「続いてチュウブ・ブロックの各数値についてご説明致します。
まず・・・GBP(Gross Blocke Product)に大きな変化はありません」
「ですが正確な調査ではないものの、このエリアでも失業率などに改善傾向が見られます。
地勢状、特区日本への人口流失が大きく経済規模としては横ばいに近いですが
一人あたりのGBPは上昇の兆しが見えています。
ですから治安の安定が経済の安定に繋がっている、という形はこのブロックでも変わりません。
次の四半期報告でGBPがどうなるかは特区の動向にも依るので不透明さを残しますが・・・」
冬晴れのトウキョウ租界。
その中心に位置する総督府の執務室で
地方から来た内務官僚が端末に表示された各種数値の説明をしていた。
神聖ブリタニア帝国第2皇女コーネリア・リ・ブリタニアが
エリア11の総督に就任して以来、官僚が報告に虚飾を混ぜることはなくなった。
理由は簡単なことで、それをした者をコーネリアが明確に冷遇したから。
チュウブ・ブロックの次官として会議に出席したこの男もそのことは知っているらしい。
(ま、考えなきゃいかんのはそれだけじゃないがね)
ブリタニア軍の将軍アンドレアス・ダールトンは
コーネリア総督とその騎士ギルバート・G・P・ギルフォードと共に
各ブロックから招集した官僚たちの報告を聞いていた。
彼らの報告の内容は概ね一致していた。
すなわち、『特区日本の成立以降、政治・経済ともに安定した』ということだ。
それは本来エリア11の為政者として喜ばしいことなのだが。
「・・・コーネリア様?」
コーネリアはどこか心ここに在らず、という様子だった。
苦虫を噛み潰したような顔で報告書を睨み付けているものの
官僚の言葉に反応する様子はない。
それを見たギルフォードが心配そうに訊ねる。
「あぁ、すまない。続けてくれ」
険しい表情で物思いに耽っていたコーネリアだったが、報告の先を促した。
しかし官僚が口を開くより先に、今度はダールトンが口を挟む。
「いや、急がんでもいいでしょう。
どうやら姫様は次の客人に心を奪われているようだ」
ダールトンはそう言うとチラとギルフォードの方を窺う。
彼も苦笑いしており、会議は一時中断する運びとなった。
事実、報告は火急のものではなかった。
特区日本の宣言以降、エリア11の治安は飛躍的に安定しつつある。
テロや暴動への対処なら一刻を争わねばならないが、
自分が軍人だからということか、平時の事務にそういった緊急性は感じない。
(まぁ安定したからこそ、姫様の悩みも深くなるわけだが・・・)
特区日本に関するコーネリアの思いは複雑だろう。
根本にあるのは『「ブリタニア人とナンバーズを区別せよ」という国是に乖離することへの怒り』。
しかし『最愛の妹ユーフェミアの為すこと』でもある。
彼女の強情さを愛し支えたくもあり、翻意を促したくもあるはずだ。
そして最も問題なのはゼロの存在だ。
コーネリアは常日頃から「エリア11はキレイにしてからユフィに渡す」と口にしていた。
しかし皮肉にも現在の所、彼女が「ブリタニアの敵」と評したゼロの存在が
エリア11の安定に大きく寄与している。
もしこのまま時が進み、皇帝にもうエリア11にコーネリアは必要ないと判断され
ゼロを生かしたまま異なる戦地へと赴かねばならなくなったら・・・。
(官僚君らに「特区日本」を連呼せぬよう釘を刺しておくべきだったかな)
今日は夕方頃よりその特区日本からの使節として
神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが訪れる予定だ。
コーネリアの意識がそちらに向いてしまってもおかしくはない。
また特区日本に関する話し合いも勿論重要事項だが
ここのところ、コーネリアと最愛の妹の仲は微妙なものになっている。
彼女の腹心を自認する身としてはその改善にも努めねばならない。
コーネリアの騎士ギルフォードも忠義と智謀を備える男ではあるが
このような腹芸めいた仕事は自分の担当になるだろう。
(そのためにもこの会談は成功させねばならないのだが・・・)
ソワソワと異母弟を待ちきれぬ様子のコーネリアを尻目に
ダールトンは小さくため息をついた。
「なんなのだこれはッ!」
激情に任せてコーネリアが叫んだ。
彼女の目の前の端末には
『特区日本 特別委員会(仮) 草案』
と書かれた文章が映し出されている。
行政特区日本・代表ユーフェミアの補佐官、ルルーシュが持ち込んだ資料だった。
ルルーシュが執務室に入った時、コーネリアは総督の顔ではなかった。
苛烈な軍人として知られるコーネリアだが身内の者への情は人一倍篤い。
また彼女がルルーシュの母、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアを尊敬していたことは
彼女の腹心なら誰もが知るところだ。
彼が入室早々、自らを「姉」と呼ぶように言うなど会談は和やかな雰囲気で始ったのだが。
「・・・姫様、ともあれ説明を聞いてみましょう」
総督の、というより戦場での顔を見せるコーネリア。
ダールトンは躊躇いがちにルルーシュへ助け船を出した。
実はダールトンはこの会議の前日に
ネット上でルルーシュと会談を行っていた。
ダールトンとしてはこの会議を足掛かりに
コーネリアとユーフェミアの連携を取り戻したかったし
ルルーシュの側も特区日本の成功にエリア11総督の協力は不可欠な筈だ。
両者の利害が一致しての、いわば会議に向けた事務レベルの調整である。
・ 新たに特区日本の意思決定機関を作ること
・ そのメンバーに『日本人』を加えること
そこで知らされた今日の議題はこの2点。
ブリタニア側の人間にしてみれば過激どころか
その皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアの定める国是
『 イレブンとナンバーズは区別せよ 』
という言葉に真っ向から反している。
その狙いやブリタニアへのメリットを事前に説明する代わりに
コーネリアが話の途中で席を立つのだけは止めてくれ。
これがルルーシュからの言葉だった。
(細かい『お願い』はもう1つあったんだがね)
. . . . . . . . .
