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No.32231の一覧
[0] 使い魔は婚約者?【ゼロ魔・ネタ・三人称習作・オリ主転生・完】[ペスポチ](2013/10/22 22:49)
[1] 第1話 使い魔召喚の日[ペスポチ](2013/10/19 08:50)
[2] 第2話 虚無とガンダールヴ[ペスポチ](2013/10/06 16:04)
[3] 第3話 ゼロと小石[ペスポチ](2013/10/06 16:05)
[4] 第4話 2つの虚無の曜日[ペスポチ](2013/10/12 20:08)
[5] 第5話 フーケ[ペスポチ](2013/10/12 20:07)
[6] 第6話 『フリッグの舞踏会』の前後事情[ペスポチ](2013/10/06 16:07)
[7] 第7話 オスマン氏の判断[ペスポチ](2013/10/06 16:08)
[8] 第8話 姫殿下からの依頼[ペスポチ](2013/10/06 16:09)
[9] 第9話 旅の途中[ペスポチ](2013/10/06 16:10)
[10] 第10話 出航までの休日[ペスポチ](2013/10/06 16:10)
[11] 第11話 アルビオンへ[ペスポチ](2013/10/06 16:11)
[12] 第12話 ニューカッスルでの決戦前日[ペスポチ](2013/10/12 20:06)
[13] 第13話 脱出事情[ペスポチ](2013/10/12 20:06)
[14] 第14話 腹の探り合い?[ペスポチ](2013/10/06 16:13)
[15] 第15話 意図された宝探し[ペスポチ](2013/10/06 16:15)
[17] 第16話 竜の羽衣と飛ばすには[ペスポチ](2013/10/22 19:30)
[18] 第17話 いきなり最終話[ペスポチ](2013/10/23 15:15)
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[32231] 第5話 フーケ
Name: ペスポチ◆b06feb3c ID:874bdb7f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/10/12 20:07
「おあいにくさま。大剣なら、ケヴィンが自分で目利きをして買ったわ」
「おあいにくさま。大剣なら、ケヴィンが自分で目利きをして買ったわ」

どうしてルイズは、こっちのシナリオを簡単に崩してくれるんだと、頭をかかえたい気分のケヴィンだが、ここは頭をフル回転させる。

「いや、俺の家は、軍人の家系だ。トリステイン王国で軍人の家系といえば、貧乏だと相場が、きまっているだろう!?」

「それで、何が言いたいのよ!」

ルイズが問い詰めてくる。

「そっちの剣も欲しかったんだけど、金がなかったんだ」

「何よ! それー!」

「じゃぁ、話はきまりね」

キュルケの返答へ、素直に答えるわけにもいかないケヴィンの言葉は、

「ルイズの使い魔でもあるし、婚約者でもあるから、そう簡単にミス・ツェルプストーからの贈り物を受け取るわけにもいかないんだ」

「あらん、どうすれば受け取ってもらえるのかしらん」

ケヴィンは「大剣の購入は、ルイズがしたことにしておいてくれ」ということを購入前に頼んでおいたことを、ルイズが思い出した風に感じたので、

「えーと、この大剣を俺が受け取るかどうかだけど、ルイズとミス・ツェルプストーの間で、魔法をつかってきめたらいいのかなって」

「それって、試合?」

「いや、それだと物騒だろう。大剣をぶら下げて、ミス・ツェルプストーが早く落とせば俺がその剣を受け取って、ルイズが早くに落とせばミス・ツェルプストーは引き下がるというのはどうかな?」

「あたしならいいわよ」

そうキュルケに言われて引き下がれるルイズではない。
たとえ魔法に自信がなくてもである。

「もちろんよ! 誰が負けるもんですか!」

ケヴィンにとっては結果オーライといえよう。



場所は移動して、中庭である。
本塔の上から、二本の大剣がつるされている。
ルイズが、

「誰が、ツェルプストーの剣を落とすといったのよ」

といった具合で、サビサビな大剣であるインテリジェンスソードであるデルフリンガーが初活躍である。
万が一、ルイズの爆発魔法で折れたら、近くにあるキュルケの剣に魂が移るであろう。
本当は、デルフリンガーをさやから抜いておこないたいのだが、虚無の系統が推測通りなら、さや単体がいかれることは無い。
だから、ケヴィンは心配をしていない。
まあ、多分、大丈夫だよな? デル公。

