「――それでは麻帆良中の皆さん、いただきます!」
「「「いただきまーす!」」」
ネギの号令の元、大広間に集った麻帆良中の生徒達が唱和する。
時間は、昨日の木乃香の誘拐未遂事件の翌朝である。
3班の卓に着いていた千雨も、当然朝食中である。
(おいしい)
千雨は修学旅行に出される物としては、かなり上級の朝食に、密かに舌鼓を打っていた。
「う―……昨日の清水寺の滝から記憶がありませんわー……」
雪広あやかが、未だふらふらとする頭を押さえて言う。
「折角の旅行初日の夜だったのに、悔しーっ!」
その言葉を聞きつけた、隣の卓の明石裕奈も言う。その対面では、佐々木まき絵が寝ぼけ眼を擦りながら、朝食を突いている。
一晩経って大分酒気も抜けたのか、皆朝から随分とテンションが高い。
そんな彼らを尻目に、千雨は淡々と食事を進めている。その後ろで、何故か顔を真っ赤にした刹那が、木乃香によって追い掛け回されていた。
「何、あれ?」
「あんな桜咲さんの顔、初めて見るねー?」
「昨日の夜、何かあったのかなぁ?」
「くぅ~、今晩こそ寝ないよーっ!」
いつもと違う一面を見せるクラスメートの姿に、他の者達は興味津々であった。
「おかわり」
彼女達の横で、千雨はもう一杯ご飯を要求していた。
※
朝食後、ネギ争奪戦に敗れた雪広あやかが打ちひしがれていた。
「ああ、ネギせんせぇ~……。およよ~」
千雨は、およよ、と泣く人間を初めて見たので、あやかをしばし興味深げに観察していた。
因みに、他の班員は、そんなあやかを苦笑しつつ宥めている。
「委員長、奈良での班別行動とはいえ、目的地は大体同じだ。向かう先次第では、ネギ先生のいる5班とブッキングする事もあるんじゃないのか?」
千雨がそうあやかに提案すると、涙を流していたあやかの目がかっと見開かれた。
「長谷川さん、ナイスな提案ですわ!」
瞬時に復活を果たしたあやかが、立ち上がりながら叫んだ。
「目指すは『偶然の再会』!私の愛の力にかかれば、そんな演出もお茶の子さいさいですわ!待っていて下さいまし、ネギ先生!貴方のあやかが今行きますわ~!」
「……いいのかな?班別の行動って、寧ろそう言うブッキングをしないために決められたルートがあるんじゃないの?」
村上夏美がこそっと千雨に耳打ちするが、千雨は意にも介さない。
「村上、あの委員長を止められるならば、頑張ってみてくれ」
「いや、半ば嗾けた千雨ちゃんが言う事じゃないよね?」
平然とのたまった千雨に、朝倉和美の突っ込みが入った。
「まぁ、でも、多少の寄り道程度なら他の先生も大目に見てくれるよね。折角の修学旅行なんだし、面白そうな方がいいじゃん?」
だが、突っ込みを入れた当人も、すぐに千雨の言葉に乗っかる事を明言する。
「那波。お前はどう思う?」
千雨が残った班員である千鶴に尋ねた。
「んー……。私も、どちらかと言えば楽しい方がいいかな?」
「……ちづ姉がそう言うなら、私も」
少し渋っていた夏美も。結局は賛同の意を表した。
「なら、今日の行動は、一応のルートを辿りつつ、委員長の勘「愛ですわ!」……愛に従って動く、と言う事でいいか?」
最終的な決を何故か千雨が取ったが、他の者達からは反対の声は出なかった。
※
「本当に見つけるとは思わなかったよ……」
和美が疲れた様な声で言った。
「流石はいいんちょ、って言っていいのかな、これ?」
その隣の夏美もまた、疲れを滲ませた声色で言う。
因みに千鶴はいつもの如く「あらあら」と聖母の様な笑みを見せている。
そんな彼ら3班の班員達の視線の先で、明日菜とあやかが、盛大に罵り合っている。
「何であんたがここにいんのよ!」
「あ~ら、何を吠えているのかしら、このお猿さんは。偶然ですわ、偶然。いえ、もうこれは運命と言ってもいいのかもしれませんわ!神は私とネギ先生の間を祝福してくれているのですわ!」
