━━━━━ 綾瀬夕映 ━━━━━
魔法世界に来てから約1週間が経ちました。
ネギ先生達とは別行動をとり、アーニャさん達と一緒にアリアドネーに短期留学中という名目で性転換薬資料集めをしている私ですが、なかなか資料集めは捗りません。
普通に紙媒体のの資料ばっかりなので、私の“世界図絵”が役に立たないのです。
これはもう禁書庫に忍び込むしかないのでしょうか?
もちろんアリアドネーの授業もキチンと受けています。
私達は魔法騎士団候補生の授業を体験させてもらっていますが、超さんは通常状態では魔法を使えないので資料室や図書館に篭りっぱなしです。
魔法騎士団候補生の授業は私達が今まで受けていた地獄の修行よりも数段ヌルい内容だとは思いますが、それでも今までと違った授業なのでタメになりますね。
あ、ガンドルフィーニ先生も私達と同じ授業に参加したりアリアドネーの先生方と教育について話し合ったり、現実世界のことについて聞かれたりして、結構充実しているそうです。
…………たまに奥さんと娘さんの写真をずっと見詰めているときがありますが。
「なーーーに見てるのユエとアーニャちゃん!?
…………あ、拳闘大会の中継? “グラニクス夏季大会ミネルヴァ杯”かぁ」
「あ、コレット」
「ええ、そうです。現実世界ではこういう拳闘大会などはありませんでしたからね」
広場でアーニャさんと一緒にお茶をしつつ、小型テレビを見ていたら声をかけられました。
この人はコレット・ファランドール。私が入った魔法騎士団候補生のクラスの同級生で、私のルームメイトでもあります。
亜人なので人間とは違う耳を持っているのですが、小太郎さんとは違って長く垂れ下がった耳でした。ダックスフンドとかビーグルとかそんな感じの………………ちなみに小太郎さんは黒い柴犬。
突然ルームメイトになった私でも仲良くしてくれるような良い人ですし、クラスの成績が最下位でもめげずに授業に励む頑張り屋さんでもあります。
…………コレットみたいな亜人は魔法世界と同じく幻想。魔法世界が崩壊するのと同時にコレット達も消えてしまうことになります。
正直、コレットと仲良くなるまでは身構えていたところもあるのですが、付き合ってみると私達と同じ人間としか思えないので、次第に気にならなくなりました。
そもそも茶々丸さんが仲間にいる時点で、幻想とか現実とかは細かいことなんですよね。
しかし、せっかくこちらでコレット以外の知己も得たことから、魔法世界崩壊を阻止するための意志を固めることが出来ました。
私も性転換薬の資料集めばかりに勤しむのではなく、超さんのお手伝いもシッカリしていきましょう。
「ふーん…………新米拳闘士かぁ。相方はオコジョ妖精?
相手はベテランみたいだし、どういう試合になる…………アレ? この顔、ナギ……?」
すいません。それネギ先生です。
ネギ先生の試合を見たかったのでどこでも見れるように小型の携帯テレビを買ったのですが、ちょうど今日が拳闘士デビュー戦なのです。
せっかくなのでアーニャさんと一緒にテレビ越しに観戦します。
それとネギ先生は10歳の子供では拳闘大会に出してくれそうにないので、最初の一試合は幻術で大人verになって出場し、勝ってから正体をバラすとの事でした。
ちなみにネギ先生の相方はアルちゃんです。
相方として出ることが決まったとき、アルちゃんは「これでようやく出番が……」と感動していたそうです。メタなことを言っては駄目ですよ。
“ょぅι゛ょ誘拐犯”とかメガロメセンブリアの元老院とかのことはいいのかな? とも思いましたが、“ょぅι゛ょ誘拐犯”なら返り討ちにすればいいだけですし、元老院も直接的に仕掛けてくる理由はまだないので問題ないみたいです。
そしてコレットなのですが、お義父さま……ネギ先生の父であるナギ・スプリングフィールドの大ファンなのです。
初めてコレットの部屋に泊まったとき、飾ってあるナギグッズについて質問したら凄い勢いでお義父さまについて語られました。
…………私がネギ先生の“魔法使いの従者”であるということがバレたらどうしましょう?
