注意1:タイトルで何かが予想できた場合、ほぼ確実にその通りです。
注意2:コレは大きく捉えればネタのように思えるかもしれませんが、内容自体は決して所謂ネタ物としてのネタではありません。
注意3:シリアスです。
宇宙の寿命を伸ばす方法として、知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した文明を持つ生命体をQBという。
しかし、当のQBは感情を持ち合わせなかった。
そこでQBは宇宙の様々な異種族を調査し、その過程で局部銀河群銀河系太陽系は「地球」に生息する人類という生命体を発見した。
人間は全ての個体が、別個に感情を持ち、別個に魂を持つ。
QBは魂の存在を認識しているが、人間は魂の存在は認識できていない。
人間にとって魂の存在するところは神経細胞の集まりであり、循環器系の中枢があるだけ。
そして人間は生命が維持できなくなると、精神、魂まで消滅してしまう。
QBの調査の結果、人類の個体数と繁殖力を鑑みると、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、その個体が誕生し、成長するまでに要したエネルギーを凌駕する。
つまり、QBにとって人間の魂は非常に有用なエネルギー源たりうる。
感情エネルギーの発生において高い効率が出るのは、希望と絶望の相転移であるが、QBはその最も高い効率で感情エネルギーを回収する事はできなかった。
QBが人類に干渉し、魔法少女を誕生させると共に「魔獣」という存在が自然発生した。
魔獣は生きている人間の感情を吸い上げ、場合によっては死に至らしめるが、魔獣を狩ると黒い結晶の形を取るグリーフシードが得られ、それは感情エネルギーが内包された物質であった。
そして魔法少女は力を使いすぎて消滅する際、起こる筈の希望と絶望の相転移はその直前で魔法少女とソウルジェムが消滅してしまう事で回収は不可能だった。
それでも、魔獣を魔法少女に狩らせ、グリーフシードを回収するという方法は高効率とは言えないが非常に安定性を持つ、感情エネルギー回収システムとなり、QBは地道に成果を上げていった。
そして時は西暦二千余年。
QBは人知れず人類以外のエネルギー源を求め宇宙を巡る中、時空連続体の狭間に生息する生命体と遭遇し、その結果新たなテクノロジーを発明した。
それは、人間が死を迎えた時、魂が消滅してしまうその瞬間に魂をある方法で回収し、
「転生」
させる
というモノであった。
20XX年X月X日。
ユーラシア大陸の東端、太平洋北西部にある弧状列島からなる国、日本。
平均寿命83歳。
年間出生数約107万、年間死亡数約114万。
単純日数換算で一日当たり2931.5人が生まれ、3123.2人が死亡する。
死亡原因は個人により様々であるが、その日X県にて性別男、年齢は10代後半の人間一名が交通事故で死亡した。
日本では年間約75万件の交通事故が発生し、その事故に起因する死亡者数は年間約5000人。
単純日数換算で一日当たり約13.69人が交通事故が原因で死亡する。
本来死亡してそのまま魂も消滅する筈だったが「彼」の意識は気がつけば周囲に何もない白い空間に移動し、彼の意識には可愛らしい子供の声が囁かれ続けていた。
《ここは転生の間。交通事故で肉体の死亡した君を転生させてあげるよ》
《え! 転生ってマジ!?》
転生と聞き彼はやたらハイテンションになった。
《本当だよ。それに転生する際、一つ願いを叶えてあげるよ!》
《よしっ、特典来たっ! ここまでテンプレ通り! でも一つだけか……。じゃあ願いを100個に増やすっていうのはアリか?》
《増やすには増やしても良いけど、願いを100個に増やした時点で終わりだよ。それを行使する事はできない。それでも良いかい?》
淡々とQBは声を掛け、彼は即座に突っ込み返す。
《良くないわ! あーハイハイ、どうせそうだと思ってましたよー。じゃあ転生先の世界を選ぶとかできるか? 例えばアニメとか》
《無理だよ。転生させられるのは君が生まれた世界だけだ》
《何だよアニメの世界に行けるかもって期待したのに……つかえねーな》
急に落ち込んだように彼は言った。
《君は一般には非現実的な事の起こる世界に転生したいのかい?》
《まぁ……そりゃ、どうせ転生するなら、さ》
《君は知らないだろうけど、君が生まれ、死んだ世界には魔法が存在するんだよ》
《ええ!? マジで!?》
再び驚愕の声が上がった。
《うん。魔法は存在する》
《マジかー。なら、その魔法と俺が必ず関われるようにしてくれよ!》
《それで良いのかい?》
《ああ!》
《分かったよ。契約は成立だ。じゃあ、転生させるよ!》
そうQBが言うと、彼の意識は白い空間から消えた。
20XX年X月X日。
中東・南アジアに位置する共和制国家、アフガニスタン・イスラム共和国。
平均寿命48歳。
生後約1ヶ月未満の新生児死亡率6.1%。
生後約1年未満の乳児死亡率16.5%。
