直し、やがて吹き出した。
「あははっ! お兄ちゃん、おもしろーい」
「ははっ。面白いだろ? ま、ペターニくらいなら、俺たちがアーリグリフ人だってのを隠さなくても生きていけるさ。あそこはアーリグリフでもシーハーツでもない、特別自治州だからな」
 そう言って、彼は思い出したように竜笛を取り出し、吹いた。
 威嚇とも雄叫びとも異なる、竜と長く接する者にしか分からない『まどろみ』、そして『寝息』である。
 最初は微笑んでいた少女も、次第にうつらうつらと舟を漕ぎだし、そして眠ってしまった。
 ユリウスの傍に、今度は少年が歩いて来た。静かに寝息を立てる少女に目を向けながら、問いかけてくる。
「なぁ、兄ちゃん。女の子に『お前は俺が守ってやる』って言ったらさ、普通はどういう時に、どういう守り方すれば良いんだと思う?」
 突然の質問に、ユリウスの思考はしばらく凍りついた。
 かろうじて問い返す。
「……何かの演劇でも見て言ったセリフか?」
「ううん。近所のお姉さんが読んでくれた本にあったセリフ」
「―――それ、誰かに言ったのか?」
「うん。シャルに言った」
 目の前で眠りつづける少女に目を向けながら言った。たぶん、この子がシャルという子なのだろう。
「前に騎士団ごっこしてたときに、シャルに言ったんだよ。そしたらシャル、すげぇ喜んでて……どれだけの事をすれば『守る』になるのかなって」
 ユリウスが答えにくそうにしていると、いつの間にか背後からやってきたフィエナが口をはさんできた。
「それはね、ずっとその女の子のそばに居て、守り続けることなんだよ。その女の子が迷ってるときや、苦しんでるとき、いつもそばで支えてあげることだと思うの」
「……いつもそばで支える………」
 その表現は、子供には少し難しかったかもしれない。だがフィエナの言う意味が少しは伝わったのか、彼は自分の耳に残る言葉を何度も反すうした。
 その時、それまで眠っていた少女が目を覚ました。
「ん……ピート?」
 少年は名前を呼ばれ、とりあえず今しがた聞いたことを、試しに訊いてみた。
「なあ、シャル。何か困ってることってない?」
 少女は眠そうな顔で考え、
「お腹すいた……」
 とだけ答えた。
 
 
 
 
 
 そんなわけで、ちょうど昼食時。
 行商隊のリーダー・グラハムは、水の入ったコップを片手に大声を張り上げていた。
「いいか、みんなぁ! この調子で行けば、明日の昼前にはペターニに着ける。下手に動物と交戦しないように、遠くに目を配ること。見つけたらすぐに、こっちの笛吹き兄ちゃんに頼むこと。前方に現れたのが魔物なら、早急に馬車を止め、仲間内に知らせること。分かったかぁ!」
 まばらに『うーす』だの『あいよー』だのという返事が帰ってくる。『動物と交戦』という表現が出たが、これはこの惑星の猛獣が危険ながらも、遠く離れた地球の猛獣と異なり、実力次第では素手で戦える程度の存在だからこそ流通した言葉である。
 適当に川魚でバーベキューという、行商隊にとってはありふれたメニューだが、魚も保存食も種類が豊富で、それなりに飽きないようになっている。
 昨夜と異なるところは、今は湖ではなく、パルミラ平原を挟みこむようにして流れる川の、西側に面した位置で馬車を止めているくらいだろうか。
 ユリウスは、腑に落ちないような口調で言った。
「……魔物の騒ぎが起きてるわりに、中々出くわさないな」
 すぐさまアストールが口を開いた。
「まだ魔物騒ぎが起きて六日だからな。魔物の数とか、まだ全然判ってないんだ。魔物の尋常じゃない強さと、それが動物だけでなく人まで魔物化させるって点に、女王様や交易関係の大臣―――なんて役職だっけ? とにかく、その人らが懸念してたからな。事件が起こり始めた翌々日には、こうして行商隊に護衛を付けるって決まりができただけでも、中々なもんだと思うぞ」
「……それもそうだな」
 確かに魔物化が問題視されてるとはいえ、詳しいことが判ってないのも事実だ。
 ユリウスは過去に谷底で、アカスジガが雨のように降ってきては片っ端から魔物化する光景を目にしている。それらは相当恐ろしいものだったが、聞けば世間を騒がせている魔物は、それよりも遥かに危険な魔物らしい。言葉を話す魔物というのには興味がある反面、絶対に出会いたくないという思いもある。
 そこへヴァンが、遠くからやってきた。その腕には山ほどの果物が抱えられており、持ちきれない分は彼の両サイドを歩くシャルとピートが抱えている。
「おーい! 今回も俺が大活躍だぜ。ブルーベリーだけでなく、アクアベリーまで取ってきたぜ!」
 そう言って、ブルーベリーを水色に染め上げたような、拳大の果物を掲げてみせる。
 この大陸で、野生の果物といえばブルーベリーとアクアベリー、ブラックベリーの3種類が代表的である。
 その他の果物もあるにはあるのだが、基本的に人の管理してない果物というのは虫に、時には鳥に食べられてしまう。どのような理由か、ブルーベリー等の3種類は、虫や鳥に嫌われている傾向があるのだ。
 ユリウスはアクアベリーを一つ取り、おもむろにかぶりついた。
 ひんやりと冷えた果実からは、強い甘味と僅かな酸味が口いっぱいに広がってきた。
 その味を堪能しながら、ぼんやりと呟く。
「ま……平和ならいっか」
 
