日曜日の8時ごろ、765プロ事務所内
この時間は亜美と真美にとっては至極の時間である。
今も俺と小鳥さんがいる中でもテレビに釘付けで、両手を握り締めるほど夢中になっている。
ちなみに2人が来るのはいつもはもう少し遅いのだが、『ヤキニクマン』なる番組がする8時より前には事務所に入ってくるそうだ。
理由は「早く家でないと初めから見れないもん」だそうだ。
(小鳥さん談)
てかお前ら俺より早ぇよ…。俺でも8時すぎに出所だぞ。
『くらえ、カビ男!ヤキニクパァアアアアンチ!!』
『ぐぎゃああああ!?』
テレビには野太いの声持つ戦隊的な衣装を身に纏った男と、攻撃を受けて甲高い声を出しながら倒れ行く全身カビを生やした怪人が映っていた。
「やったー!またヤキニクマンのだいしょーりー!」
「やっぱヤキニクマンってめちゃ強いよねー!」
亜美は両手を上げて喜び、真美はソファーから立ち上がって両手を握っていた。
このヤキニクマンは子供向け番組の特撮ものらしく、いまや子供のみならず大人にも絶大な支持を得ているらしい。(亜美・真美談)
後2ndシリーズも放送されるらしいし、映画化も期待されているらしい。
…すげーなヤキニクマン。
「亜美もヤキニクマンみたいにこー、シュババッ!て動いてみたいよー」
「真美はヤキニクパンチとか出来たらいいなー。だって瓦とかパリリーン!て出来そうだもん!」
亜美は忍者みたいに左右にすばやく動く仕草をしてみせ、真美は右手を上から下へ瓦を割るような仕草をした。
「お前ら、そんな異色すぎるアイドル目指すなよ…」
瓦が割れるアイドルとかもはや何モンだよ。
だが2人はそれほどヤキニクマンが好きなのだろう。現にこんなに朝早くに事務所で見るぐらいだし。
「いいじゃ~ん、亜美もヤキニクマンみたいにかっちょよくなりたいもん」
「そしたらヤキニクマンみたいに焼肉モリモリ食えるモンね~」
「ヤキニクマンってそんな脂っこいキャラクターなのかよ!?」
一体どんな番組なのだろうか…一度見てみるかな、と思った矢先、事務所の電話が鳴ったので俺は受話器を取って電話に出る。
「はいもしもし、こちら765プロ…はい、はい…っ!そうですかありがとうございます!ウチでよければよろこんで!はい、それでは後ほど…」
「どうかしたんですか、プロデューサーさん?」
横からお盆を持ってお茶を淹れてきてくれた小鳥さんが不思議そうに俺に話しかけてきた。
…もしかして俺、今変な顔してる?
「あぁいえ、ただ仕事の電話で…『ヤキニクマンの2ndシリーズの歌をそちらのアイドルに歌ってもらえませんか?』って」
「「きゅぴーん!」」
俺は謎の効果音を口ずさんだ亜美・真美を見てみると、どうも怪しい雰囲気が漂っていた。
すっげー『もちろん私たちが適任だよね?』と言わんばかりに目を光らせてこちらを見ている。
「…2人とも、午後からは録音しに行かなきゃならないから、後からFAXで届く歌詞に目通しとけよ」
「「は~い!」」
なんとも元気な返事と共に2人はFAX機能のある電話機の前を歌詞が届くまで占領していた。
午後
レコーディングが始まるまでにはウキウキ気分だった2人。
しかし、今録音をする部屋の中には亜美と真美の2人が話し合いをしていた。
「どうしたんだ2人とも。もうそろそろ録音する時間だぞ?」
俺は2人の様子が気になって部屋を訪れた。
「あ!にーちゃん聞いてよ。真美の歌い方が全然ヤキニクマンみたいにゴゴゴー!って感じじゃないんだよー」
俺が入ったのと同時に俺の気づいた亜美が相談の原因を話してきた。
「ご、ゴゴゴー?…なんだかよく分からんが、もしかしてきちんと歌えてないのか?」
「歌はきちんと歌えてるんだけど…」
「なんかヤキニクマンのイメージと違うんだよねー…」
2人は腕組みをしてうーんと唸り始めた。
確かに歌と言ってもイメージは大切だろう。
悲しいドラマの歌はどこか悲しげに、バライティ色が強いドラマの歌は花のように明るい。
それに小さい子供はイメージを大切にするから、もしイメージが違えば戸惑うだろう。
「そうだな…そのヤキニクマンってお前らにはどういうイメージがあるんだ?」
俺の質問に2人は少し考えた後
「迫力がある!」
「何か楽しい!」
「「そんで面白い!」」
「最後は同意見だな…まぁ、そういう感じのイメージを持ちながら歌えばいいんじゃないか?それにもっと表情に工夫して見たり」
俺の言葉を聞くと2人は「おぉ!」と納得すると同時にさっそくイメージ作りに取り掛かった。
「真美はもっとほっぺたあげたほうがいいよー!」
「じゃぁじゃぁ亜美はもっと口大きくあけてみなよー!」
2人は楽しくイメージを作り始め、終いにはスタッフからも「ヤキニクマンのイメージとピッタリでしたよ」と言われた。
さすがに熱烈的なファンのあの2人が歌えばヤキニクマンのイメージも引き出せるだろうな。
そして、時は流れてヤキニクマン2ndシリーズ放送の日。
「にーちゃんにーちゃん!早くしないと2ndシリーズの1話が始まっちゃうよー!?」
「あー待て待て。そう急かすな…よし」
俺はある程度書類整理を終えて2人が待つテレビの前へと足を運んだ。
『ヤキニクマン!2ndシリィィイイイイイイズッ!』
「「おーーー!!」」
その後は2人が真剣にテレビの前に鎮座し、それを見ていた俺は少しおかしく思いながらも2人とともにヤキニクマンを見た。
あれほど面白いものはないだろう。←はまった
裏の話!
961プロの社長室。そこには大型のテレビと偉そうに椅子に座っている一人の男がいた。
彼は961プロの社長黒井。ある種の噂ではテラ子安とか言われてるとかいないとか。
彼には日曜の8時、毎週楽しみなものがあった…それは
『ヤキニクマン!2ndシリィィイイイイイイズッ!』
「うぉおおおお!始まったぁあああ!」
ヤキニクマンである。
社長室の隠し部屋にはヤキニクマンのグッズがあったり、保存用・観賞用・実用の三種の仁義も完璧な狂信的なファンである。
毎週高画質で録画は必須である。
「く~くっくっく!待ちわびたぞ、ヤキニクマンのセコンドシリィイイズウウウウ!!」
なんか発狂しすぎて色々おかしくなるぐらいファンである。
あとがき(~А~)
ヤキニクマンとかマジ串田ヴォイス、愛ドルです。
まじ串田さんかっこいいっす、タトバ最強っす。
亜美と真美はヤキニクマンのファンでありながら黒井マジ信者という恐るべき裏設定。←かってに作った
次回、ヤキニクマン!筋○マンと夢のコラボ!(嘘
それでは~。