サイト・ヒラガに祝福を
2004年 A.D. 6104 平賀才人
なんか異世界に来たし今日から日記つける。
俺の名前は平賀才人、ここ風に言えばサイト・ヒラガ。元・東京在住の十七歳、高校三年生で青春真っ盛りのイケメンだ!
……ごめん嘘ついた、青春を楽しもうとがんばるフツメンだ!!
なんか昔っから皆には「抜けてる」って言われてるけどそんなことないぜ?
こんなよくわからないところには来たのは……事故だ。
考えてもみてくれ。
道路のど真ん中に身長くらいある銀色の楕円形がふわふわ浮いてたら。
まず裏側確認して、それから色々したくなる、誰だってそーするに決まってる。
唯一の誤算は月が二つあって魔法使いがいるファンタジー! と思わず叫びたくなる世界に召喚されちゃったことだ。
ハルケギニアとかいう世界は魔法どころかエルフまでいるらしい。
エルフと言えば森に棲んでてとんでもない美形ばっかり、ってイメージだけど砂漠に住んでるんだって。人間より魔法がすんごい強くて、でも性格は穏やかだとか。
気は優しくて力持ちってヤツだな。
あとドラゴンやらグリフォンやら動物園にいればパンダなんて目じゃないヤツらもいるんだ。実際青いドラゴン見たけどすごかった、でかい、怖い、食われそう。
大丈夫かなぁ俺、ドラゴンころしが必要な場所だったら一ヶ月もしないうちに死ねちゃうぜ。
そうそう、俺を召喚しちまった貴族のお嬢さまの紹介がまだだったな。
名前はルイズ、ルイズ……ルイズなんとかかんとか!
長すぎて忘れちまったよ、それにファーストネームで呼んでいいって言ってくれたし。女の子の下の名前呼ぶなんてはじめてだよ、声にするだけでドキドキだよ。
そのルイズなんだけど、すっげー可愛いの!
うまく説明できないんだけどさ、「天下無双、外宇宙に名をはせる、邪神も裸足で逃げ出す無敵無謬深淵の中を覗き込むほどの驚きを伴う美少女」って感じ?
まぁ欠点は、日本語なんか誰も読めないし書いとくか、胸のサイズだな。お隣のキュルケって子くらいなら完璧というか、宇宙一の称号を授けてもいいくらい。
というか、ピンクブロンドの髪なんてはじめて見たぜ、アレで染めてないとか遺伝子仕事してるの?
性格も書いておくか。
貴族のお嬢さまって言うからよくある「おーっほっほっほ!」とかを想像したワケですよ。
全然違う、超優しい。
この子俺に惚れてるの、ってレベル。他の貴族とはほとんどステレオタイプなヤツらだからルイズだけが違うの。
こんな非の打ちどころのない美少女とキスしたなんて、俺幸せ者!
残念ながら帰る魔法は今のところないらしいし、とにかく精いっぱいルイズのためにがんばろうと思う。
出会い系に登録したばっかりだったんだけどな……ぐすん。
今日はもう寝る!
**
二日目にして色々ありまくりだった。
いきなり三日間寝太郎状態だったらしい、ルイズ世話かけて心配させてごめん。
とりあえず朝のことから。
女の子とかを連れ帰った渋いおっさんって、その子をベッドに寝かして自分はソファーで寝るじゃん。
アレ結構きついんだな。寝返りうてないから窮屈な感じするんだよ。
まぁルイズがメイドさんたちに頼んだおかげで、石の床に寝るってのは防げたからよかったんだけどさ。
さらに女の子と一つ屋根の下どころか同室で寝るなんてはじめてだったんだ。
窮屈なのもあって「寝れるかな?」とは思ったけど心配なかった。一瞬で寝れたよ、俺の適応能力すごい、鈍いのかコレ?