「いいだろう。聞かせてくれ、ルルーシュ補佐官」
コーネリアは激情を露わにしつつ、言葉使いも公に向けたものに改める。
それに対してルルーシュは、
「では説明します」
ほぅ、とダールトンが感心するほど落ち着いた口ぶりで話し出した。
「まずこの機関の必要性からお話ししましょう」
「『イレブンが日本人の名を取り戻す』『国籍による差別の撤廃』」
「そのほかの部分に関しては一切の取り決めなく、
特区日本はこの2つを公約に掲げ、参加者を募りました」
「ブリタニアからすれば特区日本はユーフェミア副総督の直轄地以外の何者でもないのですが
『日本人』達はある程度特区内の自治も行えると思い込んでいる節があります」
「さて、そもそもこのエリア11ですが元々はアジア有数の経済力を持つ国でした」
「ブリタニアの一部となってから、ある程度の復興を果たし」
「特区日本の宣言以後は治安の安定もあり
ブリタニアの基準で言えば衛星エリアへの昇格も見える位置に来ていると思われます」
ここでコーネリアが自分の方を見る。
意味するところは「ルルーシュに今日の官僚からの報告を流したのか?」ということだろう。
ダールトンは小さく首を横に振った。
事実、昨日の会談でもそんな話はしていない。
(どこか・・・アッシュフォードあたりから情報をもらったのか?)
ダールトンの疑問を余所に、ルルーシュは端末を操作しながら説明を続けた。
端的で的確な情報を並べ、
『イレブンに権利を与えることでどれだけ経済的なメリットがあるか』
ということを淡々と述べていった。
(前に会った時に生徒会で扱かれて身に付けた事務能力とか言っていたが・・・)
先程、執務室に来ていた内務官僚と比べても見劣りしないほど理知的な説明だった。
しかし。
「もう十分だ、ルルーシュ補佐官」
コーネリアが声を上げた。
「エリア11の現状の認識と執るべき方策に関して、正確に纏まっていると思う」
「しかし、問題はそこではあるまい」
「本題に入ってくれ。貴公もそんな話をしに来たのではないはずだ」
冷静に、と自分に言い聞かせるようゆっくりと話すコーネリア。
「・・・では委員の人選に関してお話しましょう」
(ここからが本番だ)
ダールトンがそう思うなか
ルルーシュは端末を操作し、全員の画面に同じ文章を表示させた。
・ ユーフェミア・リ・ブリタニア
・ 枢木スザク
・ ルーベン・アッシュフォード
・ アリシア・ローマイヤ
・ ゼロ
・ 小島源三郎 (名誉ブリタニア人・NPO団体代表)
・ 栗本拓磨 (日本人・元民自党政調会長)
「これが現在考えている委員のメンバーです」
「先程説明したとおり、委員の一番の仕事は各自の専門分野において代表の補佐をすることです」
「また重要事項と認められた事案については彼らが評決をとることになります」
ルルーシュは軽く前置きをした後、各委員の説明に移った。
「枢木スザクについては総督もご存じかと思われます」
「所属が特派・・・特別派遣嚮導技術部なので
現在の所、シュナイゼル殿下の配下ということになっていますが
これは近いうちにユーフェミア殿下に譲っていただくことになるかと思います」
「次にルーベン・アッシュフォード卿」
「エリア11に馴染みが深く、学園業もしているということで
特区の住民と協力して教育機関の構築に努めてもらう予定です」
「続いてアリシア・ローマイヤ卿」
「彼女はシュナイゼル殿下から送られた文官です」
「保守的な人物で・・・まぁ特区はかなり革新的な構想なので
シュナイゼル殿下なりの心配の表れなのでしょう」
「シュナイゼル殿下からの、そしてブリタニアからの後見人として参加してもらうつもりです」
「ゼロ・・・については説明を省きましょう」
「小島源三郎」
「名誉ブリタニア人であり
貧困なゲットー居住者への生活支援を目的としたNPO団体の代表です」
「彼には衣食住など短期的な視点での意見を述べてもらうつもりです」
「付け加えれば彼は武力を用いた活動はしないとして、かつてのゼロの活動にも否定的です」
「最後に栗本拓磨」
「彼は旧日本において政権を担当していた民自党の政調会長務めていた人物です」
「官僚出身ということで仕事も出来ますし、何より広い人脈があります」
