番外 ハイパーSAKURAさんタイム使用後の反動
家に帰って、取りあえず味噌汁を飲んでから
「忙しい忙しい忙しい」
取りあえず、最近物凄く忙しい。
気軽に執行者の助手なんて引き受けるんじゃなかった、と後悔しているぐらい忙しい。
冬木市に毒蜘蛛を繁殖させる暇などない。
そもそも、地域密着型の蟲使いをやってる私は自分が今までしてきたことの後片付けで大変忙しいのだ。
放置していたら、不味い物ばかり。
「ああ、もう!めんどくさいったらありゃしない!」
清浄な気が性格上、相性が悪すぎるので、性格が捻じ曲がりそうだ。
「何か」のせいで私は大荒れだ。
「バゼットさんが私をスカウトしたのでさえ、「何か」の陰謀か!?」
私を日本から追い出すためなのかと、さえ疑ってしまうことが多い。
とりあえず今日は養蜂の巣箱の回収で一日中歩き回っていた。
お寺の方々が手伝いを申し出たが、危ないので断り、一人で後片付け。
勿論、蟲蔵で凍結させるためだ。
普段使役のため、自分の精気をたっぷりあげているのだ。
結構維持が大変なのだ。
日本から離れると蟲たちが、一斉に人を襲い始めるかもしれない。
そんなのバレたら姉に神秘秘匿の執行者を呼ばれかねない、もしくは代行者。
「くぅぅぅぅ!?ヤダヤダ!やだぁ!なんで私はあの場で契約した!?」
バゼットさんと、すぐに簡易式のギアスで契約してしまったのだ。
2月には貴女の助手になります、不束ものですがよろしくお願いします、的な。
いや
でも
手が砕けるのは勘弁して欲しかったし。
「ふ、ふふふふふふっ!私はねぇ!誰かに裏で左右されて生きるのが一番嫌いなんだよ!」
自分が思う通りに行かない、と切れる。
そこがまだまだ未熟な所でもある。
普段であれば、「こういうのも、これからの楽しみに比べれば、ちょろい、ちょろい。これはこれで一つの楽しみですよ?」
と妖しい笑いの一つでも浮かべる所であるが。
清浄な気のせいで、最悪な気分な状態が毎日続いているのだ。
今までストレス発散だったエロイ行為も清浄な気でヤル気が起きずにもやもやしている。
目の前に裸の美女がいて、発情して待ち構えているのにヤりたいのに何故か勃たない、とかそういう感じで。
そう
三大欲の中で最も比重を置いている物が奪われたのだ。
わかりますか?
「今から一ヶ月眠るな」って言われたようなものですよ?
「普段温厚な私でも怒るわ!」
絶対に呪ってやる!
「何か」さえも殺せる、いや―――完全消滅させるものを手に入れてやる。
駄目だったら竜神、蛇神の社を全て破壊してやる。
全国の竜神系列の神社に不審物置いていくぞ?
例えば、古い建築物が好きな凶暴な白蟻の巣箱とか。
数年は掛かりそうだが、このテンションなら、やらない、とは思えない。
憎悪が燃える。
11年前に間桐家に入った時並みに。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
間桐桜が怒りに燃え、吼える!
実際、自業自得なのである。
ちなみにしんじくんは絶対に家には帰らなかった。
「桜の機嫌が悪い時はわかる、僕がどうなるか解る。でもあれは………どうなるんだろう」
絶対御免、だと。
そして、ついにブチ切れた桜さんによって一日で冬木市の蛇は絶滅した。
強制的に大発生した10兆匹の小さな蝿で。
桜さんはそして、また忙しくなることに今は気付かない。
そして
「うわあ、どうしよ、増やしすぎた…………魔力使いすぎたし……後片付けが、進まない」
長いあとがきと長い補足。
土地神さま達「やっぱ、こいつ追い出そう」
「賛成」
黒子の癖に活躍しすぎ。
普段折角、こそこそやってたのに荒魂などを殺してしまったせい。
そりゃ、知れます。
黒子をやりたいなら
見せて、やろう
私が憧れて止まない魔女らしい戦い方を
「そして―――閉幕しましょう!黒子として!」
とか格好つけなきゃよかったんです。
見せてどうする。
桜さんも「英雄」認定されています。
「偉業を成し遂げたから英雄になるのではない、偉業を成し遂げると英雄にされるのだ」的な。
ちょろい、ちょろいと踏み潰した虫けらを気にしてなかったのが問題。
ご老体なら裏の裏の遠いところから上手く誘導して烏さんに殺させていたものを。
もしくは別人を装うとか。
しかも、知らずにとは言え、マキリサクラとして「何か」の力を借りてしまった。
故に等価交換の法則が働きました。
まぁ、巻き込まれ型主人公タイプの人間なら気にはしない、というか気付かないでしょうが。
桜さんは黒幕タイプの人間です。
厄介事の解決は更なる厄介事を生むものです。
まだまだ美味しいところだけ摘めるほど経験を積んでないのが敗因。
聖杯戦争で日本との相性の悪さが最大の敵になるでしょう。
堂々と参加するのなら問題はないけど、裏方で行くと邪魔されます。
まだ続きます。
「ふぅ」
1月中旬、なんとか落ち着いた。
これから住む場所は確保した。
イギリスに豪華な家を買ってしまった。
結局、ふと思いついたのだ。
蟲蔵全部そっくり持っていけば?
