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No.29805の一覧
[0] ハウリング【現代ファンタジー・ソロモン72柱・悪魔・同居・人外異能バトル】[テツヲ](2013/08/08 16:54)
[1] 零の章【消えない想い】 0-1 邂逅の朝[テツヲ](2012/07/11 23:53)
[2] 0-2 男らしいはずの少年[テツヲ](2012/03/14 06:18)
[3] 0-3 風呂場の攻防[テツヲ](2012/03/12 22:24)
[4] 0-4 よき日が続きますように[テツヲ](2012/03/09 12:29)
[5] 0-5 友人[テツヲ](2012/03/09 02:11)
[6] 0-6 本日も晴天なり[テツヲ](2012/03/09 12:45)
[7] 0-7 忍び寄る影[テツヲ](2012/03/09 13:12)
[8] 0-8 急転[テツヲ](2012/03/09 13:41)
[9] 0-9 飲み込まれた心[テツヲ](2012/03/13 22:43)
[10] 0-10 神か、悪魔か[テツヲ](2012/03/13 22:42)
[11] 0-11 絶対零度(アブソリュートゼロ)[テツヲ](2012/06/28 22:46)
[12] 0-12 夜が明けて[テツヲ](2012/03/10 20:27)
[13] エピローグ:消えない想い[テツヲ](2012/03/10 20:27)
[14] 壱の章【信じる者の幸福】 1-1 高臥の少女[テツヲ](2012/07/11 23:53)
[15] 1-2 ファンタスティック事件[テツヲ](2012/03/10 17:56)
[16] 1-3 寄り添い[テツヲ](2012/03/10 18:25)
[17] 1-4 お忍びの姫様[テツヲ](2012/03/10 17:10)
[18] 1-5 スタンド・バイ・ミー[テツヲ](2012/03/10 17:34)
[19] 1-6 美貌の代償[テツヲ](2012/03/10 18:56)
[20] 1-7 約束[テツヲ](2012/03/10 19:20)
[21] 1-8 宣戦布告[テツヲ](2012/03/10 22:31)
[22] 1-9 譲れないものがある[テツヲ](2012/03/10 23:05)
[23] 1-10 頑なの想い[テツヲ](2012/03/10 23:41)
[24] 1-11 救出作戦[テツヲ](2012/03/11 00:04)
[25] 1-12 とある少年の願い[テツヲ](2012/03/11 12:42)
[26] 1-13 在りし日の想い[テツヲ](2012/08/05 17:05)
[27] エピローグ:信じる者の幸福[テツヲ](2012/03/09 01:42)
[29] 弐の章【御影之石】 2-1 鏡花水月[テツヲ](2012/07/11 23:54)
[30] 2-2 相思相愛[テツヲ](2012/12/21 17:29)
[31] 2-3 花顔雪膚[テツヲ](2012/02/06 07:40)
[32] 2-4 呉越同舟[テツヲ](2012/03/11 01:06)
[33] 2-5 鬼哭啾啾[テツヲ](2012/03/11 14:09)
[34] 2-6 屋烏之愛[テツヲ](2012/06/25 00:48)
[35] 2-7 遠慮会釈[テツヲ](2012/03/11 14:38)
[36] 2-8 明鏡止水[テツヲ](2012/03/11 15:23)
[37] 2-9 乾坤一擲[テツヲ](2012/03/16 13:11)
[38] 2-10 胡蝶之夢[テツヲ](2012/03/11 15:54)
[39] 2-11 才気煥発[テツヲ](2012/12/21 17:28)
[40] 2-12 因果応報[テツヲ](2012/03/18 03:59)
[41] エピローグ:御影之石[テツヲ](2012/03/16 13:24)
[42] 用語集&登場人物まとめ[テツヲ](2012/03/22 20:19)
[43] 参の章【それは大切な約束だから】 3-1 北より訪れる災厄[テツヲ](2012/07/11 23:54)
[44] 3-2 永遠の追憶[テツヲ](2012/05/12 14:32)
[45] 3-3 男子、この世に生を受けたるは[テツヲ](2012/05/27 16:44)
[46] 3-4 それぞれの夜[テツヲ](2012/06/25 00:52)
[47] 3-5 ガール・ミーツ・ボーイ[テツヲ](2012/07/12 00:25)
[48] 3-6 ソロモンの小さな鍵[テツヲ](2012/08/05 17:20)
[49] 3-7 加速する戦慄[テツヲ](2012/10/01 15:56)
[50] 3-8 血戦[テツヲ](2012/12/21 17:33)
[51] 3-9 支えて、支えられて、支えあいながら生きていく[テツヲ](2013/01/08 20:08)
[52] エピローグ『それは大切な約束だから』[テツヲ](2013/03/04 10:50)
[53] 肆の章【終わりの始まり】 4-1『始まりの終わり』[テツヲ](2014/10/19 15:41)
[54] 4-2 小さな百合の花[テツヲ](2014/10/19 16:20)
[55] 4-3 生きて帰る、一緒に暮らそう[テツヲ](2014/11/06 20:52)
[56] 4-4 情報屋[テツヲ](2014/11/24 23:30)
[57] 4-5 かつてだれかが見た夢[テツヲ](2014/11/27 20:33)
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[29805] 壱の章【信じる者の幸福】 1-1 高臥の少女
Name: テツヲ◆c49d9b75 ID:366fa69a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/11 23:53
壱の章【信じる者の幸福】