「何言ってんのよ、あんた。ばっかじゃないの!?これだからショタコンは!」
「オジコンに言われたくありませんわ!」
「何よ!」
「何ですの!」
明日菜とあやかは、そのまま取っ組み合いに移行した。
あの後、行動を開始した3班は、あやかの「こちらからネギ先生の愛らしい気配がしますわ!」との言葉に従い、大仏殿のある奈良公園へと来ていた。
すると、誰もが半信半疑だったあやかの愛の力が、何と本当にネギのいる5班を探し当ててしまったのである。
そこには、先客として何故か6班も合流しており、ネギ達はあっという間に大所帯になった。
6班がここにいる理由は、班長である刹那が木乃香を護衛するためであった。当初、自分一人だけで抜けるつもりだったのだが、出かけようとした矢先にエヴァンジェリンに見つかり、なし崩しで一緒に着いて来てしまったのである。
そしてそのエヴァンジェリンと言えば――。
「おおっ、見ろ茶々丸!鹿だ、鹿がいるぞ!ははは、何だ、物欲しげな顔をしおって。これか?この鹿せんべえが欲しいのか?1枚か?2枚か?ほほう、3枚か!このいやしんぼめ!む?何だ?気付けば鹿がやけに集まって……、はっ!?こ、これはまさか包囲網!?くっ、この私とした事がぬかったわ!だが畜生風情が舐めるなよ?私には頼りになる従者がって、あれ!?茶々丸!?茶々丸がいないぞ!?おいっ、どこだ茶々丸!?あっ!?こら、貴様ら鹿せんべえを狙うな!うわ!?背後からは卑怯だぞ!あ、こら、やめ、やめ、やめろって、あーーーーー!?」
「録画モードを実行中です」
大量の鹿に包囲されてうろたえるエヴァを、木の陰から撮影する茶々丸の姿がそこにあった。
「この修学旅行で、エヴァちゃんの見方がずいぶん変わったよ」
「私も」
和美と夏美が、それぞれ頷き合った。
※
「くっ、いいんちょを甘く見てたよ。まさか私達の班を見つけ出すなんて……!」
「私達と言うより、ネギ先生ですが」
未だに明日菜と喧嘩しているあやかを見て、5班の班員であるハルナと夕映が歯がみしていた。
「あうぅぅ……」
そしてのどかはちょっと涙目になっている。
「ユエ~、ハルナ~、私やっぱり……」
「おバカ!」
「へふぅっ!?」
気弱な事を言おうとしたのどかを、本日二回目となるハルナの偽ビンタ(相手の頬の近くで手を叩き、音だけを出す物)が炸裂した。
「折角告白する気になってたのに、簡単にあきらめちゃだめでしょ!」
「そうです」
腰に手を当てて説教するハルナの横で、怪しげなジュースを呑んでいる夕映が追従する。
「のどかが頑張って勇気を出したのです。ならば、この好機を逃す手はありません」
「私達もばっちりサポートするよ!まーかせて!」
「ユエ……、ハルナ……!」
女の友情に、のどかは感動していた。
「しかし、こうも人が多くなると、やっぱりやりにくいかな?」
「心配はいりません、ハルナ。班ごとに決められたルートがあるのですから、いいんちょは私達の班にずっと張りついていられる訳にも行きません。まぁ、これが他のクラスメートならば平気でその辺りを無視して行きそうですが、規律に厳しいいいんちょならば、大丈夫でしょう」
「でも、ネギ先生の事になると、いいんちょは色んな倫理観を踏み倒していくからなー……」
「……そのことを失念していました……」
だが、直後のこの会話で、のどかはまた不安になった。
※
「鹿」
ベンチに座る千雨の目の前に、一頭の鹿がいた。つぶらな瞳で、千雨をじっと見つめている。
千雨は、手に持っていた鹿せんべえの袋から一枚取り出し、鹿に差し出した。
差し出されたそれを、鹿はまりまりと食べた。
食べ終わったのを見計らい、千雨がもう一枚すっと差し出す。