と
来週ころにはコンテナ船の中で蟲達も旅行するでしょう。
ちなみにビザは用意していない。
「ふっふーん。イギリス国籍買っちゃいました、あと大体の国籍」
もはや間桐桜を止めるものは居ない。
そして、一般的な海外渡航をする気が全くない。
ちなみに海外に居ても、間桐桜は隣町の高校に「進学」することなっている。
現在10人以上の架空の人間が各国で生活していることになっている。
シリジエアン・フルールさんとかセレッソ・マレフィニカさんとか。
お気に入りはセレッソ。
バゼットさんに
「桜、行きましょう」
じゃなくて
「セレッソ、行きましょう」
の方が格好好い。
それを想像するだけでも
気分が良い。
それに
「出所不明な精気とやらの解決方法、見つかりましたし」
簡単な話であった。
どっかから汚水が水道に流れてくるのならば、清浄用のフィルターでも張ればいいのだ。
「11年前の破片が役に立つとは、思いもよりませんでした」
と
間桐桜は厭らしく妖しく哂う。
「これもまた私の実験が役に立ったということで、気分が良いですね」
11年前の破片。
「お爺様もいい物を残してくれました【この世全ての悪】の一部、なんて物を」
取り扱いを間違えれば大変なことになるが、毒は上手く使えば薬にもなるのだ。
「薄める作業は昔から考えてましたけど、「ラインの黄金」の加工はアインツベルンの秘儀ですからね
汚れた聖杯から永久機関の作成はとっくに諦めていましたけど」
桜は聖杯の器となる「ラインの黄金」で汚れた聖杯に循環器を作成し、流れる力での聖杯の利用を考えていた。
莫大な負のエネルギーを循環させ、莫大な「流れる」力を生み出す永久機関。
マキリサクラはそれが一番良い方法だと、思っていた。
しかし、一年でそれを狙うのは不可能とは完全に言い切らないが、大変難しい、ほぼ不可能に近い。
0に近い可能性に賭けるほど楽観主義でもない。
それをするには「ラインの黄金」で作成された肉体が必要なのだ。
アインツベルンの「ラインの黄金」で作成された肉体の挿げ替えは効果的かもしれないが、運用する知識も足りない。
薀蓄食ったって、重要な「経験」は得られない。
知識を知っていても体は動かない。
世の中そんなものだ。
考察をやめ、自分の魔術で作られた包帯に巻かれた左手の小指の指先を見る。
「はぁ、海外に出たら直ぐに切り落とさないと―――ってヤクザですか私は」
ようは、欠片を砕き、本当に微細な欠片で自らの小指の指先を汚染している。
大した汚染量ではないがそこに清浄な精気を送ればどうなる?
