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No.31156の一覧
[0] コードギアス 帝国のルルーシュ 【第10話(ニーナ回)更新】[しまうー](2012/12/15 14:41)
[1] STAGE 1 魔 人 の 死 ん だ 日[しまうー](2012/02/07 15:39)
[2] STAGE 2 敗 者 の 笑 み[しまうー](2012/02/07 15:39)
[3] STAGE 3 ラ ン ペ ル ー ジ の 日[しまうー](2012/02/07 15:41)
[4] STAGE 4 偽 り の キ ャ ス テ ィ ン グ[しまうー](2012/03/09 17:05)
[5] STAGE 5 紅 の 憂 鬱[しまうー](2012/04/11 12:18)
[6] STAGE 6 ふ た り の 妹[しまうー](2012/05/17 17:06)
[7] STAGE 7 ウ イ ン ナ ー の 騎 士[しまうー](2012/06/11 16:43)
[8] STAGE 8 軍 服 の 乙 女[しまうー](2012/06/24 12:42)
[9] STAGE 9 奇 跡 の 末[しまうー](2012/10/08 13:14)
[10] STAGE 10 去 り 際 の 友[しまうー](2012/12/15 14:40)
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[31156] STAGE 3 ラ ン ペ ル ー ジ の 日
Name: しまうー◆5ca8d63b ID:599ebe0a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/07 15:41

「ポイントα(正門)にて標的の降車を確認しました~」

「よろしい♪」と手短に応え、
報告を受けたミレイはゆっくりと椅子から立ち上がった。

ミレイ・アッシュフォードは小さい時から自分の立場を理解しているつもりだった。
没落貴族の娘であることも、いずれ政略結婚のカードとなるであろうその将来のことも。
そのことに不満はない。
ノブレス・オブリージュ、などという大げさなモノではなく
「誰かと結婚し、子を産む」という漠然と考える将来像の中に
「その相手を自分から選ぶ」選択肢が初めからなかっただけのことだ。

そう思えばこの豪華絢爛な学園生活はその反動なのかも知れない。
自分の欲望に従って人を使い、友と笑い、
立ち止まることを恐れるように青春の日々を駆ける抜けてきた。

今日のイベントはおそらく最後の乱痴気騒ぎとなるだろう。
全精力をかけて遊ぶのも、これでおしまい。

ガラス越しに見える標的が近づいてきた。
幸せそうな兄妹とその友人。
車椅子に乗る妹は、後ろから彼女を押す兄を心の底から信頼しているようで
彼らの友はそれを暖かく見守っている。

..........................................
あの幸せなな三人組に、私が何者であるかを思い知らさねばならない。

ポイントβ(正門と昇降口の中間地点)まであと少し。
さあ幕を開けようじゃないか。

『 STAGE 3 ラ ン ペ ル ー ジ の 日 』。

青春時代の終わりを告げる、祝砲の引き金を引いた。




「・・・会長、どういうことですかこれは?」

花火が盛大に打ち上げられ、紙吹雪が空を覆う。
妹ナナリーの車いすを押しながら予期せぬ歓迎を受けるルルーシュ。
万雷の、だが暖かさもある拍手に迎えられた彼はしかし、
引きつった笑みを浮かべていた。

「ふふ~ん、アレよ、ア・レ♪」

ルルーシュとは対照的に、
見せつけるような満面の笑みを浮かべたミレイは
正面の校舎に取り付けられた垂幕を指差した。

「『ランペルージの日』?」

「そうよ~。未だルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであらせられる殿下に
 今日1日は副会長ルルーシュ・ランペルージとして授業を受けてもらいま~す」

ルルーシュが『あの宣言』をしてからもう一月近くになるが
未だ彼の皇籍返還は行われていない。
そのため前回学園に登校した時には
彼を神聖ブリタニア帝国の皇子として扱わねばならなかった。
(もっとも生徒会室に入った後は
 彼の頼みもあって普段通りに接してしまったのだが)

だから今日は彼にルルーシュ・ランペルージとして過ごしてもらう。
ルルーシュ以外への通知は徹底しておいたので
「ルルーシュ君~」、と黄色い(?)声を飛ばす観衆にも遠慮はない。

「ほら年末にイベントやるって言ってたでしょ?」
「ちょ~っと予定は前倒しになったけどね~」

そう言いながらミレイはルルーシュの鞄を引ったくった。
中から彼の作った書類を取り出すと
これ見よがしにヒラヒラと彼の眼前にかざす。

「・・・あぁ、そういうことですか。」
「忙しい公務の間を縫って作ったその『ゴスロリの日』の企画書は
 俺にこの乱痴気騒ぎを感づかれないようにするためのダミーだった、と」

そう言ったルルーシュが音速で振り返ると
一緒に歩いてきたスザクは光速で目を逸らした。
そのとおり。
この企画は事前にルルーシュの登校日を知ることが必須であり、
彼の予定をこちらに知らせる裏切り者の存在は必要不可欠だ。

「いやいや、これも引き継ぎ作業の一環よ~」
「このイベントの企画・立案はリヴァルだしね」

受け取った書類をリヴァルに渡しながら言うと
頭が痛いという反応をしていたルルーシュの顔に理解の色。
言外に忍ばせた意図を察したらしい。

すなわち
『ルルーシュが近いうちにアッシュフォード学園を辞めるのではないか』
と私たちが思っているということだ。

まぁ普通に考えれば分かることだろう。
特区日本への参加を表明した以上、
その旗頭の一人がトウキョウ租界の学園に居続ける訳にはいかない。

しかも彼の不安定な立場を思えば
ブリタニア側からの「ちょっかい」にも配慮しなくてはならない。
ブリタニア人であるナナリーをあえて特区日本に連れ出したのも
そのあたりのことを心配したのだろうが、
そうなると移動の事を考えても毎日の長距離通学は難しくなる。

