俺と鬼と賽の河原と。生生流転
Date 12/22 20:13
From 由比紀
Sub 12/25
流石の貴方でも、12/25が何かはわかるわよね?
Date 12/22 20:32
From 薬師
Sub Re:12/25
0.48
いくら俺でも電卓くらいは使えるぞ。
Date 12/22 20:14
From 由比紀
Sub Re:Re:12/25
(´・ω・`)
其の四十二 俺と暖房と襟巻きと。
参ったことに、俺の部屋の暖房は壊れた。
「今年も終わりじゃのう、薬師」
「そーだな」
だが、それでも尚魃と二人きりの部屋は暖かい。
「なんじゃ、せっかく妾が温めに来てやったのじゃから嬉しそうにせんか」
「お前さん、俺が嬉しそうににこにこしてたら薄気味わるいだろーが」
「それもそうじゃな」
窓の外を見れば、はらはらと雪が舞っている。
「即答するなよ」
「どうすればいいんじゃ。そんなことはないといいながら目を逸らせばよいのか」
「何も言うな」
「ところで、その発言は別に嬉しいということは否定しておらぬな?」
「……否定してたらなんだよ」
「……正直、へこむ」
肩を落とした魃に、俺は半眼を向けた。
「なんでだよ」
「いや、別に嬉しくもなんともないどころか迷惑だけど断るのもなんだかなぁ、という気分だったら……」
「別に、迷惑だとも、嬉しくないとも言ってねーよ」
「お主はの、言うことが半端すぎるのじゃ」
「ぬ?」
「嫌いではないとか、嬉しくないわけじゃないとか、迷惑とは言ってないとか、はっきり嬉しいといえばいいのじゃ、このいけずめ」
面倒くさい奴め、と俺は人知れず溜息を一つ。
「あー、へいへい、部屋が暖かくなって嬉しいよ」
「妾を暖房器具扱いか」
「暖めにきたって言っただろ」
「ぬぅ」
痛いところを突かれて魃は黙り込んだ。
「それに、この体勢で迷惑も何もあるか」
温かさ重視で胡坐を掻いた上に魃を乗せ、魃は俺にしなだれかかるようになっている。
お互い見れば吐息が掛かるような距離だ。
「まあ、そうじゃな……」
そう言って魃は俺の頬に手を伸ばしてきた。
「なんだよ」
頬が温かい。
「なんでも」
「そうかい」
眺めるテレビは面白いわけでもなく。
暇で気だるいそんな夜。
「ところで、重くないかの?」
「ん。なんだいきなり」
「この日のために、二キロ落としたのじゃ!」
……違いがわからん。
だが、乙女というものには二キロの差が致命傷なのだと聞く。
「軽いぞ」
「まあ、お主に掛かれば、三十キロ増えようが重くないのじゃろうが」
魃が頬を膨らませて不機嫌であることを示してくる。
「まあ、でも無理なのは止めろよ。女は適度に肉付いてなきゃいけねーらしい」
「らしいってなんじゃ阿呆」
「俺もガリガリなのは御免だな」
「なるほど、わかった」
口にすると、今度は嬉しそうに笑う。
なんなんだ一体。
「しかし、見よ。妾にもまた少し筋肉が付いたのじゃ」
「鍛錬も無理すんなよ。かちかちな女ってのも貰い手がいねーぞ」
「いいじゃろう、覚えておこう」
言いながら、魃は俺の手を取って腰にまわしてくる。
「どうじゃ、妾の肉付きは」
「わからん。いいんじゃねーの」
手に伝わる感触は確かに、柔らかい。
だが、魃はご不満のようで、声は刺々しかった。
「なんじゃそれは」
「悪いか」
「それだからお主は薬師なんじゃ」
なんだか知らないが怒られているぞ。
しかし、そこから魃は溜息を一つして、気を取り直したように呟いた。
「のう、それより薬師。外に行かんか?」
「外? なんでまた」
間違いなく寒いだろうのになんでまた、と俺が首を傾げるとそれでも魃は外に出たがる。
「あれじゃ、あれ、妾は甘いものが食べたい。可及的速やかにな」
「なんだ、饅頭じゃダメか?」
俺が部屋のちゃぶ台の上の饅頭を差し出してみると魃の視線はまんじゅうをじっと見るが、お気に召さない。
「ぬ、いかん。だめじゃ、これでは満足できぬ」
「んー、じゃあ、下にクッキーかなんかあるぞ、多分」
「い、嫌じゃ、妾は、妾は……、そう、こんびにすいーつが食べたいのじゃ!」
「つまりコンビニまで行けってか?」
「そう。暖房代わりになった料金にこれ位は寄越せというのじゃっ」
ふむ、そこまで言われては仕方ない。
俺は重い腰を上げる。
「わかった、じゃあ、行くぞ」
「それでいいのじゃ」
そして、魃は持参の紙袋を持って俺に続く。
「荷物は置いていってもいいだろ。すぐ戻ってくるし」
「いいんじゃ」
本人が言うなら仕方あるまい。コンビニの袋を使わない配慮とかだろうか。
流石魃、環境のことも考えているのか。
感心しながら一階に降りて靴を履く。
扉を開けると、やっぱり雪が降ってて寒い。
「しかしお前さん。そんなに甘いモンが食いたかったのか」
「なっ、何を人が食い意地張ってるみたいに……」
「だってそうだろ。甘いモン食いたくてこの寒空の下って……、お前さん」
言った瞬間、魃の顔が真っ赤に染まり。
「っ――!」
「ぐえっ」
そしてキレた。
何か布のようなものに巻かれて俺の首が絞まる。
魃の両手がその布の両端を掴んで引っ張っている。
魃が、紙袋の中から出した何かだ。
「馬鹿っ! 阿呆! 死ねッ! ……やる!」
……やる?