清浄な精気は汚染され中和されるのだ。
「それでも、これがないとしばらくは生活できないですね」
自分の臍の辺りから走る紐のような蚯蚓腫れを見る。
それは臍から左手の小指にまで繋がっていた。
人の精気を吸い取る蟲を補助具として丹田から小指に繋いでいるのだ。
臍の丹田に清浄な気が流れてくるのはすぐわかった。
人の構造上、此処が一番溜まりやすいのだ。
それでも精気のコントロールを失敗すると、すぐ破滅が待っている。
正直、一ヶ月ぐらい、我慢しろ、と自分に言い聞かせていたが、やはり我慢できなかった。
嫌なものは嫌なのだ。
左手の小指の指先は汚染され、そして蟲にも食わせて改造したので、最早切り落とす以外の方法はない。
それでも無駄な感情に支配されるなど真っ平御免、と微笑む。
肉体と魂は不可分な物。
しかし、もっと大切なモノがあるのなら肉体が破損し魂が削れても別に構わない。
「私にとっては今こっちの方が問題です」
最近、視力が落ちてしまった。
今まで暗い蟲蔵での作業ばかりしていたせいだ。
「正直、魔眼でも欲しいところなんですけど……作成に時間掛かりそうだからなぁ」
これはジジイの薀蓄の中にも最近手にいれた薀蓄にも無かった。
無いものを1から作るなんて無駄はしたくないのである。
近視というものは眼を動かす筋肉である斜筋に生じた緊張が原因である。
故にしっかり眼の筋肉の回復トレーニングでも行なえば治るものである。
が
「めんどい」
通販で買ってやるのは良いが、よくよく続かないのが通販というものだ。
ならば眼鏡っ娘かコンタクトレンズ。
ようし
「今流行のレーシックという物は面白そうです」
ま、後遺症とか何十年か後の範例とかないので危険だとか言われていますけど。
「水晶体なんぞ、いつでも生やせるし」
そこら辺はマキリの肉体改造技術の応用です、と笑う。
「それにエキシマレーザーですよ、エキシマレーザー、その言葉だけでも試す価値があります」
実際、ただレーシック手術を受けてみたいだけである。
前世では4.0と超人クラスだったので、周りがレーシック手術の話をしていて
「あれって凄いよねー」
「うんうん私0.1から2.0だって」
とか話してるのを聞いて羨まし?かったので。
それに手っ取り早い。
ほんの2、3日で手術は終わるのだ。
たかが、眼の筋肉のために、これ以上時間使いたくないですし。
「世の中、経験できることがあったら、やってみるべきです」
とりあえず予約とってー、とパソコンに向かい始めた。
7話 レーシック姉妹喧嘩
「絶対駄目」
おや、おかしいですよ。
お爺様の言いつけで来月から海外留学です、と言ったら潔く
「寂しいけど……しょうがないわよね、そっちの方に口出しは出来ないもの」
と言っていたあの姉さんが
たかが、眼球の改造ごときで
「駄目!」
「なんでですか?」
「駄目な物は駄目」
「いや、だから……なんで、でしょうか?」
やっぱりあれですか、後遺症とかそういう―――。
「レーザーなんてものはね、現代科学によって生み出された未来の物なのよ?
過去に進む私たちにそんな物を利用した手術なんて必要ないわ
解る?桜……私達は魔術師なのよ?携帯電話とかパソコンとかそういうモノに慣れきっては
何れ魔術の衰退の原因に関るものなのよ?わかる?だから駄目」
ああ、デジタル駄目ですもんね……。
それに、古くなったパソコンを譲っても、まず最初に起動ボタンがわからない人ですものね…。
使い方を丁寧に教えたのに電源を落とすのにコンセント引っこ抜く人ですもんね……。
普通、中学校か高校に入ったら誰でもワードくらい習うのに、どうしてるんだろうかこの人。
「それを言うなら眼鏡とかコンタクトレンズは……」
あれも文明の利器だ。
「眼鏡はいい、でもコンタクトレンズも駄目」
な、何故に…。
「あれって直接眼球にレンズをつけるんでしょ?よく漫画で踏まれて割れるやつ」
姉さんから昭和の香りが。
「いや、今はソフトタイプというものがありまして、シリコンで「甘い!」へ?」
「眼鏡にしなさい」
「えー」
「じゃないと許さないから」
「じゃあ、お爺様の言いつけで「桜よ、レーシック手術を受けるのじゃ」と「嘘つくな!」……駄目ですか」
「さっきあんた、自分で受けようかな、とか言ってたじゃない」