ルイズとキュルケの間で、試合内容の詳細をきめあっている中、ケヴィンは、フーケが近くにひそんでいるのかが気にかかる。
まさか、脈絡もなくディテクト・マジックをおこなって、隠れているかもしれないフーケを探すわけにもいかない。
土の系統でもトライアングルクラスにでもなれば、足からの感覚で周囲に誰かいれば把握できるだろうけど、そこまでにはいたっていない。

ルイズとキュルケの間で、試合内容の詳細は決まったようだ。
先行がルイズで、ルイズはデルフリンガーをつないだロープを先に切れば勝ち。
逆にキュルケは後攻で、邪魔にならない程度の宝石で飾られている大剣をつないだロープを先にきれば勝ち。
いたってシンプルである。

ルイズが何の魔法をとなえたかというと、唱えている詠唱からいってファイヤー・ボールだろう。

ケヴィンは、ルイズが確実に狙えるのは、今のところ錬金だけなんだけどな、と思いつつそれを成功されると、フーケがいた場合こまるんだよな。

ルイズが詠唱を唱え終わり、杖を振るが出るはずの火の玉は出ない。
一瞬遅れて、デルフリンガーをつるしているロープの後ろの壁が爆発した。
まさしく、その壁は宝物庫の壁のはずだ。
ここで予想外のことが起きた。
爆発の余波で、デルフリンガーをつるしているロープが切れて、デルフリンガーが落ちてきた。
あぜんとしていたのは、キュルケとケヴィンだった。

「わたしの勝ちよ! ツェルプストー! これで、ケヴィンもいいわよね?」

「ああ」

魔法は失敗しているが、結果としては、ロープを切っている。
目的は達しているんだよな。
確かに、たまにはルイズの魔法も成功するんだよな。本来の意図とは違う方向で。

そんな、唖然としている感じの彼を見てルイズは、この事ものっていて、結果が違っていたのかと疑心暗鬼にとらわれたところで、巨大な攻城戦用土ゴーレムがあらわれた。

キュルケが近づいてくるゴーレムを見て

「な、なにこれ! きゃああああああ!」

悲鳴をあげて逃げ出したが、タバサは今回、風竜をつれていないので、フライで空中にあがって、まわりを眺めている。
ケヴィンは、ルイズがまだ茫然自失な状態のそばによって、

「空中に逃げるからつかまっていれ」

しっかりとルイズをケヴィンは抱きかかえて、フライの呪文を唱えるが、ルイズも恥ずかしがっている場合じゃないと、しがみついている。

土ゴーレムの肩の上には、黒いロープをかぶった者がいる。
多分、土くれのフーケだろう。
残念ながら、見ただけでは、男性か女性かさえもわからない。
こちらは、フライ中なので他の魔法は使えない。
これはタバサも同じであろう。
暗視の魔法が使えれば、フードをかぶった相手の髪の毛の色ぐらいは、わかるかもしれないが、ここは無理をする必要はない。

しかし、フーケはそうでもないかもしれない。
予言書と呼んでいるゼロの使い魔には、二本の杖を使うところの描写は無いが、注意が必要だ。

「タバサ、もしかしたら、土ゴーレムからブレッドがとんでくるかもしれないから、気をつけろ」

ブレッドとは、こぶし大の大きさの土の塊だが、硬化の魔法がかけられたように非常に硬く、まるで砲弾のようである物をぶつける魔法だ。
ケヴィンより実戦経験が豊富であろうタバサには、不必要な忠告であろうが、それは知らないことになっているので声をかけている。

土ゴーレムはまるでまわりは気にする必要もないという風に、本塔まで行き、本塔を殴りつけた。
殴りつける瞬間には、拳を鉄に変えている芸の細かさだ。
壁に拳がめり込む。
バカッと鈍い音がして、壁が崩れる。黒いロープ姿の人物は、空いた壁の穴から中へ入っていったが、先ほどのブレッドの忠告をした手前、下手に近づくわけにはいかない、ケヴィンがいた。
ルイズも、そろそろ正気にもどり始めて、

「いつまで、抱えているのよ。一旦、降ろして!」

「わかった」

メイジとしての力量に差があるのが一目瞭然なので、ルイズと一緒に少し離れた城壁の上に降りた。
これだけ離れていると、暗視も遠見のどちらの魔法でもはっきりとは、髪の毛の色はわからないだろう。
どちらにしても、この世界の人間に、破壊の杖の使い方がわかるとは思えないが。