魃は手を離してくれたがやるって何をくれるんだ?
と、状況を確認してみると。
魃に置いてかれた布のようなものは。
「これ、襟巻きか」
「……悪いかの。襟巻きで」
「いや、悪くはないけどな」
「……なら、いいじゃろ」
「手編みか?」
「悪いかの」
「悪くはない」
いつの間に編み物ができるようになったのだろうか。
ちゃんとした襟巻きが俺の首に巻かれている。
耳まで赤い魃は、そっぽを向いてこちらを見ようとしない。
「あー……、魃さんよ」
しかし、これを渡すためにわざわざここまで、って事か。
部屋で渡せばいいものをとも思うが、なるほど、これが風情かとも納得する。
そして、俺はふと先ほどのことを思い出した。
「なんじゃ」
「……嬉しいぞ。マフラー貰ったのも、お前さんが編み物できるようになったのもな」
「ぬ……」
魃が、ちらりとこちらを見る。
「ばーか」
「へいへい」
早足で歩く魃を追うと、決してこちらを向かないのに、手は差し出してくる。
俺は魃の手を掴んで、隣に並んだ。
「お主は阿呆じゃ。大馬鹿者」
「そりゃすまんかったな」
「ふん、本当にこんびにすいーつは買ってもらうからの」
「わかりましたよお姫様っと」
白い息を吐きながら俺は答える。
「まったく、困った奴じゃお主は」
魃は呆れたような声を上げた。
「本当に、まったく……。阿呆で、馬鹿で救いがたくて」
「おい」
「でもあったかいからお主は好きじゃ」
横顔を見るとさっきまで不機嫌だったのにもうにへらと締りのない笑みを浮かべていて。
「……こういう日に一人なのは、寒いからの」
「寒いのは困るな」
「そうじゃ」
こういう日、か。今日を含めて今年も残り二日。確かに、これから正月が明けるまで一人なのは寂しいかもな。
「今日は泊まってけよ」
「いいのかの?」
「寒いのは困るからな」
「そうじゃな。では、精々ぬくぬくとするがよいわ」
―――
仮免とったりと年末効果で鼻血出そうなくらい忙しかったです。
忙しさのあまり十時に寝るいい子になってました。
そしてクリスマスのことを完全に忘れていました。パソコンの右下の日付が12/26になってから前日がクリスマスだった事実に気が付く。
多分忙しさと、数日続く半端ない寒さからのちょっと遭難しかけた雪に、何故か今日雨振る始末でそれどころじゃなかったせいだと思います。
一昨日はあまりの吹雪に道端で小学生が遭難してました。とりあえず近くの店まで連れて行ってご両親に電話して迎えに来てもらいましたが、黒い上着が雪で真っ白だったので雪男に助けられたということになってないか心配です。
返信
wamer様
ありがとうございます。
内定取れたんであとは免許だけということで一安心です。
確かに、社会人になって落ち着くまでは色々と大変かもしれませんね。
まあ、でも何とか頑張ってみたいと思います。今のところ筆を置くという選択肢もありませんし。首が回らなくなるどころかねじ切れるくらいまでは。
がお~様
実際に名づけた順は藍音、銀子、にゃん子ですね。
にゃん子は地獄に来てからの名前で、生前はただ猫と呼ばれておりました。
つまるところ、薬師のネーミングセンスは順当に落ちてきてます。
これ以上落ちて一体どこに行き着くのか。げろしゃぶとかそういう領域になるんですかね。
月様
自分は後は免許ですね。路上運転は非常に恐ろしいので泣きが入ります。
受かった身で無責任に頑張れと言うのもあれなので、自分は草葉の陰から月様を応援しております。
しかし、薬師のやったことは本来であればお嫁にいけないレベルなので責任を取ったらいいと思います。
まあ、多分昔の薬師が矯正されずにパワーアップしたから今の薬師があるんでしょうね……。
通りすがり六世様
しかし、人類のエロスへのリビドーを鑑みるに、喫茶店の店主という極めて限定されたシチュエーションの本とかもあるかもしれませんね。
ケモノ系はいいですよね。人間本来の耳のある部分がどうなっているのかが永遠の命題の深いジャンルです。
しかし、ケモノ度合いがどのくらいまで許せるかで派閥争いが起こる恐ろしいジャンルでもあります。
それにしても、地獄の本屋に行けばもう巨女とか雌ドラゴンとかあらゆるジャンル完備してそうで怖い。
最後に。
それでは皆さんよいお年を。