―千早が声を失った。―
その原因も、治し方も、俺は知らない。
だけど……
―せめて、彼女を信じることをやめたくはない。―
俺が自販機で飲み物を買って千早の元へ戻ると、彼女は力なく床に座り込み、息苦しそうにしていた。
一大事と感じた俺はすぐさま救急車を呼び、病院へ。
「千早の…彼女の様態は!?」
俺は薄暗い診査室で、千早の様態を記録してある紙を見ながら渋い顔をしている医者に問い詰めるように聞く。
「落ち着いてください。彼女の体は健康そのものです。
特に様態に変化はありません」
「そ、そうですか…。良かった」
安堵した俺は椅子に座りなおし、軽く息を吐く。
しかし、闇と言う暗い影は俺と彼女を離す気はないようで、医者は少し言いにくそうにしていたが、やがて口を開いた。
「しかし…どうやら患者の“声”は、どうにもならないようで」
「え?」
俺は一瞬、医者の言っている意味が分からなかった。
千早は確かに息苦しそうにしていたが、ちゃんと話は出来たし、声も出ていた。
「声…って、彼女とはちゃんと話しを」
「いや、日常的な会話に支障はないと思われますが…。
歌を歌うと言うことになると、声が出ないようで」
俺はその後、余命宣告のように、医者の一言一言を聞くこととなり…
『精神的なショックで声が出ない』だの、『治し方は分からない』だの。
言葉の節々しか覚えていないが、それが千早にとってこれからの人生を左右する重大なことだと分かった。
そして闇は俺たちをあざ笑うかのように謳う。
声が出ない千早に
“来週のソロライブに声が出せないまま出ろ”と言わんばかりに…。
961プロ・社長室
「フゥーハッハッハッ!愉快だ、実に愉快だ!」
「…耳障りなんだけど」
961プロの社長室では、黒井社長と千早と同年代ぐらいの少女がいた。
黒井社長はうざl…失礼。
黒井社長はチェスの駒を動かしながら、高らかに笑い、黒い革製の椅子に座る少女は冷ややかな目でそれを見ていた。
「おぉっと!これは失礼したねぇ。
しかぁし、あの憎たらしい765プロの如月 千早がこうも簡単に堕ちるとは…。
想像するだけで笑えてくるよ!」
黒井社長は手を止めることなく駒を動かしていく。
もちろん、その駒の色は黒である。
「そう…」
少女はそれをつまらなさそうに見つめながら、つぶやいた。
「んんっ?なんだか満足してない顔だな、“如月 千鶴”。
これで如月 千早が消え、晴れてキミが真の歌姫になったと言うのに?
これだけ満たされているのに、どこに不満を持つと言うんだ?」
「これだけって…重要要素一つだけじゃない」
少女、千鶴は呆れた顔で黒井社長にもっともなことを言う。
しかし黒井社長は「ノンノン」と人差し指を振り、椅子から立ち上がる。
「如月 千早はもはや銃で落とされた小鳥も同然!
如月 千早の過去を知るキミの情報と、彼女が歌声を失ったことを世間に広めれば…」
「…彼女のファンは幻滅して、いなくなるって訳?
私の情報にウソも混ぜて」
「クククッ!!ハーッ八ハッハ!
そうだ!そして765プロのアイドルの泥に触れたファンどもはその触れた部分を洗うべく、
か な ら ず!
この私…いや、キミのところへ、と言ったほうが正しいかな?」
黒井社長は満足そうに千鶴の顔を覗き込むが、千鶴は覗き込まれると同時に立ち上がり、社長室を出て行こうとする。
「おやおや、もうお帰りかなお姫様?」
黒井社長は口元をこれでもかというほど引き上げ、笑いながら千鶴へ皮肉にもとれるように言う。
「えぇ、どうやらここに私を救う騎士(ナイト)はいないみたいだから」
そして社長室の扉がしまった。
あとがき
まず一言。『千早は大丈夫です(いろんな意味で)』
アニメじゃPが大変なことになるし、春香は心が病んできてるし(春閣下じゃなく)…。
誰かー!春香を助けてー!
作者「その役目を俺に!」(ぇ
おい誰だ、今Pの追悼式みたいなことし始めたやつ。
大丈夫だ、彼は死なない。(キリッ
あと、ソラニンの歌詞は載せません。
捕まりたくないからww