事件ある所にバインドマスターの陰がある。
そう噂が広まり始めたのは、時空管理局のエースオブエース高町なのはの危機が救われた事件からである。
その事件は管理局のエースオブエースである前の高町なのはがまだ11歳であり、闇の書事件終結から二年と少しの冬に起きた。
カートリッジシステムと戦闘で今まで溜めてきた無茶と負担のツケがまわり、とある任務中に現れたアンノウンに攻撃され、あわや直撃かと思われたが、その攻撃から高町なのはを守る様にチェーンバインドと思われる鎖の壁が現れたのであった。
攻撃したアンノウンはチェーンバインドと思われる鎖で締め上げられ、行動不能になっている所を当時一緒に任務に当たっていた、ヴィータが殲滅。
これにより、高町なのはは傷つくことなく、任務を終了した。
その後、無茶を重ねている高町なのはは半年ほど休暇、更に半年を魔法訓練に当てランクS取得する。
しかし、アンノウンから高町なのはを守った人物は目撃されたものの、接触はできなかったのだ。
正体不明のバインド使いはこの事件を皮切りに、色々な事件で目撃されることになる。
そして、扱う魔法が全てバインド系ということから誰がつけたか、バインドマスターと呼ばれることとなった。
目撃証言
黒髪、顔は謎の仮面で隠され、わからないが、男と思われる。
年齢は16~20。
体型は普通。
特徴は扱う魔法が、拘束系のバインドであるということ。
魔法ランクは推定Sランク。
移動方法は転移魔法と思われる。
行動する際は一人だが背後に何らかの犯罪組織が付いている可能性があると思われる。
行動動機について謎が多い。
若手ナンバーワンと言われる高町なのはが一番、関わりが深いと言える。
4年前の空港火災時にも高町なのははバインドマスターに邂逅していたのだ。
休暇を利用して私の指揮官研修を見学に着ていたなのはとフェイトがこの事件に協力して人命救助に当たったのだが、その際に高町なのははバインドマスターにあったと報告された。
この事を知っているのは私、なのは、フェイトと当時の指揮官などだったはずだが、どこからかマスコミにリークされ、バインドマスターの名は一気に知れ渡ることになったのだ。
マスコミにリークしたのは恐らく一般市民からである。
人命救助の際に、少女を助けていたり、残っていた人間を助けていた。
壁抜きと呼ばれる高町なのはが行った救出方法とは別にバインドマスターはチェーンバインドと思われる魔法で壁を壊し、その上で鎖で洞窟の様に道を作り外への脱出経路から歩ける人間を脱出させていた。
そして、素顔のしれないバインドマスターだが、唯一高町なのはだけ、その素顔を一度だけ見ていたのだ。
救出活動の際、瓦礫がバインドマスターの顔に当たり、仮面がとれたのだと言う。
「それで?顔はどないやった?」
「うーん……。第一印象は童顔の男の子、たぶん私とはやてちゃんと同じで地球出身の日本人だと思うの」
黒髪に、黒い眉、黒い瞳、どれも日本人特有の特徴が見て取れたとなのはは言った。
しかも、年齢が私たちと変わらない位かそれよりも下かもとの事。
バリアジャケットなしで、デバイスも見当たらなかった。そのことから高レベルの魔導師であると予想できるのだが……。
「私達以外に地球出身で魔導師がおるとは聞いとらへんし、管理局でもそんな人物はおらんかったと」
「うん、あの時、無理やりにでも捕まえておけばよかったの」
高町なのはがバインドマスターと出会った時にパンツを見られたらしい。
『白じゃないだと……。淡黄色のパンツなんて。ありだと思います』
レイジングハートに録音された音声だ。
動画や画像の方は、なのはがド忘れしていて気をきかせたレイジングハートが当時の救出作戦時の音声録音のみ行っていたのだ。
「音声だけだと変態さんや。だけど、魔法ランクや、魔法技術に関してはかなりの高レベルや。無理やり捕まえようとして戦闘にでもなっていたらえらいことになっとったで」
「あはは、そうだね。でも、お礼、言いたかったな」
バインドマスターはなのはがスカートを抑えてほんの一瞬、目を離した隙に逃げたらしい。
その後、様々な事件にバインドマスターは神出鬼没に現れては管理局に有利な様に事件に介入しては解決してきた。