何かとんでもないことになりそうなのですが…………。
私だけではなくアーニャさんや佐倉さん達も、ネギ先生の知り合いであるということは隠すように注意されています。
“ょぅι゛ょ誘拐犯”のこともありますし、お義父さま達に関する面倒事に巻き込まれるのを避けるためなのですが………………一番面倒臭そうなのがお義父さま達の熱烈なファンということが悲しいです。
バレたら絶対騒ぎになるでしょうねぇ。
…………あ、ネギ先生が重力魔法で対戦相手を潰した。妖精さんがまるで蚊トンボのように落とされました。
でもちゃんと手加減したらしく、ナニカが飛び散ったりとかはしていないようです。
「うわ、凄い。重力魔法じゃん……」
「(これでもネギは手加減しているっていうんだから反則よねー)」
あっという間に勝ってしまいました。
相変わらずネギ先生はさすがです。
『どうもー☆ 勝利者インタビューデス。ランキングでも常に上位に位置するラオ・ランコンビ!! そのベテランを下しての見事なデビュー戦おめでとデス!!
新人さんお名前は!?』
『あ、ネギ・スプリングフィールドです。こっちは使い魔でオコジョ妖精のアルちゃん』
そしてポン!と幻術を解き、子供の姿に戻ってインタビューに答えるネギ先生。
相変わらず重大事をあたかも何でもないように言い放つネギ先生! ある意味でさすがです!
ですがそこに痺れませんし憧れません!!!
魔法世界では“スプリングフィールド”という名前が爆弾になり得るといったのはネギ先生でしょう!
もっと周りの迷惑のことを考えてく「えええ「“スプリングフィールド”ですってぇーーーっ!?」っておわぁっ!? 委員長!?!?」…………み、耳が……。
そんな耳元で叫ばれても困ります、委員長。いったい何事ですか?
『はー、子供だったんデスかー………………って、え? “スプリングフィールド”と今言ったデスか!?
それはかの“千の呪文の男”と同性…………もしや血縁者!?
そういえばどこか面影が……てゆーかソックリデス!?』
『はい。ナギ・スプリングフィールドは僕の父です』
『な「ちょっ!? ナギ様の息子ぉっ!?!?」
「ああっ、委員長! テレビ見えないじゃん!」
そして私達が見ていたテレビを奪い去る委員長、エミリィ・セブンシープさん。
この反応からすると委員長も凄いナギファンのようですが…………この人ってこんなキャラでしたっけ?
私が知っていた委員長はもっとクールで落ち着いた感じの麻帆良の委員長さんみたいな…………ああ、なるほど。納得しました。
ネギ先生を前にした麻帆良の委員長さんにソックリなんですね。そんなところまでは似ないで欲しかったのですが。
「どーゆーことなんですか、ユエさんっ!? ナギ様の息子が拳闘大会に出場!?!?」
「…………それよりテレビ返してくださいです」
「お嬢様、テレビの続きを見ればわかるのではないでしょうか?」
そんな悠長としてないで委員長を止めてください、ベアトリクス・モンローさん。
…………むしろ貴女もテレビの続きの方が気になっていませんか? 地味にナギファン?
というか本当にテレビ返してください。
ネギ先生を見れないじゃないですか。
『ほ、本当にナギ・スプリングフィールドの息子さんなんデスかっ!? え、何歳なんデスか!?』
『そうですよ。少なくとも“紅き翼”の高畑・T・タカミチとアルビレオ・イマからはそう聞いてます。それにこの杖は父が残したものですし、“動く遺言”も受け取りました。
それと僕は今年で10歳です』
『高畑・T・タカミチとアルビレオ・イマ…………。
確かにさっきの重力魔法はアルビレオ・イマが使っていたものにそっくり…………ハッ!? もしやコチラのアルちゃんの名前はアルビレオ・イマから取ったのデスか!?』
『いや、ソレはただの偶然です。
この子の本名が“アルベール・カモミール”なのでアルちゃんと呼んでいるだけですよ』
『…………え? この子って男の子?
そ、それより何故ナギ・スプリングフィールドの息子さんが拳闘大会なんかに!?』
『いやー、僕って普段は現実世界に住んでいるんですけど、たまたまこっちに来てたら今回のゲートポート破壊事件で帰れなくなっちゃいましてね。
現在帰る手段を研究中なのですが、帰れるようになるまで研究ばっかりで過ごすのも不健康ですので、運動と修行がてら出場することにしたんですよ。
魔法世界を案内してくれるはずだったジャック・ラカンにはすっぽかされましたし…………』
『旧世界にっ!?
