うわー。すっごいきれいなお弁当。すごいのすごいのー、それお姉ちゃんがつくったの?
・・ほぇ?アンナちゃん?アンナさんって確かお姉ちゃんと同居しているひとだよね。ほえー。すっごいなあ。
うふふ、おねえちゃん。まるで自分がほめられてるみたいに嬉しそう。いいなー。幼馴染って。
・・ほぇ?私?わたしには幼馴染はいないけど・・、でもモンスターさんたちとずーっといっしょだから。・・うん!お姉ちゃんともね!!
でもいいなー、二人暮らしって。わたしもお父さんと二人で過ごしてた頃がなつかしーなー。おねえちゃん達はご飯はやっぱり交代でつくるの?
・・ほえ?アンナさんが毎日ご飯作ってるの?・・おねえちゃんは手伝ってるだけ?そうなんだー。すごいなーアンナさん。そういえばお料理学校行ってるんだったよね。いいなー、お料理おいしいんだろうなー。
・・うふふー、よかったねおねえちゃん。それでそれで、どんなお手伝いしてるの?
・・ふぇ?もっぱら味見?・・・・ほえ?・・それ、お手伝いなのかなあ?・・一度お姉ちゃんが料理つくったら二度と食材にさわらせてくれなくなった?・・あははは、・・そうなんだ・・。
・・ほぇ?味見も結構むずかしい?・・適格で忌憚のない意見を述べるのがお姉ちゃんの仕事?
はえー、そうなんだー。確かにどの世界にも批評家さんとかいるもんね。じゃあ、おねえちゃんはアンナさん専属の批評家なのー。いいなー、そういうの。
ねえねえお姉ちゃん、お料理以外の家事はどうやってるの?洗濯とか、掃除とか・・。
・・洗濯とお掃除は一緒にやってる?偉いのーおねえちゃん。・・ふえ?一緒にやるけどほとんどアンナさんが終わらせちゃうからすることがない?・・あはは・・、アンナさんさすがは宿屋の娘さんなのー。
・・ほぇ?聖骸布だけはおねえちゃんが手洗いしてる?・・そうなんだ。・・うん、大事にしてるんだね。・・あっ、聖骸布も天獄杖もお姉ちゃんのことが大好きだって言ってるの。・・うん、おねえちゃんは聞こえないだろうけど。
・・あっ、ご飯食べ終わった?うん、じゃあそろそろいこうか、おねえちゃん。あともう少しだから頑張ってなのー。
・・ふぇ?わたし?わたしはダンジョンだからご飯も洗濯も必要ないのー。
ほえ?でもダンジョンはいつもきれい?あっ、それはねそれはね、モンスターさんたちがいつもお掃除してくれてるのー。
・・うふふ、驚いた?モンスターさんたちにとってはここが家だから、家が汚れてると嫌でしょ?みんな実はきれい好きなんだよ。
うん、そうなのー。冒険者のみんなが捨てていったゴミは全部モンスターさんが片付けてくれてるの。・・ほぇ?どうやってって?
使えそうなものはモンスターさん達がそのまま使って、つかえないものは金属とか皮製品に分別しておいてくれるの。あとは私がそれをあたらしいアイテムに作り直すの。
そうなの、時代はえころじーなの!あとはね、リサイクルできない燃えるゴミは溶岩部屋に捨てて燃やしちゃうの。・・うん!うちにもあるんだよ、溶岩部屋。お父さんとこよりもずーっとちいさいんだけど・・。あ、ここは右なの、おねえちゃん。
・・ほぇ?なんで冒険者のみんなが分別しないのか?・・あはは・・、確かにそうしてくれれば嬉しいんだけど・・。ほえ?分別ゴミの入れ物を迷宮におくべき?・・ふえ?お姉ちゃんが用意してくれる?・・そ、そんなのわるいよ、おねえちゃん!
・・うん・・、たしかにモンスターのみんなは喜ぶとおもうけど・・。・・うん、じゃあお願いしてもいい?・・ありがとうなの、おねえちゃん。
あ、そうだ!この先にゴールドの入った宝箱あるから、ゴミ箱買うならそれ使って欲しいの。・・うん、そう、これのこと。あ、その隣の宝箱はトラップだからあけちゃだめなのー。
・・ふぇ?他にこまったことはないか?お姉ちゃんにできることなら手伝う?・・ありがとうなの!おねえちゃん。
・・うーんとね、困ったこととは少し違うかも知れないんだけど。冒険者学校のみんなはここにレベルあげに来るでしょ?その時ね、まだ子供のモンスターとかは見逃してあげてほしいかな・・。
・・うん、そうだよ。モンスターも大人や子供がいるんだよ。人間より早く大人になっちゃうから見る機会は少ないけど・・。
そりゃ、わたしだってダンジョンの端くれだし、経験値がほしい冒険者のみんなの気持ちはわかるの、だからモンスターさんたちがやられちゃうのも仕方がないとは思うの。
でもねでもね、やっぱり小さい子はかわいそうなの。だってまだ楽しいこともうれしいこともなにも知らないんだよ。せめて戦うなら大きくなってからにしてほしいの。それに大きくなったほうが経験値も多いし、冒険者のみんなにもその方がいいと思うの。・・そうなの!きゃっちあんどりりーすの精神なの。あ、ここも右なの。
・・ふぇ?わたし偉い?そ、そんなことないの!!だってわたしお父さんみたいに大きくないし、学園都市にあること以外はなんのとりえもないダンジョンだし・・・。
・・ほぇ?ほかの人のことまで考えてるから偉い?・・・ありがとうなの、おねえちゃん。おねえちゃんにほめられるととってもうれしいの。
・・ふぇ?他に冒険者のみんなのせいで困る事はないか?大丈夫だよー、ほかには特には・・
・・あえて言えば?・・・ふえ?どうしても言わなきゃだめ?・・・うーん、だったら、やっぱりアレかなあ・・。ごめんねおねえちゃん、少し汚い話になっちゃうんだけどいい?
