━━━━━ 神楽坂アスナ ━━━━━
「かつてケルトの民はこのようなメンヒルの立ち並ぶ丘の地底や湖の底や海の彼方に妖精や死者達の住まう美しい世界…………“異界”があると信じていたです。
いわゆる極楽浄土や天国などの“あの世の楽園”と違い、ケルト神話において特筆すべきなのは“あちら側”でも使者は生者同様に肉体を持ち、“こちら側”と同じ姿で同じように生き続け、時には生者もまた生身の肉体を持ったまま出入り可能な場所として“異界”を捉えていたということです。
言わばそれはもう一つの世界。
またこれは中国の桃源郷や浦島太郎の竜宮城のような“異界”=“この世と地続きの楽園・理想郷”といったイメージにも近いです。
楽園伝説は他にも日本の常世や琉球のニライカナイ、ギリシアのアルカディア・アガルタ・ジパング・エルドラド・ケルトのアヴァロン・ティルナノーグ等々多数あり、その性格や意味合いも様々で非常に面白いのですが、今は置いとくです。
…………で、我々が今から向かう“魔法世界”ですが、このような意味での“異界”に最も近く、またその起源も…………」
「ゆえゆえー、聞いてないよー」
「何ですと!? 未知の場所の事前知識は重要…………っ!」
作者が“「(前略)…………(中略)…………(後略)」で端折っときゃよかった”と後悔した長文お疲れさま。
“途中で諦めたら負け”という考えが既に負け犬の発想よね。
それにしてもこれがストーンヘンジかぁ。
写真では見たことあるけど、実際に近くで見ると凄いわ。
ま、ユエちゃんがしっかり勉強してるのはわかったから、そんなことより朝御飯食べちゃいましょうよ。
「はい。“異界”についてはネギ先生がかなり力を入れて教えてくれたですから」
「ネギ先生も小さいときにダイオラマ魔法球を作ってみようかと思ったらしいですからね。
当時はお金がなかったから諦めたんでしだっけ?」
「ええ。修行の場所には丁度いいかと思ったんですが、さすがに5歳ぐらいの時分じゃ無理ですよ。
ですので小さいときは、学校がある日は“幻想空間”で主に修行をして、休日の山篭りで“幻想空間”での経験を肉体に反映させる修行をしてましたね。ずっと独りで」
「あー、だからネギは基礎ばっかりやってたちゅうわけやな。
…………俺も一度基礎からやり直した方がええんかなぁ?」
「あんなにしょっちゅう山篭りなんかに行ってたのはそういう理由があったからなのね。ネギがあんなに強くなったわけがわかったわ。
そもそもの修行に使った時間が違うということね」
コタロ君もこの旅行に来れてよかったわね。
夏休み前半で学校の宿題とネギが出したとんでもない量の課題を無事に終わらせたようなんだけど、その分だけ体は鈍ってしまったみたいで、宿題を終わらせた直後は私でもコタロ君に勝ててしまうぐらいだった。
その時は結構凹んでたわね。
「何だったら旅行が終わったら、エヴァさんの別荘借りて数ヶ月かけて鍛え直したら?
それかエヴァさんは別荘も魔法世界に持ってくるみたいだから、皆が寝てる夜に別荘へ入ってもいいし」
「それもそうやなぁ…………って、そのエヴァンジェリンさんはどうしたんや? ここにいないやん?」
「“闇の福音”が正規の手続きで入国出来るわけないでしょ。僕の故郷の村で待機中…………というか、おそらく睡眠中。まだ朝早いし。
僕が故郷の村に居た頃に書いたそこそこ大きな転移魔法陣を改造して、魔法世界までいけるようにしたんだよ。向こうに着いたら呼ぶさ。
別荘のおかげで荷物が少なくなったから楽だよ」
確かにあの大量の式神符を手で運ぶのは大変よねぇ。
「…………マスターはちゃんと一人で起きられるでしょうか?
やはり私も残った方がよかったのでは…………」
「子供じゃないんですから大丈夫でしょう。
スタン爺さんにもお願いしておきましたし」
…………そのスタン爺さんが大丈夫なのかしら。確か昼間っから酒飲んで管巻いてるおじいちゃんなんでしょう?
寝過ごしたりしなければいいけど。
それ以前に“闇の福音”が村に滞在することについてのパニックは起きなかったのかしら?
アーニャちゃんの御両親も住んでいる村らしいけど、何か事件が起こってなきゃいいけど。
それにしても魔法世界かぁ。
10年振り位ね。今の向こうはどんな感じなのかしら?