そうだった。
あれは
予約を取った後日。
楽しみだなぁ、眼をレーザーで焼くの楽しみだなぁ、と街を歩いていた時の出来事。
偶々、街で姉に出くわし、これから何処にいくの?などと、聞かれた時のこと。
「あ、姉さん」
「桜、今暇?これから美味しいケーキがある喫茶店に行くんだけど」
貴女もどう?と尋ねられ。
「いえ、これからレーシック手術を受けようかな、と思いまして」
「しゅ、手術?」
「そうなんですよ、最近眼の視力が落ちちゃって、ちょっと」
「え?視力が落ちたら手術をするものなの?」
どうやら姉はレーシック手術を知らないご様子。
「いえ、レーシック手術というものはですね……」
と説明を重ねる内に姉の顔がどんどん深刻になっていき。
「だから駄目な物は駄目」
となりましたとさ。
禁止ワード
「私が手術をしようと私の勝手じゃないですか、どうして姉さんが駄目なら、駄目なんですか?」
とか、言うつもりはない。
どうせ怒鳴られるだけだし。
それか、泣かれるだけだし。
見てみたいけど、最近疲れてるからなぁ。
時間ないし。
フォローが面倒くさい。
必殺奥義、姉さんと別れた後に勝手に行く。
も
駄目だ…。
眼鏡以外駄目だ
今度あった時に「あれ、眼鏡かけてないじゃない?まさか…」
とか問い詰められ、結局怒られる。
言い訳に視力回復トレーニングを使うのは嫌だ。
どうせ
「そんなの続くわけないじゃない?」
「その通りでございます」
とか。
で、多分
今から
「そうだ、桜の眼鏡、買いに行きましょ?私、桜に何かプレゼントしたいし、この前、絹の下着買ってくれたからその等価交換ね」
姉が凄い楽しそうな顔して私の手を掴み歩き始める。
やっぱり。
こうなるか…。
でも、眼鏡……はちょっとね。
最近調子に乗って失敗ばかりで、あの憧れの魔女さんみたいに眼鏡掛けるの嫌なんですよね。
パチモンになった気がして。
私は本物になりたいのだ。
眼鏡は本物になった時にでも、とか子供っぽいこと考えちゃったりして。
ド外道目指してるから、眼鏡は装備しません、なんてこと姉にいえませんし。
うむ
逃げるか。
「どこにいくつもり?」
あ、このアナクロな姉は
ぐいぐいと引っ張られる。
するずると引っ張られる。
私と違い、文武両道の武闘派。
最近バゼットさんのインパクト強すぎたから忘れていた。
「はぁ……」
「なによ、私と眼鏡を買いに行くのが嫌なの?」
そうです。
「いえ、ちょっと財布に不安が」
「だから、私がプレゼントするって言ったでしょ?姉の言うことは聞くものよ?」
微笑んで、そう、言う姉に
嬉しさを感じる私。
まだまだ道は遠いなぁ、と感じる。
まぁ
結局、目指す場所が遠いのなら、遠くをみる物が必要なのだ。
それが何であろうと変わりはしない、魔女とはそういう考え方をするべきなのだ。
なに、何れこんな阿呆みたいな感傷も捨て去ってみせる、と私は苦笑した。
最近、私も人間っぽいことばっかり考えてるな、と思い微笑む。
なに、この世のありとあらゆる物、全て楽しんでこそ、人生なのだ。
見て聞いて感じることは無駄じゃない。
未来は私の手の中にある、と私は自分で言ったのだ。
ならば、今起きる全ての事象は私の未来なのだから、喜び楽しもう。
「で、姉さん―――予算の方はいかほどで?」
2万円堂とかだったら一生許さない。
これは本気で。
「ぐっ……」
姉が苦しんでいる……。
その姿は
ま、性的な意味で食べちゃいたいぐらい可愛い。
とかやっと、私の基本思考が復活してきました。
と哂う。
【ギャグ】逞しい桜さん (15禁)
第一部 終了
あとがき
この回は桜さんが自分を戒める回。
一回脱皮してもう一回脱皮する前の話。
まだまだ未熟だなぁ、と実感する話でした。
黒幕もしくはド外道成長物語。
外道成分0のお話でした、つうかほんわか系を目指してみました。
ただ、眼鏡を買いにいくだけなのに。
普通のお話にしてみるだけで、ほんわか系ってなんでしょうか。
あと、眼鏡は結局姉特製のクリスタル眼鏡とかになりそうな気がします。
次回、ダイジェスト旅行記。
すいませんダイジェストさせて貰います。
宵闇7巻の寅蔵の「大変だったんだよ、色々」
的な感じでいきます。
聖杯戦争編終わったら書きます。