高町なのはの特筆すべき点は不屈の精神と類稀な魔法の才能である。
噛み砕いて言うなれば、お話ししたいは、暴力で相手を黙らせて無理やり話を聞かせる。
魔法の才能に関しては初めて使ったその日に飛び回り、戦闘し、更には砲撃をかましてジュエルシードを封印することまでやってのける。
ユーノ・スクライアは優秀であるが、補助系の魔法が得意なため戦闘には向いていない。
そして、事件の発端になるロストロギアを地球に持ち込んだ人物である。
だが、ロストロギア紛失及び拡散は事故のせいであり、当人はそのことを自分の責任だからといって自分で解決するのではなく、管理局に連絡して事件の解決を早期に頼むことが彼の一番初めにすることであった。
少なくとも事件が起きてそれを解決する機関があるのならばそれに頼るべきであった。
もっとも、今更文句を言ってもしょうがない。
うねうねしたモンスターに襲われていたユーノフェレットスタイルを拾い上げて更に、そこに居合わせたあたふたしている高町なのはの手を無言で引っ張って強引に走り、うねうねモンスターから少し離れた物陰に隠れたところで少しばかり説教をした。
「すいません。巻き込んでしまって」
「ふええ、どうしよう?どうしよう?」
「落ち着け。高町。ったく、お互い、巻き込まれた以上現状を把握し、問題を解決する方法を考えないと……」
「考えないと?」
「あのモンスターに食われるか、取り込まれるか、碌な事にはならないだろうね」
ロストロギアの暴走を放っておくと世界が滅びるか、次元が歪んで世界がおかしくなると思う。
少なくともジュエルシードは強大な魔力の結晶体で、周囲の生物が抱いた願望を叶える特性がある。
たまたま悪意のもった願望を叶えてしまった日には目も当てられない。
「その、お二人のどちらかに僕に協力して欲しいんです」
「うむ」
SIDE:高町なのは
「うむ」
そう顎に手を当てて考えこむ。
私は知っている紡くんが考え事をしている時の癖だ。
――田村紡ってどういう人?
いつも隣の席で、よくお話をする私にいつだったか聞かれたことがある。
一言で言うならすごく頭のいい人。
常にテストでは満点をとっているからそれは間違いがない。
次に思い浮かぶのは、面倒見のいいお兄さんみたいな存在。
同い年なのにクラスメイトの男の子達と違って落ち着いている。
男の子達が危ないことをしようとしたり、暴れたりしているとやんわりとそれを止めて違う遊びをやるように誘導していたり、喧嘩をしていたらすぐにそれを止めたり、嫌いな物を残さず食べろと注意したり、まるでクラス全員の父親か、お兄さんのようだった。
そして、ものすごく、女の子にモテる。
成績もいい、かけっこも誰よりも早い。
面倒見も良くて、他の男の子達よりも落ち着いていて大人びている。
なにより、中性的な顔で男の子の制服を着ていないと普通に女の子に見えるのだ。
可愛くてかっこいいとクラスの女の子達で人気がある。
一度私服で家の店に来た時なんか……。
「―――、高町って、なにトリップしてやがる」
「え?あ、ごめん」
「考え事もいいが、話を聞いていなかったな。時間が無いから簡潔に言うと、このフェレット、ユーノ・スクライアという名前で、あのモンスターが現れた原因と言い張っている。が、それは単なる事故だ。そして、現状であのモンスターに対抗することのできる手段を持つユーノでもあのモンスターには勝てなくて勝てそうなポテンシャルを持った人に向けてあの救難信号を出していた。それに釣られたのが俺と、高町ってわけだ。要は自分じゃ勝てないから何とかしてくれっていう完全に他人任せ、運任せの出来事に巻き込まれたわけだ。最後にユーノのいう協力とは魔法の力を貸すからモンスターを倒してくれというものだ」
私がお話を聞いていなかったのはほんの少しの間だけだったはずである。
「すごい、たったあれだけの僕の説明でそこまでわかるなんて」
「うん、紡くんはよく、先生に、1つ聞いたら10理解する天才児だって言われてるもんね!」
「高町が威張ってい言うことじゃないだろ……。しかし、フェレットが喋ってるにも俺が説明した魔法の力ってのにも高町は案外驚かないんだな」
「そういう紡くんだって驚いてないじゃん」
私が何より驚いたのはモンスターに襲われていた時に颯爽と現れフェレット、ユーノくんと私を助け、私の手を握ってくれたことだ。
紡くんは誰とでも仲良くしているが、誰とでも一線を引いている。
クラスメイトの誰でも苗字か、フルネームで呼ぶ。
それが、なんだか悲しかった。
私が何度名前で呼んでほしいと言っても呼んでくれない。
そんな紡くんが私の手を握ってくれた。
それに、私に説明している時に見せた滅多に見れない紡くんのどこか嬉しそうな顔。
モンスターに追われているのに私には緊張感がなかった。
SIDE:ユーノ・スクライア
どうして助けを呼んだ?
