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No.28802の一覧
[0] (SO3)その後のデメトリオ[シウス](2011/07/12 21:57)
[1] 第一部  プロローグ 出会いのキッカケ[シウス](2011/07/12 21:59)
[2]  1章 ここはどこ?[シウス](2011/07/13 22:55)
[3]  2章 地上から隔絶された平穏[シウス](2011/07/13 22:57)
[4]  3章 希望との再開[シウス](2011/07/16 16:15)
[5]  4章 平穏の終わり[シウス](2011/07/17 00:18)
[6]  5章 地底からの脱出[シウス](2011/07/19 22:28)
[7]  エピローグ 新たな旅立ち [シウス](2011/07/19 22:35)
[8] 第2部 プロローグ アリアス村の現状[シウス](2011/08/06 16:29)
[9]  1章 久しぶりの人里[シウス](2011/08/06 16:44)
[10]  2章 パルミラ平原[シウス](2011/08/13 15:22)
[11]  3章 平穏な道中[シウス](2011/08/13 15:26)
[12]  4章 エクスキューショナー:メデューサ[シウス](2011/08/13 15:28)
[13]  5章 平穏な道中(2)[シウス](2011/08/17 14:50)
[14]  6章 最上級エクスキューショナー:代弁者[シウス](2011/08/17 14:55)
[15]  7章 決着[シウス](2011/08/19 21:23)
[16]  エピローグ また次なる旅へ[シウス](2011/08/19 21:25)
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[28802]  3章 希望との再開
Name: シウス◆60293ed9 ID:11df283b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/16 16:15

 
 あれから更に、七日が過ぎた。
 あの後、二人して、しばらく寝込んでしまったのだが、今ではもう、すっかり回復していた。
 この日もまた、ものの見事に空は快晴だった。午前中を畑仕事に費やし、午後は先日と同様、川で水浴びすることにした。
 普段でも水浴びはしているのだが、それはあくまでも『入浴』の代わりであって、今はただの『水遊び』である。
「またこの前みたいに、あの化け物みたいな赤いヤツが現れるかな?」
 フィエナが冗談めかして笑いながら言ったが、正直、ユリウスには笑えなかった。無理して笑ったためか、少し顔が引きつる。
「そういえばどうなったんだろうな、あの赤いヤツ。あの後も何日かは、ちょくちょく空を飛んでただろ?」
「でも今はもう見かけなくなったわ」
「そりゃそうだけど……」
 たしかにフィエナの言う通り、あの例の赤い物体は、数日前から空に現れなくなっていた。
(結局、あれは何だったんだろうな……)
 考えても判らなかった―――判るわけがない。
「平和ねぇ~……」
 隣で、水面に仰向けに浮いたフィエナが呟いた。確かに彼女の言う通り、ここは平和だ。地上での戦争も、数日前の空に現れた赤い物体も、全くといってもいいほど、今の自分達には関係ない。
 考えるのが面倒になり、ユリウスもフィエナと同じ姿勢をやってみることにした。先日は同じ事をして溺れかけたが、今度はうまくいくと確信することができた。
 息を吸い、脚を水底から離す。ほんの少しだけ身体が沈んだ後、顔まで沈むことなく浮き上がることができた。と、その時。
「………あでっ!? ガボガボガボッ!!」
 また溺れた。
「どうしたの、ユリー!?」
 突然上がったユリウスの声に、心配そうな声を上げるフィエナ。見ると、ちょうどユリウスが水面から顔を出したところだった。
「大丈夫?」
「ああ、平気、平気。何か知らないけど、いきなり頭に何かが当たってビックリして溺れかけて……って何だこれ!?」
 手近なところに浮いていたものを拾い上げ、ユリウスは驚愕した。
 それは、身長が50センチはあろうかという魚の骨だった。人間で言うところの首の辺りから、尾までの骨である。その途中にあるはずの身は、綺麗に無くなっていた。
「これって……よくこの川で獲れる魚だよな?」
「ええ。しかもこれ、骨の色からして真新しいわ。死んだ魚が腐敗して骨になった、ってわけじゃ無さそうね」
「じゃあ何らかの生き物に食われたって? フィエナ、俺がこの谷で暮らし始めたとき、こう言わなかったか? 『ここには肉食性の動物なんて居ない』って……」
 別にフィエナを疑っているわけではない。ただの事実確認である。フィエナもそれを知ってか、謝る様子もなく言った。
「たぶん、ここより上流に『何か』が落ちてきたのよ。人かも知れないし、あるいはモンスターかもしれない。恐らく、そいつが食べた魚の骨が、ここへ流されてきたのね」
「じゃあ装備を整えて、様子でも見に行くか? 人間だったら仲間、それ以外は敵。オーケー?」
「オーケー。とにかく、モンスターだった場合も予想して油断しないでね。たしか地上にいたモンスターって……」
「分かってる。両手に斧を持ったモンスターだろ? そいつも十分危険だが、木の姿をしたモンスターの場合だったらもっと気をつけた方が良い。この辺りで遭遇するモンスターの中で一番大きくて強く、しかも一番凶暴だからな」
「知ってるわ。ユリーも、それが分かってるなら大丈夫ね。行くなら急ぎましょ。もし木の姿をしたモンスターだったら、かなりの短時間で分裂して仲間を増やすから」
 ユリウスにとって初耳だった。
「………マジで?」
「マジよ。ほら、さっさといくわよ」
 そう言って、フィエナは家に向かって歩き出した。
 
