・・・おう、ひさしぶりじゃねえか、あれから一年ぐれえか、元気だったか?クソ少女?
ああん?もう身長150センチになった?今度17になるから、少女でもねえ?
ばかやろう、おれからみたらおめえら人間はぜんぶガキなんだよ、こちとら手前らの何百万倍も生きてるってんだ!
・・んで、てめえは今何してんだよ?学校はもう卒業したんだろ?
・・・あぁん?卒業した後小学校の先生の研修を始めた?なんだよそりゃ、悩んだ末に何になるのかと思いきや、・・・たくっ、てめえが教師ってガラかよ。
・・あんだと?未熟かもしれないけどいい先生になれるようにがんばってる?・・っけ!そうかいそうかい、そいつはよかったな。
・・あんだよ?なんであやまんだよ?
・・・あぁん?せっかく杖と服くれたのに冒険者にならなくてごめんなさいだと?バカかてめえは!!てめえの人生だろうが、誰かに遠慮して道踏み外すなんざ笑い話にもなりゃしねえよ!!
・・あんだよ?てめえ杖と服外してどうする気よ?・・って、バカヤロウ!!杖も聖骸布も返さなくていいにきまってんだろうが!!それはもうてめえのもんなんだよ。
・・そいつらもおめえと一緒にありてえって言ってやがるぜ。・・まあ、てめえには聞こえねえだろうがよ。
・・・おう、そいつらに感謝しろよ、てめえを主として認めてるってことなんだからよ。てめえがどんだけ大切にあつかってきたかっつー証拠だよ。
・・・・・・。
・・っけ、こいつらにそこまで懐かれるなんざ、てえしたもんだぜ、アホ少女のくせによ。
・・んで、今日の用事はそれだけかよ?用がすんだならとっとと帰れ。
・・あぁん?それだけじゃねえ?とても大事な用事がある?
・・な・・なんだよ、急に改まって。・・何する気だよ?
あんだと?今から卒業式を始めますだ?
・・てめえ、なにいってんだ??さっき学校卒業したっつったじゃねえか。
・・あぁん?学校の卒業式じゃなくて、ダンジョンの卒業式だと?
・・ってなんだそりゃ、ダンジョンの卒業式ってなんだよ!意味わかんねえよ!!おれはてめえの先生でもなんでもねえんだよ、バカやろう!!
・・って、おめえなに出してんだよ。なんだその筒と帽子は!芸が細かいんだよバカヤロウ!!
紙広げてんじゃねえよ!てめ、それ卒業生答辞って書いてあんじゃねえか!!なんでいきなり答辞からはじまるんだよ!開会の挨拶すらしてねえじゃねえか!!
・・・・なんだと、こら、私が喋った事を復唱しろだ?
ばかかてめえは!!!んな恥ずかしいことができるか!!!!
なんでおれが、てめえの言葉をいちいち繰り返してやんなきゃなんねえんだよ!意味わかんねえよ!!
・・あぁん?卒業式の定番だからだと?
・・・だからなんでラストダンジョンで卒業式するんだよ!んな茶番につき合ってられっかよ!!こちとら、終末のダンジョンだぞ!ナメんじゃねえぞ、このやろう!!
・・あんだと?・・これが最後のお願いだからだと?
バカいうんじゃねえよ!!なんでおれがおめえの頼みなんぞ聞いてやんなきゃなんね・・・・・。
・・・・・・・。
・・・って、睨むなよ、そんな顔で・・・。そんな辛そうなツラみせんじゃねえよ!
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・ったくわかったよ!これがホントのホントに最後だかんな!!おめえの頼み聞いてやらあ!!
・・っけ、ありがとうじゃねえよ!・・・おら、やるならとっとと始めやがれってんだ!!!
一語一句、きっかりと復唱してやるからな!オレが女言葉使っても笑うんじゃねえぞ!!笑ったらトラップ落とすぞトラップ!!!
・・って、始める前から笑ってんじゃねえよ。・・あぁん?別におかしくて笑ったわけじゃねえ?てめえの気持ちなんぞ知るかコラ!!