今回の旅行の予定では、まずメガロメセンブリアに到着後にナギの友人と合流。多分、ジャックだと思う。
メガロの外に出たらちびネギ達を発現させて、魔法世界各地へ転送して調査させる。回収は冬休みに再び魔法世界に訪れたとき。
その間の私達は近場の観光地を巡って異界を満喫する。
10/1には“大分烈戦争”の終戦20年を記念した“オスティア終戦記念祭”開催されるらしいんだけど、さすがにそこまで残るのは無理ね。
夏休みが終わっちゃうわ。
…………というか完璧に観光旅行ね。
まあ、元から皆で夏休みにでも京都にもう一回行こうって前に約束してたから、京都が魔法世界になったと思えばいいか。
私も前に魔法世界に居たときは観光とかしたことなかったし、時間があったらガトウさんの墓参りも行きたいもの。
それとネギとの仲をもっと進展させたい。具体的にはまた一緒の布団で寝れるぐらいまで。
ネギの恥ずかしがる気持ちもわかるんだけど、もうかれこれ一ヶ月以上もネギの温もりと遠ざかっているのよ。
そりゃあネギを抱き締めたり頭撫でたりとかのスキンシップはしてるわよ。ネギも『咸卦治癒』使ってくれたりとか髪の毛梳いたりとかしてくれるわよ。
でも、ネギを抱き枕にしてネギの温もりを感じながら眠るというのは、それらとはまた別の気持ち良さがあるのよ。
…………そういえば、向こうで泊まることになってるホテルはどうなってるのかしら?
「時間です」
…………と、ツラツラ考えてたら、いつの間にかそんな時間になってたみたい。
カラーーーン! という鐘の音が聞こえて、地面の次元跳躍大型転移魔法陣が光りだす。
って、アレ? ネギったら変な顔してどうしたの?
「…………いえ、何か知ってる気配を感じたのですが、よくよく探ってみたら違う人だったみたいなんですけど…………でも何だか気になるんですよねぇ。
(アレ、フェイトいないの? もしかして本当に殺っちゃった? …………一応、似たような気配はあるんだけど、京都のときに感じた気配とは違う気がする?)」
ふーん、向こうに着いたら探してみればいいんじゃない?
さて、それでは久しぶりの魔法世界はどうなっているのかなー?
━━━━━ デュナミス ━━━━━
「ご苦労だったな、テルティウム(改)。
………………何をしているんだ、お前は?」
何故かフードも被ったままでテルティウム(改)が柱の陰に隠れ、何やらあるところの様子を窺っている。
事前に入手した見取り図によるとあそこは確か展望台だな。入国審査の前でも街の様子を展望出来るところだったはずだ。
…………見に行きたいのか、テルティウム(改)?
だがそんな悠長な暇はない。
悪の秘密組織である私達が何故こんなところに来ているのかというと、私達の目的は地球と魔法世界を繋ぐゲートの破壊だ。
そのためにテルティウム(改)には地球からゲートに潜り込んでもらうことにした。魔法世界に到着すると同時に転移魔法を使って私達の侵入の手引きしてもらったのだ。
私は地球にはいけんからな。
「デュナミスか。…………暦君と環君も連れてきたのかい?」
「こいつらが勝手について来たのだ」
「フェイト様お一人では心配でしたので!」
「足手纏いにはなりません」
「いや、それはいいから。少し静かに…………。
厄介なのが今回の転移に混じってた」
自分の従者ならシッカリ手綱を握っておけ。
まあ、こやつらのアーティファクトはなかなか使い勝手がいいので連れて来たがな…………。
まったく…………この小娘どもは京都でテルティウムがヘマをしてから、ヤケにテルティウム(改)に対して過保護になりおって。
あの件の後始末は大変だったぞ。
それにテルティウム(改)を心配して常時小娘1人はかならずついていることになっているが、貴様らなんぞ比べ物にならぬぐらいにテルティウム(改)は強いんだぞ。
さて、それよりもゲートの破壊だ。
世界各地にある他のゲートは私達が出なくても問題ないだろうが、さすがにメガロメセンブリア本国のお膝元のゲートであるここはそういうわけにはいかないだろう。
そのためにわざわざ私やテルティウム(改)が出張ったのだ。
………………いちいち(改)をつけるのは面倒だな。
「それで厄介なのとは何だ、テルティウム?」
「ネギ・スプリングフィールド君だよ」
「何っ!?!?」
ネギ・スプリングフィールドといえば“千の呪文の男”の息子であり、京都でお前を倒した相手ではないか!?
