━━━━━ ジャック・ラカン ━━━━━
ククッ…………なるほどなるほど。
まだまだガキだが、筋は悪かねぇようだな。
ナギの息子……ネギ・スプリングフィールドが拳闘士デビューして1週間が経った。
ぼーずは1日に何試合も試合を組んで、このデビュー1週間で30連勝をしている。しかも相方のオコジョ妖精には手出しさせていないで。
使う技も最初の試合に見せたアルの重力魔法の他に、タカミチの居合い拳やら詠春の神鳴流みたいな“紅き翼”の技を使っていやがった。
俺は前に送られてきたタカミチの手紙で教えられていたからそのことについて知っていたけど、戦闘に関してはなかなかやるみてーだな。
ナギの息子の割りに魔力量が少ないみたいだけど、それをカバー出来る技術を持ってやがる。ナギとは違ったタイプみたいだぜ。
俺的強さ表でいくと1200ってところだな。
でも居合い拳とか神鳴流みたいに色んな技を使えるから、相性が良ければ2000ぐらいの相手でも負けない戦いは出来そうだ。
カゲちゃんに頼んでチョッカイかけてもらうことになっているけど、これならそこそこ良いところまで食らいつけるかもしんねーな。
それにタカミチから聞いてるあのぼーずオリジナル魔法の“モビルスーツ”って奴は一度も見ていねぇから、それがどんだけ使えるかで決まるだろう。
半年ぐらい前のタカミチの手紙によるとかなりのスピードで動けるみたいで、実際に見たらしいタカミチが“厄介”と表現していたからな。カゲちゃん相手にどこまで戦えるのかが楽しみだぜ。
ぼーずが魔法世界に来ることが決まってから送られてきたタカミチの手紙には「見ればわかる」って書いてあったが、これから面白くなりそうだ。
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…………って思ってたんだけどなぁ。
「おっと、すみません。
くっくっく…………やはりどうもパワーがありすぎて、自分をうまくコントロールできなかったようです」
「……あ…………ぐ…………」
「フム、こちらに来てから3分以上僕と戦えた人がいなかったので、少し興が乗ってしまいましたね」
カゲちゃんがぼーずの角に腹を突き破られているのが見える。
ゴメン、カゲちゃん。そのぼーずの戦闘力って1200じゃなくて、5000オーバーくらいだったわ。
カゲちゃんに仕掛けてもらってからの始めの方はまだ良かった。
カゲちゃんもさすがAAクラスといえる実力を見せていたし、ぼーずはカゲちゃんに力も魔力も速さも全て負けていたのに技術だけで互角に渡り合っていた。10歳にしたら十分だといえるな。
しかし、それが一変したのはぼーずがモビルスーツ…………“ユニコーンガンダム”とやらに変身してからだった。
変身が終わった後のぼーずはその前とはまったくの別物。縦横無尽に高速度で動き回ってカゲちゃんを翻弄しやがった。そして最後には2つに分かれた額の金色の角でカゲちゃんの腹をぶっ刺した。
よくもまあ、あんな動きをして平気なもんだな。
ブン! とカゲちゃんが振り払われて地面に落ち、ぼーずがモビルスーツを解除してカゲちゃんの目の前に降り立つ。
いや~、当初の予想とは違うことになったけど、これはこれで面白くなりそうだからいいな。
「カゲタロウさん…………あなた、“覚悟して来てる人”……ですよね。
人を“殺そう”とするって事は、逆に“殺される”かもしれないという危険を常に“覚悟して来ている人”ってわけですよね…………」
え、ちょっと待て? さすがにその台詞は予想外だぞ10歳児?