朝はメイドさんと使用人さんと一緒にご飯、かなり美味しかった。でもパンなんだよ、そのうち絶対ご飯が恋しくなるに違いない。
あと変な臭いがするからそっち見たら変な獣が舌伸ばしてみてた。ロシュフォールさんって子の使い魔らしい。
子犬くらいの大きさなのになんか怖い、威圧感というか圧迫感がある。同時に見ててムカついてくるのはなんでだったんだろ。
しばらくこっち見てどっかいった。
**
んでもって次は授業、教室がすごかった。海外映画でしか見たこと石造りの教室とか。
さらにすごいのが使い魔、もう怖い。「俺こいつらと同列?」って少し悲しくもなった。
そして、ルイズがいじめられてるのもわかった。
魔法唱えたら爆発するだけだろ。
なにがゼロのルイズだよ、お前らなんでがんばってるヤツをバカにできるんだよ。ふざけんなっての。
そう叫ぼうとしたけどルイズに肩を抑えられた。
わたしは大丈夫って目で言ってた、でも辛そうだった。
優しくされたのもあるかもしれないけど、そん時俺は絶対ルイズの味方でいるって決めた。
あとすごく印象に残ってるの。
すごい背筋がぞわぞわする子がいた。いや、キモイとかそういうのんじゃないんだ。
すごい美人だと思う、肌も髪も真っ白で目が赤い、日本じゃアニメにしかいないみたいな感じの子。
見た瞬間「コイツはヤバイ!」って思った。
ルイズが太っちょ貴族にバカにされたときとか凄い表情浮かべてた。なんていうか、表現できない顔、喜怒哀楽全部一緒に浮かべたらああなるのかも。
そのあとも不気味にぶるぶる震えてた。
ああもう、自分で何書いてるのかわかんね。とりあえず教室はピッカピカにしてやった。
**
俺、実は剣の達人かも。
ルイズがお金払ってるみたいだけどお手伝いしようと思ったんだ。
ほら、一人だけゴロゴロしてると他の人が気分悪いし、バイトの予行演習にもなりそうだし。食堂でデザート配り手伝うことになったんだよ。
この時シエスタ、って子に教えてもらって少し仲良くなった。
んで、配ってるとき親切で香水みたいなの拾ってやったらなんか決闘することになった。
相手は金髪フリフリキザ貴族、腹立つことにイケメン。しかも二股かけてそれが俺のせいでバレたとか。
知るか!
とにかく広場に行ったんだけどきったねぇの、魔法強いよ。
ぼっこぼこに殴られてもう何がなんだかわからなかった。
ルイズが泣いてた気もするし、キザイケメン貴族もちょっと引いてた気がする。
でもなにより覚えているのは例の白い子。
すごい怒ってるようにも楽しそうにも見えて、ほっといたら人殺しそうな勢いに見えた。メンヘラってヤツなのかもしれない。
授業中見たときは「コイツはヤバイ!」だったけどその時は「コイツを何とかしろ!」って心が叫んでたような。
流石に三日間寝っぱなしだから詳しくは思い出せないけど。
まあ白い子が顔を伏せたからイケメンの方見て、そしたら剣が刺さってたんだよ。
尻もちついてたから立ち上がるために握ったらすごい。世界が変わった。
もうイケメンとか敵じゃなかった。あっという間に決着ついた、でも「コイツを何とかしろ!」って感情がすっげー強くなった、気がする。
あんだけボコスカ殴られてるんだからそりゃ忘れるよな。
で、とりあえずルイズのとこに行こうとして剣を手離したらぶっ倒れちゃったと。世の中不思議なことばっかりだ。
それと起きてからルイズにすごく怒られた、泣かれた。
泣いた女の子ってどうあやせばいいの? 誰か教えてよ!
今からルイズに土下座してきます。
*****
メアリー・スーに歓びを
ちーっす、俺の名前はメアリー・スー・コンスタンス・ド・ロシュフォール。
トリステイン王国のロシュフォール伯爵家長女だ。
神様の力で皆おなじみ「ゼロの使い魔」の世界に転生した元男、現女の子なんだ。
本気出すと右目青くなるけど、冷静に考えれば俺の人生プランで必要になるときないよな。
ま、いいや。
前回も言ったけどサモン・サーヴァントしたんだ、ワンちゃんだぜワンちゃん。
見た目はかなり強そうだから賢くなってほしいという意味を込めてドン松五郎って名前をつけたんだ。ハルケギニア風に言うと「ドゥンムァツグォルォ!」って感じ?
一回噛んで「ドゥンムァツトゴァ」とか言っちゃった、それ以来普段はドンって呼んでる。
強そうでいて可愛らしいけど、グルメで大食い。エサ代がかかるのが玉に瑕なヤツだ、なんで豚の頭とか牛の頭を好むかねぇ。
*
さておき原作開始ですよ奥さん。
めでたく才人が召喚されてごろごろ契約の痛みで転がってたり。
今までクラス違うから知らなかったんだけどさ、ルイズめっちゃ良い子なんだよ。
召喚翌日の朝ごはん、才人のことみんなかわいそうって思ったっしょ?
