<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.30400の一覧
[0] 【チラ裏】Knights of the Round Table【Fate/ZERO】[ブシドー](2011/12/04 18:57)
[1] かくして、円卓は現世に蘇る[ブシドー](2011/11/06 22:52)
[2] 開幕舞台裏[ブシドー](2011/11/10 01:16)
[3] 王と騎士(上)[ブシドー](2011/11/12 23:28)
[4] 王と騎士(下)[ブシドー](2011/11/19 22:30)
[5] 【閑話】苦悩と敵対[ブシドー](2011/12/04 16:51)
[6] 桜の大冒険[ブシドー](2011/12/19 22:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[30400] かくして、円卓は現世に蘇る
Name: ブシドー◆e0a2501e ID:10f8d4d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/06 22:52


―――――時は戦端の夜より暫らく戻る。







「バカにしやがって!バカにしやがって!!バカにしやがってぇー!!!」





英国は倫敦、魔術協会最高学府である時計塔。
世界中に存在する数多くの魔術師を統括する『協会』総本部であり、学府の名の通りまだ若き魔術師に対して教育を授ける教育機関である。
過去、封印指定を含め多くの優秀な魔術師を輩出していったその時計塔では、一人の学生が怒りを吐き出しながら歩いていた。

「あいつ、この僕の才能に嫉妬しているんだ!じゃなきゃあそこまでやりゃぁしない!!」

口々に罵声が零れ出る。
彼、ウェイバー・ベルベットは歴史の浅い魔術師の出だ。
魔術とは、積み重ねた年月の累積こそが力になる。だからこそ古来過去より存在する魔術の大家は巨大な権限を有している。
それに比例するように、優秀である者も歴史を重ねた家ばかりだという風評が時計塔ではそれが当然のようにまかり通っていた。
だが、ウェイバー・ベルベットはその通説を横殴りにするかのように自身が纏め上げた論文を手に、戦いを仕掛けたのだ。
それが先ほどまでウェイバーが受けていた授業の始まりに、破り捨てられた。
だからこそ、ウェイバーは口々に悪態をついている。
確かに、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトという時計塔最高と言われる魔術師に敵わないことは、彼も分かる。
埋められない差というものがこの世には確かに存在するのだ。
特に年月などはそうだろう。同じように相手も時を進めていくのだから当然である。
それが全てではないという主張が正しいことを彼は信じていた。魔術師とは血が全てではないと。
だからこそ、ろくに考察もしてすらいないであろうエルメロイに怒りを表しているのだ。

「くそっ、くそっ、くそっ……ってうわぁ!?」
「おっと危ない!」

だが、そんなウェイバーをあざ笑いが衝撃になったようにウェイバーに襲い掛かる。
何かに足を取られ、顔面を廊下へと叩き付けるように転んだウェイバーは痛みに耐えながら顔を上げる。
見れば、配達員らしき男が困ったような顔をして、ウェイバーを見ていた。

「おい、ちゃんと前を見ろ!」
「いや、申し訳ない。怪我は?」

思わずウェイバーは怒鳴り散らしてしまうが、配達員は申しわけなさそうに頭を下げる。
ウェイバーも直ぐに気づいた。
自分はこんな小さいことで無関係の人間に身のうちに残る怒りを吐き散らしてしまったのだ。これこそ低俗な考えで動くような人間だろう。
すればあのイヤミったらしい笑みを薄く浮かべたケイネスの顔を思い出して、それを恥じるようにウェイバーはその場から即座に離れていた。

「どうすれば、アイツに一泡吹かせれる……?」

暫らく歩き回り、結局のところ最近に入り浸っている図書館へと身を置いたウェイバーは冷えた頭で考える。
一泡吹かす、とは言っても手段は魔術に関わることに限られている。
魔術師を相手するのは魔術師、だ。まさか100m走で決着をつけるなんて無駄なことはしない。
だが、こちらを歯牙にもかけないあの男と対決するのは、ウェイバーの立場からも難しい。


―――――だが、ケイネスが関わりを持った何かに乱入することは出来るのではないか?