16~59歳の間における成人死亡率47.9%。
出生率は女性一人当たり7.3人。
通称・アフガニスタンに新生児として「彼」は、
否、「彼女」は四人兄妹の末っ子として転生した。
誕生した瞬間から、彼女は前世の自分の記憶とその意識は持ちあわせていたが、どこに転生したかというのは視覚や聴覚がはっきりせず、しばらくの間分からなかった。
しかし、感覚がある程度はっきりしてくると、彼女にとっての「常識」に比較して周囲の環境が何か酷く劣悪なものである事に気づくのに然程時間はかからなかった。
母親は間違いなく褐色系の美人であるのは分かったが、言語は日本語ではなく明らかに中東系、服装も明らかに中東系、石造りの家屋には隙間風が入り、空気は砂っぽい。
彼女が最初に認識し、愕然としたのは、転生先が日本ではなかったという事であった。
自由に体が動かない彼女はなるようになるまま、栄養状態は芳しくないが、彼女曰く所謂羞恥プレイを乗り越え、最初の生後一年の死亡率20%を超え、生きていた。
言語も幼児期の内に聞いていれば日本語に対する理解があろうとも何となく理解できてきたが、それはともかくとして、彼女とてしては転生先が異世界ならともかく、現実の地球である以上、日本に対する執着が強かった。
その彼女の様々な感情に反応するかのように、彼女の肉体は度々元気な泣き声を上げた事が、期せずしてそれが彼女を救ったことを彼女は知らない。
そんな彼女が寝かせられているある時、彼女の意識にQBがテレパシーで呼びかけた。
《転生した気分はどうかな?》
彼女はその一切悪びれる様子も微塵も感じられぬ可愛い子供のような声に、激昂して矢継ぎ早に文句を述べた。
《転生先が中東だなんて聞いてない! ふざけるな!》
《その反応は理不尽だ。一つ願いを叶えてあげると言った時。君は転生先を指定するような願いをしなかっただろう?》
全く動揺を見せず、寧ろ煽るようにすら聞こえるQBの声に彼女は叫ぶ。
《詐欺だァッ!! 何で言わなかったんだよ!》
《訊かれなかったからさ。訊かれたら勿論教えたよ》
《くっそぉッ!》
《随分怒ってるけど、君はどこに転生したかったんだい?》
やけくそ気味に彼女は言う。
《日本に決まってるだろ!》
《日本か。確実に日本に転生したかったのなら願いを使うべきだったね。今この地球では年間1億3000万人が生まれ、6000万人が死亡する。日本は年間約107万人が生まれるけれど、単純に日本に転生する確率は0.8%前後だ。日本に生まれるのは1000人中約8人。君がアフガニスタンに転生したのは偶然と言えるけど、別に不思議な事ではないよね》
0.8%という厳然たる数値を聞いて、彼女は今更衝撃を受けた。
《0.8%……》
《不思議そうだけど、君はそこまで無意識に日本にもう一度必ず転生できると思っていたのかい?》
《……くそっ……くそっ……ぁぁ、思ってたよ!》
《君のように転生先を願いにせずに後悔するのを何度も見ているけど、君はまだ運の良い方だよ?》
《どこがッ!!》
《何より君はまだ死んでいない。確かにアフガニスタンは成人死亡率世界第7位の国だけど、それより順位の高いスワジランド王国、レソト王国、南アフリカ共和国やジンバブエ共和国のような国に転生して生まれた時から母子感染でHIVに罹ってもいない》
15歳から49歳のHIV感染率、スワジランド25.9%、レソト23.6%、南アフリカ17.8%、ジンバブエ14.3%。
16~59歳の間における成人死亡率、スワジランド62.0%、レソト68.5%、南アフリカ52.0%、ジンバブエ77.2%。
彼女は逆ギレ気味に叫ぶ。
《HIV? てかスワジランドとかレソトってどこだよッ! 知るかァッ! 下を見たら切りがないような事言ってんじねぇッ! もう一度転生させろォ!》
QBはやれやれ、とやや呆れたように言う。
《君は交通事故で既に一度死亡し、こうして転生しただけでも奇跡なのにもう一度転生させて欲しいだなんて虫の良い事を言うね。それは無理だよ》
転生させる際のエネルギーの無駄だし、とはQBは言わない。
《ちくしょぅッ……》
《君はさっきから随分怒ってるけど、これが世界の現実で、君は前世でこの世界に国は違うけど住んでいた。遠く離れた国で、その国の人々はこうして確かに生きている。君の今の家族は毎日君のように怒っているのかい? もう一度言うけど、君の反応は理不尽だよ。これを酷だと思うなら、君は勝手な常識と現実を比較しているだけだ。君は君の前世での常識が世界の常識だと勘違いしている》
転生させてあげるよと言った時あんなに喜んでいたのに酷い変わりようだね、とまでは言わずそう諭すようQBが言うと、彼女は喚き、
《うるさいうるさいうるさいッ!! 転生っていったら普通はテンプレなんだよ! チート! テンプレ! こんな筈じゃなかったァ!》
意識の空間で表情を歪め両手は広げて叫んだ。
《転生させる時の発言から分かってはいたけど、君も君の中でのテンプレとやらが当然だと思っている内の一人のようだね》