ケヴィンの目からみると、ゴーレムの動きからすると戦場で動かした経験はあるようには思えないが、逆に普通の素人とも思えない。
少したって、土ゴーレムの肩の上に本党の中からロープ姿の人間はもどったが、土ゴーレムは魔法学院の城壁を一跨ぎして、去っていく音がするので、安全だろうと判断して、土ゴーレムがまたいだ城壁までルイズをかかえて、フライで空中移動をする。
ルイズもここでは、文句は言わない。
羞恥心よりも、目の前でお宝を盗まれたことに気がついたのである。
草原の方に歩いていった土ゴーレムは、肩に載っていたはずのメイジは、ゴーレムが土の山のように崩れていった中に消えていく。

ケヴィンは念のために、ディテクト・マジックを使用してまわりを確認するが、先ほどのメイジは魔法学院に残っているわけでは無いようだ。
これだと、あのゴーレムが崩れた土の中をもぐっていったのか、途中でフライを使って逃げて、変わり身にしたのかわからないな。


ゴーレムが崩れた土の山となっていたところへ、ルイズとタバサとケヴィンが集まると、衛兵たちがようやく見つけたのか声をかけてくる。

「宝物庫を襲った泥棒がいるようだわ。調べておいて。私たちは、ヴァリエールと、タバサとフランドル、それにさきほど逃げていったけれど、ツェルプストーが居たわ」

『逃げていった』というところに力が入っていたようだが、逃げるのも正解だろう。

「わかりました。こちらの方で処理をいたしますので、責任者から音沙汰があるまで、お部屋にいらしていただければと」

そのままルイズ達は各自の部屋へもどっていく中、ケヴィンに小声で尋ねる。

「もしかして、予言書になかったことなの?」

「……明日の夜か、明後日の朝にでも答える」

ケヴィンとしても、ルイズが現時点で必要以上の情報を持つと、どっちの方向に行くのかわかっていないので、こう言わざるを得なかった。



土ゴーレムに宝物庫を襲われてからの翌朝……
教師たちが好き勝手に言ってわめいている中で、当直の予定だった土メイジであるシュヴルーズが責任追及をされて泣き始めたところにオスマン学院長が現れた。

「これこれ。女性をいじめるものではない」

長い黒髪に、漆黒のマントが冷たい雰囲気をかもしだす若い教師が、オスマン氏と問答を始めていた。

「さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるかな?」

この一言で、まわりにそろった教師全員がだまってしまった。
オスマン氏が「責任は全員にある」と締めて「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」とたずねる。

「この4人です。すでに昨晩のうちに報告書が作られていますので、目を通してください」

コルベール氏がさっと進み出て、自分の後ろにひかえさせていた4人を指差した。
ルイズとケヴィン、キュルケにタバサである。

「ふむ……、君たちか。詳しく説明したまえ」

ルイズが前に進みでて、見たままを述べた。

「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いロープを着たメイジは、影も形もなくなってました」

「ふむ……」

オスマン氏はヒゲをなでている。

「後を追おうにも、手がかりはナシというわけか……」

それからオスマン氏は、気がついたようにコルベール氏に尋ねてた。

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたのね?」

それにあわせたかのように、ロングビルが現れた。

「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」

コルベール氏が興奮したように言うが、ロングビルは落ち着いた様子で、秘書であることを強調するように、オスマン氏に告げた。

「申し訳ありません。朝から急いで調査をしておりましたの」

「調査?」

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

コルベール氏が慌てた感じで話の続きをするように促している。

「で、結果は?」

「はい。フーケの居所がわかりました」

「な、なんですと!」

コルベール氏が、素っ頓狂な声を上げる。
ケヴィンから見ると、先に知っている内容の復唱のようにしか聞こえない。
しかし、知っている内容と違いが無いか聞いている。

「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」

「はい。近在の農民に聞き及んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのロープの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

ルイズが叫ぶ。

「黒ずくめのロープ? それはフーケです! 間違いありません!」

「そこは近いのかね?」

「はい。徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか?」

「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

オスマン氏が首を横に振って、年寄りとは思えない迫力で言う。

「ばかもの! 王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ! その上……、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた! これは魔法学院の問題じゃ! 当然我らで解決する!」