鹿は、それをまたまりまりと食べた。
その光景が何度も繰り返されていく。
すっ。
まりまり。
すっ。
まりまり。
すっ。
まりまり。
「……声かけらんねぇ」
延々と鹿に餌を与えて行く千雨を目撃したハルナが、その一種異様な光景に、ごくりと唾を呑みこんだ。
「わかっていませんね、ハルナ。千雨さんはあのような静かな佇まいですが、その実、結構楽しんでいるのですよ!」
「いや、何でわかるの!?」
「『長谷川さんマスター』を目指して日々修練を怠らない私にとってみれば、この程度造作も無いです!」
「ゆ、ユエはどこに行こうとしてるの~!?」
何故か千雨の事になると変な言動になる夕映に、のどかは目を白黒させた。
「っていうか、あの空間、何かすげぇ」
ハルナが、千雨の周辺を指して言う。
鹿せんべえをまりまりと食べさせ続ける千雨から少し離れた先で、6班のザジ・レイニーデイが、鹿を順番に並べさせて、輪くぐりをさせていた。他にも、玉乗りをしている鹿の姿もあった。
そして、その簡易サーカスのすぐ横では、いまだに鹿に囲まれて悲鳴を上げているエヴァンジェリンと、それを一心不乱に撮影している茶々丸がいる。
それらの混沌とした光景に、そこだけポッカリと空間が出来上がっていた。
「あそこは異次元だね、正に」
うんうんと頷くハルナ。
その言葉を否定できない夕映とのどかは、苦笑するしかなかった。
※
「千雨ちゃん、私達そろそろ移動するけど、どうする?」
鹿と戯れて(?)いた千雨に、和美が声を掛けて来た。
「もう少し、鹿に餌をやっていく」
「ん、わかった。じゃあ、私達は大仏殿にいるから、後で追い掛けて来てね」
和美の言葉に、千雨はこくりと頷いた。
「じゃ、また後でね。ほら、いいんちょ!いつまでも明日菜と喧嘩してないで、そろそろルートに戻るよ!」
「ええっ!?ぜ、全然ネギ先生とお話しできませんでしたわ!くぅ~、これも明日菜さんのせいですわよ!」
「何であたしのせいなのよ!良いからさっさとあっちに行きなさい!」
野良犬を追い払うような仕草で、明日菜はあやかに手を振った。
「きーっ!このお猿さんめ~!って、あっ、ちょっと千鶴さん!?え、襟を掴まないで下さいまし!?」
「あらあら、うふふ」
明日菜に再び襲い掛かろうとしたあやかを、千鶴が襟を引っ掴んでで引き摺って行った。
急に静かになったその場で、千雨はしばし鹿にせんべえを与え続けていたが、やがてそれが尽きると、鹿の頭をひと撫でして立ちあがる。
(大仏殿、だったな)
先に進んだ班員達を追うべく、歩き出した千雨だが――。
(迷った)
千雨は、広い公園内で迷子になっていた。携帯で居場所を聞こうかと一瞬思った千雨だが、よく考えると、班員のメンバーのメルアドも電話番号も知らなった。
仕方がないので適当に歩いていると、一件の茶屋が目に付いた。
(あそこで聞こう)
千雨はその茶に向かって歩き出した。やがて辿り着くと、そこには既に先客の姿が3つ。
のどか、明日菜、そして刹那であった。
「!?」
刹那は、突如現れた千雨の姿を見るなり、その場から逃げようとしたが、その手を明日菜に掴まれて失敗する。
「あ、明日菜さん!?」
「逃げてどーすんのよ?千雨ちゃんと会って謝りたいって言ってたでしょ!」
「し、しかし心の準備が……!」
何故か急にもめ出した明日菜達を見ながら、千雨は昨夜の出来事を思い出していた。
※
千雨の目の前に、野太刀の切っ先があった。
その持ち主は、桜咲刹那。千雨のクラスメートにして、『京都神鳴流』と言う、裏の剣術の使い手であり、今千雨の足元に倒れている近衛木乃香の護衛である。
「お嬢様から離れて下さい!」
刹那は、鋭くそう言った。
一方、ネギ達は突然の刹那の行動に慌て出す。
