「ねー、ねー、みんな聞いて。今度ねえ、うちに居候が増えるんだって」
金曜集会で一子が切りだした話題に、風間ファミリーの注目が集まる。
「居候、なんだってまた。どういう奴なんだ?」
友人の家に人が増えるということに関し、好奇心と心配が7対3位で混じった疑問を発する大和。ちなみに、心配よりも好奇心が多いのは川神百代他、川神院の人達に対する信頼からである。彼女等に対し危害を加えられる相手を想像することがまず難しい。
「んっとねー、お姉様とじーちゃんが山ごもりの最中に会った人で、何か異世界から来た男の人なんだって」
「はっ、異世界? 一子、お前、頭大丈夫か?」
一子の口から飛び出した非常識な言葉に岳人が呆れた表情をする。他のメンバーも似たりよったりで、中には本気で心配しているような表情を浮かべているものも居た。それに対し、一子が怒る。
「失礼ね!! まあ、アタシも最初、お姉様から話しを聞いた時は流石に信じられなかったし、しょうがないと思うけどね。なんでも九鬼君のとこでも作れないような凄い道具を持っていて、お姉様と互角に渡り合ったんですって。しかも年齢もお姉様と同じ17歳らしいわ」
「姉さんと互角って、まさか格闘でか!?」
一子の言葉に信じられないと言った感じで叫ぶ大和。姉を目標と、将来はそのライバルとなることを目指す一子は少し複雑そうな表情で頷いた。一子の肯定見て驚く風間ファミリーのメンバー達。百代の超人的な戦闘力を知る彼等にとって、彼女に匹敵する戦闘力の持ち主が居て、しかもそれが自分達と同世代だと言うのは驚嘆に値する話しであった。
「九鬼財閥でも作れないような道具って言うのも凄いね。それが本当なら、確かに異世界から来たって言う話しも信じちゃうかも」
京の言葉には説得力があった。風間ファミリーの番外メンバー的存在であるクッキー、人間とほぼ同じレベルで思考するロボットを作れるなど、九鬼財閥の技術力は他組織に比べ、数十年先を行っていると言っていい。その技術力を凌駕する道具を持っており、百代に匹敵する戦闘力を持つ人物と言うのは確かに異世界人と言われても信じてしまえるし、実際、百代と鉄心はこれらの証拠を持って、悟空の話しを信じたのである。
「異世界人か……キャップが居れば会いたがっただろうな」
「寧ろ、既に飛び出して行ってそうな気がするね」
異世界人の存在を皆が信じ始めた中、クリスがふと思いついた言葉を口にし、モロがそれに同意する。
風間ファミリーのリーダーである風間翔一は好奇心の塊のような男で、今は父親と一緒に冒険中のため、この場にいないが、もし居れば異世界人の話しに一番の興味を示したのは間違いない。モロの言うように飛び出して行ってしまう光景も想像するに容易いものがあった。
しかしその話題の当人が、今、現在異世界に居り、しかも話題の異世界人の友人と共に居るなどとは流石に彼女達の想像の斜め上であったが。
「しかし、キャップじゃないが俺様もちょっと興味があるな」
「そうですね。私、異世界の人ともお友達になってみたいです」
異世界人に興味を示す岳人と由紀恵。それを聞いて大和が少し考え込んだ後、一子に質問する。
「ワン子、その異世界人は何時から川神院に住むんだ?」
「んとね、来週の月曜からだって。それまでは向こうでお姉様とじいちゃんと一緒に修行してくるらしいよ」
「3日後か……。よし、みんな、3日後に川神院に遊びに行かないか?」
大和の提案にクリスが顔を顰め、少し窘めるような口調で行く。
「相手に断りも無く会いに行くのは失礼ではないのか? 引っ越しのその日に初対面の相手に尋ねて来られても相手は迷惑だろう」
「別に異世界から来た人に会いに行こうって訳じゃない。友達の家に遊びに行くだけ、そして修行から帰った姉さんを出迎えるだけだ」
常識的なクリスの突っ込みに対し、大和は屁理屈じみた言い訳を述べる。転校して当初、本当に世間知らず出会った頃のクリスならば、彼の言葉を信じていたかもしれないが、他ならぬ大和にさんざん揉まれ、成長した彼女はその意図を見抜いて見せた。
「それはどう考えても建前だろう? それ位はわかるぞ」
「ああ、だけど単なる好奇心からじゃない。理事長が認めた話だから大丈夫だと思う。俺達が心配するようなことじゃないかもしれないけど、姉さんと互角で、九鬼財閥にも造れないような凄い道具を持っている奴だ。警戒はして置きたい。川神院に、姉さんやワン子に危害を加えるような奴でないのが自分の目で確かめておきたいんだ」
「そうだね。私も少し心配。特にワン子が」
クリスの指摘を認める大和。
そして彼は真剣な表情になると、自分の気持ちを正直に述べた。川上院はこの街では不死川や九鬼、綾小路に匹敵する権力をもっている。当然の如く外敵も多いのだ。何らかの企みを持った存在が近づく可能性は決して低く無い。
その言葉を聞いて納得するクリスと同意の意を示す京。
「そういうことなら私も吝かではないな。その異世界人を名乗る男が、万一、不埒な輩であれば、私が成敗してくれる」