 四月も終わりに近づき、街中に咲き誇っている桜も陰りを見せ始めた、今日この頃。
 俺は自室で、誰にも邪魔されることなく趣味の時間を満喫していた。具体的に言うと、お気に入りの本を写真集を眺めていた。
 これまで女優やアイドルに興味がなかった俺が、唯一応援している女優さんがいる。それが高臥菖蒲だ。まだ十六歳とかなり若いのだが、抜群のルックスと演技力を持つ、いま最も注目されている一人。
 俺が菖蒲ちゃんの写真集を見て癒されていると、萩原邸のチャイムが鳴った。

「……チっ、誰だよ。俺の至福の一時を邪魔するやつは」

 思わず本気でイラっときた。どうせナベリウスはソファで昼寝でもしているのだろうし、俺が応対するしかないか。写真集をベッドに広げたまま、俺は玄関に向かった。




「こんにちは。まずは一つお伺いしたいのですが、ここは萩原夕貴様のお宅でよろしいのですよね?」
 
 彼女を前にして、俺は呆然と立ちすくむしかなかった。

「……え、あ」

 色々と言いたいことがあるはずなのに、俺の口から漏れ出るのは”言葉”というよりは”音”でしかなかった。ぶるぶると震える指で、俺は彼女を指差す。

「あ、あ、あ、ああ、あ、あ……菖蒲、ちゃん?」
「もしかして、わたしのことをご存知なのですか!?」

 お祈りするときのように両手を組んで、瞳を輝かせながら彼女――菖蒲ちゃんは表情を輝かせた。
 その姿は、どこからどう見ても、俺の知る『高臥菖蒲』であり、つい一分前まで写真集で眺めていた顔をまったく同じだった。
 やや色素の抜けた淡い鳶色(とびいろ)の髪は、緩やかなウェーブを描いて背中に流れている。陶磁器のように滑らかな玉肌と、すっきり通った話筋。瑞々しい唇は赤く、とても柔らかそうだった。透き通った二重瞼の瞳は、ちょっとだけ眠そうに閉じていて、それが何とも可愛らしかった。
 身長は、公表で162センチメートルのはずなのだが、高臥菖蒲という少女が放つオーラのようなものが、彼女を実際の寸法よりも大きく見せていた。常人とは比ぶべくもないほどの圧倒的な存在感だ。
 特筆すべきは、やはり胸だろう。服の胸元を大きく押し上げる膨らみは、収穫時の果実を二つ詰め込んでも、ああは行くまい。彼女は黒を貴重としたセーラー服に身を包んでいる――いや待てっ! 俺はなにを冷静に観察しているのだ!?

「ええええぇぇぇぇぇっ――――!? ま、まさかっ、モノホンの菖蒲ちゃん!?」

 あまりに驚きすぎて、”本物”という言葉を噛んじまった!
 落ち着け、とにかく落ち着くんだ萩原夕貴。おまえは出来る子だ。これまでだって幾多の苦難を乗り越えてきたじゃないか。だから成せば成る、あのナベリウスとかいう悪魔の出現にだって、なんとか対処して見せただろう。
 ……いや、待てよ?
 もしかして、これってマジでテレビ局のドッキリじゃねえのか?
 ナベリウスのときとは違って、菖蒲ちゃんはモノホンの――いや違った、本物の女優さんなわけだし。
 そっか。
 そうだったのか。
 これはテレビ番組が仕掛けた罠だったんだ。
 なーんだ、分かってしまえば簡単じゃないか。
 危ない危ない、もう少しで、あの飛ぶ鳥を落とす勢いの女優こと高臥菖蒲さんが、俺を訪ねてきたのだと勘違いするところだった。 