・・うーんとね、冒険者のみんなってね、ご飯食べるでしょ。でね、ご飯食べるとやっぱり出るものが出ちゃうの。・・うん、ソレのことなの。・・もちろんしょうがないことなんだけど、ダンジョンにおトイレなんてないしね。でもね、ちゃんと穴を掘って、終わったらちゃんとうめておいてほしいの。あ、ここは左なの。
・・ふぇ?いままでみたことない?あ、それもモンスターのみんながお片づけしてくれてるからなの。だって、おねえちゃんだって自分の家の前に犬がうんうんしてたらいやでしょ?
・・ほぇ?モンスターさんたち?オークさんも、トカゲさんも、モンスターのみんなはちゃんとお穴掘っておトイレしてるよ。ゴブリンさんたちは肥溜めもつくって肥料に使ってるくらいだし・・。
ふぇ?こんど学校の掲示板に張っておいてくれる?ありがとうなのおねえちゃん!・・あ、あのね、だったらね、「使用済みのトイレットペーパーは燃やすか、ちゃんと袋に入れて持ち帰りましょう」って書いておいて欲しいの!アウトドアの常識なの!あ、ここはまっすぐでいいの。
・・ほぇ?ほかに人間のみんなのせいで困っちゃう事?・・だ、大丈夫なの・・。ゴミとおトイレさえどうにかしてくれれば他には別に・・。・・ほぇ?本当にもうないか?嘘じゃないか?
・・うぅ、ひどいの、おねえちゃん。わたしおねえちゃんに嘘はつきたくないの・・・。でもねでもね、あんまりこういうこというのは・・。その、憚りが・・。
・・・ううう・・、わかったの。言うの・・。その・・、こんな事いって変な子だっておもわないでね・・。あのね・・、ダンジョンって暗いでしょ・・。それで人目につかない場所もおおいでしょ・・。隠し部屋とか、袋小路とか。
それでねそれでね、冒険者のパーティーって、男の人と女の人がいるでしょ?そしたら・・、やっぱりその・・、愛が育まれるというか。・・いや、まれに男と男だったり、女と女だったりすることもあるんだけど。・・って、ごめんなさいなの!おねえちゃん!!そこトラップだったの!!話に集中しすぎて忘れちゃってたの!!
ほえ?全然大丈夫?・・はー、よかったー。そういえばおねえちゃん聖骸布きてたもんね。・・でもごめんなさいなの、おねえちゃん。・・うん、ありがとうなの。
・・ほえ?話の続き?・・やっぱり言わなきゃだめ?・・そのう・・、とにかくね、その・・、みんな若いし。その、ほとばしる情熱というか・・。暗い部屋で隠れてやることといえば・・・。
・・そうなの、そういうことなの。・・・・・ごにょごにょしてるの。
もちろん冒険者のみんなは誰にも見られていないと思っているんだろうけど・・。正直目のやり場にこまっちゃうの。卒業式前とかもう大変なの、みんなが鉢合わせしないように通路塞いだりいろいろ頑張るんだけど、数が多いからまるでパズルゲームなの。そりゃ、5000人もいる学校だからしょうがないのかもしれないけど・・・。
ほぇ?それもお姉ちゃんが掲示板に貼っておいてくれる?ありがとうなの!おねえちゃん。・・あ、でも私に見えちゃってるって書かないでほしいの。ダンジョンが生きてる事は内緒だから。・・うん!お姉ちゃんに任せるね!頼もしいなー。
おねえちゃんもパーティー組む時は男の人と組んだらだめだよ!この年齢の男の子ってケダモノばっかりなんだから!!
・・ほぇ?お姉ちゃんには好きな人がいるから大丈夫?この学校以外で?そうだったんだー、ほかの学校の人?・・ふえ?違う?お姉ちゃんの故郷の人?すごいのおねえちゃん、遠距離恋愛なの、大人の女なのー。
・・ふえ?それにパーティーを組む気はない?私とお喋りできなくなるから?
・・ありがとうなの、本当に、本当に嬉しいの!わたしもね、おねえちゃんとおしゃべりするの大好きなの。なんだか一緒に冒険してる気分になるんだー。・・うふふっ、お姉ちゃんもそうなんだー。うれしいなー。ふつつかものですが、これからもよろしくお願いしますなのー。
・・あっ、ここが5階層のゴールなの。そう、そこのスタンプを押して、転移装置から出口に戻るんだよ。お疲れ様なのー。お姉ちゃんが一等賞なの。
・・楽しかった?うふふー、よかったー。・・ほえ?明日も来てくれるの?ダンジョン実習で授業は一週間お休みだから?
すごいのー、じゃあ一週間毎日遊べるの!
・・うん!それじゃあ、また明日ね。お姉ちゃん!!
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番外編2話から2,3ヶ月ぐらいたった頃のエピソード、この学校は9月入学という設定です。
ダンジョン実習は2年生から始まります、幼女は単独で最速制覇。