Fate/stay night~魔術師と死神~
第0夜「再誕生日」
藍染を倒して、俺が死神の力を失って、半年が経った。
その間、俺は何をしたという事も無く、ただ手に入れた【普通】の日常を過ごしていた。
心の奥で燻る思いを無理矢理、より奥深くに押し込みながら…
今日も学校が終わって、いつもの道を通って帰る。
家に帰って、メシ食って、風呂はいって、宿題して、いつも通りに眠って、一日を終えるハズだった。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
ー日常は崩れ去り、非日常が訪れる。
俺の体は声の方に向かって走り出す。着いたのは、何度か来た事がある公園だった。
そこには悲鳴の主だろう…少女が“浮かんで”居た。
理解する。
あの子は今、持ち上げられているのだ。俺の目には見えないけど、今までの経験が俺に状況を正しく伝える。
あの子はこれから喰われるのだ。
欠けた心を携え、生者を貪り喰らう<虚>に。数分、数十秒も経たない無い内に。
身体が、心が熱くなる。今の俺に戦う力は無い。嘗てのように皆を護る力は無い。
それでもただ見ているだけなんて事は俺にはできない。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
虚が居ると思われる所にカバンを振り回しながら突撃する。
カバンは虚空を切るだけで、何にも当たらない。当然だ。
俺には奴等を認識できないんだから…
それでもカバンを振り回していると、突然重圧がかかり、俺は地に伏せる。
多分、手か足で押さえつけられたのだろう。とにかく身動きが取れない。
「い、いや…いや…やめてよぉ…」
女の子の顔がより深い絶望に染まっていく。
目は見開かれ、涙が滝のように流れだし、恐怖に顔が塗れる。
俺はひたすら、力を望んだ。ただひたすら、心の底から。
その時、何かが俺に手を差し出した。
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俺は、護りたかった。だから俺は断言できる。
この時の選択を俺は絶対に後悔しないと…
あの子を助けられた事を、
俺は、「黒崎一護」は永久に、誇り続ける。
例え、俺の魂が磨耗し、消え去る事になろうとも。
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