「…………まだだっ! まだこの程度ではっ!」
とはいえカゲちゃんは腹に穴開いたぐらいじゃまだ終わんねぇみたいだ。再びぼーずに影槍で仕掛けるが…………やはり腹の傷が響いているのか動きが少し鈍っているな。太い血管を傷付けたせいか、出血の量も多いし。
しかしぼーずは今までの戦いでカゲちゃんの動きを見切ったのか、楽々とカゲちゃんの攻撃を避けている。
左手で放つ居合い拳で放ち、右手のナギの杖で魔法障壁では受け止められない『斬魔剣・弐の太刀』で放ちながら虚空瞬動で接近する。
カゲちゃんは『斬魔剣・弐の太刀』を避けながらも影槍で攻撃を続けているが、それは全て避けられるか居合い拳で弾かれる。それに一度テンポが崩れたせいで不利な状況を覆せねーでいる。
こりゃあ決まったな。後はカゲちゃんがこのまま追い詰められて終わりだ。
どれ、そろそろカゲちゃん助けるか。ぼーずの力を見るために仕組んだけど、これでもう十分だろう。
それにしても…………あんな戦い見てたら俺もぼーずと戦いたくなってきたぜ。
ぼーずは“ナギ・スプリングフィールド杯”に出るみたいだから、俺もそれに出場してみるかな。
ナギとぼーずが一人前になるまでは裏のことを教えない約束していたから、その一人前になったのかどうかを確かめるのにもちょうどいい。何より面白そうだ。
幸い大会に出資してるから顔は利くし、相方はこの戦いのリベンジしたいだろうカゲちゃんにすれば問題ねぇ。
よし、決めた決めた。
「『斬魔剣・弐の太刀 百花繚乱』!!!」
「くぅっ!?」
お、そんなこと言ってる暇はねぇな。急いで止めないと。
ぼーずが放った『斬魔剣・弐の太刀 百花繚乱』をカゲちゃんが大きく上空に跳んで避けたが、圧倒的な剣戟のせいで周りの建物が崩れて土煙が舞い上がってしまい視界が悪くなる。
その土煙の中からぼーずが飛び出してきて、上空に逃れたカゲちゃんに突撃する。カゲちゃんはまだ体勢を立て直せていない。
マズイな。これで決まっちまう。
ここでカゲちゃんを殺させるわけにはいかねぇ。
「ま、なかなかイイ見世物だったが…………この勝負、俺に預からせろや」
2人の間に割って入り、ぼーずが振り下ろそうとしていた『斬岩剣』を掴み止める。
…………それにしても、マジでカゲちゃん殺すつもりだった?
今の受け止めなかったらカゲちゃんが右と左に分かれちまってたぞ。
まあ、思ったより威力がなかったので、カゲちゃんならガード出来てたかもしんねーがな。
とりあえずこれで終わりにして、決着は正式な拳闘試合で……って、ぼーずの様子がおかしいぞ。俺を見ても驚かないというか、むしろ俺を見ないでカゲちゃんだけを見続けているというか………………って、違ぇっ!?
これぼーずじゃなくて精霊囮じゃねえか!? 杖だけ本物!?
「『雷の暴風』っ!!!」
俺達の下からぼーずの声がした。
どーやらぼーず自身は土煙に隠れたまま詠唱をしていて、その代わりに本物の杖を持たせた精霊囮をカゲちゃんに突っ込ませたみたいだ。
俺としたことがまんまと引っ掛かっちまったぜ!
って、そんなこと言っている場合じゃねーな。このままじゃ俺ごと巻き込まれちまう。
というわけで『気合防御』!!!
ドカーンと『雷の暴風』が直撃するが…………やっぱり魔力はあんまり高くねぇな。このくらいならで屁でもねぇ。
そしてそのままカゲちゃんを庇いつつ地面に降り立って、ナギの杖をぼーずにブン投げて返したが難なく受け取りやがった。
「クッ…………すまぬな、ラカン殿」
「いや、気にすんな。ありゃ俺の見立て違いだったよ」
カゲちゃんは悪くねぇよ。俺もここまでぼーずが出来るなんて思っていなかったからよ。
でも楽しくなってきた。10年も隠居してたら退屈だったからなぁ。
「…………“紅き翼”のジャック・ラカンですか。“千の刃”の…………」
「“アラるぶら”~? 何だそりゃ、知らねぇな。
俺がそのアラ何とかの面子ならどうだってんだ?」
「いえ、別に。特に何かあるというわけではありません。
そんなことよりその人コッチに寄越してくださいよ。まだ戦いは終わってないんですから…………ねぇ、カゲタロウさん?」
「ぐ……ぬぅ…………」
…………“そんなこと”呼ばわりされた。
アレ? もしかしてぼーずって俺達のこと嫌いなの?
