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No.30400の一覧
[0] 【チラ裏】Knights of the Round Table【Fate/ZERO】[ブシドー](2011/12/04 18:57)
[1] かくして、円卓は現世に蘇る[ブシドー](2011/11/06 22:52)
[2] 開幕舞台裏[ブシドー](2011/11/10 01:16)
[3] 王と騎士(上)[ブシドー](2011/11/12 23:28)
[4] 王と騎士(下)[ブシドー](2011/11/19 22:30)
[5] 【閑話】苦悩と敵対[ブシドー](2011/12/04 16:51)
[6] 桜の大冒険[ブシドー](2011/12/19 22:50)
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[30400] 王と騎士(上)
Name: ブシドー◆e0a2501e ID:10f8d4d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/12 23:28

「アイリスフィール……全てが終わってから言うのもアレですが、貴女の運転は日本の土地に相性が悪いと感じます」
「えー!そ、そうかしら……?」
「少なくとも、赤信号とやらは停止しろという意味であったはずです」





冬木市郊外には人を拒むように建設された巨大な城がある。
そのおおよそ、日本の原風景とは噛み合わせが考えられていないであろう城の名はアインツベルン城。
過去の聖杯戦争に渡り、アインツベルンが拠点として今も運用している土地である。
それこそ目立ちすぎるそれはアインツベルンの魔術結界により、人の認識からは逸れているように見えていた。
その正門、ドイツ車特有のバランスのよい車体を揺らしながら帰ってきたアイリスフィールとセイバーは、小さく微笑みながら城の一室へと戻っていた。

「あー、でも楽しかった……セイバーはどうかしら?」
「はい、現代の馬車の優秀さは驚愕に値します。ですが、やはり自分で手綱を握らなければ落ち着かない」

メイドが運んできたティーセットを窓際の席に、月を見上げながらお茶会が始まる。
冬に包まれたアインツベルンの本城でも良くお茶会を二人はよく行っていた。
同性であるというのと、気の抜ける友人同士であるのが幸いしていたのだろう。
ここ最近の、すっかり茶に詳しくなってしまったセイバーは、ティーポッドの中身を見て「ほう」と声を洩らした。

「今日はハーブティーですか」
「ええ、一風変えてみたの……はいどうぞ」
「ありがとうございます、アイリスフィール」

セイバーとアイリスフィールはそれぞれゆっくりとカップを傾ける。
口内からジャスミンの香りがゆっくりと広がっていき、胃に落ちる。それだけでセイバーはほっと一息ついていた。
そんなセイバーを慈愛に満ち溢れた視線を向けたまま、アイリスフィールは切り出した。

「ようやく、ラモラック卿のことは落ち着いたかしら?」
「………!」
「一応、気分転換のドライブとか色々と出来ることはしたつもりなんだけど……」
「……ご心配をおかけしました」

いいのよ、とアイリスフィールは笑う。
先ほどの開幕での戦端、あれで既にセイバーは己の気焔を剥がれていた。
幾ら過去とはいえ、聖杯にやり直しを願ったのは円卓の騎士を自らの不徳によって殺してしまったという責務と迷いが、セイバーを蝕む。
それを癒そうとしたアイリスフィールによって戦い後、また冬木の街を練り歩くことになっていた。
セイバーは自身がアイリスフィールの着せ替え人形になったことと「おしるこ」なる甘味を探し回ったという記憶しかないが、確かに気は晴れていた。
だが、それであっても胸にしこりは残ったままだった。

「……アイリスフィール」
「なに?セイバー」
「私は、彼を斬れるのでしょうか……?」

胸の内をセイバーは吐露する。
ラモラック、かつて己の片腕であるガウェインとその兄弟、そしてセイバーの息子によって殺された不遇の騎士。
彼こそ功名心の強い男で粗暴な面こそあったが、騎士の一人であった。名もなき槍を用いて己の武勇だけを頼りに戦場を切り開く。
その戦場での活躍と、ブリテンの地を守ろうとした信念はセイバーも知るところにあった。
それはあのトリスタン、ランスロットといった名だたる騎士も友人として認めたことからアイリスフィールは想像できた。
そのような騎士を、配下であった戦友を斬る。
アイリスフィールはセイバーではないし、王でもないからその痛みは理解できない。
だけど、言えることはあった。