京都で我が主の情報を近衛詠春から奪取するという目的を無事に果たしたテルティウムだが、その時の怪我が元でしばらくの間はまったく動けなかった。
というか傷がいつまで経っても治らなかったので、調整中だった別のアーウェルンクスシリーズの肉体を利用してようやく復活させることが出来たのだ。
しかし何故その少年が魔法世界に来たのだ?
テルティウムを倒した少年だということで、ネギ・スプリングフィールドについても調査しようとした。
しかし爵位級の悪魔を麻帆良に派遣したときもそうだったが、麻帆良の人間共はネギ少年についての安全と情報管理を気を配っているらしく、ネギ少年の情報はほとんど手に入らなかった。
手に入ったわずかな情報も、「麻帆良で一番強い」とか「“闇の福音”より強い」とか「むしろ父親より強い」などのガセネタばかりだった。
いくら何でもそれはないだろう。常識的に考えて。
確かに父親である“千の呪文の男”、ナギ・スプリングフィールドもまだ年端もいかぬころ戦場に出ていたらしいが、まだ10歳の若さで英雄と謳われた父親より強いなんてことはあるまい。
メガロメセンブリアはネギ・スプリングフィールドを“偉大な魔法使い”の広告塔に使おうと画策しているらしいので、おそらくその一環なのだろうな。
しかし…………嘘をつくならもっとマシな嘘をつけばいいものを。
「しかしちょうどいい!
ここでネギ・スプリングフィールドに一泡ふかせてやろうではないか!」
「…………僕達の目的はゲートの破壊だろう。
そちらを優先したほうがいいんじゃないかい?」
臆したか、テルティウム!?
確かにお前は一度は敗れたが、それは京都では足手纏いがいたからだろう。お前1人だったらあんな無様なことにはならんかったはずだ。
私達の今の戦力は私、テルティウム、月詠、暦に環。そして墓所の主の6名。
対する奴らは10人以上いるが、そのほとんどがまだ子供ではないか。しかも明らかな素人までいる始末。
周りにはゲートポートの警備兵もいるが、そんな奴らはいくらいても私達の敵ではあるまい。
もちろんテルティウムに勝ったことからネギ・スプリングフィールドは注意しておいたほうがいいかもしれんが、最悪の場合は私とテルティウムの2人がかりで挑めばいい。
もちろん本来の目的を忘れるわけにはいかないので、墓所の主にゲートの要石の破壊を頼もう。
あとは月詠達が残りを牽制しておけばいい。
「しかし現実的な話、今はまたとない好機だぞ。
入国手続き上、彼らは武器となるものを全て封印箱の中に入れており、ゲートポートを出るまで丸腰のはずだ。しかも彼らは荷物の受け取りもしていないのだろう。
携帯杖などは持っているかもしれんが、それでも戦力が落ちているのには変わりあるまい」
「…………それを言われると確かに。
どうせ今回のことでゲートを全て破壊するんだから、ネギ君達は魔法世界に残ることになる。そうなれば後で万全な状態のネギ君達と対峙することも有り得る。
それなら今仕掛けたほうがいいかもしれないね」
「そうです、フェイト様!」
「フェイト様をあんな目にあわせた連中に鉄槌を」
「ウチはセンパイと一度斬り合いたいですー。
前回は結局何もせんで終わってしまいましたからー」
「しかし騒ぎを起こす以上、長居出来ないのは確かだ。
墓所の主にはゲートの要石の破壊をお願いする。それが済み次第、襲撃の結果がどうあれ転移魔法で撤退するぞ」
「そのぐらいなら構わん」
よろしい、ならば始めるぞ。
フフフ、まさか計画を実行しようとした矢先にこんな機会に恵まれるとはな。
20年前に我らの悲願を邪魔をした英雄の息子に神罰の鉄槌を振り下ろす機会をな!
そしてネギ少年を弟のように可愛がっているタカミチや、ネギ少年の母親のことから彼に複雑な想いを抱いているであろうゲーデルに一泡ふかす!!!
そのために武器を持っていない丸腰の少年達に不意打ちかまして、用が済んだらさっさと逃げるのだ!!!
