【警告】
この裏話は本当にひどいので、こちらに隔離しました。最終話以降の裏エピソードの詰め合わせです。
最終話と、「これはひどい裏話集」を読むまでは、絶対に読まないようにしてください。
また、最終話の余韻とか、そういったものを全て台無しにする恐れがあります。
そのことを踏まえたうえで、どうぞ。
【本当にひどい裏話その1・拝啓、魔法使い様】
お元気ですか、魔法使いさん。私は今、悲しみの沼と呼ばれる秘境の地を、勇者様と共にあるいています。
勇者様の呪いを解く方法がないか、この世で最も長生きしているといわれている、生き物に尋ねに行くためです。
ダンジョンを攻略して、はや3年、国を追われたり、大神官の地位を剥奪されたり、船が嵐で沈んだり、馬車が盗まれたり、年金詐欺にあったり、本当に色々なことがありましたが、私は幸せです。
だって、あれから3年間、私はずっと勇者様と二人きりで居ることができているのですから。
・・・ただ、私も明日で30歳。神ではなく勇者様にその身を捧げたいと、あまり大きな声では言えない願望を持ち続けて、早15年。
私と勇者様の関係は、出会ったときから、ほぼそのまま変わっておりません。
私に魅力がないからだと思い、昔一度、魔法使いさんに相談したこと、覚えていますか?
女性の私からみても、魔法使いさんは本当に魅力的な方ですから。その時、魔法使いさんは、
「足りないのはアンタの魅力じゃなくて、アイツの頭の中身だよ。」
と、おっしゃってくれました。その時には、「勇者様はバカじゃありません!」・・と反論しましたが、二人きりで旅をして、もう3年になるというのに、一向に私の気持ちに気づいてくれない勇者様をみて、魔法使いさんがあの時言った言葉の意味を、ようやく理解してきました。
もはや、あの人のソレは鈍いとか、察しが悪いとか、そういうレベルの話ではありません。
最近ではそういう類の呪いでもかけられているのではないかと、疑ったことがあります。
もっとも、徹底的に調べてはみたものの、勇者様のかけられている呪いは運のよさが悪くなる呪いのみ。頭が悪くなる呪いはかけられてはいませんでした。
明日は私の誕生日、いくら勇者様でもきっと覚えていただけていると思っていたのですが・・
「・・勇者様、その、・・明日が何の日かご存知ですか?」
「ああ、もちろんだ。10月4日で、イワシの日だな。」
・・・本当に何とかしなければいけない、私はこう心に誓いました。
私は、晩ご飯用のイワシを三枚におろしたあと、道具袋の一番底に入れておいた小箱をとりだしました。そう、魔法使いさん、あなたとお別れするときに頂いたものです。
あの時魔法使いさんが私におっしゃった言葉はいまでもはっきりと覚えています。
「僧侶・・、あんたがこういうの使うのはいやだって言うのはよく分かってるけど、もう本当に後がなくなったと思ったら、これを使うんだよ。」
私は、魔法使いさんからいただいた媚薬を、勇者様のイワシにこっそり振りかけました。そして僧衣を脱ぎ、恋の魔法がかかったペナントを・・・、裸の胸に貼り付けました。
三角形だから、ちょうど隠すべきところは全部かくれるようになっているので何も問題はありません。
今日は、私の20代最後の日、決戦の日です。もうすぐ勇者様が薪集めから帰ってくる頃です。魔法使いさん、どうか私の恋が実るように祈っておいてください。
【本当にひどい裏話その2・とある男の目覚め】
・・・体が思い。息が苦しい。まるで海の底にしずんでしまったかのようだ。
私の意識はゆっくりと浮上していく。懐かしい血と肉の感触。なぜだろう・・。私は確かにあの時○んだ筈なのに。
脳細胞に、酸素と血液がゆっくりと循環していく、少しずつハッキリとしていく意識。
そう、あの時、軍事大国ガルディアとの戦いの最中、私と、彼女は敗走する自軍の殿を勤めるべく、ただ二人で10万のガルディア軍と対峙した。そして・・・、魔法力の尽きた最愛の彼女を救うべく・・・、私は・・・・
「・・・・リュート・・・・」
私を呼ぶ声がする、その声に動かなかったはずの体が震える。そう、その声は、紛れもなく私の最愛の・・
私は、ゆっくりと目を開く。網膜が徐々に光を認識していく、そして、目の前の誰かが像として形を結ぶ。
「・・・・・え、・・・・・誰?」