「いえ、確かに約束を守らないのは人としてどうかと思いますが、今はそんなことよりそのカゲタロウさんなんですよ。
こんな街中で不意打ち仕掛けてくるなんて舐めた事を仕出かす人を放置しておいたんじゃ、これからも面倒くさいことになりそうですからね。ここは一つ見せしめのためにも、キッチリとケジメはつけさせてもらわないと…………」
ナギィーーーっ!? お前はぼーずをどんな風に育てたんだ…………って、そういえばナギはこのぼーずを育てたりしていないな。
それにナギの故郷の村に預けてたって聞いてたが、考えてみればそこはあのナギが生まれ育った村なんだ。多少おかしくても不思議じゃねえ。
ってか、約束すっぽかしたこと根に持ってんのかよ。
いや、ホラ。メガロメセンブリアって遠いし、だりーじゃん。名前もなげーし。
「…………ム、しかし私はあくまでお前の呼びかけに応じて参上したまで。
その上で貴様に尋常の勝負を申し込んだのだから、非難される謂れは…………」
「何を勘違いしているんですか? 僕が呼びかけた内容は『自分に自信がある強敵の人を闘技場で待ってます。ガンガンかかって来てください』ですよ。
あくまで闘技場でです。こんな街中で待っているなんて言ってません。勝手に自分の都合の良いように改竄しないでください。
だいたい“尋常の勝負を申し込んだ”って言っても、有無を言わさずに無理矢理だったじゃないですか。ああいうのは“申し込む”とは言いません」
あ、あれ? そういえばそんな風に言ってたっけか?
カゲちゃんを見ても“あー、そういえばそうだったな”って感じになってる。
だからぼーずは怒ってんのか。
「これでカゲタロウさんを放置したら、僕を倒して顔を売ろうとする馬鹿が湧いてきて街中どころか泊まっているホテルにも襲い掛かってくるかもしれないじゃないですか。
僕1人なら大抵の相手は如何様にも出来るでしょうが、僕には連れもいるものでしてね。しかも一般人の素人です。その人を危険に晒さないためにも、闘技場以外で仕掛けてきた人は酷い目に遭うって実例を作っておかないと不安なんですよ。もちろん闘技場ならいくらでもお付き合いしますがね。
そこら辺のことについてはあなた達の方が経験を持っていると思いますが…………」
「…………10歳の割にはちゃんと世間のことを知っているのだな。確かに貴様の言うことは間違っていないのだが…………」
「へぇ、言いたいことはわかったけどよー、ぼーず。
じゃあカゲちゃんのことはどう始末をつけるつもりだったんだ? まさか殺すまではしねーだろ?」
「え? “死んでも恨みっこなし”が拳闘士の掟って聞きましたけど?」
「「え?」」
なにこの子、こわい。
「え、駄目なの? えーっと…………うーん………………じゃあ『石化』ではどうでしょう?
助けてくれる人がいない限り死んだも同然ですし、助けるにしても石化治療で少なくないお金がかかりますからね。それかもしくは腕一本か…………」
「…………ドッチがいい、カゲちゃん?」
「ラカン殿ぉっ!?」
そういえばタカミチの手紙で“変わった子”って表現されてたなぁ、このぼーず。
つーか朗らかにそんな2択を提示されても困るわ。
「ジャック・ラカンさんがこの試合を収めるというのなら構いませんが、それでもいきなり襲ってきたことに対してのケジメはつけさせてください。それが済んだら石化治しても文句は言いませんよ。
………………でもどうやら黒幕はそのジャック・ラカンさんのようですけどねぇ。
あ、それと街を壊した分の修理費を請求されたときは、カゲタロウさんが全額払ってくださいよ。実際街を壊したのはカゲタロウさんがほとんどですし」
「おいおい、ぼーずはホントに10歳なのかよ?」
「旧世界の子供とは全てこういうものなのだろうか? それとも父親似?
しかし、そう言われても………………いや、そうすれば少年の気は済むのか?」
「カゲちゃんマジで言ってんのか!? さっきのは冗談のつもりだったんだが…………」
「石にされてもラカン殿が治癒術師に運んでくれれば問題ないし、あの少年を納得させるためなら仕方があるまい。
それに何より…………腹の傷がマズイ。このまま押し問答していたら本気で死にそうだ。むしろ石化してもらって、そのまま治癒術師のところに運んでもらった方が良いかもしれぬ。
………………というか目が霞んできた」
え、そんなにマズイの?
顔色とかは仮面で隠れて見れねーんだけど、そういえば出血がますます酷くなっているな。場所からして肝臓でもやられたか?