 
 
 装備を整えるといっても、ゴテゴテの重装備というわけではない。民家にあった半袖のシャツとハーフパンツという、色は違うが一応ペアルックというスタイルに、武器や畑にあったブルーベリーやブラックベリー、その他もろもろの薬草を持って来ただけだった。
 ―――疾風の副団長と、『水』の副団長には十分すぎるほどの装備だった。騎士団もそうだが、シーハーツの六師団というのも、主である女王に忠誠を誓って闘う騎士のような存在なのである。ユリウスとフィエナの戦闘力はほぼ同じとみて間違いではない。
 崖に挟まれた川をのぼりながら、ユリウスは上流がどのような地形になっているかを聞いた。
 相変わらず二百メートルほどの崖に囲まれているのは変わらないが、川に面するように、村と同じくらいの広さを持つ○型の空き地があるというのが判った。無論、その空き地も崖に囲まれている。
 そしてその空き地は、木が埋め尽くしていて森になっているのだという。小動物はおろか、虫一匹すら住んではいないらしい。
「さぞかし荒れ放題なんだろうな、その森ってのは」
「ええ」
 人が手入れをしていない森というのは、お世辞にも人が歩けるようなものではない。ましてや虫一匹すらいない森ならば、獣道すら無いだろう。もし万が一モンスターがいた場合、間違いなく戦闘は川で行なうことになるだろう。ザコならともかく、木の姿をしたモンスターだとすれば、かなり辛い戦いになる。
 そうこう考えているうちに、二人はついに森のそばまで来てしまった。予想通り、森は荒れ放題で、鬱蒼としていた。
 ユリウスは森に向かって呼びかけた。人間がいる場合もあったからだ。
「おーい! 誰かいるのかー!?」
 続くように、フィエナも声を上げる。
「アーリグリフ人でもシーハーツ人でも差別とかしないですよー! 現に私達二人はアーリグリフ人とシーハーツ人のコンビですからー!!」
 こうすることで、もし人間がいた場合、安心して出てくることが出来るのだ。
 不意に、前方の茂みから『ガサガサ』という音がした。少しづつではあるが、こちらに近づいてくる。やはり何かがいるようだ。音の大きさからして、どうやら人間ではないようだ。相当大きな生き物であると推測できる。
「……やっぱ木の姿のモンスターかな?」
「ええ、そうでしょうね……」
 地上でも少々てこずる相手に、ここの地形は絶望的なほど不利である。死にはしないと思うが、大怪我する可能性ならありえる。二人は緊張を高めた。
 そして茂みの中から、『そいつ』は飛び出してきた。
「……なっ………!?」
 ある意味、予想だにしなかったヤツだった。まさか、こんなところで会うとは……!!
「ゼノン!!」
『ユリウス! てめぇ生きてやがったのか!?』
 流暢(りゅうちょう)な人語で答えたのは、かつてユリウスの相棒だったエアードラゴンのゼノンだった。
「生きてたのかって……それはこっちのセリフじゃねーか!! 死んだんじゃなかったのか!?」
 笑顔で叫ぶユリウスをみて、目の前のエアードラゴンが敵ではないと、フィエナは判断した。だがすぐに緊張した面持ちになり、ゼノンと呼ばれたエアードラゴンの翼を指差して叫んだ。
「ちょっと、どうしたのよ、その翼!! ズタズタじゃないの!?」
 言われて気付いたユリウスも、真っ青な顔をして叫んだ。
「マジでヤバイぞ、これは! フィー! すぐに村へ帰って治療を……!!」
『無理だ。これほどまでの大怪我だ。……もう治らねーよ」
 諦めたようにゼノン。恐らく、この傷が原因で飛べなくなったのだろう。だからずっとここにいたのだ。
 ユリウスはゼノンの落ち込んだ言葉を、余裕を持って否定した。
「大丈夫だ。フィーは治癒の施術が使えるし、村には強い薬草もたくさんある。おまけに俺もフィエナも、医者としての心得もある程度はあるんだ。安心しろ、必ずもう一度飛べるようにしてやるから」
 その言葉を聞いて、フィエナは閃いた。……まあ、誰でも思いつくことなのだが、今の彼女にとってそれは、自分の――自分達の人生を180度転換するくらいの閃きに思えた。
「ねえ、ユリー! もし彼が飛べるようになったらさ、この谷から出られるんじゃない!?」
「あっ! そうか、確かに出られる!!」
 まさに奇跡との遭遇だった。
『喜んでるところを悪いんだが……怪我が治せるんなら、さっさと治してくれねえか?』
 不満げに―――というより苦しげに呻くゼノンの声を聞き、ユリウスとフィエナはハッとした。たしかに急いだ方が良い。翼に怪我をしたのは恐らく、ユリウスがこの谷に落ちた日だろう。あれからもう14日が過ぎているのだ。下手をすると、人間で言うところの『切断』を施さなければならなくなる。
「ああ、そうだな。急がないと……歩けるか?」
 苦しげな様子ながらも、ゼノンは答えた。
『何とか……な』
「わかった。フィエナ、ちょっとコイツの身体を支えるの、手伝ってくれるか?」
「ええ。じゃあ急ぎましょ」
 三人はその地を後にした。


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