目の前に居たのは、私の最愛の恋人ではなく、熟女といって差し支えのない妙齢の女性であった。もっとも、とうがたってはいるものの、とても美しい女性ではあったが。
私の疑問に、その女性は魔法で答えてくれた。光る手。はじける光、そして、少しだけ遅れて爆音。
・・そう、これはまさしく、彼女のフレアボムズ。この至近距離で、術者本人は全く被害を受けず、しかも殺さない程度の適度な痛みを与える。ここまで呪文制御に長けた人間を、私は一人しか知らない。
なぜ歳をとっているとか。なぜ私は生き返ったのかとか、疑問は山ほどあったが、とりあえず、今私が何をなすべきかは判っていた。
・・私は、ゆっくりと立ち上がり、彼女のほうを向き直り、両手を広げた。
彼女も私のほうへ一歩踏み出す。
・・・そして、私は、そのまま地べたに跪き、
「ごめんなさい!!!!!!」
一瞬の静寂の後、恋人の懐かしい声が響く。
「・・・あんたという奴は・・・、他に言う事はないのかい!!!!!」
どうやら選択肢を間違えていたようだ。恋人の不興を買い、再び宙をまう私。
その後、一通り暴れて落ち着いた彼女から、ようやく私は経緯を聞きだすことができた。
私を生き返らせる為に、20年以上の歳月を費やした恋人に、思わず目が熱くなる。
帝国一の美女で、皇帝からの求婚すら跳ね除けた彼女、そのもっとも美しき花の時代を、私の為に暗いダンジョンの中で棒に振ってしまったというのだ。
・・一体、私にどうやって償えることができるのだろうか。そう彼女に言ったら、彼女は笑って、こう答えた。
「償いだなんて、何馬鹿なこと言ってんの、これは私が勝手にしたこと、あなたの死に納得できなかった私が、あなたとまだ共に生きたいと勝手に望んだ私が、あなたの意見も聞かずにやったことなのよ、あなたが気に病むことなんて何にもないわ。それどころか、勝手なことするなって怒ってもいいくらいなのよ・・」
そういって彼女は、本当に綺麗な笑顔で私に微笑みかけた。
・・・間違いない。彼女の笑顔だ。意地っ張りな彼女が、年に一度か二度ぐらいしか見せてくれない、とびきりの笑顔。
20年の時が経とうと関係ない。彼女の笑顔は私が恋したあの時、あのままだった。
「それでね・・・、リュート、これ・・・。」
彼女がそっと差し出したのは、婚姻届、すでに私の住所も名前も埋まっており、あとはサインするだけになっていた。というか、住居の欄は既に彼女の家となっていた。
ニッコリと笑う彼女。
・・・そう、あの笑顔だ、獲物を前にして、ニッコリと微笑むあの笑顔、年に100回か200回は見せていたあの笑顔。
20年経とうと関係ない。・・いや、20年の時を経て、彼女のソレは一層の凄みを増したように思える。
私は、目を閉じ、その紙にゆっくりとサインをする。
・・ああ、そういえばお腹すいたなあ・・。
私は、サインをしながら、20年間何も食べていないことを思い出した。
【本当にひどい裏話その3・幼女の結婚相手について】
「ひどい寝汗だ・・・」
朝、まだ日も昇っていない頃、私はあまりの不快感に目をさました。昨日がヴェヌス降臨祭だったせいで、嫌な夢でも見たのだろう。内容は全く覚えていないが。
ヴェヌス降臨祭は私が一年で一番嫌いな日だ。わたしはこの日だけは絶対に外を出歩かないことにしている。
私は隣で眠っている彼女を起こさないようにそっとベッドを抜け出す。相変わらず可愛い寝顔だ。彼女眠っているのをいいことに、その頬にそっと口付けをする。まあ、おきたところで別に怒られるわけではないけれど・・。
私達が一緒に暮らしてもう5年。ご飯も一緒、お風呂も一緒、眠るときも一緒。もちろん、この生活に不満など全くない。最近急に色気を増してきた彼女にドキドキしてしまうのが密かな悩みではあるが。
私は、一先ずシャワーを浴びに浴室へ向かうことにする。
汗でTシャツがべっとりと張り付いている。私は眠る時はTシャツと短パンのみだ。パジャマは子供の頃からなぜか寝付けない。
それにしても、パンツまで汗でべっとりだ。股間に少し違和感を感じながら、私はシャワーを浴びに風呂場へと向かう。
そして・・・・、
「・・・・・・・・・・・・・・。」
すーっと、大きく息を吸う私。これは夢だ、夢なのだから叫んでもいい。よし、準備はオーケー!私は今から叫ぶよ、叫ぶんだから!!