・・ったく、準備はできてんだろうが!オラ、とっとと始めやがれ!・・笑うんじゃねえぞ、このヤロウ!!
・・・・・・・・・・・・・・。
わたしがあなたに出会ったのは今から8年前のことでした。
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今でもはっきりと覚えています。
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心細くて泣きそうだった私に、あなたは声をかけてくれました。
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最初は、まさかダンジョンが話しかけてるだなんて、思ってもみなかったんですよ。
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あのとき、あなたからもらったエリクサーのおかげで、私と母がどれだけ助かったか、あなたには想像できますか?
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あなたが居なければ私も母も、今頃この世界にいなかっただろうと思います。
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ぶっきらぼうだけど、本当はとても優しいあなたに対して、小さい頃のわたしは本当にわがままばかりでした。
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今思えば、私、あなたに死んだ父を重ねていたんだと思います。
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あなたも私の事を、まるで娘のように思ってくれていたのではないでしょうか、・・というのは私の勝手な想像です。
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自由研究を手伝ってくれたあの時、苛められたわたしをぶっきらぼうに慰めてくれたあの時、飼っていた犬を失くした私を世界樹さんの所へつれていってくれたあの時
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あなたは、確かに私の父親でした。
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でもね、本当は。
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父親なんて望んでいなかった・・。
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なんで私はニンゲンで、なんであなたはダンジョンなんだろう。
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そうおもったことが、なんどもありました。
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そして、そんな時私の背中を前に押してくれたのも、
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やっぱり、あなたでした。
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私は、ニンゲンとして、これから精一杯生きて、立派な赤ちゃんを産んで、そして笑って死んで生きたいと思います。
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今まで、側で見守っていてくれて嬉しかった。離れている時も、いつも心配してくれて幸せだった。
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そんなあなたに、ありがとうなんて言葉じゃ、なにも返すことはできないのだろうけど・・、
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それでもやっぱり、・・ありがとう・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
そんな私ですが、
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わたしは、今日を以ってあなたの所を、世界で一番優しいラストダンジョンさんの所を、
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卒業します。
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・・・いつか私が世界樹さんの所に還って来た時は、ちゃんと私を見つけてくださいね。
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しわくちゃのおばあさんになってても、ちゃんと私を見つけてくださいね。
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その時はまた、あなたに甘えてもいいですか?
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わたしのお気に入りのこのでっぱりに抱きついてもいいですか?
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次にまた生まれ変わるその日まで・・、ずっと抱きついててもいいですか?
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ぬるくなるって言われても、絶対にやめないんだから。
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帰れっていわれても、絶対に離してあげないんだから・・・
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・・・最後になりましたが、あなたをびっくりさせたいことがあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あなたはまったく気づいてくれませんでしたが、
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私は、いつの頃からか、
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あなたのことを
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・していました。
・・・ばかやろうが・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・おう、コラてめえ、そこにある宝箱もってけ
卒業祝いだ。これが最後だかんな、とっておきの奴をくれてやらあ。
そいつはよ、うちの100階にあるんだがよ、持っているものを必ず幸せにしてくれるっつう髪飾りだよ。
虹色に光ってきれえだろうが、幸運の女神が死ぬ前にその力の全てを注ぎこんだアイテムだかんな。
・・てめえみてえなちんちくりんでも、こいつさえつけてりゃいつもきれえな笑顔で笑えるようにならあ。
だからよ。
泣くんじゃねえよ、ばかやろう
・・・・・・・。
・・そうか、そろそろ行くんか。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・ああ、それじゃあ元気でな。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・さよならじゃねえよ・・・・、ばかやろう・・・
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【幸運の髪飾り】
アイテムランク 測定不能
幸運+999
幸運と運命の女神ティケが、その身が滅ぶときに、自身の力と魂の全てをこの髪飾りに封印した。
所持者が望むだけの幸運を与え、その力は運命さえも変えてしまうといわれている。
虹色に輝きとても美しい。