━━━━━ 長谷川千雨 ━━━━━
「…………ん? おお、起きたのか、ネギ先生」
「ふあい…………おはようございます、千雨さん…………ふああぁぁ~~~……」
おーおー、大きな欠伸しちゃって。
この1週間、ずっと休み無しで拳闘大会に出っぱなしだったから疲れがあるんだろう。それとせっかくの休日なのに、街で何かの騒ぎに巻き込まれたらしいしな。
昼寝の割りにはグッスリ眠ってたし。
…………寝顔は素直に可愛いと思えるんだけどなぁ。
「そ…………ういえばさっきネギ先生宛にジャック・ラカンって人から電話あったぞ。
“敵襲以外起こさないで”って言われてたから、伝言と連絡先だけ聞いといたけど…………」
「ラカンさんが? 何て言ってました?」
「えーっと、何でも「カゲちゃんの石化治してくんねえか?」って言ってた。コレが連絡先」
「へー…………やっぱりヴィルさん直伝の石化魔法は治せなかったか。
ありがとうございます。ちょっと電話してきますね」
何かあったのか? やけに楽しそうな顔しているけど?
………………ま、ストレス解消になるなら良いか。
今日は久しぶりの休日。
今日までの1週間、ネギ先生はずっと拳闘大会に出場しっぱなしで、実に“1週間で30連勝”という拳闘団最短記録を更新した。そして明日からも更新し続けるんだろう。
それに伴って私達の財布の中身がとんでもないことになっていった。
さすがに倍々ゲームとまではいかないけど、暇だったから計算してみたら30連勝もしたら凄いことになるのがわかったんだよ。
例えばオッズ1.1倍の賭けを30連勝したら元の値の17.5倍なるんだけど、これがオッズ1.2倍の30連勝なら一気に元の値の237倍まで跳ね上がる。更にオッズ1.5倍なら191751倍だし、オッズ2倍だったら1073741824倍という色々とオカシイ数字になっちまうんだよ。
しかも賭けにも色々あって“K.O.勝ち”とか“判定勝ち”とか、オプションをつけることによって更に賭けの倍率が上がっていく。私達は“ネギ・スプリングフィールドが3分以内にK.O.勝ち”にずっと賭けてた
賭けのやり方が“ブックメーカー方式”ではなくて、“総額の再配分”だったらこんなに儲けることは出来なかっただろうなぁ。
まあ、一回の掛け金には上限があったらしく、途中からは全財産を賭けることは出来なくなったんだけど、それでもかなりの金額を儲けることが出来た。
そのおかげで金には困らない生活を送らせてもらっている。
ホテルの部屋もスイートから最上階のロイヤルスイートに変更したが、これはネギ先生の「金持ちの仕事は金を使うこと」という考えからだった。
こういうところで金を使っていたら巡り巡って、散々毟り取った賭けの元締めにも金が回るようになるからという理屈だな。
そういえばスイートルームの“スイート”って、“一式”とか“一組”って意味だったんだな。“甘い”という意味の“sweet”じゃなくて、スーツとかの語源の“suite”。
寝室とかリビングルームとか応接間とか、色んな部屋が一式あるからのスイートルーム。泊まるようになって初めて知った。こんな体験今までしたことなかったからなぁ。
でも正直に言おう。この生活は暇で退屈だ。
朝起きてシャワー浴びて朝飯食ってネギ先生に賭けて昼飯食ってまたネギ先生に賭けて3時のお茶とお菓子を堪能してもう一回ネギ先生に賭けて更にもう一回ネギ先生に賭けて晩飯食ってシャワー浴びて…………なんて生活は暇で退屈だ。
他にもホテルのマッサージ受けたり、太らないように(部屋の)備え付けのプールで泳いだりもしているが、ハッキリ言って飽きてきた。
手伝えることがあったら手伝いたい、とネギ先生と龍宮に言うぐらいこの生活に飽きてきた。
ちなみに龍宮も龍宮で、今まで傭兵として働いてきたことが馬鹿らしくなってくるくらい儲けたらしく、まるで燃え尽き症候群のような状態になっている。
…………私ってこんなに勤労精神豊かだったかなぁ?