ウェイバーは先日、ケイネスの部屋で発見した一つの魔術書(とは言っても破かれたあの論文を提出しに向かった際に見かけたのであるが)を思い返す。
積み上げられた数冊の本、あれはウェイバーも見かけたことがある本だ。確か、高位の精霊・霊魂の召還に関する術式を纏め、記述された本。
200年だかそんな前に出たという魔術書だ。
ケイネスはその本をわざわざ読み込んだのか、付箋が多数に差し込まれていた。明らかに重要なのだろう。
そう思い立ったウェイバーは本を捜索する。
この図書館に存在するのは原典ではなく写本だが、書かれている内容は同じだ。それに同じ本が複数存在するから便利だとウェイバーは思う。
過去に本を借りたまま研究に没頭してたり、協会から封印指定を受けた魔術師がそのまま持っていったり、暇つぶしと称してかの老魔法使いが適当に拝借してたりといった事情があったが彼には関係ないことだった。
程なくして、ウェイバーは目的の本を発見し、それを読み解くための参考書も複数抱えて席へと着いていた。
それから、あとは作業のように読み解くだけであった。

「………」

ウェイバーは数時間の時を要し、纏め終えたレポートを鞄に放り込んで図書館を出る。
倫敦の街と時計塔は既に夜闇に包まれている。ウェイバーは、適当に見つけた喫茶店で簡単な食事を済ませると下宿先である寮の部屋へと戻った。
そして、自身が纏め上げた資料であるそれを見つめ、小さくため息をついた。

「聖杯戦争、僕に持って来いの舞台じゃないか……?」

資料で分かったその戦いの名を、ウェイバーは呟くことで自分を鼓舞する。
持って来いの舞台など、嘘だ。魔術師による凄惨な殺し合い。それが聖杯戦争の行き先だ。
ウェイバーは未熟であり、非才と自覚する自分がその戦争に身を落とそうとしていた。ケイネスも恐らく、それに参加するであろうから。
プライドのためもあった。自らの魔術師としての格を信じているという驕りもあった。
だが、それ以上にウェイバーが聖杯戦争に惹かれたのは、「英霊の使役」という項目。
それが事実であるのならば、ウェイバーは首に掛けていたネックレスを外してそれを見る。
そのネックレスは、編みこまれた赤茶の毛と銀の装飾が繋がれた物。ウェイバーの母が、過去に手に入れたという聖遺物。
聖遺物と呼ばれるには神秘の薄いそれは、かのブリテンに輝く円卓の騎士に関連する物だと言われていた。

「……」

ウェイバーは魔術師であるが、幼い頃は過去の騎士たちを夢見た時が一瞬だとしても確かにあった。
憧れというよりは好奇心であったような気はするが、それを見た父が何をどうやってかこれを手に入れた時は大いに喜んだものだ。
今も肌身離さずに持っているのも、そんな過去を懐かしむという一面もある。
だが、そんな思い出を持つこのネックレスを多くは贋作以下と笑い下げた。何が円卓の騎士に関連する聖遺物だ、ゴミではないか、と。
ウェイバーはそれに激しい怒りを覚え、そして本物と証明してやろうと行動した。その燻っていた思いが、再燃したとも言える。
魔術師は基本的に探求する者なのだ。
そう、だからこそ、これが真に贋作ではないと証明する―――目下の目標は、それとなった。
それとついでに、少しでもあの澄ました顔をぎゃふんと言わせてやれれば万々歳といった気持ちだ。

「あーもう……お前!弱かったら承知しないんだからな!?」

ウェイバーはネックレスにそう呟く。
ネックレスに施された銀細工はギラリと鈍く光り、ウェイバーの問いに答えるように輝いていた。









同じく、聖杯戦争に挑む2人のマスターはその顔を合わせあっていた。
本来、聖杯戦争の勝者は一人に限定されるため、一時的な共闘はあれどマスター同士が組むことは殆ど存在しない。
だからこそ彼ら、遠坂時臣と言峰綺礼は聖杯戦争において現状、絶対的な優勢を誇っていた。
彼らの裏には聖杯戦争を管理する「教会」との密約が交わされている。だからこそ聖杯に興味を持たぬマスターである綺礼は、協力者たる存在になった。
そんな彼らはその顔を悩ませていた。
時臣は「協会」から送られたその情報を吟味するように眺めている。真実か否か、それを見極めるため。
それを同じくして資料を見ていた綺礼は、悩むように顎に手を添えた時臣に対し、口を開いていた。