…………そういえば確か高畑・T・タカミチは旧世界で活動をしていると聞いたことが………………だから今までそんな情報が一切なかったのデスか。
あっ、もしかして拳闘大会出場の目標は、オスティア終戦記念祭で行なわれる“ナギ・スプリングフィールド杯”デスか!?』
『そうですねぇ。せっかくそういう大会があるのだから目標にしようと思います。………………父の名がついた大会ってのは少し恥ずかしいですけど。
父の名に恥じぬ戦いをしてみせますので、応援よろしくお願いしますね。それと修行も兼ねてますので、自分に自信がある強敵の人を闘技場で待ってます。ガンガンかかって来てください』
そう言い残し、手を振りながら退場していくネギ先生。
英雄の息子の突然の出現ということで、観客の人達は大盛り上がりです。
おそらく明日にはネギ先生のことが魔法世界中に知れ渡ることになるでしょうね。
そして私の周りも大盛り上がりです。
「きゃあああぁぁーーーっ! 10歳であの強さ! 本物だよ、本物! 絶対に本物のナギの息子だよーーーっ!!!
重力魔法といい、もしかして“紅き翼”の人達に教わったのかな!?」
「ナギが行方不明になったというニュースが流れたのが10年前で彼は10歳。おかしい話ではないですね」
「ナギ様御本人がいなくなってしまって久しい今…………このネギ様は迷える私達のために天が遣わしてくださったのですね!!! …………って、ナギ様の息子ということは、ナギ様は結婚なされていたというのですか!?
ああ……ナギ様は皆のモノだというのに…………でも結婚なされてなかったらネギ様がいなかったわけで………………くっ、ネギ様の母親はいったい何処の誰なのですかっ!?」
…………委員長達の目が怖いです。何だか周りにドンドン他の人が集まってきましたし…………。
隣に座っているアーニャさんと目を合わせると、アーニャさんもわかっているように頷いてくれました。
これは絶対に私がネギ先生の“魔法使いの従者”であることは言えないですね。
━━━━━ 龍宮マナ ━━━━━
ネギ先生から預かっていた全財産でネギ先生一点買いしておいたら、勝ち金がとんでもないことになった。今日は新人として出たためにオッズが高かったからな。
実はコッソリと自分でも身銭切ってネギ先生に賭けておいた。ネギ先生が負けることは有り得ないだろうから、絶対勝てる賭けをしているようなものだ。
換金した後に勝ち金のいくらかを神楽坂達や綾瀬達に生活費として送金して、更に当座の私達の生活費を残しておいたら、明日から再び全財産をネギ先生に賭ける仕事が始まる。
しかもネギ先生がオッズが圧倒的にならない程度に手加減する予定なので、これからは今日のような高倍率はなくとも、そう簡単にはオッズが急激に下がるということはないだろう。
実力がバレないように魔力や気の大半を封印すらしている始末だし。
最終的にはいったい何万……何百万ドラクマになるんだ、コレ? 明日からは1日で何試合も組むらしいし。
こうなったからには私も魔法世界に隠してあるいざという時のための財産引き出してきて、ネギ先生に賭けて儲けさせてもらうとするか。
「ん? あれは…………トサカだったか? 何やってんだあの人?」
「どうしたんでしょう?」
試合が終わり、長谷川と茶々丸と一緒にネギ先生を控え室まで迎えにいったら、今回ネギ先生が所属することになった“グラニキス・フォルテース”に所属しているトサカという男が何故かネギ先生の控え室の前にいた。
しかも何だか“信じられないようなものを見た”という顔をして遠くを見詰めているが…………何があったんだ?
「やあ、トサカさん。ネギ先生に何か用なのかな?」
「…………おう、アイツの連れの嬢ちゃん達か。
いやな…………幻術使っていたことに対して文句を言おうと思って控え室に殴りこんだんだが、何故か控え室にいたのがスカした男でもなくガキでもなくて、身長が3m近くある筋肉ムキムキのマッチョでな。
………………おかしいな。俺って最近疲れてんのかな?」
微妙な小ネタするんじゃない。
どうしてあの子はこういうどうでもいいところで人をからかったりするのかな?