「モモ先輩と互角の相手にクリス一人じゃ無理」
クリスの決意に突っ込みを入れる京。無粋な突っ込みに怒ろうとするクリスだったが、それよりも早く京が再度口を開く。
「だから、その時は私達全員で対処する」
その言葉にクリスは出そうとした言葉を止め、そしてその代わり、その場に居た者達が次々と同意の言葉を発した。
「そうだね。僕に何ができるかはわからないけど」
「まっ、心配し過ぎだと思うが、もしもの時は、勿論、俺様も協力するぜ」
「はい、私も及ばずながら」
いざと言う時には例え命をかけてでも仲間を守る。全員がその覚悟とその覚悟に繋がる強い絆を持っていた。直接、口に出さない者達も心は一つである。
「まっ、岳人の言う通り心配し過ぎかもしれないし、その人が本当に何の悪意も無いって言うのなら、それが一番なんだけどな」
そこで大和が釘をさす。
警戒は必要だが、警戒し過ぎて、敵意の無い相手を攻撃してしまうのは最悪である。まずは、見定めることが大切と指摘し、その後しばらくして金曜集会は解散となるのだった。
一方、その頃、悟空と百代は風間ファミリーの懸念も知らずぶつかり合っていた。
「てりゃああ!!!!」
「とおおおおおお!!!!」
上空50メートルにまで跳びあがった二人の拳が激突する。
そして、その二人の足元で悲鳴を上げる人物が一名。
「お前等少しは加減せい!! 結界を張り続けるこっちの身にもならんか!!」
周囲に被害が及ばないよう結界を張り続ける鉄心。
しかし如何に川神院総代の彼とて、この二人の力を抑える結界を張ると言うはあまりにも負担が大き過ぎることであった。
「ははは、悪いなじじい。だが、1敗2分け、初敗北の借りを返すまでには手加減できん! いくぞ悟空」
「えーと、いいんか?」
「おう、かまわん!!」
「よし、なら、行くぞ!!」
鉄心の負担に対し、全く気にした様子を見せない百代とほんの少し躊躇いを見せるものの、百代の言葉にあっさり意を返す悟空。
「か~め~は~め~」
「か・わ・か・み」
「やめんか、この馬鹿等がああああああ!!!!」
悲鳴と怒りの混じった叫びをあげる鉄心を無視しに二人は気を集中させていく。
「「―波!!!!」」
そして悟空のかめはめ波と百代のかわかみ波が激突し、結界は見事に吹っ飛ぶのであった。
(後書き)
真剣世界の時間軸は大和が2年の夏休み中です。
原作のイベントはいくつか起きていますが、大和は誰ともくっついておらず、川神大戦、KOS、一子の師範代試験、竜舌蘭ルートでの出来事のようなでかいイベントはまだ起こっていないという設定です。
後、感想にありましたが、ドラゴンボール世界側の時間設定は悟空が神様の宮殿で修行しているころですので、当然、幕間のヤムチャもその頃のヤムチャになります。盗賊の頃のヤムチャでは恐竜に勝てないでしょうし……チチが勝ってて、そのチチにヤムチャは勝ってるからいけるかも?
PS.強さ議論の感想が多いので、その辺について私の考えを大雑把に説明させていただきます。
あくまで私の解釈なので異論のある人も多いと思いますが、このSSではそんな感じのパワーバランスだという話しです。
まず、百代がフリーザ並と言うのは、原作で、まゆっちが「一般人の戦闘力を5とすると百代が最低でも一千万不可思議、下手をすれば無量大数」と言っていることに関し、一千万不可思議を一千万だと勘違いされた方がいるのではないかと思います。
一千万不可思議は現在では使われていない数字の単位で10の87乗になり、この単位を含めた数え方だと無量大数は10の88乗になります(ちなみに現在の数え方では無量大数は10の68乗)これがDBの戦闘力とイコールだとするとフリーザどころか、スーパーサイヤ人4のゴジータでも足元にも及ばない強さになると思われます。これについては作中の描写と比べてみて、真面目な数値とは考えづらくネタだと判断しました。元々、真剣恋はパロの多い話ですし。っと、言う訳でもこの数値は強さの考察からは完全に無視しました。
次にDB側ですが、亀仙人の月破壊については後の描写(彼よりも強いピッコロ大魔王やテンシンハンが気のほとんどを費やして放った攻撃が街破壊やそれ以下の威力なこと)と矛盾することなどから考察対象としては半分除外し、百代がやったように大気圏外に突き抜けるような気弾を無印DBのキャラでも撃てる程度の参考としています。
また、亀仙人の強さ描写として発射されたマシンガンの弾を全て掴むというものがありますが、これに対し、原作で武道四天王の一人である揚羽が発射されたショットガンの弾を全て掴むという比較的近い描写がありますのでこの辺を基準にしてパワーバランスを設定しました。本当はもう少し前の時期の悟空の方が丁度いい気もしましたが、大人悟空にしたかったので、この時期を選びました。両作品のキャラが活躍できるよう多少バランス調整したりする部分はあると思います。
以上です。矛盾はあると思いますが、あまり細かいところは気にせずに読んでもらえると嬉しいです。