「特区日本に必要な人材を確保する上でも必要と思い、選びました」
「以上のメンバーに特区日本の代表、ユーフェミア・リ・ブリタニア殿下を加えたものが
委員会のメンバーになります」
一通りの説明を終えるとルルーシュは一度黙った。
コーネリアの言葉を待っているようだが
過度に顔色を窺うような気配はない。
(なかなかのものじゃないか)
ダールトンは素直にそう思った。
まだルルーシュら兄妹がブリタニアにいた頃、
・・・いや、正確には「閃光のマリアンヌ」ことマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアが存命だったころ
コーネリアに付き添って彼ら親子に会ったことがある。
その時からルルーシュは利発そうな男の子だとは思っていたし
チェスで異母兄を負かした、というような話も聞いてはいた。
昨日の会談で特区日本に関する説明を聞いたときにも
頭脳に関する印象は高いものだったのだが。
(知恵だけでなく、器も備わってきている、か)
ダールトンの感心を余所にいよいよコーネリアが反論する。
「では尋ねよう」
「ルルーシュ補佐官、貴公が先程言った通り
特区日本はユーフェミアの直轄地として認められている」
「だからその代表たる者が賛同しているのであれば
私のほうから異見を唱えるのは間違いなのかもしれない」
「だが、このキャスティングはどうだ」
「細かい部分は目をつぶるとしてもブリタニア人が3人しかいないこの人数比は」
「あくまでユーフェミアの直轄地であるから特区は赦されているのだ」
「この案ではイレブンに特区の決定権を渡すことになるのではないかな?」
これは昨日のダールトンと同じ疑問だった。
ブリタニア人からすれば名誉ブリタニア人も含めるとはいえ
4人が反ブリタニアで纏まるようにも見える。
「総督のお怒りは尤もです」
「そしてそうであるからこそこの人選が有意義になるのです」
「どういうことかな」と口を挟んだのはギルフォード。
彼もコーネリアに従っているだけでなく
彼自身の判断として特区構想には反対している。
「7人の委員のうち間違いなくブリタニアと歩調を合わせるのは」
「ユーフェミア代表、枢木卿、ローマイヤ卿、そしてアッシュフォード卿」
「この4名です」
「ギルフォード卿は枢木をお疑いかもしれませんが」
この特区日本という壮大な実験が失敗に終わった場合
富士山周辺に確実に血の雨が降ります」
「枢木がそれを望まないことは私は旧知の仲ゆえに知っていますし
軍の報告書にもそういう記述はあるのではないでしょうか」
コーネリア・ギルフォードの両名がこちらの方を見る。
ダールトンは今度は頷いてみせた。
昨日、同じことをルルーシュに言われて報告書取り寄せてみたところ
たしかにそういった記述があった。
(正確には「殺生を避ける」という部分を「ブリタニアへの忠義が云々」と曲解されたものだったが)
「彼らがその立場を理解している限り、特区の住民が何を思おうと・・・
悪い言い方をすれば提案を握り潰すこともできます」
. . . . . . .
「そしてこうも見える。ゼロも含めて日本人が4人いる、とね」
「枢木スザク、ゼロ、小島源三郎、栗本拓磨」
「『日本人』である彼らが話し合いのテーブルに着くことで
武力による解決を図ろうとする勢力はその大義を失います」
「さらに言えば小島源三郎はアンチ・ゼロの立場ですし
栗本拓磨も現実主義者の政治家だったと聞いています。
「彼らがブリタニアの中の孤島たる特区日本で
突飛な行動に出るとは考えられません」
「言わば首輪のついた委員が
反ブリタニア的思想のイレブンを押さえつける丁度良い首輪になるのです」
『 4+4=7 』
これがルルーシュの考えだった。
確かに理には適っている。
しかし、しかしだ。
「ルルーシュ補佐官、1つ聞かせてくれ」
「貴公はゼロの正体をどう思っている?」
コーネリアが尋ねた。
ルルーシュの言う「武力による解決を図ろうとする勢力」とはイレブンの側だけではない。
ブリタニア側もゼロに『最終的な解決』を行う大義を失うのだ。
(いや、あの言い方は姫様のリアリズムをこそ否定しているのか?)