「なんでちんち○が生えてんのー!!!!!???????」
私の股間には、父親のソレと同じグロテスクな物体が生えていた。そう、本来女の子にはない筈のアレである。
「ど、どうしたの?アンナちゃん!!」
私の可愛い同居人が何事かと目を覚まし、浴室の扉を開けようとする。
「だ、大丈夫!!なんでも・・、なんでもないから、おねがいだから、眠ってて!!!」
私はドアを必死に押さえながら、リリーシャを説得する。まだ、納得していないようだったが、彼女はようやくベッドへと戻ってくれた。
「これから・・・・どうしよう・・・・。」
扉越しに見えたリリーシャのネグリジェ姿、ウィンディーネの衣というそうだが、そのせいか私の、こ、・・股間のコレは・・き・・きつ・・りつ・・していた。
私は、リリーシャのことはもちろん大好きだ。しかしそれは女同士だからこそ。そういう意味で好きなわけじゃない。ない筈なんだ。
・・・でも、だからといってリリーシャを何処の馬の骨とも分からない男にわたすのも絶対に嫌だ!
鈍いあの子のことだから、気づいていなかったようだけど、実はあの子、かなり人気がある。ぽわぽわっとしたところが守ってあげたいと、男の庇護欲を搔き立てるらしい。
そんなクサレ男どもを路地裏に連れて行っては、「あの子はお前の玩具じゃない!」と、何度学習させてあげたことか。
・・というか、こっちはあの子が小学生に上がる前からずっと守ってきたんだから、ポッとでの男どもに渡すなんてありえない!!
あの子にエリクサーや、金塊を惜しげもなく渡した冒険者なら、あの子を安心してお嫁にあげることができると思っていたんだけど・・、どうやらリリーシャはその冒険者の事は諦めたみたいだし・・・。
リリーシャの将来が心配になる。
あの子のことが誰よりも大事で、ちゃんと手に職もってて、料理が全くできないあの子の為に毎日料理を作ってあげて、金銭感覚の乏しいあの子に変わってお金の管理もしっかりとできて、ぽーっとしてるあの子をぐいぐい引っ張ってあげられて、まるで長年連れ添った幼馴染のようにあの子を誰よりも理解しているような恋人を見つけてくれれば私も安心なのだけど・・・・・、全く、どこかにそんな男はいないのかしら!!
混乱する頭の中、私の思考はどんどんとどうでもいい方向へと流れていった。自分が男になったという現実を理解するのには、もう暫くの時が必要だった。
アンナちゃん、現在17歳、今では道を歩けば誰もが振り返る絶世の美少女になっています。
アンナちゃんがTSしてしまったのは、美の女神ヴェヌスの嫉妬を買ってしまったため。
昨日、自分を称えるお祭りをやっていると聞いて下界に降りたった基地外女神、しかし自分ではなく、アンナちゃんの姿をした大理石の彫刻が神輿になって練り歩くのをみて、嫉妬に狂った女神は、アンナちゃんをTSさせてしまいました。
その後、幼女に「もう一緒に住めない」と告げ、理由も言わずに家を出て行こうとするアンナちゃん。幼女に泣きつかれ、ついに自分が男になってしまった事を告白。
驚く幼女ではあったが、上目遣いで懇願するようにこういった。
「男でも女でも、アンナちゃんはアンナちゃん、私にとって、この世界で一番大事な人間なんだよぉ・・。お願いだから・・・出て行くなんて言わないで・・」
その時、なんかもういろいろと吹っ切れてしまったアンナちゃん。「一番大事な人間」という言葉が効いたようだ。
一つ屋根の下に住み続けることを約束する二人、さすがにベッドはもう一つ買ったが。
その後、バタバタとコメディーしたり、数年前にその姿を見初められた王子から、アンナちゃんが求婚されたりと、色々とあったが、徐々にアンナちゃんを異性と認識しはじめる幼女。
数年後、二人は晴れて結婚することとなった。
ちなみに幼女MKⅡは、顔は母親そっくり、髪の色は美形の父親ゆずりであったという。