それに今の表現って京都のときの………………いや、思い出すな。思い出すんじゃない、私。
女の子としての生き方なんて捨てた私だが、さすがにアレを許容出来るほど達観出来ているわけじゃない。
「…………いや、それも幻術なんだろう」
「そうだよな。アレも幻術だったんだよな。睨まれた瞬間チビっちまいそうな凄え迫力持ってたけど、アレも幻術だったんだよなぁ。
………………って、テメェラ! よくも幻術なんか使って騙しやがったな!!!」
「別に騙してませんよ。本当のことを言わなかっただけです」
おや、ネギ先生。お疲れ様。
…………ちゃんと子供verみたいだね。
「おわっ!? 急に出てくんな!!!
…………って、あー……ボウズ? マジでそのガキの姿が本当なのか? それに“千の呪文の男”の息子って…………」
「さっきインタビューで答えたことは本当ですよ。
まあ、結果的に騙したみたいになってしまいましたが、この姿だったらそもそも入団テストすら受けさせてくれなかったでしょう」
「そりゃあそうだがな…………その姿だったら門前払いしてただろーよ。
…………でも未だに俺は信じられねーよ。まさかそんな大物がウチの拳闘団に入ってくるなんて…………」
「正直な話、拳闘団はどこでもいいので辞めろと言われたら辞めますよ。
今なら何処の拳闘団でも拾ってくれるでしょうからね」
「馬鹿野郎! そんなことしちまったらウチの拳闘団が笑いモンにされるじゃねーか!
…………あーー、もうっ! お前わかってやってんだろ! 歳の割りにシッカリしてやがんなぁ。大人の姿のときは血も涙もないヤバイ奴って感じだったが、ガキの姿でも本質は変わんねーみたいだぜ」
「辞めろと言われないのなら精々頑張りますよ。とはいえ今度の“ナギ・スプリングフィールド杯”までになるでしょうけどね。
でもその間にこの拳闘団の宣伝はシッカリしますから、トサカさん達も僕達にそれなりの便宜をお願いします。ギブアンドテイクでいきましょうよ」
「…………けっ! こうなった以上それしかねぇのはわかってんだよ。
オラ、座長のとこ行くぞ。一度テメェの口から直接説明しておけ。これから客の対応が忙しくなりそうだからよ」
「了解です。
…………というわけで千雨さん達はアスナさん達への送金とかをよろしくお願いします。アルちゃんも一緒に」
「わかりました。お兄様」
了解。それが終わったら先にホテルへ戻っているよ。
今日から泊まるホテルはグラニクスで一番高級なホテルで、泊まる部屋は寝室やリビングなどの複数の部屋を使えるいわゆるスイートルームだ。これからはそこを拠点として活動していくことになる。
ちなみに長谷川名義で泊まることになっていて、ネギ先生の名前は使っていない。
宿泊費はこれからのネギ先生の拳闘士としての活躍で問題ないし、何だかんだで良いホテルというものはセキュリティもその分シッカリしているからな。
荒くれ者達が大勢いる魔法世界だが、その分荒くれ者の対応も慣れているだろう。
長谷川のような完璧な素人がいるのなら普通のホテルよりも安心出来る。
そして何よりネギ先生のファンへの対応が楽になりそうだ。高級ホテルなら従業員がそういうのはある程度弾いてくれるからな。
そもそもネギ先生の名前を使っていないからファンが押しかけてくるなんてことはないと思うが、それでも念を入れておくことに越したことはないだろう。
いやぁ、正直言って魔法世界でのナギ・スプリングフィールドの知名度を舐めていた。
ネギ先生が自分の正体をバラしてからはもう大騒ぎだ。
それこそ普通のホテルなんかに泊まっていたら、ナギファンの連中がそのホテルに押しかけてきそうな勢いだったよ。
それを考えたら宿泊費は高くとも安心出来る場所に滞在すべきだ、というネギ先生の考えは間違っていない。
…………少し気にかかるのが、寝室がいくつもある部屋を取ったので、名義上は私達全員が同じ部屋に泊まることになっているということだな。
まあ、ネギ先生が襲ってくるなんてことは思いつかないので私は別に同じ部屋でも構わないのだが、神楽坂辺りがこのことを知ったらどういう反応を示すのだろうか?