違うんだよこれが原作とは。アルヴィーズの食堂には連れてこず使用人用の場所で食べさせてるんだよ。ドンの視界共有(どこに目があるかわからんけど)で確認したから間違いない。
これにはびっくり!
この様子だと昨夜もまっとうな寝床を与えてもらったのかも。魔法が使えないから自然平民には優しくするようになったのかもしんないな。
ここらへんも原作とのギャップだ。
でも魔法はボカンボカンやらかしてるみたいで同級生からは「ゼロのルイズ」呼ばわりされてる。
正直な、マリコルヌの悪口とか「お前小学生かよ!」って突っ込みたくなるほどちんけなの。
もー顔伏せて笑いこらえるのが精いっぱいで、きっと肩とか震えまくってるよ。
おっと、ミセス・シュヴルーズが入ってきた。
授業はきっちり聞くぜ、なんたって魔法の勉強は楽しいからね。物理法則なんか知ったこっちゃねぇよ! ってところが特に。
感覚頼みなところが多すぎてぶっちゃけ座学できすぎても意味ないけど。
*
決闘って何が楽しいんだろうね。
ここは原作通りにイベント進行してくれて安心の限りだよホント。
バタフライエフェクトだっけ?
よくわからんけど風が吹けば桶屋が儲かる的なアレやコレで流れが変わりすぎても困るんです。ただでさえ俺って異分子がいるんだから極力原作キャラとは語らずにいきたいね。
武勲挙げて領地に引っ込んで内政チート! それが俺の人生目標。
うわ、才人フルボッコじゃんか。
ラノベとかアニメだとわかんないと思うけど、これはひどい。もう見てるのが辛くなってくるレベル、よくこんなので立ち上がれるよな。
あーイタイイタイちょっとホント無理見てらんない。
でも剣握ってからを見守る必要はあるから動けねぇな。
仕方ない、地面でも睨んでおくか。
にしても貴族様ってのはかなりいいご趣味をお持ちだね。一対一とは言えリンチと変わんないじゃん。
ボクシングとかみたいな試合とは違うんだぜ? なんで止めようとしないのさ、下手すりゃ死ぬぞ。
こいつら全員痛い目見た方がいいんじゃないか、って思ってしまう。
おかしいな、俺こんなこと思うキャラじゃなかったはずなのに。
普段通りのスタンスなら「モブ貴族なんて知ったこっちゃねーや」に近いと思うんだがなぁ。
ああ、アレだな。ドンを召喚したことで優しさに包まれちゃったんだな。今まで以上に優しくなるとか、人間国宝と呼ばれてもおかしくないレベルだろ。
お、おバカなこと考えてたら才人剣握りやがった。
すげえ、ありえねえ、速いとかそんな簡単に表現できるなもんじゃない。あなた人間ですかってくらい、人類規格ぶっちぎり。
虚無の使い魔は伊達じゃないな……もうすぐスクウェアになれそうな俺でも接近戦は勝てそうにない。
距離さえあればなんとでもできるんだろうけど、デルフリンガー持てばマジメイジ殺し。
……と、なんでこんな好戦的な考え方してるんだか。あほらし。
さてと、タバサが住む図書館にでも行きますかね。
*
もうね、力ががくんと抜けたよ。なんなんだよアレ。
今アルビオンが原作通りヤバイらしいんだけどさーレコン・キスタじゃないの。
聞きたい?
そんな聞きたい? 脱力すんなよ?
……「ニャル様とホップを愛でる会」だ。
ほんと「ハァ!?」って感じだよな。
こんなんに滅ぼされそうになるってアルビオン大丈夫かよ。ホップってビールかよ、ゼロ魔はエールだっけ?
どうでもいいか。
なんか使用人の噂話を小耳にはさんだ程度だけど、なんだかなーって人生嘆きたくなるぜ。
二回目の人生だけどな!
さて謎な名前だがどういうことだろう。
ニャル様って人とホップを品種改良して美味しいエールを造ろうって会なのか?
それともニャル様って人とその弟子ホップの漫才を見てニヤニヤすればいいのか?
まったく一切見当もつかん。
ここにきて原作との乖離が進み始めたなー。物語なんだからその辺きっちりしてほしいぜ。
大筋で考えれば別にいいんだけど、無能王ジョゼフの戯れってヤツか。
まぁ名前なんて些細な問題でアルビオン占領されそうになってる事実だけが大事だよな。
こりゃ俺もキュルタバに着いて現地行って確認すべきかもな。
あ、そーいや今日フリッグの舞踏会なのにフーケさん来なかったぞ。
ロケットランチャーを一度ナマで見たかったのに……。