「師よ、なぜそこまでお悩みになるのでしょうか?」
「何がかな?」

資料から顔を上げた時臣に綺礼は小さく頭を下げ、続けた。

「以前の予定通り、かの英雄王を召喚するための触媒は既にこちらの手にあります。さすれば、ここでこのように新たな触媒を得るための情報を纏めずとも宜しいのでは…?」

綺礼は時臣が以前入手した触媒、古代に生きた蛇の抜け殻の化石があることを聞かされていた。
だからこそ綺礼は召還ではアサシンを呼び出し、かの英雄王の戦闘を早急に終わらせるための情報収集を行う心算であった。
だが、今ここでは英雄王を呼び出す気持ちが失せたかのように時臣は頭を悩ませているのを不思議に感じていたのだ。
そう時臣に綺礼は問いかけると、小さく苦笑した時臣はゆったりとした動作で手を組み、綺礼へと視線を束ねた。

「確かに、英雄王を召還すれば我が陣営は先ず勝ち抜くであろう……だが、それ以上に英雄王は危険な存在だ。残りし伝説の数多は綺礼、君も知っているだろう」
「………ええ、確かに。あれほどに暴君という言葉が正しい存在は皆無でしょう」
「英雄王からすれば世界とは自分の所有物であるから、どう扱おうと自由……といった考えだろうがね。令呪での服従すら破る可能性と危険性が存在する」
「令呪では、制御し切れないと?」
「もし、英雄王が弓兵のクラスで召喚されたと考えてみればいい。単独行動スキルなどかの王に与えてしまえばどうなるかも分からない」

だが、と時臣は言葉を繋ぎ、綺礼にもう一つの資料を差し出した。
綺礼はそれを受け取り、目を落とす。

「片方は別にしても、私が召喚するこの英霊はその心配などする必要すら無いだろう」

報告書、と名打たれたそこには2枚の写真が添付されている。
一枚は、山羊の角のような形状をした金属製の残骸。恐らくは何かの装飾だろう。
もう一枚は槍の穂先だ。ただ、血の痕であろう赤黒い染みを大きく残しているところからして相当に深い傷となったのは想像するに容易かった。
綺礼は、これが自らの師が目につけている新たな聖遺物かと思ったとき、時臣は口を開いた。

「そのそれぞれが“不義の王子”の兜、そして“太陽の騎士”の古傷を貫いた槍だ」
「……!」
「“どこかの大貴族”によるある品の発掘の欠片として、これらが発見された。恐らく、現状で召喚できうる最強の騎士たちであろう」
「……ある品とは、つまりそういうことなのでしょう。かの王に、かの息子を……?」

時臣は綺礼の言葉に頷く。
確かに、伝承によればかの王子とかの王が戦えば、どちらかが死にどちらかが重傷を負う結末を想像するに難しくない。
綺礼は思わず、これを演出しようとでもしている脚本家のように見えてきた時臣に向けて口を開いた。

「冬木の地で、“丘”を再現なさるおつもりですか?」
「そういった訳じゃないさ、綺礼。あくまで、この2柱が私たちの呼び出せる最高の手札となっただけだよ」

時臣はゆったりとした動作でワインを杯に注ぎ、それを綺礼に向け、綺礼はそれを受け取る。
時臣は杯を掲げ、それをまるで聖杯は手中にあると言わんばかりに、綺礼へと謳った。

「綺礼。君はアインツベルンのマスター、そしてサーヴァントを討伐することを主務としてくれ――――我々の勝利に」
「……はい」

杯を合わせる音が響く。
綺礼は、自身の顔を映した神の血の水面を眺めながら、それを飲み干した。









聖杯戦争において令呪の兆しである聖痕が少女に現れたのは“ソレ”とって想定外であった。
そもそも、その少女をソレの血族に馴染ませるために服を剥いだ際に偶然に発見したもので、これを少女の親は知らなかったのだろうか、と疑ってしまう。
もしくは知っていて少女を送ったとすれば、わざわざと敵になるやも知れない相手を生み出す意義が見えない。
少なくとも、ソレにとっては面白いと感じる事態ではあった。
だからこそ、その少女に先ずソレが行ったのはソレの魔術師の母体として“改造”ではなく、魔力を引き出すだけの特訓であった。
まだまだ幼いこの少女に改造を行おうとすれば、その瞬間にも呪文も陣もなくサーヴァントの召喚をしかねない。
それが出来るだけの血と魔力を持っている少女を、サーヴァントを敵に回すことは化け物であっても避けるべき事態だった。
だからこそ、魔術回路の覚醒、魔力の引き出しだけを考慮し行われたその教育以外、何ら普通の少女と変わりなく生きていることは、ソレを憎む青年には朗報であった。

