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No.31710の一覧
[0] 【短編ネタ】なのはとシュテル[この小説はPCから投稿されています](2012/02/25 12:47)
[1] フェイトとレヴィ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/06 22:47)
[2] はやてとディアーチェ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/11 09:35)
[3] 三人娘とマテリアルズ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/20 10:28)
[4] なのはとシュテル2[この小説はPCから投稿されています](2012/10/20 16:34)
[5] フェイトとレヴィ2[この小説はPCから投稿されています](2012/12/15 09:01)
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[31710] 【短編ネタ】なのはとシュテル
Name: この小説はPCから投稿されています◆955184bb ID:c440fc23 次を表示する
Date: 2012/02/25 12:47
 それは有り得たかもしれない可能性。闇より生まれし三つの存在。彼女達がもしも消え去るのではなくそのまま生存したら? 自分達の基となった少女達と共に生活しただろうか? これはそんなIFの世界のお話……





「行くのですか?」

「うん、これからはミッド暮らし」

「……そうですか。では、その間にこの街を私達が闇の世界へ変えておきます」

「にゃはは、それは困るなぁ。出来れば笑顔の絶えない街にして欲しいんだけど」

 なのはの苦笑に彼女とそっくりな顔をした少女―――シュテルは無表情で素っ気無く言葉を返す。

――――私達の目的は以前にも話した通りです。それが変わる事は有り得ませんので。

 シュテルの返答が実にらしく、なのははそれに苦笑を更に深めるのみ。だがなのはは知っている。シュテルやディアーチェ(通称ディア)はともかく、レヴィは既にそんな事を忘れて日常を謳歌している事を。そして残る二人もこの数年間ですっかり海鳴暮らしに慣れ、この街が気に入っている事も。
 今もこう言っているが本心からそれを言ってはいない。そうなのはは分かっている。伊達にこの数年間寝食を共にした仲ではないのだ。既に家族も同然の関係。そうなのはは考えているのだから。

 なので何の不安もなくミッドチルダへ行く事が出来る。きっと先にミッドへ引っ越したはやてやなのはと共に今日旅立つフェイトも同じ気持ちだろうと考えて。最後には笑顔でシュテルへ告げた。自分の偽らざる気持ちを。

「じゃ、お母さん達の事頼んだよシュテルちゃん。私の分まで可愛がってもらってね」

「いいでしょう。貴方が帰ってくる場所を奪うのも一興です。この家の者達が貴方の事を忘れるようにしてみせます」

 その言い方になのはは再び苦笑するもどこか寂しそうな表情を浮かべる。こんなやり取りももうしばらく出来なくなる。もうこの数年間当たり前のように交わしてきたのだ。既にシュテルと会話する事が日常となっている自分に気付き、それが嬉しくもあり同時に悲しさも抱いたのだろう。
 すると、そんな彼女の気持ちを察したのかシュテルは不敵に笑ってこう言い切った。それは表面上こそ冷たくあしらうもの。しかし、シュテルも気付かぬ内にその本心が出てしまったのだろう。その最後に彼女はらしからぬ言葉をつけてしまった。

――――ですので早く行ってください。精々帰る場所がなくならないように祈る事ですね、なのは。

 その言葉に驚きを見せるなのはへシュテルは手を振って送り出そうとする。だが、なのはは一向に動き出す気配がない。そう、シュテルがなのはの事を名前で呼ぶ事は今までなかったのだ。いつもなのはだけは”貴方”や”オリジナル”と呼んでいたシュテル。それが海鳴を離れる時になって初めて呼んだ事。それに驚いていたなのはだったが、その事へ思いを馳せた瞬間思わずしゃがむとシュテルの体を抱きしめた。

 それに微かな驚きを見せるも、シュテルはそれでも冷静になのはへ問いかけた。どういうつもりかと。その対応がシュテルは先程の言葉を意識して言った訳ではないとなのはへ教える。それが余計に嬉しく思えたなのははシュテルの体を抱いている腕へ少しだけ力を加える。