「せ、刹那さん、何を!?」
「そ、そうよ、千雨ちゃんは私達を助けに……!」
「……お二人は、長谷川さんの事を以前からご存じだったのですか?」
刹那が、視線を千雨から外さぬまま言う。この場合は、千雨の存在の事ではなく、その能力の事を指しているのだろう。
「は、はい。少し前に助けて頂いて……」
「け、剣士の姐さん、その辺で止めてくれよ。こちらの姐さんは、あのエヴァンジェリンに勝ったほどのお方なんだ。下手な事は……」
しかし刹那は、カモのセリフを最後まで聞く事無く、その途中にあった、聞き捨てならない言葉に目を見開いた。
「え、エヴァンジェリンさんに勝ったって……、あの『エヴァンジェリン』さんに!?真祖の吸血鬼の!?」
「あ、ああ……」
その勢いに気押されながらも、カモは頷いた。刹那は視線だけでネギ達にも問うてみたが、二人とも首を縦に動かして肯定する。
刹那は信じられない思いで、改めて目の前にいる少女を見る。その幽鬼の様な姿からは、『闇の福音』を倒した強者という印象はまるで受けない。
(だが)
だが、と刹那は思う。突如修学旅行に参加したエヴァンジェリン。その身に纏う魔力は、以前から感じていた物とはまるで違う。まるで、何かの枷を外された様な――。
そこまで思い至った刹那は、心に浮かんだ推測を、思わず口にしていた。
「まさか、エヴァンジェリンさんの呪いは――」
「私が解いた」
千雨は至極あっさりと言った。
(危険だ……)
刹那の思考が狭まっていく。己達を窮地に追い込んだ敵を一蹴し、尚且つ真祖の吸血鬼を倒し、英雄が掛けた呪いを解く、そんな人物を目の前にして。
(この人は、危険だ……!)
もし目の前にいる少女が、己の敬愛するお嬢様を害する存在だったらと、刹那の心は危機感と焦燥で一杯になった。
(今、この場で……!)
野太刀を握る手に、異様な力がこもる。千雨は、相変わらず幽鬼の様な気配の薄さで立っている。
(今ならば、この手で……!)
黒く染まった思考の果てに、刹那が野太刀の切っ先を千雨に突き通そうとした、その瞬間。
「ん……、あれ……、せっちゃん……?」
木乃香が、目を覚ました。
「お、お嬢様……?」
その声に我に返った刹那は、数秒前までの自分に吐き気がしそうになった。
刹那は今、己達の恩人で、クラスメートの少女を、本気で殺そうとしていたのだ。
「わ、私は……」
自分の醜さに気付いた刹那が、体をぶるぶると震わせる。
「桜咲」
刹那の耳に、千雨の言葉が届いた。
目の前の少女は、当然気付いているだろう。今、刹那が自分を殺そうとしていた事に。それでも、掛けられる言葉には何の感情も籠っていない。
顔を上げた刹那は、千雨の言葉を待った。
何を言われるのだろうか、と身構える刹那に千雨は、
「そんなに近衛が心配なら、もっと近くにいてやれ。近衛も、きっと喜ぶ」
「……え?」
あまりにも想定外の言葉を放った。
「先生、神楽坂。明日は班別行動の日だ。早く帰って、寝た方がいい」
「えっ!?あ、うん!」
「わ、わかりました!」
不意に話し掛けられたネギと明日菜が慌てて頷く。
「じゃあな」
千雨はそう告げると、静かにその場から立ち去った。
刹那は、再び木乃香に話しかけられるまで、その背中を茫然と見送っていた。
※
「あ、あの……」
昨夜の回想に耽っていた千雨は、刹那から話し掛けられた事で我に返った。
「どうした、桜咲」
「いえ、その……き、昨日は、申し訳ありませんでした!助けて頂いたのにも変わらず、あんな……」
「別に、いい」
頭を下げる刹那に、千雨の態度はいつも通りであった。
「ほら、言ったでしょ?千雨ちゃんはそーゆー事気にしないって」
刹那の後ろで明日菜が言う。
本当は気にしないというよりも気にも留めないというのが正しいのだが、千雨は特に何も言わなかった。