「爺……俺は、マスターとして聖杯戦争に参加する」
「フム?」

爺と呼ばれたソレ、間桐 臓硯は血族上では息子と言える間桐 雁夜の言葉に皺が走った顔を面白そうに歪める。
カッカッカ、と喉の奥から擦り合わせて響くような嘲笑い声が臓硯より零れ出た。

「雁夜よ。おめおめと間桐より逃げ出したお前が、聖杯戦争のマスターにならんとするのか?聖杯はお前を選んでなどおらんのに?」
「………」

臓硯は雁夜に向け、事実を叩き付ける。雁夜はそれに口答えしなかった。
雁夜は魔術師としての血が薄れいく間桐において、然りと魔術の研鑽を積めば魔術師に成れる唯一の希望だった。
だが雁夜はその間桐の業より逃げ出した。だからこそ遠坂 桜は間桐の家に招かれたのだ。
「お前が当主にさえ成っていればこんなことにはならなかった」と、それを存外に言う臓硯に雁夜は笑って返した。

「分かってるよ“お父さん”。……刻印蟲を使えばこの短期間でも最低限、肉の魔力タンクになる程度は可能だ。幸い、桜に使う予定だった分も余っているんだろう?」
「雁夜……貴様、死ぬ気か」

静かに問いかける臓硯に雁夜は答えない。
ただ、自分はきっと死ぬだろうな、というぼんやりとした考えが内にはあった。何処か自分を俯瞰してるような、現実味のない感覚だった。
雁夜がこうにも感じるのは、「間に合った」からだろう。心理的な余裕だ。
確かに、桜を戦いへと巻き込むのは彼であっても最早、止めれない。ならば、雁夜にとってすべきは全ての外敵から桜を守ることだけだ。
勝てば桜を間桐から救える……少なくとも、矢面に立つのは自分だけになるだろう。

「どうせ桜にもサーヴァントを喚ばせるんだろう?1人より2人、数は力だ。あんたの蟲と同じようにな……死ぬんだったら他のマスター共々、道連れに死んでやる」

自分の命を掛け金に得るは桜の自由。
使える手札は2騎のサーヴァント。上等すぎる手札だ。
その雁夜の考えを透かした臓硯はまた笑う。
前回と同じく異常な聖杯戦争に想定外が続く出来事。面白い。
勝つにせよ、負けるにせよ、この間桐邸に隠れる桜を失うことはない。仮に宝具をサーヴァントに使われたとしても、間桐の魔術結界を抜けるには一帯を消し飛ばす必要性がある。
さすれば、自身も例外なく消滅するのは自明の理だ。
それに、直接的な戦闘では落伍者一人が死ぬだけ。そう思えば、気まぐれに試してみようという感情が臓硯に沸いていた。

「よろしい……では明日より先ず一週間、耐えてみせよ。それくらいの覚悟、見せてもらわなければのう」
「ああ……分かってる」
「うむ。では後少しばかりの人間として生きている間に桜にでも会うたらどうじゃ?貴様の姿を見れば、桜も喜ぶじゃろうて」

笑った臓硯はそのまま消えていく。
それを見届けた雁夜は、ゆっくりと間桐の屋敷を歩みだした。
目指す場所は知っている。仮にも育った屋敷だ、暫らく離れていたといっても体が覚えている。
間桐の体が覚えている、と思うと複雑な気持ちになったがそれを顔には出さない。
出来るだけ微笑めるように心がけ、雁夜は部屋のドアをノックした。