………………何だか悪の秘密組織というより小物臭の方が強くなってきた気がするが、死んだ振りをして敵の目を欺くなどを今まで散々やってきたのだ。
今更どうこう言うまい。
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少年達は景観を存分に楽しんだらしく、展望台から出てきて入国受付の方へ進んでいく。
他にも数十人ほど同じ転移で魔法世界に来た連中もいたが、それらはもう入国手続きを済ませていなくなっている。少年達が景観を楽しんでいたのも、おそらく手続きの混雑を避けるためだろう。
これで邪魔者は数人の警備兵だけになった。
まずはテルティウムが遠距離から仕掛ける。
ネギ少年は気配に敏感らしく、少しでも近づいたらバレてしまうかららしい。
出来るならここでネギ少年を生きたまま確保しておきたい。
麻帆良に封じられている我が主の封印を解くためには、器の肉親の魂と血肉があった方がいいからな。
人間は殺してはいけないので他の少年少女達はそれからだ。むしろテルティウムの攻撃が効いたら、他の少年少女達は放置してもいいだろう。
あくまで今回の目的はゲートの要石の破壊であり、ネギ少年はついでだ。その仲間など更についでのオマケにしか過ぎん。
それに向こうにいる犬上小太郎という少年は、テルティウムと月詠と知らん仲ではないらしいのでな。
というより、京都ではテルティウムと一緒にネギ少年と敵対したというのに、何故彼はネギ少年の側にいるのだ?
…………ま、いいか。
彼にも事情があるのだろう。
さて、それでは仕掛けるとしようではないか。
テルティウムが『石の槍』を準備する。殺してはいけないので頭や心臓は狙わずに肩を狙う。
肩なら即死はしないだろうし、『永久石化』で石にすればその状態で生かしておくことも可能だろう。
さあ、やるがよい。テルティウム!
あの少年に神罰の鉄槌を!!!
ネギ少年はまだ我々に気づいてすらいないようだ。
しかも真後ろから撃たれる高速の『石の槍』を避けることなど出来まい。
やるのだ、テルティウムよ!!!
そしてテルティウムの『石の槍』が放たれ、ドスッ!!! とネギ少年の右肩に突き刺さる!
突き刺さった『石の槍』は背中から胸にかけて貫通している。即死はしないだろうが明らかに致命傷だ。
フハハハハ、ネギ・スプリングフィールドよ!
君の生まれの不幸を呪うがいい。君自身は悪くはなかったが、君の父上がいけないのだよ…………フフフフ……ハハハハハハ!
“完全なる世界”に栄光あれえェェェ!!!
これでタカミチやゲーデルに一泡ふかすことが出来たぞ!
次に『石の槍』を食らっても何事もなかったようにスタスタと歩いていくネギ少年を確保して………………確保、して…………え? 何で無事なのだ?
…………。
……………………。
………………………………少し待つ。
…………少し待つが、やはり何事もなかったようにスタスタと歩いていく。
しかも『石の槍』は刺さったままだ。何故!?
明らかにアレは致命傷だぞ。それなのに何故あのように平然としている!?
周りの警備兵が突然ネギ少年に『石の槍』が突き刺さったことに驚いているが、肝心の少年達はそんなのは気にも留めていない。
いや、それよりもこのままでは普通に少年達が立ち去ってしまう!
不意打ちかますだけならまだしも、不意打ちかましたのに気づかれなかったなんてのは悪の秘密組織としての矜持が許さん!!!
「待てぃっ! 少年達よ!
…………。
……………………。
………………………………ま、待ってくれっ! ネギ・スプリングフィールドよ!!!」
「「「「「ん?」」」」」
ようやく気づいてくれたっ!!!
「…………ネ、ネギ? 右肩……大丈夫なの?」
「ん? これぐらい大丈夫だよ、アーニャ」
だから何故そんなに平然としているのだ!?
致命傷を食らっても平然としている10歳の少年と、それを見ても眉一つ動かさない少女達。いったい彼らは何の集団なのだ!?
…………その中でも赤毛の少女と犬上小太郎は、ネギ少年の肩に突き刺さった『石の槍』を見て顔を引き攣らせている。
よかった。少しはマトモな感性を持った子供もいたのか。
ズリュ…………とそんな音を立たせてネギ少年が『石の槍』を、自らの肩から無理矢理引っこ抜く。
『石の槍』が血に濡れていることからも、ダメージを与えたことには間違いないハズなのに、たちまちのうちに傷が塞がっていくのが遠目からでも見える。
まるで吸血鬼のような驚異的な再生速度だ。
「槍が小さすぎるぜ。なあ、ジェフ…………じゃなかった、ジャック。
………………あれ? ジャックでもなかった?」
「ジャックって誰だよっ!?」
テルティウムが叫ぶところなんて初めて見たな。…………調整ミスったか?