そこで一呼吸おくように、オスマン氏が咳払いをして、有志を募った。

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」

その中でケヴィンが杖を掲げる。
そして、それを見たルイズがつられるように杖を掲げた。
続いて、キュルケ、タバサと杖を掲げていく。
教師たちからは

「君たちは生徒じゃないか」

との声を上げる者はいても、自ら杖を掲げる者はいなかった。
その状況を見ていたオスマン氏から告げられた。

「彼、彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

タバサは返事もしないで、一見ぼけっと突っ立っている。
シュヴァリエは純粋に業績に対して与えられる爵位なだけに、皆驚いている。
キュルケにしてもそうであった。
オスマン氏はそれからも次々と紹介をしていく。
キュルケはゲルマニアの軍人の家系で、炎の魔法も強力と紹介された。
ケヴィンは軍人の家系で、ブレイドの腕は確かであると紹介された。
ルイズは、ケヴィンを呼び出したとの逸話をしているが、本来なら貴族であってもドットなので、物珍しいだけだ。

「この4人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」

オスマン氏はそういうが誰もでてこない。
そして、4人に向きなおって、

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

4人は直立して「杖にかけて」と同時に唱和する。

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」

「はい。オールド・オスマン」

「彼女たちを手伝ってやってくれ」

ミス・ロングビルは頭を下げた。

「もとよりそのつもりですわ」

オスマン氏と、コルベール氏からは事情を聞きたそうにケヴィンに目を向けていたが、まわりに教師がいる手前、それもできなかった。


用意された馬車は屋根ナシでいつ襲われても、すぐに飛び出せるようにということで、このような馬車になった。
馬車の御者は、道を知っていることもありロングビルが行うことになる。
馬車で進み始めて、少しばかりたったところで、ケヴィンが語りかける。

「ミス・ロングビル」

「なんですか?」

「魔法学院で話した時の、農民の特徴を覚えていますか?」

「急いでいたもので、細かいところまでは覚えていませんが、普通の農民のようでしたけれど」

「ずっと、考えていたんだけど、もしかしたら、その農民がフーケじゃないかなって思ってね」

「なんですって?」

ロングビルよりもキュルケが驚いている。
ルイズは、ケヴィンにたいして知っているのでしょうとでも睨んでいるが、口にださないだけ、まだ自制がはたらいている方だ。
タバサは相変わらず本を読んでいる。

「いや、あんなもう寝静まっている時間から、馬で4時間もかかるようなところだ。普通の農民が、幻獣や獣がいそうな、そんなあたりを歩いていると思うかい?」

「そ、そうですね。そうすると、その農民がフーケであると」

「少なくとも単なる農民ではなさそうだね。やっぱりフーケと考えるのが自然だと思うのだけど、皆はどう思う?」

キュルケと、ロングビルは同調するように、

「そうね。ケヴィンの言う通りだと思うわ」

「そうですね。顔をしっかり覚えておけばよかったですわ。確か髪は金色ですが短めで、面長だったのは覚えているのですが、眼の色は……青色でした。もし変装していたのなら、服はあてにならないでしょう?」

ルイズは、正体を知っているのでしょうとでも視線をなげかけながら、

「そうだね」

と短く答え、タバサはあいかわらず本を読んでいる。

「問題は、なんでわざわざ、事件のことで聞きまわっているミス・ロングビルの前にあらわれたかだけど……『破壊の杖』の使い方がわからなかったんだろうなぁ」

「あら、なぜ知っているのかしら?」

「オスマン氏に興味本位できいたことがあったんだけど、あっさり教えてくれた。使い方がわからないって。魔法学院の歴代の教師陣でもわからなかったものが、フーケがいくら優秀なメイジでもわからなかったんじゃないのかなってね」

ケヴィンにとって、魔法学院と今までのやりとりから、フーケの正体と確信したロングビルに、ゴーレムをさすがに一回はだしてくるだろうと思っている。

「それで、ロングビルにも土メイジとしてきいてもらいたいんだけど、こんな作戦はどうだろうか?」

まわりに土ゴーレムへの対策の話をしていく。
特に反論は無いというか、問題は、

「ケヴィンの精神力が続くか?」

というところにあったが、

「その時は撤退をすればいいさ。俺たちの目的はあくまで『破壊の杖』の奪還であって、フーケを捕まえるのは、顔もわかったことだし、あとは魔法衛士隊にでもまかせればよいだろうさ」

と気軽に答えるケヴィンにルイズは不服そうである。
そんなルイズをみながら彼は、

「精神力をためておくのに、少し寝ておくさ」



ケヴィンがおこされたのは、馬車では通れない、細いわき道の前であった。
小道では、一応、襲われたときのために一番前を歩くのはシュヴァリエであるタバサで、その後ろに案内役であるロングビル、次にキュルケ、ルイズと続いて、最後方はケヴィンが歩いている。
最初、キュルケは文句を言っていたが、