しかも、必ず、マスコミが取り上げるような事件ばかりにバインドマスターは関わるのだ。
そのため、民衆の人気は高い。
謎の正義の味方、というのが一般市民の協力認識であるが、管理局側は違う。
バインドマスターの使う魔法は非殺傷設定ではない。
バインドマスターが関わって捕まった犯人は必ず重症を追う。
そのことが防犯対策になっては非殺傷設定で敵を捕縛することを常とする管理局側は困るのだ。
だが、犯罪者にとってはバインドマスターは恐怖と畏怖の対象であり、水面下では防犯対策になってしまっているのが現状である。
此処数年のバインドマスターの活躍により、犯罪発生率が減っているのは確かだ。
「しっかし、目的がわからへん。慈善で正義の味方か?管理局側に有利にするのは何故や?そもそも管理局に入らんのはなんでや?」
随分前になのはは部屋から退出しており、今は私一人だ。誰もいない部屋で一人考えていがのだが、答えは見つからない。
できれば新しく設立する私の部隊にバインドマスターの人気と力が欲しい。
そう思い、過去の事件を洗い直し、バインドマスターを捕らえるべく、なのはと相談していたのだ。
そして、なのはには伝えていなかったが、バインドマスターは日本人の恐らく、学生であると予想している。
3月、4月、5月、8月、12月、1月、2月と、バインドマスターの関わった事件を時空系列で並べると日本の学校の長期休暇の時期に多くバインドマスターは現れていることがわかる。
さらに土日や休日、連休を日本のカレンダーとバインドマスターの事件介入の日付を見比べて予想した結果、バインドマスターは日本の学生である可能性が高いと予想した。
私達と同い年と考えた場合、大学生か。
日本全ての男子大学生を調べるとなるとかなりの時間が掛かる。
地球は管理外世界だ。管理局員に調べさせるのにも余程の理由がない限り派遣は不可能。
個人レベルで調べるしか無い上、今は機動六課設立の大事な時期である。
となると、日本の協力者である、アリサとすずかにお願いしてみるかなぁ。
さて、勧誘する新人たちの目星もついたし、がんばりますか。
SIDE:高町なのは
はやてちゃん。バインドマスターさんを仲間にしたいみたい。
私もそれは賛成だ。
4年前にパンツを見られた件は、11歳の頃に助けられた事でチャラにしようと思う。
でも、あの素顔、日本人で同い年くらいの男の子。
顔立ちは可愛いといった方がいいのだろうか?
男の子らしくない顔であったが、私を見てかなり驚いていたような気がする。
その後の、パンツ発言がなければ好印象だったかもしれない。
魔法レベルでいえば、私と同じくらい強いかも。
はやてちゃんには言ってなかったけど、対峙した時、すごく強い感じがした。
一度、手合わせしてみたいの。
いけない、いけない。
それよりも今はテストの準備をしなきゃ。
障害の配置も完了。あとは全体を見ていればいいだけ。
この子たち、結構やる、いいコンビだね。
と思っていたけど、ティアナの方、これ足を挫いたかな。
「一応、セットアップしておこうか、レイジングハート」
「イエスマスター」
へぇ、あの二人、やっぱり、いいコンビ。
ただ、ブレーキの事は考えておこうか。
アクティブガード、ホールディングネットもいるかな。
リインに怒られている、二人は再試験かな。
「二人共おつかれさま」
四年ぶりに合うスバル。
大きくなった。
うん。こういうのっていいな。
私を目指してバスターまで使ってくれるスバル、その相棒であるティアナ。
二人を一人前にしようと心に誓う。
SIDE:フェイト・テスタロッサ
新人二人に機動六課の経緯を説明した。4年前の空港火災時からの話でスバルの方は当時の被害者である。
「と、まあ、そんな経緯があって八神二佐は新部隊設立のために奔走」
「四年ほどかかってやっとそのスタートをきれたというわけや」
その後、登録や部隊説明をした後、最後にはやてが二人に質問をする。
「二人はバインドマスターを知っとるか?」
二人がピクリと反応する。
「私は4年前の空港火災時になのはさんに助けられる前にバインドマスターにあいました」
「私は、兄を救われました。面識はありませんが、兄は命の恩人だと言ってました」
初耳だ。二人共バインドマスターに関わっていたのか?
