我が765プロも、どんどんと軌道に乗ってきたころ、俺と千早はとあるスタジオで番組の収録を行っていた。
この番組はトークと歌の両方を使う番組で、歌を歌った後にこうして番組MCなどとトークを展開していくのだ。
正直トークの苦手な千早には荷が重すぎたかと思ったが、本人の歌が歌えるのならという意見もあり、入れた仕事だ。
「千早ちゃんはキレイなだけじゃなくて、歌もすごいうまいよね~!
やっぱりそういうのは毎日のトレーニングの成果とか?」
「はい。
やはり歌を歌うためには日々のトレーニングと喉のケアを忘れない事です」
「あ、あぁ、やっぱりそうだよね…。
えぇっと…そういえば、最近何かはまってるものとかは?」
「洋楽のCDを聴く事…でしょうか」
MCのほうも中々のベテランではあるが、先ほどからの千早のまじめすぎる返答に少し焦燥感を覚え始めたらしい。
とりあえず俺も千早に『もっとトークを展開話題を!』とか指示を出すが、やはり一言二言で話題は途切れていく。
「それじゃ、今一番歌を聞かせたい人とかは?
ほら家族とか友達とか」
MCのストックも付きかけてきたのか、少し投げやりな雰囲気になってき始め、何気なく振った話題。
しかし、千早は少しくぐもった声で
「…特に、いません」
収録が終わった。
歌も歌えるというので、この番組に出演したのは良かったが、やはり話すことが苦手な私では、場を盛り上げるような話は出来なかった。
(…家族、か)
あのMCの人は悪気はないのだろうけれど、私の心と記憶の奥深くにしまっていたものがよみがえってくる。
思い出したくも無い…いやな思い出。
「千早ー!お疲れ」
「プロデューサー…」
プロデューサーは水の入ったペットボトルを手に持ちながら、私に歩み寄ってきた。
「いやー今日の歌も中々良かったぞ。
特にサビのところ、声が良く通ってた」
「ありがとうございます…でも私」
「あぁ、トークのほうか?
ははは、まぁ最初は皆あんな感じだろ?また次で取り返せばいいさ」
プロデューサーは私の失敗も陽気な笑いで流してくれるが、きっと頭の中ではそうとう悩んでいると私は思った。
この人は…そういう人だ。
そして、プロデューサーと事務所に帰ろうとしていたときに、私は不吉なことが起きそうな雰囲気を感じていた。
「う~テレビ局内でも寒いところは寒いな~!…そういえば近くに自販機があったっけ。
千早、悪いが入り口の近くで待っててくれるか。何かあったかい飲み物買ってくるよ。
何がいい?」
プロデューサーは「なんでもいいぞ」と言ってくれたので、「ミルクティーをお願いします」と頼んでおいた。
「おっし、分かった。すぐ戻ってくるから待ってろー!」
そういいながらプロデューサーは自販機があるところまで駆け足で去った。
ソレと同時に
「あなた…如月 千早、よね?」
私の後ろに、いつの間にか同い年くらいの少女が立っていた。
「え、えぇ…そうだけれど。あなたは…」
私は突然のことで驚いたが、すぐに冷静になり、相手を睨む。
「私?私ねぇ……
『あなたの思い出したくない過去』を知ってる女ってとこかしら?」
「なっ!?」
「知ってるわよ。死んじゃったんでしょ『弟』さん。交通事故で――」
……その後の記憶はあいまいだ。
ただその少女が離れていく足音と、廊下のネズミ色の床がやけに目の前にあったこと…
そして
『私は声を失った』
あとがき
急展開過ぎてナンジャラホイ!って人たち、愛ドルです。
いやまぁね、アニマスの千早が声を出せなくなってしまったのを見て、『SSで使えるかな』と思いまして…。
結果、急展開になりました。
しかし正直あの回はストーリーも歌も神でしたね!泣きそうでした!(←ナゼ泣かなかった俺!
そしてはるるんいい子でしたww皆もね。
後、この話であるアーティストの歌詞を軽く引用しようかなと思ったが、やはり色々面倒なことになると思いやめようかなと。
『ソラニン』って曲なんですけども、映画のタイトルでもあり、アジカン(長いので省略)ってグループの曲なんですが、
大切な人との別れ、みたいなテーマなんです。
あの神回をみたとき、千早の境遇とこのソラニンの歌詞が結構マッチしそうと瞬時に思いました。
次の本編にもこのソラニンのことを少し出そうかなと思案中です。
ぜひ聴いてみてください。