嫉妬されたりしなければいいのだが…………。
「…………相方として出場したのはいいのですが、結局は何の役にも立てませんでした」
「いや、それは仕方がないだろう…………」
「気にすんなよ、アルちゃん」
「私達が相方として出場するわけにはいきませんし、このままアルちゃんに頑張ってもらうしかありません」
「それはわかっているのですが…………」
私の肩に乗り移ったアルちゃんが沈んだ声でそう言うが、例え私が相方だったとしても同じだろうさ。
それに茶々丸が言う通り、他に相方として出場出来るのがいない。
長谷川は言わずもがな実力的に駄目だし、私はまほら武道会のような一地域でならともかく世界規模で見世物になる趣味はない。茶々丸はエヴァンジェリン関係で駄目だしな。
だいたいネギ先生の相方が女だったら、熱烈なナギファンから余計なやっかみを買いそうだ。
それと長谷川の護衛もある。
私か茶々丸のどちらかが相方として出場するとなると、長谷川の護衛は1人になってしまう。これだと何かあったときに対応出来かねない事態になり得る可能性がある。
だからこの組み合わせが長谷川的に一番安全…………じゃないか、一番安全なのはネギ先生の相方として試合に出場することだな。うん。
…………まあ、それはともかくとして、アルちゃんにはネギ先生の側に居てもらわなければならない理由が別にある。
「…………で、ネギ先生の機嫌はどうなんだ? 試合で少しはストレス発散出来たのか?」
「駄目ですね。歯ごたえがなかったせいか余計にストレスが溜まってしまいました」
「一撃で終わっちまったらしょーがねーだろうな」
「ネギ先生は大丈夫なのでしょうか?」
神楽坂達と別行動をし始めてから約1週間。日に日にネギ先生の機嫌が悪くなっていく。
特にここ2、3日が酷い。夜に飲む酒の量もドンドン増えてきてるし…………。
やっぱり神楽坂達が側にいないのが心配なんだろうなぁ。
とりあえずアルちゃんを常時ネギ先生に貼り付けておいて、オコジョ妖精得意の人間の感情を感知する魔法でネギ先生の機嫌を調べてもらっている。
ネギ先生の機嫌が最悪になってもし爆発でもしそうになったなら、何とかして神楽坂達と電話で会話させるなりしてストレス発散させるなどしなければならない。
ちなみにその旨は念報で既に神楽坂達に伝えておいた。
まだイエローゾーンに入ったばかりなのでそこまでする必要はないが、オレンジゾーンに入りそうになったら準備しなければ。
神楽坂達は神楽坂達で竜退治したり賞金首を捕まえたりして楽しんでいるそうだが、少しは私達の苦労を理解してほしいものだ。
まあ、ネギ先生の機嫌が悪かったおかげで、拳闘団にも楽に入ることが出来たのはよかったがな。
何しろネギ先生が入団するために拳闘団を訪れたら、ネギ先生の纏っている雰囲気だけで入団テストが免除になったぐらいだ。拳闘士という職業柄、他人の強さには敏感なのだろう。
それからトントン拍子で今日の出場が決まったよ。
それと“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”のために、ネギ先生の身元をバラすことになったのが上手い具合に働いてくれるといいが…………。
魔法世界救済のために“火星-水星間魔法輸送扉”を魔法世界に設置するとなると秘密裡に行なうことは出来ないだろうし、何よりネギ先生としては自分達のことなんだからと無理矢理にでも魔法世界の住人に協力させたいらしい。
なのでネギ先生が魔法世界の話題を掻っ攫って注目され、誰もがネギ先生の言うことを無視出来なくなったときに全てをバラすことにするそうだ。
それまではただの年齢の割りに強い純真な子供(笑)を演じるらしい。
もちろん混乱は起きるだろうが既に対応策を構築している以上、致命的な問題にはなるまい。
だが魔法世界の協力を得られるのならそれに越したことはない。具体的に言うとメガロメセンブリアとヘラス帝国、それにアリアドネー辺りのな。
そのためにも父親の威光を利用してでもネギ先生の発言力や影響力を大きくするようだ。
…………まあ、そんなわけでネギ先生の身元をバラしたが、それを知った各地の猛者がネギ先生に挑んでくることになるだろう。
出来るならネギ先生のストレス発散になるぐらいの生贄……じゃなかった、強敵が挑んできてほしいものだな。
━━━━━ 後書き ━━━━━
カゲタロウ逃げろーーーっ!!!
それといちいち魔法世界救済案の説明をするのはメンドイので、“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”という名前をつけて一言で済むようにしました。別に宝具が飛び出してきたりはしません。
ちなみに地球や火星に一番近い“金星”ではなくて“水星”の魔力を使うのには理由があります。
ヒントとしては“ネギの原作知識は32巻まで”です。