「別に、斬る必要なんて無いんじゃないかしら?」

聖杯戦争はバトルロワイヤル形式、自身で全ての敵を倒す必要性はない。
逆に、いかにして敵サーヴァント同士を潰し合わせるかという謀略も求められるのがこの戦争だ。
それを暗に含めて言うとセイバーは唇をかみ締めて、頷く。納得はしていないだろう。
だが、戦いたくないという幼児の我侭は通用しない。戦う必要が出るのなら、戦うしかない。
それが聖杯を求めるということなのだ。アイリスフィールはそれを知っている。
もし戦いたくないと言うのならセイバーのマスター、キリツグは令呪を用いる。セイバーもそれは分かっていた。

「ラモラック……」

セイバーが月を見上げる。その横顔は憂愁を帯び、月の光が当たって美しく輝く。
またの再会を、とセイバーは祈る。
戦うにせよ、肩を並べるにせよ、彼は私が巻き込んだ円卓の一人。許されるのならば、話がしたかった。
それを知ってか知らずか、アイリスフィールはポンッと手を合わせて言った。

「セイバー、明日も新都の方へ行ってみましょうか?」
「なぜですか、アイリスフィール」
「今日はただの観光だったけど、明日はあのアーチャーが陣取りそうな場所を下見しに行く予定よ」

できれば他のサーヴァントも発見できるとなお良いかしら、と言うアイリスフィールにセイバーは頷く。
あのアーチャーの正確な射撃は脅威だ。マスターを狙われなぞしたら最悪、守れない場合も出る恐ろしい相手だ。
だが狙撃可能な場所を確認さえしておけば直感スキルを持つセイバーの敵ではないだろう。
そう締めくくると、アイリスフィールは寝室に戻っていく。
セイバーはそれを見送り、また空を見上げた。どこか遠くに感じるが、騎士たちと共に地を駆けた時代より変わらない空が広がっている。
その過去を懐かしそうに、寂しそうに、悔しそうに見つめるセイバーの心内とは違って、月は丸く輝いていた。









遠坂時臣にとって自身のサーヴァント、ガウェインの召喚は一種の賭けであった。
ガウェイン卿。
アーサーの片腕とも言われ、王国の落日を作り出したカムランの丘で死亡した太陽の騎士。
それがもし、かのアーサー王がサーヴァントとして敵対する相手に召喚されたとすれば、どう出るかは予想ができないでいた。
それに加え、時臣が弟子である綺礼に召喚を命じたのはその大敵である裏切りの騎士、モードレッド。
本来はアーサー王との決戦相手として召喚した切り札であるが、下手すれば内紛が起こるかと内心でひやりとしたものを感じていた。
だが、それは気鬱であった。少なくとも、今は。
ガウェインはマスターである時臣を王として扱い―――時臣は貴族として王に仕える者同士ということで上手く制御していたが―――、モードレッドとも表面上は穏やかだった。
それは主君の命令であるからこそなのだろうが、その忠義の意思は本物だと時臣は判断した。
もし剣をアーサー王に向けるとしても、彼は迷わないであろう。
誓いこそが己に力を与える騎士の中の騎士である彼は“騎士”のサーヴァントなのだ。

「……ふぅ」

時臣はそこまでの考えをまとめ、思わずため息をついた。
彼を悩ませている内容は自身のサーヴァントのことではなく綺礼の召喚したアヴェンジャー、モードレッドのことだ。
あのサーヴァントはここ数日の間に好きなように行動していた。今日も、朝から楽しそうにどこかへ出かけていったのを時臣は見ている。
マスターである綺礼であっても御しきれない子供のような無邪気さであるが、それは時臣にとって薄ら寒いものに感じていた。
理性が飛んでいるというものでもなく、狂ってもいない。ただただあれが普通の状態だ。
そうであっても、アヴェンジャーというサーヴァントは狂気に満ちていた。復讐者というクラス名に相応しいほどに。
彼が、アヴェンジャーがそうなったのも召喚した直後、アーサー王が召喚されると伝えて相手するように話した時だった。
どこまでも無機質、ホムンクルスか人形のような感情の無い瞳が炎に染まる。
そして次には、まるで天を仰ぐように涙を流しながら笑っていた。赤ん坊が感情を爆発させるように、嬉しそうに。
それからだ、やけに外へと出てふらりと帰ってくるようになったのは。
特に問題行動など(勝手に外出しているのが問題じゃなければ)は起こしてはいないが、どうなるかは分からない。
先日、とうとう聖杯戦争の戦端が開かれた。
それを思えば、これ以上の勝手は許すべきではないだろう。
時臣は使い魔の視界を自身に移し、アヴェンジャーを見下ろす。戦端が開かれた港の傍、釣り糸を垂らしている。
それだけ見れば、ただの釣り人だ―――――直後、膨大な魔力をその身より噴射しなければ。