それ以前にジェフも誰だ? どこの米の国の不良警官だ?
「その声はもしかしてフェイトか。…………でも声が前より甲高くなってないかい?
ああ、ジャックは君たちも知っているはずのジャック・ラカンさんだよ。今日、僕達を迎えに来てくれているはずなんだけど………………すっぽかされたのかな?」
「フェイト!? お前フェイトなんか!?」
「…………何で迎えに来てくれる人間が攻撃してきたと思ったんだ、君は?
それと久しぶりだね、小太郎君。元気そうで何よりだよ」
「え? あの人ならやりそうじゃない?
ナギの息子である僕の力を見るために、初対面で攻撃してくるかAAクラスの拳闘士差し向けるぐらいのことはすると思うけど?」
“紅き翼”の千の刃のジャック・ラカン。
まだ生きているのか。厄介だな。
そして友人の息子にもそう言われるだけの破天荒な性格も厄介だろう。
確かに実際にやりそうだし。
「それにしても攻撃してきたのは君だったのか。
せっかくラカンさんをビックリさせようと思って、攻撃を受けても無視して皆で立ち去っていこうとするドッキリを準備してたのに…………」
「いいじゃない、結局引っかかってくれた人達がいたんだから」
「先ほどの黒ローブの
『……………………ま、待ってくれっ! ネギ・スプリングフィールドよ!!!』
という叫びはバッチリ録音出来ました」
や、やめてくれっ!
リピート再生しないでくれっ!!!
おのれジャック・ラカン! 奴の破天荒な性格のせいでこんな目に!
「…………それにしても、何でフェイトがここにいるんだい?
まあ、狙いは僕達じゃなくてこのゲートポートっぽいけど…………」
「…………その通りだよ。僕達の目的はゲートポートだ。
君達にここで出会ったのは全くの偶然だよ」
「ふーん、そのついでにたまたま居合わせた僕に攻撃してきたってことか。…………ま、別にいいけどね。
君達をわざわざ探してまで消すつもりはなかったけど、こうやって目の前に出てこられて不意打ちまでされたんだ。正当防衛という意味でも丁度いい。
過去の遺物には舞台から退場してもらおうかな」
フム、なかなかの殺気。テルティウムが危険視したのも無理はないというわけか。
しかし悪の秘密組織の大幹部を甘く見ないでもらおう。
テルティウムがローブを脱ぎ去り身構える。私も戦闘態勢になるために服を脱g「ちょっと待って!!!」…………ぬふぅん。
せっかくテンション上がって良いところだったのに、何だ少年?
「…………えと、髪の毛伸びたんだね、フェイト。
それに少し顔も変わっているみたいだし…………」
「おかげさまで…………京都で君に負わされた怪我が原因でね」
「ア……アハハハハ…………似合って、いるんじゃないか…………な?
ねぇ、小太郎君?」
「はあっ!?!? ………………そ、そうやな。ハハハハハ…………」
「? 何を慌てているんだい、君達は?」
「いやいやいやいや! 別に慌ててなんかいないよ!!!
………………服装の趣味も変わったね」
「そ、そうやな! 元から中性的な顔やったけど、ミニスカートも似合っているで!!!
…………詰め物でもしているせいか、胸も膨らんでいるように見えるし…………」
「いや、これは本物だよ。京都での怪我が治せなかったら、体ごと取り替える羽目になってね」
「「「「「…………ええ゛え゛えええぇぇっ!!!」」」」」
…………そういえばテルティウムのローブの下は、暦達と同じ服だったな。
あの服装だと肉弾戦をしにくいと思うが、何故か暦達が強く自分達と同じ服を着ることを勧めていた。
調整中だったセクストゥムの身体を流用してテルティウムを復活させたときは、あんなに落ち込んだり激怒していたのに、何故かたまに喜んでいたときもあったな。
小娘達の考えることはよくわからん。
━━━━━ 後書き ━━━━━
はい。今回から初めて投稿する話となります。
そしてミニスカフェイト爆誕。もちろん編み上げブーツも完備。
姿は暦達と同じ服装をしたセクストゥムを想像していただけるとわかりやすいです。
……………………アリですよね?
あ、環と違ってパンツはちゃんと穿いてますよ。しかも女物です。
暦達がフェイトが女の子になったのには絶望したけど、ペアルック出来るのは満更でもないという複雑な心境で服装一式を用意しました。
まあ、フェイトは元々服装には頓着しなさそうですからね。
あとデュナミス書いてて楽しいw
けどデュミナスと間違いそうになるのが困ります。