言って、QBは彼女に対する認識を確定させた。
《思って何が悪い!》
《別に悪いとは言っていないよ。君がそう考えるのは僕らの関与する所ではないからね。好きにすれば良い》
《お前……ッ! くそッ! そうだ、魔法はどうしたんだよ!》
彼女は思い出したかのように言った。
《魔法については安心してよ。君が10代前半になったら必ず関われる》
その時まで君が生きていたらの話だけど、とはQBは言わない。
《10代前半? 遅え! 今すぐにできないのか!》
《その体で魔法を使えるようになったとして、どうするつもりなんだい? 大体君は魔法について何も知らないのに魔法さえ使えれば何でもできると思っているのかい?》
《っ! くッ……。なら教えろ! 魔法で何ができる!?》
QBは全くペースを崩さず説明する。
《魔法を使えるようになる際、個人によって専用の能力は全て違うから一概には言えないよ。共通するのは身体が頑丈になったり、空が飛べるようになったりする事かな》
《……本当だな?》
《本当だよ。じゃあ、できるだけ早い内に魔法と関われるようにはしておくよ。じゃあまたね》
《ぉ、おいッ! まだ何でTSしてるとか色々聞きたい事は》
そして一方的にテレパシーは切れた。
彼女はその後、年齢を重ねるにつれ、前世の記憶による関係で、周囲からは頭の良い子供として見られて育った。
しかし、ある時、某国軍の誤爆に巻き込まれた。
彼女は前世では決して想像だにもしない刹那の苦痛の中、死にたくないと思いながら逃れようのない絶望に包まれ、そのまま、
肉体は死亡し、魂も消滅した。
(希望と絶望への相転移。今回もまた初期消費に対して感情エネルギーを数倍に増やして回収できたね)
QBは人知れずそう思いながら、彼女に仕掛けていた宝石型ではなく、小さな球体に上下に鋭い針のついた形状をし、完全に黒に染まり切ったソウルジェムを回収した。
QBは魂を転生させる際、対象の肉体と位相を僅かに異にする亜空間に専用のソウルジェムを仕掛け、それと魂をリンクさせて転生させる。
平和な国……というと定義によるが、所謂先進国で未練の残る死を迎えた10代の人間に転生システムを使用すると、転生の際に消費する感情エネルギーの数倍を回収できるという統計をQBは幾度に及ぶ試行によって得ていた。
魔法少女の契約とはまた異なるシステムで成り立つこの回収方法は、対象が魔法の過剰使用による消耗で消滅する訳ではなく、対象は自然な肉体的死を迎える為、宇宙法則「円環の理」によって希望と絶望の相転移のエネルギー回収を阻まれる事がない。
一日に約35万5000人が生まれ、約16万5000人が死亡する。
今現在で69億人、4秒に10人ずつ増え続けている人類はQBにとってどこまでもエネルギー源である。
QBは真剣にまた回収した魂にこう語りかけるのだ。
(ねえそこの君。僕と契約して転生してよ!)
後書き
ここまでお読み下さった皆様ありがとうございます。
しかしながら、こんな電波を受信した私は自分で書いておいて何だか気分が悪くなりました。
題名からして何か「予感」がしたかもしれず、もし不快になられた方がいらっしゃれば、大変申し訳ありません。
Q、転生物ディスってんの?
A、私は処女作で惑星レベルのとんでもチート人外転生物を書いた人間です。
どちらかというと自虐です。
そして転生物は普通に好きな人間です。
あくまでQBが転生の業務に手をだしたら……というのを推測した結果がこうなったに過ぎません。
Q、気分が悪くなった。どうしてくれんの?
A、書いた私も気分が悪くなり、心拍数が嫌な感じに上がりました。
私はこれから録画したWORKING'!!を見ます。
気分が悪くなられた方は、お好みの何らかの方法で中和されるか、場合によりましては同スレッドにあります安心チートDQ3モノ「そして、今日から「ゆ」のつく自由業」を一応紹介させて頂きます。
Q、結局何が言いたいの?
A、何だか危険な話題な気がしますので深くは触れず、それなりに簡潔に。
映像は除外するとして、私はアフガニスタン等、発展途上国に直接行った事はありません。
現実を知りもせずに書くなというのは、言われてしまえばその通りです、申し訳ありません。
日本に生まれ、こうして生きている事にどうにも「慣れ」て実感が薄れがちですが、改めてこの日本という国での自分の生活というものが「どのようなもの」であるのかを何か少しでも再確認、実感できるかもしれないのではないか……と書いてから、思いました。
少なくとも私は、コレを書く前の自分よりも、今、後書きを書いている自分はソレを実感している自覚があります。
また、創作物における転生物を(あくまで)読み物として楽しむ上では、下手に現実の統計的数値などはふと気になっても、深く突っ込まず、無意識にスルーするのがやはりベターなのではないか、という考察に私は至りました。
そうでなければ本当に誰得(コレは明らかにQB得ですが)な気がします。