この会議に参加しているのはルルーシュを除きみな軍人だ。
ブリタニアの敵たる彼を消すことに異論があろうはずもない。
「それを知ることができるのは姉上かと思いますが・・・?」
「!!」
(まずい・・・!)
ルルーシュの言葉にいよいよダールトンが腰を浮かせる。
ゼロは国家反逆罪を犯した大罪の徒だ。
そしてユーフェミアは神根島にて彼と接触している。
そして彼女がゼロと通じていたとみなせば
特区日本構想を利敵行為として認定することができる。
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
つまりコーネリアには妹を断罪する材料があり
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
彼女にリフレインを用いればゼロの正体を知ることもできるかも知れないのだ。
(そんなことを姫様に進言する命知らずもいないと思っていたが)
(まさかここで・・・)
「ルルーシュ、貴様・・・」
怒りに燃える眼でルルーシュを睨みながら席を立とうとするコーネリアに
ルルーシュは流石に多少慌てたように言葉を足す。
「つまり、ユーフェミア皇女殿下を信じろと言いたいのです」
「彼女に聞いたところ、最近は総督との間で連絡も取っていないと聞きます」
「同じ皇族で、それどころか同じ母から育った姉妹なのに信じることができませんか」
「ゔ」、と中腰になったコーネリアが詰まった。
ユーフェミアが未だに皇族なのは
彼女が自らの皇籍を返還すると言い出した時に
ルルーシュが身代わりのような形でそれを行ったからだ。
(杞憂だった、か)
ダールトンは静かに腰を下ろす。
「おふたりが協力すれば特区、そしてエリア11もますます安定します」
「実際問題、枢木をシュナイゼル殿下から切らなければ
彼を殿下の人形と見なすことでローマイヤ卿には退席してもらい
コーネリア殿下からのスタッフを委員に入れることもできました」
「しかしそうしなかったのは
総督と代表の意思が疎通していれば、必要ないと思ったからです」
目を閉じて渋面で考え込んでいたコーネリアだったが
ルルーシュの話を最後まで聞いたところで
小さく息をつき、
「分かった。ルルーシュ補佐官」
「細部についての説明を聞こう」
そう言いながらゆっくりと総督の椅子に腰を下ろした。
その後の会議は波乱もなく進み
概ねルルーシュの持ってきた資料の通りに、
という方針でこの日はお開きということになった。
ルルーシュの帰り際にコーネリアが尋ねた。
「ルルーシュ補佐官、いやルルーシュ」
「お前は皇籍を返還すると言い
同時に特区日本への参加を表明した」
「お前の望みは何だ? なぜユフィに協力している? 」
これはダールトンも同じ思いだった。
彼ら兄妹は人質としてかつての日本に送られ
そのまま見棄てられた過去を持つ。
政治の舞台に上がることを好まないだろうとは容易に想像がつくし
逆に何らかの目的でこの世界に戻りたいのであれば、皇籍返還は納得がいかない。
特別委員の1人に自分の名前を挙げることだってできたはずだ。
「ナナリーは目も見えず、脚も動きません」
「世界がやさしくないと、彼女は生きていけないのですよ」
「やさしい世界」
「それが私の望みであり、ユフィに協力する理由です」
ルルーシュが感情を押し殺すようにそう言うと
武人であるコーネリアは少し複雑そうな表情を見せた。
それを見て立ち去ろうとするルルーシュにコーネリアが続けた。
「ではもう1つ」
「お前は説明の中でブリタニアの一員としての意味で
『我々』という言葉を一度も使わなかった」
「お前はもう『我々』ではないのか?」
そう言うコーネリアは微かに悲痛な色さえ見せる。
最愛の妹、ユーフェミアの身代わりとはいえ
異母弟妹が皇族でなくなるのだ。
. . . . . . . . .
「Royal Weは使えない、というだけの事ですよ」
. .
「ユフィにも報告は入れさせます。では姉上」
ルルーシュは誤魔化すようにそう言うと
今度こそ背中を向け、執務室を出て行った。
執務室の扉が閉じても
しばらくの間、緊張した空気は去らなかった。
主の心境を思いやってかギルフォードも何も口に出さず
沈黙が室内を支配する。
やがてコーネリアが長い息をつき
少し冗談めかした顔で口を開いた。
「・・・ところでダールトン、お前はルルーシュの書類のことを知っていたな?」
確かに頼りない主を支えるのもいいだろう。
だが、
(優秀な主に仕えるのも悪くない、か)
ダールトンはそう思いつつ黙って頭を下げた。