あのモンスターは?
原因は?
モンスターを何とかする方法は?
矢継ぎ早に飛んでくる質問に僕は混乱しながらも答えた。
助けを呼び現れた"二人の少女"
初めに現れたのは栗色の髪の毛でぴょこんとサイドに髪をまとめた女の子。
次に現れたのはボーイッシュな感じの一人称を俺という、男勝りな女の子。
高町なのは、田村紡。
この二人の少女。
とりわけ、ボーイッシュで男勝りな田村紡という少女は僕と同い年くらいなのに、ものすごく頭の回転の速い子だった。
まるで現状を予め予想していたような感じさえした。
そして、魔法を扱うなら、協力者として僕は田村紡を選びたかった。
「高町、お前が、適任だ」
「ふぇ?」
「え?」
僕となのはは驚いた。
てっきり、紡が魔法に、協力者として立候補してくれるものだと思ったから。
「なんで?」
理由を聞こうとしたが、ドカン、という建物の壊れる音と共に暴走体が現れた。
「ユーノ・スクライア、さっさとしろ」
ハッとなり、僕はなのはにデバイスを渡す。
「これから僕の言うとおりに言葉を言って」
「わ、私が?いいの?」
「いいんだよ。俺は俺の役割をこなす」
そう言って紡は暴走体の前に走り出した。
「あ、危ないよ~」
「なのは!彼女は時間稼ぎに行ったんだよ!早く、早く僕の言うとおりに!」
紡はそのへんに落ちていた瓦礫を拾っては投げ、襲いかかってくる攻撃をうまく避けていた。
「我、使命を受けし者なり
契約の元、その力を解き放て……」
僕の言葉を繰り返すようになのはも言葉を続ける
「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」
SIDE:田村紡
いやまあ、時間稼ぎはそれほど難しいことではなかった。
相手の元になったのが知性が低かったのか、攻撃は短調だし、見きれないほどスピードがあるわけでもない。
女装させようと鬼のように追いかけてくる姉のほうが動きがいいくらいだ。
さて、高町なのはの方は
「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」
ま、当然ちゃあ当然の結果だ。
しかし、突然俺の胸の奥が熱くなる。
ドクンドクンと――。
高町なのはがバリアジャケットに変身し終えたと同時にユーノが叫んだ。
「これは!共鳴覚醒?」
聞いたことのない単語がユーノから発せられた。
とりあえず、モンスターから一旦離れてユーノを拾い上げる。
どうやら逃げた俺を無視してモンスターは高町なのはに狙いを定めたらしい。
「共鳴覚醒ってなんだ?身体からこう、迸る何かを感じる」
「ええっと、かなり希少な事例なんだけど、魔力に目覚める方法が幾つかあって、本来の目覚め方っていうのは、ちゃんとした魔法を収めた人のもとで徐々に覚醒させていくものなんだけど……」
「あぁ~、わかった。皆まで言うな。つまりは、高町の魔法覚醒の余波で俺も魔法覚醒したみたいなことだろ?」
ハンター×ハ●ターの念能力の目覚め方にそっくりね!
ユーノの反応を見る限り、俺の推測は正しいらしい。
って、こんな設定原作にあったか?
そういえば、魔法でドンパチ戦ってはいたが初心者にもわかる魔法入門的な話はなかったな。
強いて言えばレイジングハートが魔法訓練を行っていたくらいか。
さらに言えば、俺という存在そのものがいる時点でこの世界はリリカルなのはの物語に似て非なるモノとなっていてもおかしくはない。
そのへんの齟齬は後々解決していくとして、今、俺のすべきことは?
高町なのはは放っておいてもあのモンスターに勝つだろう。
そして、戦い続ける。
俺はリリカルなのはのアニメを見て思っていたことがあった。
いくら適性があって戦えるとはいえ、子供に前線で戦わせるというのは気に入らなかった。
管理局も自分たちのルールを押し付けるし、何より、まだ、高町なのは達は小学生だ。
大人が守るべき子供に、守られてどうする。
「ユーノ・スクライア。魔法の使い方を教えろ」
「え?」
「できれば、高町をサポート、もしくはモンスターの動きを止める類の魔法が最適だ」
ユーノは驚いた顔をしていた。というか、フェレットなので表情はあまりわからないが、驚いている様子だ。
この様子だと、デバイスを俺に渡したかったのか?