「昨日の試合、わたしの勝ちよ!」

と高らかに張ろうとする胸がかわいそうなルイズを見て、不憫に思ったのかキュルケもしぶしぶながらしたがっている。
この道中だけだろうが、またそのうちキュルケはケヴィンにちょっかいをかけてくるだろう。



一向が薄暗い森の小道を行くと開けた場所が見える。
魔法学院の中庭ぐらいの大きさの中に、廃屋があった。

フーケが使い方を知りたいのなら、誰かを捕まえて人質にするのが一番楽だろうとの話になっている。
だから全員で行動するというのが趣旨だ。

一応、念のため、土では一番レベルの高いロングビルが、広範囲に『ディテクト・マジック』をかけながら、廃屋まですすんでいく。
廃屋の中もロングビルがディテクト・マジックでワナなどを探していくが、当然のことながらロングビルがフーケなのでワナが無いことは知っている。
廃屋の外にいるのは、初動が必要なケヴィンに、まだ『破壊の杖』をみたことは無いロングビル。
廃屋の中に入って探すのは、1年生の時に宝物庫の見学で知っている他の3人が探している。
途中、ロングビルが

「辺りを偵察してきます」

と言って、森の中に消えた。

少しばかり時間がたち、廃屋の中から

「あっけないわね」

とキュルケの叫び声がすると、それに呼応したように土ゴーレムができつつあるので、

「ゴーレムがでた!」

とケヴィンが叫ぶ。
完成した土ゴーレムは、昨晩よりひとまわりほど小さく25メイルほどだろうか。
フーケは使い方がわからないと知って、やる気を失っているのだろう。

ケヴィンがべたつきやすい花びらをベースに、大量に同じものを空中に浮かばせる。
そこへ廃屋の中からでてきたタバサの風の魔法を操って、ゴーレムに絡みつかせる。
ケヴィンがそのまとわりついたゴーレムの花びらに、錬金の魔法で揮発性の高い油に変化させる。
そしてキュルケのファイヤー・ボールで、一機にゴーレムの全身に火が付く。
ここまでは、第一幕。

第二幕は、これだけであれば、土ゴーレムの特性上、地面から土を補給することにより、再生に使うメイジの精神力の消費が少ない。
そこで、土ゴーレムが地面と接触する場所に、小石を敷き詰める。
つまりは砂利を錬金で生成するのが、ケヴィンの役割だ。
その他のメンバーはどんどんと、手足を中心に攻撃をしかける。
タバサは氷の矢を、キュルケは炎の矢を、それぞれつかっている。
ルイズは、錬金の魔法を使っている。
心の中でイメージしているのは、キュルケだが、その知恵をつけたのはケヴィンである。
ルイズの錬金での失敗は、確かに爆発であるが、必ず対象物が爆発している。
このことを伝えられたルイズは、一瞬いやそうな顔をしていたのだが、

「キュルケでも思いうかべればいいさ」

と小声で伝えられた時には、

「そうね」

と本心を隠したつもりの返事のようだが、普段のうっ憤晴らしにはよかったのだろう。

そして、燃え盛る炎や、各攻撃に耐えられなくなったゴーレムが、膝をついて、土を補給しようとしても、そこも砂利の層。
しばらくためらうようにゴーレムは暴れていたが、そのうちに地面へ崩れ落ちた。

そこで、それぞれの場所で待機させていた黄竜と風竜がそれぞれやってきたので、各自があつまってくる。
茂みを偵察していたロングビルへタバサが、

「フーケはどこ?」

「ミス・ロングビル! フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」

キュルケが訪ねると

「わかりませんでした」

その間にケヴィンが『破壊の杖』を持ってみて、『破壊の杖』こと『M72ロケットランチャー』の使い方が頭にうかんでくるのを確認しただけで納得していた。



魔法学院に帰って、魔法学院長室でオスマン氏とコルベール氏へ5人から報告をした。
ケヴィンにたいしてのオスマン氏とコルベール氏にルイズの視線がちょっとばかり冷たさそうなのは気にしていないどころか、このあとの別なことで頭を悩ませ続けている。


*****
『暗視』の魔法は『タバサの冒険3』で使用されている魔法です。
『ブレッド』の魔法は『烈風の騎士姫』で使用されている魔法です。

2012.04.04:初出


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