「な……!」

時臣は絶句する。
あのサーヴァントは今の行為を理解しているのだろうか。
あれでは、まるで撒き餌に寄ってくる魚のようにサーヴァントが来るだろう。そうでなくても、日が暮れればそこは戦場になる可能性もある。
それを理解していながら、あのサーヴァントは何をしているのだ。
そう、思わず悪態を吐きたくなる己を落ち着かせる。「常に優雅たれ」、遠坂の家訓だ。
落ち着いてから、そしてアヴェンジャーの行動を考察する。
いや、考察するというよりは彼が言った通り『釣り』なのだろう。彼はサーヴァントを呼び寄せるつもりだ。
そう思うに早く、時臣は己が騎士に命令を下していた。

「ガウェイン卿、君はアヴェンジャーのバックアップをしてくれたまえ。最悪、このまま開戦することになるだろう」
「はっ!」

ガウェインが霊体化し、消える。
それを見送った時臣は不味いことになったな、と口元に手を当て、思案する。
まずは綺礼と会議する必要があるだろう。そう思い、時臣は一度だけ窓の外に目を向け部屋を出た。
空は夕焼けに染まっている。
もうすぐ夜が来る。









「――――ッ!」
「どうしたの?セイバー」
「……サーヴァントです、アイリスフィール」

セイバーがその魔力を感じたのは車のドアへと手を伸ばした瞬間だった。
視線を南へ。昨日、戦いを起こした港の方角。恐らくそこにサーヴァントが居るだろう。
その旨を伝えると、顎に指を当てたアイリスフィールは顔を顰めて呟いた。

「誘っているのかしら」
「……真っ向勝負というところ、ラモラックの可能性が高いやも知れません」

アサシンにしろキャスターにしろアーチャーにしろ、こうも堂々と呼び出しはしない。
だとすればバーサーカーかランサー、ライダーの可能性が高いだろう。そこまでセイバーは考え、どうするかをアイリスフィールに問う。
アイリスフィールは車のエンジンをかけ、言う。
それはセイバーの迷いを振り払うように鋭い。

「行きましょう、セイバー」

今戦わないで何時戦う。アイリスフィールはそう言っている。
セイバーはその言葉に頷き、車に乗り込む。それから港近くの駐車場まで、無言が続く。
だがそれも視界の先にサーヴァントらしき姿を捉えるまでだった。
赤いパーカーを着た、小柄なサーヴァントらしき者がのん気に釣りをしている。
その周辺に何も気配はなく、誰もいない。
だが、そのパーカーを着た者から感じる気配は確かにサーヴァント…!

「貴様が、さきほどの魔力の正体か」

セイバーは剣を構え、問いかけるがサーヴァントは答えず、ただ釣りを続けている。
ただ、その肩が震えているのは理解できた。思わず、セイバーも息を呑む。
――――泣いている、のだろうか?
無言だが、肩が震えている。まるで途方にくれる子供のような背中だとセイバーは感じた。
少なくとも、不自然すぎて即座に斬りかかることは出来ない。
セイバーが目の前のサーヴァントの状態をどう判断するか考えると同時に後方から接近する気配が複数。
その全てがサーヴァント、方角はそれぞれバラバラ。その数3。
まさか罠か、ともセイバーは疑ったがその可能性は低いと感じた。
セイバーとパーカーのサーヴァントを含めれば、ここに5騎のサーヴァントが揃うことになる。もし同盟を組んでたとしても、2人以上は逆に多すぎる。
だとすれば魔力に反応して来た他のサーヴァントたちのはずだ。思うが早く、セイバーはアイリスフィールの傍まで下がり、剣を構えることで威嚇した。
想定外だ、とセイバーは冷や汗を流す。
ここまでサーヴァントは集結するなど、偶然にしては出来すぎだ。
どれだけこのパーカーを着たサーヴァントは誘き寄せるのが巧みなのだろうか。

「アイリスフィール、混戦になります―――私から離れないで」

先陣にて三騎士が出揃い、次には5騎のサーヴァントが集結する。
セイバーはさらに加速し接近する気配に腰を低く落としながら気を高めた。敵が即座に仕掛けてくる可能性もある。
さぁ、何時でも来い…!
自身の身から吹き上がるような魔力を全身に感じながらセイバーは吼える。
そして接近してきたそれぞれのサーヴァントが、現れた。