「どうします、ルルーシュ殿下? 」

ふざけた振りをしながらリヴァルがマイクを差し出す。
彼だってルルーシュとの別れは理解しているだろう。
しかしこのイベントのため、
もしくは今日の思い出のために努めて明るく振舞おうとしている。

「・・・」

別れ話を避けるこちらの意図を察し、
ルルーシュは不承不承という顔でマイクを受け取る。
少し間をおいてから高らかに宣言した。

「アッシュフォード学園副会長ルルーシュ・ランペルージが命じる、
      ランペルージの日を、開催せよ!!」




ルルーシュが特区日本で行った演説は
アッシュフォード家に空前の衝撃を与えた。

アッシュフォード家がルルーシュ達兄妹を匿っていたのは
なにも温情や同情だけが理由ではない。
いくら皇帝になる目がなくなったとはいえ彼らはブリタニア皇帝の血を引いているのだ。
それを私(わたくし)するということは多大なリスクを伴うが
同時に「いつか何かの役に立つかもしれない」という打算もあった。

しかし彼は公の場に姿を現し、あろうことか皇籍の返還を申し出たのだ。

ポーカーで言えば
不正をするために袖の中に隠していたはずのカードがテーブルへ零れ落ち、
しかもそのカードはジョーカーからクズ札にすり替わっていたに等しい。

(こうなるともはや喜劇ね)

放課後、生徒会室で一人作業をしていたミレイは思う。

彼女自体は零落したアッシュフォード家を「そういうもの」として受け入れてもいたが
両親にはまだ野心があったということなのだろう。
しかしルルーシュの行動によりその芽は完全に摘み取られたことになる。

不幸中の幸い、というべきか
ルルーシュがカメラの前に姿を現す直前に両親は彼から連絡を受けていたらしい。
その内容は言わば口裏合わせの確認だった。

・アッシュフォードがルルーシュ達を匿ったのは皇帝の子として命令されたから
・本国に知らせなかったのもルルーシュの命によるもの

突然の連絡に両親は困惑・・・いや正直に言えば激怒したらしい。
それはそうだろう。
こんな言い訳が通るとはミレイにも思えない。
ましてエリア11の総督コーネリア皇女殿下は苛烈さと同時に、身内への情愛も深いことで知られている。
異母とはいえ殿下の弟を攫っていたのだからお家の取り潰しすら手ぬるい程の重罪だ。

ルルーシュと、彼によれば総督の妹でもあるユーフェミア皇女殿下の取り成しもあって
アッシュフォード家は現在のところ、目に見える形での罰は受けていない。
だがブリタニア皇族との縁はまず切れたと見ていいだろう。

ミレイとしても不思議な点はある。
それはルルーシュが事前に連絡をしてこなかったことだ。
ルルーシュはアッシュフォード家を庇おうとしてくれている。
それは間違いない。
しかしそれならばもっと早くに連絡があってもいい筈だ。
ユーフェミア皇女殿下は学園祭でナナリーを見つけた、と言っていたが
そこから今回の事に繋がったにしては、ルルーシュの行動が突発的に過ぎる。

(何かあったのかも知れないわね・・・)

背もたれに身を預けながら、ミレイは知れずため息を漏らした。
しかし人の秘密を探るのは好きだが
皇室の内情にまで首を突っ込んでいいとは思わない。




「それよりお前~、ユーフェミア殿下とはどーなんだよっ」

そんなことを考えていると廊下から騒がしい声が聞こえてきた。

「じゅ、順調だよ」

生徒会室の扉が開かれ、入ってきたのは
リヴァルと、彼に首を絞められているスザク。

「最初は混乱もあったけど特区の仕組みも出来てきたから」
「まぁ最近はユf・・・
 ユーフェミア殿下が『みんなルルーシュばかり頼る!』って膨れたりしてるけど、ね」

「俺が言ってるのはそーゆーことじゃないでしょ~?」

言いながらリヴァルはヘッドロックから首投げに移行。
二人はもみ合いながら床に倒れる。

「仕事の話じゃなくてアッチの話でしょ~」
「キミ、やっぱりわざとやってるだろっ!」

「そ、そんなことは・・・」

それを見て「フフッ」と控えめに笑うニーナと、
酷く疲れた顔で「天罰だろう」と言うルルーシュ、
彼に車椅子を押されながら「ダメですよお兄様・・・」と兄をたしなめるナナリーも後に続く。

ルルーシュの疲労の原因は分かる。
休み時間は『ルルーシュ・ランペルージ』目当てに押し寄せる生徒の相手をし、
ただでさえサボりがちだった体育の補習を
『ルルーシュ・ランペルージ』としか見てない教師達にガッチリ入れられたらしい。

ルルーシュにナナリー、リヴァル、ニーナ、スザク、そして私。

今の生徒会はこれで全員だ。
そしてルルーシュ、ナナリー、スザク、私はもうすぐここを去ることになる。

今にして思えば私はいつの間にか
『大人になるのが嫌な子供』ではなく
『子供のフリをする大人』になっていたのかも知れない。

「ルッルゥシュ~♪ お疲れのようだけど『ランペルージの日』はまだまだこれからよ~!」




今日が最期かなと思いつつ。
この高校生活で演じてきたように、ミレイは満面の笑みでそう言った。




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