後書き+If編
というわけで第一部「メアリー・スーに祝福を」終了です。
最後の二話が読んでて非常にきつかったと思います、お疲れ様です。
ブラックとして書いたものをチラ裏に投稿して、自分で読み返して「後味悪すぎだろコレ」と思って前後逆転。
すると一転コメディ調に、反響が大きくて驚きました。そして一発ネタのつもりを急遽続きものにしました。
この第一部エンディングを思いついたのもゼロ魔板に移るとき、いきあたりばったりです。
少し期間をおいて第二部「始祖ブリミルの祝福を」をはじめます。
ラスボス化したメアリーとハルケギニアとの大戦です。
今までのラヴコメディが好きだった人は、残念ですが全く作風が変わります。
救いようがないほど絶望的シリアスです。またダーレス的にもなります。
板はこのまま利用しますが、タイトルを「始祖ブリミルの祝福を」に変えるのでラヴコメを求める人はのぞかないことを推奨します。
また世界観融合でオリ設定の大安売り、そういうのが無理な人も読まない方がいいかと思います。
最終話で疲れたーという人はチラ裏の各種一発ネタや「空に挑む」「トリスタニア納涼祭」で心を休めてください。
このままではあまりに救いがないので、If短編を下に載せておきます。
触りだけですが、もしメアリーが邪神に弄ばれなければどうなったかという短編です。
ジョン・フェルトンに幸福を
A. D. 6088
この日記帳には我が娘のことのみを記す。
今日は非常にめでたい日だ。
我がロシュフォール家に初めての子供が生まれたのだ。可愛らしい女の子だ。
名前はメアリー・スー。
口元は私に似ており、目元が妻に似ている。
妻も意識ははっきりしており、経過は順調だ。
それに昨夜夢の中で始祖ブリミルが現れた。
この子は間違いなく素晴らしい子どもに成長する!
**
メアリーに髪が生えはじめた。
アルビオンに連なる峰々、その頂上にかかる雪のように白い。ハルケギニアでは非常に珍しい髪の色だ。
すでに目も開いており順調に育っている。
ただ、青い瞳と白い髪、そして異常と感じるまでの肌の白さ。親としては少し不安だ。
それにメアリーは普通の赤子と比べてあまり泣かないようだ。
手がかからないのは良いことだ、と妻は言っているが元気に育ってくれるか。
定期的に医者に見せた方が良いかもしれない。
**
メアリーが寝返りをうった。
もうしばらくすればハイハイもできるようになる、とは乳母の言葉だ。
それ自体はめでたいことだ。
しかし私は奇妙なことに気付いた。
寝返りをうったとき、メアリーの右目が赤くなったような気がしたのだ。
ひょっとしたらメアリーは月目なのかもしれない。
少し注意して様子を見よう。
**
間違いない、やはりメアリーは月目だ。
ハイハイをした記念すべき日なのだが素直に喜ぶことはできない。メアリーは激しい動きをするとき右目が青くなるようだ。
通常の月目は常に色が違うと聞く。これは異常なことではないだろうか。
アカデミーの連中やロマリアの坊主どもに見つかってしまっては危険だ。
後で妻に相談しなければならない。
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記念すべき日だ!
メアリーがはじめて喋った!!