渡されても困る。
一つは、俺が上手くデバイスを扱えるか、
一つは、俺がデバイスを持つことにより、高町なのはにどのような変化が起こるのか、
それがわからない以上、今現在、最も高確率であのモンスターを倒せるはずである高町なのはにデバイスを渡すように仕向けた。
都合のいい言い訳だ。
俺のやっていることは管理局のやっていることと変わらない。
あとで、謝らないと。
この戦いが終わったら、謝ろう。
俺も、協力して、早く終わらせよう。
カチリと、何かがはまった音が聞こえた。
体内から湧き出てくる魔力。
ユーノ・スクライアに教わるまでもない。
頭の中に勝手に構築されていく魔法式。
「まずは体内にある魔力を感じて……」
高町なのはを見る。
彼女は、デバイス。レイジングハートに魔法の使い方を教わりながら試行錯誤しながらもなんとかモンスターの攻撃を躱していた。
「高町は魔法の天才か……、だとしたら俺は何なんだろうな?」
自然と口から言葉が出た。
「え?」
「飛ぶぞ!しっかり捕まれよ。ユーノ・スクライア!」
ふわりと、一瞬浮き上がり、高町なのはの居場所に目標を定め、加速する。
「うわぁああ」
「うるせぇえええ」
ロー、ファースト、セカンドのように加速するならまだしも、ロー、マックススピードで加速するとは思わなかった。
「え?えぇええ?」
「バインド!」
高町なのはの横に並びそして、モンスターにバインドをかける。
頭の中に流れる魔法式ははっきり言って理解不能。思い描いた魔法を感覚的に使ったが、なんの問題もなく魔法が使えた。
「驚いてる時じゃないぞ高町、動きを止めたあとはわかるな?」
『マスター、封印処理を』
「あの、どうゆうことなの?」
「アイツを倒したら全て話す……」
高町なのはは疑問の顔、疑惑の顔、そして、納得してどこか、決意を秘めたような顔をしたあと、レイジングハート指示の下、杖を構え、砲撃を撃った。
バインドで動きを封じられたモンスターは簡単に撃ちぬかれ、封印された。
「信じられないかもしれないけど、僕はこの世界の外、別の世界から来ました……」
ユーノが語る。
別の世界から来たこと、魔法のこと、ジュエルシードのこと。
ひと通り、話が終わり高町なのはは驚きながらもユーノの話を聞いていた。
「で?紡くんはいつになったらお話聞かせてくれるの?」
「うん?ああ、そんなことより、家に帰らないと怒られる時間だぞ」
時間は既に夜10時を回るかどうか。
小学生の身でこの時間帯に外に出歩いていると補導される恐れがある。
「家まで送ろう。その道中に話す。ちなみに、ユーノ・スクライア、俺は男だぞ」
高町なのはが紡くんといったことでフェレットのユーノは固まっていた。
たぶん俺を女だと勘違いしていたのだろう。
高町なのはの家に向かう道中、あの時起きた魔法覚醒の話をした。
ユーノは驚き、そんなのありえないよ。とぶつくさ言っていた。
高町家につき、高町兄、姉に見つかり俺が適当に言い訳をして、それに納得したのか、二人は高町なのはに小言を言った後、高町姉のほうが俺を家まで送るという話になった。
「田村くんの弟くんか~。これからもなのはと仲よくしてね」
そう、高町姉は俺の兄と同じ高校に通っている。
俺の存在は知っていたようだが、兄よ、俺の事をどう話した。
高町姉は俺がコスプレ趣味のある女の子みたいな男の子と勘違いしていた。
少し凹んでチキンとそれは俺の姉の趣味であり、俺はしぶしぶその趣味に付き合っているだけだと言っておいた。
家につき、高町姉と分かれ、帰りの遅い俺を待っていたのは両親と姉と、兄。
「紡にしては珍しく、いや、初めて家族に心配をかけたな」
父親の言葉はどこか嬉しそうだった。
「そうだね。紡がねぇ。ガールフレンドでもこさえたか?」
妙なところで鋭い兄。
「お姉ちゃんは許しません。一緒に……」
相変わらずの姉。
「まあまあ、いいじゃない」
ほのぼのとした母親。
まったくもってこの家族は温かい。
「ごめん。遅くなると連絡すべきだった」
素直に謝り自室に戻る。
初めての魔法を使ったことで疲れたのかすぐに眠りについた。
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あとがき
オリジナル魔法設定&解釈
魔法覚醒うんぬんと、共鳴覚醒は最近ハンター×ハンターが復活したからハンターの念能力覚醒から拝借。
デバイスを持たなくても魔法をバンバン使っているキャラ(ユーノとか、アルフとか)がいるのでデバイスなくても問題ないはず。というかリンディさんとかお偉いさん達は持ってない様子だし。
アニメ、劇場版の話からSSを構築しています。
主人公のキャラ設定がいまいち安定しない。
チラシの裏板にいる間に練っておきます。
3話ほど書いてその後、修正を加えとらハ板に移動予定
2011/08/21
少し修正。
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