 
 
 
 
 昼食も終わり、再び馬車は動き出した。
 数十分に一度は休憩する。馬だって疲れるからだ。
 フィエナは馬車の後部から足を投げ出し、流れていく風景を見つめ、風に髪をなびかせていた。
「お姉ちゃん、なんか絵になってるぅ」
 シャルが見たままの乾燥を述べる。
「ふふ。ありがと」
「えへへ……」
 再び流れ行く風景に目を向ける。無意識のうちに、口が動いていた。
「久しぶりなの。風を感じるのも、たくさんの人と過ごすのも……」
 幼い少女は首をかしげた。
「どうして?」
「ずっと閉じ込められてたから」
「牢屋に? それともお屋敷の部屋に?」
 外見の幼さとは裏腹に、それなりに世間の常識というものを知っているらしい。彼女の口から『屋敷』という単語が出た時点で、自分が貴族だったことすらバレてるかもしれない。
 フィエナは続けて言った。
「深い谷底よ。嵐の時に滑り落ちて、そのまま出られなくなっちゃった―――だいたい3年ほど」
 少女の瞳に驚きの色が浮かんだ。
「……どうやって出られたの?」
「後から落ちてきた二人のお友達がいるの。その内の一人が、あたしともう一人の友達を上まで運んでくれたわ」
「あそこで昼寝してるお兄ちゃん?」
 ユリウスを指す。フィエナは頷いた。
「そ。あのお兄ちゃんよ」
「もう一人は―――谷の上まで運んでくれたのは―――あの笛の竜なの? あのお兄ちゃんの相棒だった……」
 フィエナは驚きに目を見開いた。
「………知ってたの?」
「うん。今朝話してて教えてもらったの。私と同じ、カルサア出身なんだ」
「そう……」
「ねぇ、何で竜は死んだの?」
 曇りの無い目で見つめられ、フィエナは何となく話してみたくなった。
「谷底を出る数日前にね、あたしと彼とで、偶然見つけたの。怪我をして動けなくなってる、彼の相棒をね。必死になって治療して治りかけたころ、『卑汚の風』が吹いた。運悪く、空をアカスジガの群れが飛んでた。雨のようにアカスジガが降ってきて、片っ端から魔物化した。―――結局、戦いながら飛んだんだけど、地上に出たところで力尽きたの。あの笛は、そのときに作ったの」
 言いながら、今でも後悔が込み上げてくるのを感じた。
 ユリウスとフィエナを乗せた竜―――ゼノンは、最後の最後で巨大ジャイアントモスの酸の弾丸を、その身に受けてしまったのだ。強烈な酸の弾丸は、強靭な竜の甲殻と鱗、そして筋肉をも食い破り、内蔵をいくつか貫くまでに至ったのだ。
 あの時、あのジャイアントモスが最後の抵抗などしなければ、最後に少しでも油断しなければ。―――そんな思いが、今でも頭を過ぎるのだ。
 シャルは目を伏せ、消えそうな声で言った。
「分かるよ。友達が死んじゃった気持ち………」
「え?」
「戦争が起きる前、何度か家の用事でアリアス村に行く事があったの。そこに住んでた同い年の友達―――アップルっていうんだけどね。戦争が終わって、引っ越そうってお父さんとお母さんが、ピートのお家のお父さんやお母さんと話し合って、それでこないだ、ようやくアリアス村に着いて―――」
 続きが何なのか、フィエナには手に取るように分かった。
「―――そのアップルちゃんは、どうして死んだの?」
 少女は搾り出すような声で言った。
「…………栄養失調のところに、流行り病が重なったって」
「――――そう」
「酷い話だよね……アーリグリフもシーハーツも友達同士なのに、戦争するなんて。誰かが影で泣いてるのにね……」
 その言葉に、チクりと胸が痛むのを、フィエナは感じた。たとえ自分が直接関わって無くても、戦争は国を辟易(へきえき)させる。戦争が長引くほどに、餓死者は増大する。
 フィエナはそっと、シャルを横から抱きかかえた。
「毎日、そのアップルちゃんのためにお祈りしてあげよ? それがあたし達にできる、精一杯のことだから……」
「うん……あ」
「どうしたの? ―――ッ!!?」
 背筋にゾワッという寒気が走り、フィエナは叫んだ。
「ユリーっ!!」
「ああ、俺も気付いた」
 直後、グラハムの絶叫が、3台の馬車の動きを止めた。
「魔物が出たぞぉ!!」


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.023937940597534