「………!!」

槍を片手に、驚愕に目を見開いているのはランサー、ラモラック。
セイバーを筆頭に集結したサーヴァントを零れ落ちそうなほどに見開いた目で見つめている。
だが次の瞬間には一人のサーヴァントを憤怒の表情を持ってして睨みつけていた。
同じく、セイバーは自身の足から力が抜けるのを感じた。
折れた剣を再度打ち直しても脆くなっているように、何かが壊れるような音を身の内から聞いた気がしていた。

「王……」
「まさか、こうも揃うとは……」

槍を携えたランサーと同じく、目を見開いた2騎の騎士が驚きをあらわにする。
傷一つすら存在しない白銀の鎧を身に纏い、己の得物である白く輝く聖剣を構えるガウェインは見知った顔や友が集結していることと、王と出会ってしまったことに。
正反対に傷跡の残る黒い鎧を纏い、合わせたようなくすんだ銀色のロングソードを持つ蓬髪の騎士、ユーウェインはセイバーやラモラック以外にガウェイン、友が召喚されていることに。
それぞれが驚愕を胸に抱き、対峙していた。

「ガウェイン、ユーウェイン……」

セイバーの色が抜け切った声がそれぞれの名を呼ぶ。
その声を聞いた瞬間、ガウェインの顔が後悔に包まれる。ユーウェインは苦虫を潰したように眉を歪める。
彼らから見てセイバーの顔は深い絶望に染まっているのが理解できた。
それは生前、セイバーが王としてブリテンを治めていた際、片時も見せないでいた個人としての感情の一つ。
常に勝利を約束し、勝ち取った騎士の王。
その姿は今にも消え入りそうなほどにか弱く見えた。

「…………ふは、ふはは………あはははははははははははは……っ!!」

唐突に、パーカーを着ているサーヴァントが笑い声を上げた。
その声にセイバーはびくりと震える。目は、これもまた信じられないと言いたげにそのサーヴァントの背中に向けられている。
その直後だった。赤いサーヴァントから魔力が噴出し、内から爆ぜる。
吹き荒れる突風にアイリスフィールは思わず目を伏せていた。そして風が止み切ったとき、目を開ける。
他サーヴァントの視線が集中する先を見れば、どこかセイバーと似通った赤い戦装束を身に纏ったサーヴァントの姿。
そしてその顔は、セイバーと同じ。

「……!?」

もはや声にもならないアイリスフィールは口元を手で覆い隠す。
まさか、そんな、ありえない。
そういった言葉は出せなかった。それはセイバーの表情を見てしまったからだ。
それが事実だと教えてくれるように蒼白の顔と濁り出した瞳。
そして次に変わるは、強い怒りと憎しみを色づけられた、セイバーの絞ったような声。

「モード、レッド………!!」

その声、その憎しみをぶつけられたモードレッドは笑みを深くする。
その憎しみを望んでいたかのように、その顔が理想どおりだったように。モードレッドは笑った。
それを嬉しそうに、セイバーと同じ顔を狂気に染めて、笑っていた。

「これはこれは父上……ご機嫌はどうですかな?」
「貴様!何を狙っている!!」

セイバーの怒りの声にモードレッドは首を傾げる。
彼にとってなぜ父がそう語気を荒げるか理解できないのだろう。
だが、合点がいったように手をポンッと合わせ、セイバーに言葉を返した。

「いえいえ、別に何をしようとなど思ってもいません。ただ、ガウェインと協力してそこのラモラック卿を貴女の目の前で首を刎ねようと思っただけです」
「な、にを……!?」

なんともなしに、モードレッドは言う。
その言葉にランサーはゆっくりと身構え、殺気を露わにする。
ただ、その殺気もアヴェンジャーという色に染まったモードレッドには心地よいのか、さらに笑みを深めていた。
すでに笑いすぎて、口端が避けんばかりに歪められていた。

「なに、ですか?それはもちろん、あの時と同じですよ父上。生前、私がラモラックを背から突き殺したように、殺すだけです」

だが、とモードレッドは言葉を続けた。
モードレッドが視線を向ける先には誰も存在しない。しかし、急激に発現した圧迫感と殺気の渦はそれが何かを教えてくれる。
そこに出現したのは黒い靄がかった、何か。
獣のような低いうなり声は理性を感じさせない。十中八九、バーサーカーのサーヴァント。
6騎目のサーヴァントが、集う。
この状況下、全員が固まった中で出現したバーサーカーは数本の剣をその身に提げ、ガウェインを睨んだ。
ガウェインは表情を険しくしたまま、バーサーカーに向き構えた。
ここに、戦闘が起こることが確定された。