「はい、どうぞ……あっ!雁夜おじさん!!」
「―――……っ!……久しぶりだね、桜ちゃん。これ、お土産だよ」
「あ、ありがとうございます!」

部屋に入った瞬間、こちらに変わらない笑顔が向けられる。
間桐に染められてない間桐 桜は、遠坂 凛と同じように渡されたブレスレットを陰りのない瞳で見つめている。
この魔窟に入ってもまだ、そう生きてくれていたことが雁夜には至上の喜びとして身を震わせた。
もし神というのが居るのであれば、まだこの子を見捨ててはいなかったと大いに感謝する。そしてこれからもそうあってくれ、と願った。
そう、静かに目を閉じて雁夜は念じていると袖を引く感覚があった。桜だ。

「雁夜おじさん、またどこかの国に行ったときのお話聞かせて!」
「うーん……もう、夜は遅いんだけど……今日だけだからね?」
「うん!ありがとう、おじさん!」

そうして始まる雁夜の話に目を輝かせ、驚き、そして笑う桜。
それを曇らせることだけはしない。
その誓いを胸に、雁夜は桜と共に笑いながら万力の力を込めて拳を握った。





翌日、間桐 雁夜にとって地獄が始まる。








また時は流れる。
ある夜にそれぞれ魔術師たちが水銀を、血を、薬液を、宝石を用いて陣を描く。それはどういった悪戯が働いたのか、全てが同時に終えていた。
そしてまた同じように、それぞれがイメージする魔術回路のスイッチを切り替えていた。
これから始まるのだ。この星に生まれ、繁栄し滅亡した全ての歴史、国、伝承、呪い、宗教、創作。
その何れからも魂は7つのクラスに形取り、現代の世へと召喚するために。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

ウェイバー・ベルベットはストラップを握りこんだ手を掲げるように詠唱する。
彼の矜持と、証のために。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

雪に包まれた城の中。男、衛宮 切嗣の静かな声が響く。
傍に立つ妻、アイリスフィールと夢見た世界を目指すために。

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし!汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を、手繰る者……!」

血涙を流し、白髪の下に悪鬼へとなった顔を歪ませた間桐 雁夜は叫ぶ。
狂うのは己だけで良いと願いながら、守りたい笑顔のために。

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ――――」

遠坂 時臣は劇場で詠うオペラ歌手のように高らかに紡ぐ。
魔術師としての大望である根源へと至り、第二魔法へと到達するために。



そして、座と現世は繋がる。




『天秤の守り手よ―――!』




召喚陣より光が満ちる。
白く塗りつぶされた世界が晴れると同時に、そこにそれらは現れていた。

「……っ!」

ウェイバーは膨大な魔力の喪失感と共に尻餅をつくように倒れる。
見上げる先には、長い旅路で擦り切れたような黒い外套を羽織る蓬髪の騎士があった。

「―――――……っ」

喘ぐような呼吸と共に、吐き出した血液を無視した雁夜が睨む。
黒い靄のような、まるでそこには自身を隠してしまいたいと言うように無言で佇む狂った騎士を。

「勝ったぞ、綺礼……この戦いは、我々の勝利だ!」

時臣はそれが確定した事として告げた。
太陽の光を受ければ、それこそ神々しいまでに輝くであろう白銀の騎士を見て。





そして、衛宮 切嗣は驚愕のために絶句していた。
目の前のサーヴァントは、こんな少女が、あの王なのかと。

「問おう―――」

切嗣の前に立つ小柄な騎士は凛とした声を持ってして問いかける。
それこそ、まさに自身が王であると証明するような一種の色を持っていた声が、響く。
今召喚されたその全ての騎士をその小さな背に率い、肩を並べた騎士の王。

「貴方が、私のマスターか」

騎士王アルトリア・ペンドラゴン、ここに喚び出される。






後書き
とりあえずここまでは書いてあったので投稿。かなりの感想数にびっくりしてます。
まぁネタのつもりなので端休めの漬物的な軽い気持ちで見てくれるとありがたいです。
因みに全ての元凶な魔法使いとか聖杯騎士さんはチートすぎるので考慮外でした(でも型月世界の円卓の騎士ってチートしかいないよね)
前回の最後にイレギュラーだらけの聖杯戦争って書いたから完全にIF展開もあったり(今回の桜やウェイバーの変な違い)
おじさんは救われたんや……!







………セイバーは救われてないけどな!!


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026664018630981