「スバル・ナカジマ二等陸士とティアナ・ランスター二等陸士いや、個人的な話や、スバルとティアナ、その話を詳しく聞かせてもらおうか?」
「はい、私の場合、兄から聞いた程度ですが、唐突に現れて犯人をバインドで拘束、その後、いつの間にかいなくなっていたと」
「うん、いつも通りって感じやね」
「私は、少しお話しました」
それを聞いたはやて、ティアナそれと私は驚いた。
「話?」
はやてが興味津々といった感じで聞いた。
「はい、私に向かって倒れてくる銅像をバインドで止めてくれた後に、ここは危ないから少し移動しようかって」
「それで?」
「少し移動してから、『あと少ししたら白い魔導師が来るはずから助けてもらってね。俺は他の人を助けてくるから』って言って物凄いスピードでビル内に消えてしまいました。その後、本当になのはさんが来てくれて……」
「救出された、と」
その後、もう一度なのはが残された人を救出するために戻った時にバインドマスターに会った。
「またや、バインドマスターはなのはちゃんが来ることを知っとった?いや、魔法感知能力が高いのかもしれへん。でも、白い魔導師、という発言はバインドマスターの落ち度や」
「どういうことはやて?」
バインドマスターの落ち度?
「当時、フェイトちゃんとなのはちゃんは休暇中や。なのに、なのはちゃんが救出活動に参加していることを知っとったって事は、バインドマスターはあの時、あの空港か空港周辺におった可能性が高い」
「そうか、その当時の観光者リストか事件当時の映像が手に入れば……」
「そう、その中にバインドマスターがおるかもしれん」
バインドマスターの素性を調べる。
機動六課の本来の業務には全く関係ないことなので、興味がある人はバインドマスターの素性を調べることが許されている。
ちなみに、バインドマスターの情報には懸賞金が付いており、素顔写真は一般局員のボーナス3回分もの金額が付いている。
「お小遣い稼ぎ程度に考えて本来の業務に差し支えなければ存分に調べてええよ~。後スバルには臨時ボーナスや」
バインドマスターに関する情報で有益だとはやてが判断したものはポケットマネーで支払っている。
今回のスバルの情報は有益だと判断されたみたい。
「あ、ありがとうございます。すごいよティア、3万も入ってる!」
「こら、今開けて見るんじゃないわよ!」
私は、苦笑いを浮かべた。
それにしてもバインドマスターは尽く、機動六課の主要メンバーに繋がりがあると思う。
エリオとキャロも私が保護する前の少しの間だけバインドマスターにお世話になっていた。
キャロは少数民族「ル・ルシエ」から追い出された際にバインドマスターに捕まって少しの間一緒に行動した後に施設に送られた。
エリオも同じように、両親の元を離れる際にバインドマスターに捕まって施設に預けられた。
エリオの時に管理局員とバインドマスターの間で戦闘があったのだが、管理局員は全員あっという間に拘束されて、エリオが奪われたという事になっており、誘拐犯として当時、指名手配された時期があるが、管理局員が務める研究所が違法性の高い非人道的な人体実験場となっているとわかったため、バインドマスターは人体実験にされる人間を助けだした正義の味方と当時のマスコミは世間に広めた。
そのため、指名手配は取り消され、当時の研究所の責任者であった人物は首となった。
キャロとエリオのバインドマスターの印象は二人共同意見で『変な仮面をつけた気のいいお兄さん』だった。
当時、幼かった二人は相手がバインドマスターとは知らず、現在では、自分達を助けだしてくれた人物であり、いつかお礼を言いたいと言っている。
「こうも見事に機動六課メンバーに関わりがあるバインドマスターは何者や?」
「悪い人ではないと思う。けど、偶然にしては出来すぎだよ」
「新人メンバー全員と関わりがあるのはいただけん。まるでこのメンバーが機動六課に入る事をわかっていて動いていたとしか思えんわ。だとすると、機動六課の裏の顔も知っとる可能性が高い。どこでどう漏れたかわからんが、機密はかなり高いと自負しとる。なら、予測した?そうなると私の頭の中まで読まれとることになる。レアスキルの持ち主だとしたら厄介やな~」
流石、19歳という若さで二佐まで上り詰めたはやては少ない情報で犯人像をプロファイリングしていく。
「性格が掴みきれん、片や、気のいいお兄さんで、片や、非殺傷設定で重症者を出す冷徹な人物。身内には優しいタイプか?そもそも、事件をどうやって察知してる?やっぱ、バインドマスターには仲間がおるな。それも、管理局に内通しとる人物やと思う。現在務めている局員と、最近退職した局員……。恐らく後者か、それも管理局での立場が高い人物で退職した局員に絞って調べてもらえるか?フェイト執務官」
「いいけど、今勤めてる局員は調べなくても?」
「やぶ蛇になりそうやから時期をみてから調べるしかあらへん」
機動六課に良くない印象を持っている人物が思い浮かぶ、確かに今は動くべきではない。
もっと実績を作り、はやての言うとおり、時期を見てからじっくり調べよう。
SIDE:????
