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No.31156の一覧
[0] コードギアス 帝国のルルーシュ 【第10話(ニーナ回)更新】[しまうー](2012/12/15 14:41)
[1] STAGE 1 魔 人 の 死 ん だ 日[しまうー](2012/02/07 15:39)
[2] STAGE 2 敗 者 の 笑 み[しまうー](2012/02/07 15:39)
[3] STAGE 3 ラ ン ペ ル ー ジ の 日[しまうー](2012/02/07 15:41)
[4] STAGE 4 偽 り の キ ャ ス テ ィ ン グ[しまうー](2012/03/09 17:05)
[5] STAGE 5 紅 の 憂 鬱[しまうー](2012/04/11 12:18)
[6] STAGE 6 ふ た り の 妹[しまうー](2012/05/17 17:06)
[7] STAGE 7 ウ イ ン ナ ー の 騎 士[しまうー](2012/06/11 16:43)
[8] STAGE 8 軍 服 の 乙 女[しまうー](2012/06/24 12:42)
[9] STAGE 9 奇 跡 の 末[しまうー](2012/10/08 13:14)
[10] STAGE 10 去 り 際 の 友[しまうー](2012/12/15 14:40)
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[31156] STAGE 2 敗 者 の 笑 み
Name: しまうー◆5ca8d63b ID:599ebe0a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/07 15:39
窓からはやわらかい朝日が差し込んでいた。
誰もいない廊下を栗色の髪をした青年が歩く。

顔付きはまだ幼さを残しており、服装もいわゆる学生服だ。
しかし服の下の筋肉は無駄なく鍛えられているのが外見からも分かる。
隙のない身のこなしで颯爽と歩を進める。




青年はある部屋の前で立ち止まると、やや躊躇してからドアを叩いた。

「ルルーシュ、殿下。枢木スザクです。お迎えに上がりました。」
「入っていい」

そっけない言葉を聞き、枢木スザクは自動扉を開ける。
部屋の主は机に向かって何やら書類に目を通していた。
着替えも既に済ませており、一分の隙もない恰好はその人の内面を表すようだった。

「悪いなスザク。2、3分待ってくれ」

神聖ブリタニア帝国の第11皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはしかし、
肩書には似つかぬ言葉を口にする。
わかったよ、とこちらもぞんざいな口調で返しながら
手持ち無沙汰になったスザクは部屋を見回してみた。




行政特区日本の式典で
彼が『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』を名乗ってから
ひと月が経とうとしていた。

「ユフィの補佐をする」

ルルーシュがそう言ったのは正直な所意外だった。
7年前の別れ際に彼が叫んだ言葉、

「ブリタニアを、ぶっ壊す!」

あの言葉は彼の全てのように感じたからだ。

新宿の地下で偶然彼に再会した時も
その憎しみの火は消えてはいなかったし、
学園でゼロに関してちょっとした言い合いになった時も
ゼロの武力による改革に関して一定の理解を示していた。




(まぁ心強いのは確かなんだけどね)

正直な所、行政特区日本が
ゼロとユフィの二頭体制では不安が大きすぎるのは確かだ。

あまり大声では言えないが、今のユフィはあらゆる面で経験不足である。
コーネリア殿下やシュナイゼル殿下からも
優秀な人材を送ってもらってはいる。
しかし彼らがユフィの夢を理解しているかが疑わしい上に
そもそもユフィの人を使う能力が圧倒的に不足しているため
信頼できたとしても適材適所に使うことができないのだ。

一方でゼロの側からは何人かの幹部を送り込む要望をされた。
最悪、特区日本がゼロの傀儡になる恐れすらあったのだ。




だがルルーシュがユフィの補佐に入ると状況が変わる。
ゼロの出す案に修正を入れ、
スタッフに的確な指示を出し、
ユフィの夢を具体化してそのロードマップを考える。
今やルルーシュは特区日本に不可欠な存在になりつつあった。