「それよりも、珍しい組み合わせだな」
千雨は、その場にる三人を順繰りに見やって言う。三人の共通点と言えば、「魔法を知っている」とい事ぐらいなのだが。
「また、魔法絡みで何かあったのか?」
「は、長谷川さん!?一般人がいる前で何を……!」
刹那がのどかの存在に慌てるが、千雨が何か言うよりも先に、のどかが口を開いた。
「あの、私、『魔法』の事、知ってるんですけど~……」
「え!?」
刹那の動きが固まる。
「エヴァンジェリンと戦った時に、な」
千雨が追加の情報を渡す。
「そ、そうだったんですか……」
記憶の操作も行っていない事に、若干の不安を感じる刹那だったが、のどかはそう言う事を口差がなく喋る正確でない事も知っていたので、取り敢えず納得した。
「それで、何かあったのか?宮崎は泣いている様だったが」
「あー……実はねー……」
明日菜が頭を掻きながら、千雨に事情を説明した。
「告白」
事のあらましを聞いた千雨が呟く。
「もう言ったのか?」
「ま、まだですー……」
のどかが肩を落としながら言う。緊張とドジの連発で告白する事も出来ない上、恥ずかしい姿をネギに見せてしまい、逃げて来てしまったらしい。
「諦めるのか?」
千雨が静かにに尋ねる。のどかは、しばしの沈思の後、首を横に振った。
「きっと、今言わなきゃ、今日みたいな勇気は出せそうにないですから」
のどかははっきりそう言った。
「そうか。頑張れ」
返す千雨の言葉は短い。でも、それが本当に激励なのだと知るのどかは笑顔で頷いた。
「はい、頑張ります!……明日菜さん、ありがとうございます。それに、桜咲さんもちょっと怖い人だと思ってましたけど、そんな事無いんですね♡」
「え、あ……」
「それに、千雨さんは、やっぱりとってもいい人だと思います。……何だかすっきりしました。私、行ってきます!」
そう言われた刹那が思わず目を白黒させるが、のどかはそれを気付かず、立ち上がるとネギを探す為に走り出した。
「本屋ちゃん、勇気あるわねー」
「ああ」
明日菜の言葉に、千雨は同意した。
(勇気、か……)
そして刹那は、自分よりも遥かにか弱い筈の少女が見せようとしている物の意味を、心の中で思っていた。
それは、今の自分に一番必要な物だという事は、刹那自身が最も承知していたからだ。
「所で神楽坂、桜咲」
黙ってのどかの背中を見送っていた千雨が、二人に尋ねる。
「ん?何?」
「何でしょうか?」
首を傾げる明日菜と刹那に、千雨は言う。
「大仏殿はどっちだ?」
※
奈良での一日を終えた千雨は、帰りの際にのどかの姿を見かけた。
その顔は真っ赤だったが、同時にとても嬉しそうだった。
(言えたか)
千雨は、クラスメートの勇気に、密かに敬意を表した。
と、その時、その横をネギをおんぶしたた明日菜が通り過ぎた。
「ね、ネギ先生!?あ、明日菜さん、何があったんですの!?」
目ざとくネギを発見したあやかが、明日菜に詰め寄る。
「な、何だっていいでしょ!それより、そこをどきなさいよ!」
「いい訳がありますか!」
二人はネギがいるために取っ組み合いこそしないが、舌鋒鋭く口論に入った。
(どうやら、キャパを越えたか)
ネギの様子を見た千雨が、その不甲斐なさに密かにため息を吐いた。
【あとがき】
そんな訳で、奈良でのお話でした。
色々とオリジナルな設定を盛り込みましたが、如何だったでしょうか?
多少の違和感は、どうか勘弁して下さい。
せっちゃんちょっと暴走回。本当ににギリギリの戦闘直後で気が高ぶっていた、と言うのもあるんです。本当はいい子なんですよ!
次回はラブラブキッス大作戦な回。
相変わらず押しの弱い千雨は、無理やり引っ張りだされます。
それでは、また次回。