「仕事、とってきまし…た」
「ぷ、プロデューサーさん!?なんでそんなボロボロに…」
「仕事取るだけで何があったんだよ~?」
765プロの事務所内の床に崩れ落ち、ボロボロになっている俺を心配そうに見ている春香と不思議そうにしている響がいた。
…俺もなんでこんなことになったか良く分からんのだよ。
「そんなことはいい!仕事だ。やよいとあずささんはいるか?」
俺がうつ伏せに寝転んだままやよいとあずささんを呼ぶと
「は~い。ってプロデューサー!?なんでボロボロなんですか~!」
「まぁ、プロデューサーさん。どうなされたんですか?」
給湯室から2人が出てきて、服装が荒れ果てた俺を見て心配してくれているのはうれしいが、こちらも時間がないのでそれは置いておかせて
「とりあえず、CMのナレーションの仕事なんですけど。」
俺はふらふらと立ち上がり、2人に別々の書類を渡し、説明を始める。
「やよいは近くのデパートの特売のCMナレーション。あずささんは医薬品のCMナレーションで」
「このデパート特売なんですかー!?…あっ、お肉が安いです~!」
「はい、分かりました~。」
やよいは目を輝かせながらナレーション用の書類を凝視し、あずささんはいつも通りの柔らかい声音で承諾してくれた。
もちろん仕事はアイドルに合うようにするのも大事だ。
CMで洗剤の清潔感を出すために『白』を強調するように、アイドルの個性を強調することも大事だ。
やよいに特売のナレーションを取らせたのは、彼女の元気のある雰囲気で『特売(セール)』という事を強調させるため。
あずささんは、癒し系なので、こういった薬品関係などが妥当かなと考えたのである。
…仕事のランクは低いんだがな。
「とりあえず4時から2人を送るから、それを覚えて置いてください。やよい、忘れんなよ」
「あ~!プロデューサー、私がそんな忘れっぽいって思ってるんですか~!?」
俺の軽い冗談にやよいは真剣な目つきで迫ってきた。
「あはは、冗談だよ、ジョーダン。」
俺は歩きながらやよいの頭をポンッと叩き、デスクにつく。
(しかし、弱小だから仕事取るのも楽にはいかないな…)
俺は頬杖をつき、今日のことを思い出す。
ファッション関係の本などのモデル会社にも交渉したが、中々うまく取り入れられず、何件か歩き回った結果がCMのナレーション。
「つくづく自分のプロデューサーとしての力量が知れるなぁ」
そう呟くくらいに俺の力量は低かった。
(だけど、俺が諦めたら皆との『ここの皆をトップアイドルにささせる!』って約束を破ることになる…)
俺は軽く深呼吸し
(おっし、もっとがんばるか!)
自分を奮い立たせた。
「ねぇちょっと」
「ん?どうした伊織」
俺が昼食のデザートのわらびもちを食べているとき、伊織が俺の服のすそを引っ張っていた。
…まぁ、こいつのいいたいことは目と態度を見たら大体分かる。
「この伊織ちゃんに仕事0ってどーゆことよ!」
少し半切れの伊織が俺に向かって怒声を吐いてきた。
「ゆーと思ったよ。ってか中々いい仕事を分けてもらえないんだよ。うちは弱小だからほとんど有名な事務所に持ってかれちゃって」
「なっ!?この愛らしい伊織ちゃんを全面的に押し出す仕事が無いですってー!?」
「いや、そこまでいうとらん」
伊織は、どこぞのプライドの高い戦闘種族のエリートさんよろしく体をワナワナと震わせていた。
「まぁ、もう少し目立てば仕事が増えるかも知れないがなぁ…」
「じゃぁ何か事件起こしてみる?」
「なんで俺にへばりつくような視線をぶつける」
やだぞ、俺は。
前科持ちにはならないように職を転々としてきたのに。その無敗伝説を壊したくは無いぞ。
「嘘よ。それにアンタが捕まったらこの事務所の信頼落ちゃうし」
「だからなんで俺が捕まる事を前提に考えるんだよ!?」
そのままプイッとそっぽを向いた伊織に少しイラッとしたが、同時にそれが様になっていることに気づき、気分がそがれた。
(黙ってればこいつもキレイなんだが…)
「何か言ったかしら?」
「イイエ、ナニモ」
目が笑ってない笑顔で話しかけられ、思考を読まれていたことに内心ヒヤッとしていた。
アイドルは読心術でも会得してるのかと思った今日この頃。
「プロデュ~サ~~」
「真、どうしt…」
俺は後ろから真が震える声で呼びかけてきたので、振り向いた。
「なんでボクの仕事がスポーツドリンクの宣伝なんですか~~…」
「…知らん」
真は半べそをかきながら俺に視線をぶつけてくるが、知らん振りしておく。
「大体お前の仕事のほとんどは律子が取ってくれてるんじゃないか?俺は関係ないだろう…」
「おおありですよ~~!ボクはもっと女の子らしい化粧道具とかの宣伝がいいんですー!」
真は駄々をこね始め、俺をポカポカと殴ってくる。
「イタタタ!おまっ、強すぎ!?」
だが威力は結構強く、女の子としては少々強すぎだろと思った。
「うわぁああ~~ん!」
その後は何とか真をなだめかせ、あずささんとやよいを現場へと送っていった。
迎えが終わって3人で帰ってきたとき、スポーツドリンクを箱ごともらった真が俺を睨みつけていたことをここに記しておく。
(OMO)あとがき
真可愛いよ真。
今回は短くなってしまったのですが、日常的な感じで書いて見ました。
仕事といえども受ける会社や、宣伝する人とかで印象が変わることもありますからね。
その辺は思考をめぐらせたよ。どう、真。
しかしこのまま日常だけっていうのもあれなんで、アイドルとしてのちゃんとしたのも書きますよ。
そして話が進むごとに新たな事務所たちが出てくるのか…否か。
信じるか信じないかは、アナタしだいですww。