たどたどしい言葉ではあったが確かに「パパ」「ママ」といった。
この歓びは文章にあらわせない。
使用人たちには特別に上等なワインを振舞ってやろう。
メアリーがあまり泣かないものだから言葉に障害があるのかも、と一人悩んでいたのだ。
今日はよく眠れそうだ。
**
メアリーの声は天使のようだ。
素晴らしい、あの声を一日中だって聞いていたい。
まだ意味の通ることはあまりしゃべらない。この時期の言葉はそういうものだ、と乳母は言うので心配ないだろう。
私が笑いかければあの子は愛らしい笑顔を返してくれる。
月目に関しては個人的によくしている司祭に相談した方が良いかもしれない。
**
メアリーが生まれて一年と少しがたった。
すでに屋敷の中を歩き回れるようになり、運動面では問題ないようだ。
メアリーはよく喋る。人がいるところでも、いないところでもおかまいなしに喋っている。意味が通っていることも時折喋るようになってきた。
司祭に相談すると「祝福の子」かもしれないという助言をくれた。ふとした拍子に月目と変じるのはその証左だというのだ。
一度ロマリアに連れて行った方がいいかもしれない。
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メアリーがマトモに喋れるようになった。
喜ばしいことだ、諸手をあげて喜んでしまう。メイドに見られた、誰にも言わないよう念押ししておく。
私たち夫婦は始祖ブリミルの恩恵を一身に受けているに違いない。
メアリーの誕生以来の子供を妻は授かった。
きっと一年後にはこの日記もさらに歓びに満ちるだろう。
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あれから一年がたった。
長男はゲイリー・スーと名付けた。姉弟で似た名をつけたのは仲良くあってほしいという願いからだ。
メアリーは流暢に喋るようにはなった。女の子らしい控えめな言葉で、見ているだけで微笑んでしまう。
メアリーは始祖が遣わした子に違いない。
読書が好きな彼女のために大きな聖堂付きの図書室を建てよう。
始祖ブリミル様、どうか我が娘をメアリーをお見守りください。
妻と二人で日々祈っています、繁栄を賜るようお願いします。
**
来るものが来たか、という思いだった。
五歳の誕生日、メアリーが魔法の練習を願い出てきたのだ。
予想をしていなかったわけではない。しかし、こういってはなんだがまだ早いような気がするのだ。
メアリーは確かに賢い子だが、魔法というのは危険な一面もある。
言い含めると意外なまでに素直な様子だった。
図書館も完成した。聖像も枢機卿が祝福を施した聖なる銀を元に素晴らしいものを用意した。
メアリーは大喜びだった。妻もその姿を嬉しそうに見守っていた。
その内家族でロマリア旅行もいいかもしれない。
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メアリーは図書館にこもりっきりだ。
これではいかん、と私も妻も積極的に遠乗りに連れて行っている。あまりに室内にこもりすぎるとよくない、と昔の本に書いてあったのだ。
六歳の誕生日、メアリーは再び魔法練習を願い出た。
正直な話、まだ教えたくはない。
だがこの前妻に「貴方が過保護なだけです」と叱られたので今日から魔法を教えた。
メアリーはその愛らしい瞳をキラキラ輝かせて楽しそうに学んでいる。妻の方が正しかったようだ。
白すぎる肌、白い髪、青い瞳と神秘的な外見は今でも始祖が遣わされたようにしか見えない。
来月知り合いの司祭のツテを訪ねるのと同時にロマリア観光にいこう。
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七歳の誕生日、メアリーはなんとラインに到達した。
素晴らしい、まさに祝福の子だ。
ロマリアでも「この子はまさに祝福を授かっている」と枢機卿のお墨付きを頂いた。
ゲイリーも健やかに育っている。
メアリーの代でロシュフォール家はこれ以上ない発展を遂げるだろう。
**
気が付けばメアリーが生まれて十四年がたつ。本来ならば魔法学院にいれなければならない。
だが私は入れたくない。
メアリーはあっという間に親である私を抜いてトライアングルになったのだ。
魔法学院の生徒は良くてライン、トライアングルなど数えるほどもいない。やっかみからイジメの対象にならないかと不安なのだ。
するとまた妻が「貴方は過保護すぎます」と言ってきた。
これくらい普通だと思うんだが。
妻は嫁入り相手も探さねば、というがそんなことはできない。
あんな可愛い娘を嫁になどやるものか!
今私はオールド・オスマンに手紙を書いている。
今までにあったことをすべて余さず記した。
もしメアリーが虐められるようなことがあればどうなるか覚えておけ、という内容だ。いざとなれば学院まで怒鳴り込んでやろう。
始祖ブリミル様、なにとぞメアリーのことをお願い申し上げます。
我が娘、メアリー・スーに祝福を。