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No.29618の一覧
[0] 七人の天使 【現代ファンタジー】[伊勢之 剛](2011/09/06 01:09)
[1] (1) 天使達[伊勢之 剛](2011/09/06 01:10)
[2] (2) 朝のひととき[伊勢之 剛](2011/09/07 23:35)
[4] (3) 書を捨てよ町へ出よう[伊勢之 剛](2011/09/14 02:54)
[5] (4) 迷った時は…[伊勢之 剛](2011/09/20 00:14)
[6] (5) 廻り始める[伊勢之 剛](2011/09/21 00:57)
[7] (6) 押された背中の結末は[伊勢之 剛](2011/09/23 00:44)
[8] (7) 「さよなら」は別れの言葉じゃなくて[伊勢之 剛](2011/09/24 03:02)
[9] (8) 明日の為に[伊勢之 剛](2011/10/02 00:54)
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[29618] (1) 天使達
Name: 伊勢之 剛◆9f019924 ID:890e33a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/06 01:10

 空から女の子が降ってくる確率というのは、限りなくゼロに近い、いわゆる天文学的数字というやつになるだろう。
 漫画や小説の冒頭シーンではよくあるパターンらしいが、生憎そういった作品を読んだことがない俺には、現実世界でそんなことが起こるシチュエーションがまず思い浮かばない。
 せいぜい、飛び降り自殺とか、足を踏み外した転落事故とか、それぐらいのものだ。
 可能性が全く無いと言い切れないのは、この世の中、何が起こるかわからないからだが、これが1日一人ずつ、7日間連続ともなれば、これはもうゼロ%の確率と言ってもいいんじゃないか。
 1週間前までの俺なら、確実にそう考えたはずだ。
 だが、今は違う。
 なぜなら、そのあり得ない出来事が起こってしまった結果が、今、正に目の前に存在しているからだ。
 リビングに置かれたテレビの前で横一列に座り、子供向けのアニメを食い入るように見ている七人の女の子。
 容姿も、態度も、口調も全てがバラバラな七人。
 女性という以外に、共通点は、

    空から降ってきた

という一点のみ。(女性という共通点は、裸にして調べた訳じゃないから、ひとまず保留)
 いや、もう一つあった。
 俺の脳裏に、一週間前の出来事が鮮明に蘇ってくる。


 それは、学校からの帰宅途中、いつものように神社の境内をショートカットしていた時だった。
 誰もいない社殿前の広場を横切っていると、急に胸騒ぎがしてきた。
 立ち止まって辺りを見回してみるが、やっぱり誰もいない。
 気のせいかと歩き始めようとした、その時。
 何かの気配が近づいてくるのがはっきりとわかった。
 それも、上の方から。
 既に日は落ち、夕焼けの赤から夜の闇へ変わろうとしていた空から、何かが降ってきた。

「!?」

 何が何だか理解できないまま、とっさに両手を出して降ってきたものを受け止めた。
 正確には受け止めようとしたが、勢いに負けてそのまま下敷きになってしまったのだが……。

「う、うーん……」

 それは、いわゆる女の子だった。
 地面に伸びている俺の上で、上体を起こして辺りを見回していたが、

「ちゃんと降りてこられたみたいだな。うんうん」

などと一人納得したように独り言をつぶやいている。
 俺も体を起こそうとしたが、地面に打ち付けたようで、後頭部に鋭い痛みが走った。

「痛つつ……」

 思わず声を上げた俺に、やっと気が付いた様子で、その女の子は

「おお、すまんすまん。下敷きになってるとはわからなかった。今、退くからな」

と言いながら立ち上がったので、俺の体も何とか自由を取り戻すことができた。
 改めて見ると、俺と同い年くらいだろうか、中肉中背の体格。
 顔は、なかなかいい線行ってる。
 ちょっとつり目気味の顔立ちが、ポニーテールにした髪型と相まって活発な印象を受ける。
 見とれている場合ではない。
 状況が掴めないまま、俺はとりあえず素朴な疑問を投げかけてみた。

「えーっと、誰、ですか?」

 何で空から降ってきたのか。
 その辺のことは考える余裕がなく、ひとまず無難な質問をしてみたのだ。
 だが、返ってきた答えは、無難なものではなかった。
 その子は、ひと言で答えた。

「私は天使だ」


 これを皮切りに、同じ場所、同じ時刻、1日に一人ずつ、俺は空から降ってくる女の子を受け止めた。
 口調はそれぞれ違うが、全員が自分のことを

    天使

と呼んだ。
 そして、なぜだか全員が俺の家に居着いている。
 七人の自称『天使』が並んでテレビを見ている図へと繋がるわけだ。

「なあ、雨宮慎二。腹が減った。晩ご飯はまだか?」

 ポニーテールのあの子が俺に催促する。

「まだですか?」「まだなの?」「まだでございましょうか?」「まだなのか?」「まだあー?」「………」

 6人の内、一人を除いて5人の声がそれに続いてハモる。
 残りの一人も無言のまま『まだ?』と訴えかけてくる。
 今のところ、主に俺とのコミュニケーションを取っているのは、最初の子だ。
 自分では、

    ヒナタ

と名乗った。
 それから順番に、ツキコ、イツキ、ホノカ、ミズエ、カナ、ヒジリというらしい。
 天使にしては純和風な名前に違和感を抱いたが、ヒナタに訊くと、

「ここは日本だろ?和風な名前のどこがおかしいんだ?わざわざ、わかりやすいようにそうしたのに。天使としての本当の名前はお前には聞き取れないぞ。それでもいいなら、そっちを使うけどな」

と言い返されてしまった。
 どうやら本名は他にあって、呼びやすいように和風の名前を付けてくれているらしい。
 そんな七人の視線を一身に受けている俺は、食欲のプレッシャーに負けてしまった。

「わかった。晩飯はすぐに作り始める。俺も腹減ってきたしな。でも、その前に……」

 端から端まで顔を見渡すと、言葉を続けた。

「もう一度、改めて質問させてくれ。君達はいったい何者で、何のために俺の家に来たんだ?」

 七人はお互いに顔を見合わせていたが、無言のまま頷くと、七人を代表してヒナタが口を開いた。

「私達は天使だ。何度言えばわかるんだ?天使が家にいたらいけないのか?」

 一事が万事、この調子だ。
 この先、どうなることやら。

 とりあえず今は晩飯の支度に専念して、現実逃避することにしよう。


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