「夕貴様。菖蒲は、貴方様に会いとうございました」

 テレビのスピーカーから聞くのとはまた違った、人の心を落ち着かせる清涼感のある声。彼女は丁重に頭を下げて、うやうやしく礼をした。
 きっと子供のころから厳しい教育を受けてきたのだろう。視線や瞼の開閉、呼吸の間隔、手や足を動かす速度や角度、果てには指先の動き一つを取ってみても、それは完璧だった。
 菖蒲ちゃんがその身に纏う気品やオーラは、生まれ持った美貌だけじゃなくて、細かな仕草からも形成されているのだ。

「えっ、俺に、会いたかった……?」

 なんだこれは。脚本家の野郎、イカス真似をしてくれるじゃねえか。もはやテレビ局のドッキリを恨むどころか、感謝の言葉を言いたいぐらいだ。
 まあでも、そろそろ種明かしの時間だろうな。今のうちに菖蒲ちゃんの姿を、この目に焼き付けておこう。

「あの、そんなに見つめられると照れてしまいます。旦那様」

 透き通るような色白の頬を、薄っすらと赤く染めて、菖蒲ちゃんは俯いてしまった。むしろ俺が照れそうだった。

「……? 夕貴様、お顔が赤いようですけれど、まさか体調を崩されているのですか?」

 接近してくる。
 ふわり、と風に乗るようにして爽やかな柑橘系の香りがした。きっと、これは菖蒲ちゃんのものだろう。額に柔らかい何かが当てられた。ちょっとだけ冷たくて、それでいて心地いい感触だった。菖蒲ちゃんの、手だった。

「なっ、なにを……!?」
「お静かに。夕貴様と添い遂げる者として、これぐらい当然の気遣いですよ」

 顔と顔の距離は、きっと五センチもない。

「……やっぱり熱があるみたいですね。どんどん熱くなっています。それに肌も汗ばんでいるようですし」
「いや、その……あ、菖蒲ちゃんが離れてくれれば、きっと熱も下がると思うんだけど」

 言えた。
 初めて、まともに喋ることができた。
 一人の男して、おどおどしてるだけじゃ格好がつかないもんな。

「そうですか?」

 どこか嬉しそうに笑った菖蒲ちゃんは、両手を後ろで組んだ。

「でも、ご無理はなさらないでくださいね? 夕貴様に何かあれば、きっとわたしは泣いちゃいます。いえ、わたしも倒れちゃうかも……です」

 俺から視線を逸らして、はにかむ菖蒲ちゃん。どこまで可愛ければ気が済むんだ、君は。
 念願だった菖蒲ちゃんとの対面。しかし純粋に喜ぶことが出来ないのも確かである。だって、あまりにも謎が多すぎる。
 日本中の男の憧れである高臥菖蒲が、なぜ俺みたいな一大学生の家に訪ねてきたんだ?
 夕貴様ってなんだ?
 それより俺のことを知ってたみたいな言い方じゃなかったか?
 挙句の果てには、旦那様とか言われるし……。

「……あの、どうかなさいましたか、夕貴様?」

 じぃーと訝しげに見つめていると、世にも不思議そうな顔をして疑問を投げかけられてしまった。その際に、首をちょっとだけ傾げるところがキュートすぎて俺のハートがデストロイしそうだ。だめだ落ち着け俺。
 目を合わせるのが気恥ずかしくて、俺は視線を逸らした。その先に見えたのは、彼女の足元に置かれたボストンバッグ。めちゃくちゃ大きい。中身が膨らみすぎてる。まるで旅行にでも行こうとしているみたいだ。

「と、ところで、どうしてきみは俺の家に……?」

 もじもじと男らしさの欠片もなく問いかける俺に、彼女は言った。

「決まっているではありませんか。わたしと夕貴様は、添い遂げる未来にあるのですから」

 なんの臆面のなかった。
 高臥菖蒲という名の少女は、今ここに宣言する。

「どうぞ、これからは菖蒲を好きなようにお使いくださいませ。愛しの旦那様?」

 パチっ、と女優だからこそ出来るのであろう、美しいウインクを添えて。
 もちろん何もかも完璧と言っていいぐらい、意味が分からなかった。



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