「あぁ・・・んちゅ、んあ・・・ちゅ・・春希ぃ・・・」
「ちゅ・・・かずさ・・・」
今日はいつもより早く仕事が終わった
いつも通りかずさと一緒に風呂に入り、上がったら体を拭いてパジャマを着て即ベッドへ
最初は「どうせ脱ぐんだから、着る時間がもったいない」とかずさは文句を言ったが、
俺が「脱がすのがいい」と言ったらそれ以降文句は言わなくなった
風呂も「シャワーの方が早い」と言われたが、「湯船の中でイチャつきたい」と言ったら以下略
「春希ぃ・・・春希ぃ・・・」
「かずさ・・・んちゅ・・・」
お互いの服を脱がしあい、肌の温もりを確かめ合い、下着に手をかけようとした所で嫌な事を思い出した
今日中の電話を一件し忘れていた
普段ならこんなミスは絶対有り得ないが、急に舞い込んできた仕事に気をとられ記憶の奥へ仕舞い込んでしまったようだ
なんとか『今日中』に思い出すことができたのはよかったが、問題が一つ
それはこんな遅くに電話をしようとする相手への配慮ではない
今から電話しようとしてる相手の職種には理解があるし、それはつまりこんな時間でも大丈夫ということで
「・・・ちゅぅ・・・んん・・んぁ・・・」
まぁ問題というのは、今まさに俺のトランクスを脱がそうとしてるかずさであり
仕事を思い出し冷静を取り戻した俺と違い、かずさは完璧に出来上がっている
「ちゅ・・・悪い、かずさ・・・んちゅぷ・・・ちょっと、待ってくれ・・・ちゅぁ」
わかっている、こんな言葉じゃかずさは止まらない
というかそんな事言ってる間にトランクスは脱がされ、宙を舞い、俺は全裸になった
仕方ない、こんな時俺はどうすればいいかを知っている
かずさの目を正面からじっと見つめ「魔法の呪文」を口にする
そうすると、あら不思議
「かずさ、『待て!』」
「っ!」
かずさはパッを手を離し・・・何をからは言わないが
というかむしろその「ナニを」からなのだが
『おあずけ』状態になったかずさから離れ、俺はベッドから立ち上がり、テーブルの上に置いてある携帯電話を取りにいく
そしてその場では電話をせずにベッドへ戻る
俺が全裸で寒いからというわけではなく、この場で電話を始めると、かずさもベッドから出てきて俺に抱きついてくるからだ
来月もコンサートが控えているのに今風邪を引かれたらたまったもんじゃない
俺がベッドへ入るとかずさはすぐに俺の首に手を回してきた
「まだ『待て』だぞ、かずさ。まだ我慢してくれ」
「うぅ、春希ぃ・・・」
えぇい、そんな目で俺を見るな!
誘惑に負けそうになる気持ちをグッと堪えアドレス帳を開く
「夜分遅くに申し訳ありません。私、冬馬曜子オフィスの北原と申しますが・・・」
・・・
・・・・・・
「はい、ではそういうことでよろしくお願いします。では」
通話を切り、携帯電話を閉じ枕元に置いた
これにて本日の業務は完璧に終了、お疲れ様でした
と言いたい所だが、この後俺は先ほどから泣きそうな顔で俺を見つめるこの忠犬に言わなければいけないことがあるわけで
それは「解除の呪文」であると同時に新しい「魔法の呪文」でもあるわけで
つまりそれは「まだまだ俺は頑張るぞ!」という覚悟でもあるわけだ
「かずさ、『よし!』」
「っ!・・・春希ぃ・・・春希ぃ!」
この新しい呪文の効果は「『おあずけ』した分激しくするぞ」
通常業務よりはかなり激しく、いつもの夜の営みからはちょっと激しく
そろそろ明日になりそうな時計を横目で確認してから俺はかずさと愛し合う
朝起きれるかとかそんな心配はしない、いやできない
なぜならこの『よし!』状態の忠犬は、そんな事を気にしてる暇さえ与えてくれないから