「……そろそろ答えを聞かせて欲しいのですが」

「あのね、シュテルちゃんが名前を呼んでくれたのが嬉しいんだ」

「…………呼びましたか?」

 なのはの発言に珍しくシュテルは目を見開いた。それだけ驚愕する内容だったのだ。彼女としてはなのはの名前を呼んだ気はなかったのだろう。いや、もしかすると呼んだ事自体が無意識だったのかもしれない。とにかくシュテルはやや慌てながらも問いかける。それになのはが無言で頷いた事を受け、完全にシュテルは自分の失態を悟った。
 と、そこでシュテルはある事に気付いた。先程からなのはが一言も喋らない事に。その理由を考えた彼女はすぐにそれに当たりをつける。それはあの戦いから数年間共に過ごしていればこその予想。

――――泣いているのですか? つくづく分からない人ですね、あなたは。

――――だって一緒に暮らすようになって初めて名前呼んでくれたんだよ? これでやっとシュテルちゃんと友達になれたんだもん。嬉しくて涙だって出ちゃうよ……

 涙声のなのはにシュテルは呆れるでも驚くでもなく、ただ「そうですか」としか言わなかった。だが、その腕が静かに動きなのはの頭へそっと置かれる。それを感じ取ってなのはが疑問符を浮かべた。それを見越しているのだろう。シュテルはそのままあっさり告げる。

「それにしても泣く程嬉しいのですか? では、これからは名前で呼んであげましょう。ただし貴方のいないところで、ですが」

「え~? 出来れば私がいるところでも呼んで欲しいんだけど。それに私がいない場所じゃ私は泣かないよ」

「そうでしょうが貴方がいる場所ではやめておきます。その度にこうされては敵いませんので」

 微かに笑いながらシュテルはなのはへそう告げた。そこに若干の照れ隠しを見てなのはも小さく笑ってシュテルから離れると涙を拭う。そんななのはを見たシュテルはため息を吐いて部屋のドアを開けたまま背を向けた。これ以上見ていられないと判断したのだろうか。しかし、なのはは見た。その視線が一瞬時計へ動いていた事を。
 そこからシュテルはフェイトとの待ち合わせ時間を気にしたのだろうと理解し、なのはは微笑んで立ち上がる。どこまでも素直ではない優しさと態度に内心で苦笑してなのはは傍に用意していた荷物を手にした。

 そして背を向け続けるシュテルの後ろを通って部屋を出る。その際、出立の言葉として一番いいであろうものを投げかける事にした。しばらく帰ってこれない場所を自分に代わって守ってくれる姉妹のような友達へと。

――――じゃあ行ってくるねシュテルちゃん。絶対また帰ってくるから。その時は一緒に出かけよう。

 それにシュテルは何も返さず無言を通す。なのはもどこかでそんな彼女の反応を分かっていたのだろう。それでも少し寂しそうに表情を変えながらゆっくりと歩き出す。その姿が階段へ近付きそのままその感触を噛み締めるように一階へ向かって降りていく。自分が生まれ育った家を出る事を名残惜しんで。

 その足音が聞こえなくなるのを待ってシュテルは静かに階段へ振り返った。当然ながらそこにもうなのははいない。だからこそシュテルは告げた。誰もいないからこそ言える自分の本音を。

――――その約束は期待しないで待っていてあげますよ、なのは。

 その言葉はなのはの耳には届かない。だがそれでいいのだろう。シュテルはその場でそのまま立ち尽くした。なのはが家を出ていく音が聞こえるまでずっと一人で。やがて彼女もその場から離れて動き出す。その彼女がいた足元には何か水滴のようなものが落ちたような跡が残されていた……





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なのはとシュテルの別れ話……と書くと妙な感じになりますがそんな内容でした。こういう話は苦手なのですが、少しでも”いいなぁ”と感じてくだされば幸いです。あと、短くて申し訳ありません。


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