「王よ」

ふいに、ユーウェインが口を開く。
びくりと反応したセイバーは小さく問うた。

「サー・ユーウェイン……」
「貴方のマスターを避難させてください……最早、戦闘は避けれません」

そう言うが早く、ユーウェインは指笛を鳴らす。
それに続いてくるは、風切り音と少年の叫び声。白い獅子がユーウェインの隣に降り立った。
セイバーは知っている。
この獅子を撫でたことも、抱きしめたこともある。

「おま、おままままおま、ら、ライダァァァぁぁー!!し、ししし死ぬかと思ったじゃないかぁ!」
「ドラゴンとも戦った我が友に乗っておきながらどーにも情けないなウェイバー……だが話しはこれまでだ。王よ、その淑女をここに」

その発言にアイリスフィールとウェイバーは固まる。
ユーウェインは宝具の一部であろう獅子に乗って逃げろ、と言っているのだ。
それがどういった意味か、理解できるはずだ。
だが、セイバーがそれに答えるも前に、『声』が周辺に響き渡った。
それは魔術によって拡散され、どこから聞こえてくるかも分からない。
ただ、そこにいるということが理解できた。

『そうか、おめおめと尻尾を巻いて逃げたと思えば……ここに居たか、ウェイバー・ベルベット君?』
「……!」

ウェイバーは、顔を空に上げる。
その声の主は、ケイネス=エルメロイ=アーチボルトはそのまま続けた。

『君がサーヴァントを召喚して挑むとは流石の私にも予測できなかったよ……そんなに死にたいのであれば、師としての情けだ。楽に殺して上げようじゃないか』
「う、うるさい黙れ!僕は、いや私はお前と同じ場に立ったんだ!何が師だ、見下せると思うなよ!!」
『……ちっ』

ウェイバーの叫びにケイネスは舌打つ。次に下される命令は、誰も言わずと分かった。
ウェイバーは、その言葉が自身の心臓を掴んだように感じた。
これが殺意を向けられるということだと言うように、言葉が痛みを感じさせていた。

『ランサーよ。ライダーとそのマスターを殺せ……!』
「お待ちください、ケイネス殿!先ずはそこな裏切りの騎士との戦いをさせていただきたい!かの者は俺を討つと、敵対する発言をいたしました!」
『黙れ、ランサー。貴様の意にそぐわぬのであれば、令呪を用いて強制的に戦わせよう……そもそも、貴様には令呪を最初から用いていたな?』
「ぐっ……!」
『そこのセイバーとの出会いに貴様を動かすのは非常に骨だったが、私達であれば恒久的な命令もそれなりの魔力で強制力を保てる』

そこまで饒舌に語ったケイネスは再度、言葉を区切った。
そして口を開く。
まるで蛇を思わせるような、裁判官の判決を下すかのような声がランサーの耳に届く。

『ライダーを、殺せ』
「………イエス、マイロード」

ランサーが苦渋に満ちた顔で槍を構え、ライダーはそれに合わせて剣を構える。
直後、バーサーカーの咆哮と同時にガウェインが剣をかざし、声を高らかに謳い上げた。

「我が名はガウェイン!此度の聖杯戦争においてイレギュラークラス・ナイトのサーヴァントとして限界した!いざ、尋常に勝負―――!」
「■■■……■■■■■■■■■■――――――ッ!!!!」

開戦の狼煙が上がる。
ナイトとバーサーカー、ランサーとライダーがお互いにその槍を、剣を合わせる。
その剣戟の甲高い音を背後に、モードレッドがセイバーへと叫んだ。

「あははははははははははは!!!そうだ、その顔が見たかった!!もう一度、あんたが絶望に染まった顔が!!」

モードレッドは、これを完遂したことの喜びに震えるように叫ぶ。
セイバーの目の前に広がるのは円卓の騎士たちが、ガウェインがバーサーカーと殺し合う光景。
こうまでも上手く物事が行くのかと、アヴェンジャーとしての最奥である望みを叶えたモードレッドはすでに膝を折ったセイバーへと剣を携え近づいていく。
それを断頭台のように振り上げる。
その剣はセイバーがかつて所持した王位の剣だ。そしてセイバーを、アーサー王を殺した剣。





「王位の剣で王の首を落とす……皮肉にしては最高じゃないか?なぁ、アーサー王」

鋭く、剣は振り下ろされた。






あとがき
心が折れそうだ…(デ○ンズソウルな意味で)


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