「ぃらっしゃしぁせぇ~」
店に入ったお客を迎える挨拶とは思えない。
「あじゃじゃしたー」
店から出るお客に対してのお礼には聞こえない。
大体、いつもヤル気が見えない。
全く、魔法訓練の時だけ楽しそうにするのはダメだと思う。
闇の書事件発生後、数ヶ月たったある日、主と共にイギリスで隠棲生活を初めて半年くらいだったか。
この人物が現れた。
『じじぃ、隠居なんかしてねぇで陰から八神はやてをサポートしろよ。どうしてそこで諦めるんだよ!もっと熱くなれよ!』
確かこんな事を言っていた。
当時、9歳だったはずの少年とは思えない、なんか、暑苦しさと凄みを発していた。
私達、姉妹は一年ほど、イギリスから転送魔法で日本に頻繁に移動しては、アイツを鍛えこんだ。
たぶん、クロノより、かなり厳しく、鍛えたつもりだが、持ち前の気力?
いや、ぶっ飛んだ魔力量と、魔法センスは確かに認めよう。
しかし、事あるごとに私達を縛るのは悪趣味だ。
日本には義務教育というものがあり、アイツはそれが終わって高校に進んだ。
てっきり管理局に務めると思っていたのだが、陰から八神はやてをサポートするのに管理局に入っては意味がないと言われて納得した。
その頃から私達は日本に移り住み、アイツと共に管理局で起こる事件に介入していくことになる。
私は管理局のシステムに侵入しては事件発生をアイツに伝え、転送魔法で現地に送る。
ロッテの方は何か会った時のために待機が多い。
戦闘後のカモフラージュや後処理がロッテ担当なので仕方のないことだ。
まあ、下調べの潜入捜査もすることがあるので負担は同じ位になるか。
しかし、アイツが魔法を覚えて約10年か。
アイツの持つ魔力変換資質により、飛翔以外の魔法が全てバインド系に変化するという現象は改善されていない。
アイツ自体は『だってしょうがないじゃない。使えないんだもの』と魔法を覚えて1年もしない内に他の魔法習得を諦めた。
それでも、バインド系から派生させた攻撃、防御、回復、移動方法を確立し、今や、ミッドチルダではバインドマスターと呼ばれている。
端から見れば今のアイツはただの大学生がアルバイトしているように見える。
見えるというか、絶賛アルバイト中なのだ。
「田村く~ん、これ3番テーブルにお願いね~」
「うい~す」
うん、やる気なし。
あ、ケーキおいしいなぁ。
「ねぇ、アリア。次はどうしようか?」
「そうねぇ、しばらくは待機かな……」
「何普通にケーキ食ってるんだよ。手伝えよ」
「「今日は休みだし」」
私達もこの喫茶、翠屋でアルバイトしているのだが、今日は休みだった。
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あとがき
一期を書いてたのに何故かStrikerSを書いていた。
プライベートが忙しくなりそうなので書きたいように書いてみました。
次回更新はいつになることやら……。
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