今日は放課後に予定されたコーネリア殿下との会談にかこつけて
前日の深夜にトウキョウ租界まで移動し、
租界に訪れるブリタニア貴族用のゲストハウスで一泊。
会談までは久しぶりにアッシュフォード学園に登校することになっている。




澄んだ表情で書類に目を通すルルーシュの姿は
流石と言うか、王族としての気品を感じさせるものだった。
なるべく落ち着いた内装の部屋を希望した、ということで
調度品も落ち着いた色使いのものが多いように感じる。
もっとも、彼が書類を見ている机1つとっても恐ろしい価格なんだろうが・・・

「高いぞ。この机1つでお前の給料10年分は下らない」

書類から目を離したルルーシュと目が合った。
口元には邪悪な笑み。
皮肉で応戦する。

「猫に小判ってやつじゃないか?その書類、『ルルーシュ・ランペルージ副会長』のヤツだろ?」

そう言うと、リヴァルによればファンクラブまであるという美貌が見事に苦く歪んだ。

「ああ・・・。そう、そうなんだ。まったく会長は何を考えているんだか。
 アイデアをだすのはいいが、事務仕事をやる身にもなってくれないと・・・」

「手伝おうか?」

「いや、もう済んだ。待たせて悪かったな。行こう」

ルルーシュはそう言って立ち上がり、手早く書類を鞄に詰めて廊下に向かった。




車に乗り込んで運転席との間の仕切りを上げさせると
ルルーシュは再び話し始めた。

「悪いなスザク。こんなことにつき合わせて」

「いいよ。・・・というか僕もユーフェミア殿下の命令で登校してるわけだしね」

今日のスザクの公式なスケジュールはルルーシュ殿下の護衛だ。
これは
『皇籍返還を申し出て、特区日本への参加を表明したブリタニアの皇子』
というのが極めて微妙な立場であるため。
黒の騎士団や他のテロリストだけでなく、ブリタニア側からも襲われる可能性があり
信頼できる護衛がいない、という理由による。

加えてユフィに学業のことを言われ
ルルーシュの会談と登校にスザクも付き合うことになったのだ。

そのことはいいのだが・・・




「不安か?ユフィのことが」

再びこちらの心情を察してかルルーシュが話しかけてきた。

「まあ、ね。殿下は大丈夫だって言ってるけど、ゼロの行方は分からないわけだから・・・」

特区日本の式典以後、ゼロは姿を現していない。
メールで意見を述べてきたり、
重要な案件では液晶越しにで会議に参加したりはしているが
正直な所、特区内にいるのかどうかすら分かっていないのだ。

今日もユフィには何度もゼロに注意するよう言ったが
彼女は笑って大丈夫、と繰り返すばかりだった。

不安は尽きないが、今言ってもしょうがないので
やや強引に話題を逸らす。

「それより君が特区の仕事を手伝ってくれてることに感謝してるんだ」
「ユフィも君が出てきてくれて本当に助かってるよ」

「俺がしていることは本来はスザク、お前の仕事だぞ?」

「ゔ」

藪蛇だった。

「騎士が剣の腕前だけ、なんて時代は遥か昔に終わってる」
「ユフィを支えたいのであれば、こういう仕事も・・・」

耳に痛すぎる小言が始まった。
確かに現在の騎士は有事の際の武力よりも
平時での補佐能力が求められることの方が多い。

最近は腕力に不安があ(りすぎ)るものの、
この男がユフィの騎士になった方が良いのではないかと思うことすらある。

もちろん譲るつもりはない、が。

小言がひと段落した後
ルルーシュはぽつりと呟いた。




「負けたからな、お前たち二人に」




え、と言ってルルーシュの方を見ると
彼は「これ以上話すことはない」と言うように窓の方を向いてしまった。




何のことかは分からなかったが
その顔は「ブリタニアをぶっ壊す」と言い放った時の憎悪のソレではなく。

恥ずかしそうにそっぽを向いた横顔は
純粋さをプライドで隠そうとする、『 あの夏 』 の表情に見えた。


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