まあ、そんな私が手伝える仕事はないみたいなんだけどさ。
アルちゃんは帰ってきたネギ先生にジャック・ラカンって人のことを調べるように頼まれたから、意気揚々として出かけていった。でも私はそんな探偵みたいな仕事は出来ないから、アルちゃんの手伝いは無理だ。
龍宮は私の護衛だし、茶々丸さんも私の護衛兼メイドという設定だし、そもそも能力的に私にはその手伝い自体が出来ない。それに私は旅行中の金持ちのお嬢様ってことになっているから、元から2人の手伝いは出来ないんだよな。
本当にコレどうしよう?
…………ネギ先生に相談してみるか。
どうせ「ゆっくりしてくれていていいですよ」とかで終わるかもしれないけど、相談すること自体が暇潰しになりそうだ。
「はい。明日もちょっと休みたくて…………いえ、ジャック・ラカンさんに呼ばれたんですよ。…………ええ、“紅き翼”のです。………………はあ、トサカさんってラカンさんのファンなんですか?
…………へぇ~、そうなんですかぁ。何だったらトサカさん宛にサインとかお願いしてきましょうか………………って…………いや、そんなに必死になってお願いされなくても、それぐらいなら別に構いませんよ。
じゃあ、明日の休みもよろしくお願いしますね」
ん? 連絡先はトサカで…………明日も休むのか?
「どうしたんだ、ネギ先生?
ジャック・ラカンて人に呼ばれたって…………面倒事か?」
「ああ、千雨さん。面倒事はもう終わったので大丈夫ですよ。
さっきカゲタロウさんって人に襲われたのでその仕返しに石にしたんですけど…………どうやらグラニクスの治癒術師には石化治療が出来なかったみたいで、石化させた僕にお鉢が回ってきただけですよ」
お前は街中でいったい何をやってきたんだ?
「それの何処が面倒事じゃないってほざいてんだ?」
「大丈夫ですって。もともとラカンさん…………父の友人が僕の力を見るために、知り合いに頼んでチョッカイかけてきただけなので、そこまで深刻なことじゃないです。
とはいえラカンさんから面白いものを見る目で見られたので、またチョッカイかけて来そうですけどね。
僕が菲さんに試合挑まれているときの状況を思い出してくれたら、それに近いですよ」
「ああ、なるほど。それなら確かに面倒だけど、命の危険とかはないな。
それで明日、ラカンさんとやらのとこに行くのか。………………病院か?」
「いえ、ラカンさんが隠遁しているところです。地図で見ると…………そこそこですね。歩いて数時間です。
今は石になったカゲタロウさんと一緒に病院にいるみたいですが、ラカンさんも有名人なせいでグラニクスに留まっていると騒がれてしまうのから、今日のうちに家に戻るそうです。
さっき病院まで来てくれって言われましたけど、今から働くのは億劫だから断りました。まだ眠いし」
“眠い”と理由で人を石のまんまにさせとくのか、お前は。
「ふーん…………となると、安全のためにも私達も一緒に行った方がいいな。
むしろ危険がないようなら一緒に連れてけ。ここの生活飽きてきた」
「え? ………………うーん、ラカンさんは遊びのつもりでも洒落にならないことをしそうな人なんですけど…………ま、いいか。
千雨さん達に何か仕出かしたら『幻想殺し』使ってこの世から消せば…………。
それに隠遁しているところは古い遺跡があるところで、オアシスにもなっているから自然を楽しむにはいいかもしれませんね」
「真ん中のところは聞かなかったことにしてやる。
…………うっし、それなら動きやすい服を準備しとくか。金持ちのお嬢様設定だったから、最近ずっとドレスばっかり着ていたからな。調子が狂ってしょうがねぇ。
このホテルといいドレスといい最初の頃は感動していたけど、やっぱり私は小市民だわ。もう普段の生活と服装が懐かしくなってきやがった」
「別に部屋の中なら服は普段通りでもいいと思いますけどねぇ。僕としては綺麗な千雨さんが見れたので眼福でしたけど。
でもホテルの部屋は勘弁してください。セキュリティとか考えるとこういうホテルが一番なんですから」
別にネギ先生に文句を言っているわけじゃねーよ。。
変な安宿だったら、そういうところなりの不満が出てくるわけだからな。
美味い飯食えて、好きなときにシャワー浴びれて、冷暖房完備でプール付き。自分が金を出したわけでもねーのに、こんな部屋に泊まれたことについて文句を言ったらバチが当たるぜ。
こんな凄い部屋はこんな機会でもない限り、一生泊まることなんかなかっただろーからな。そういう意味では良い体験が出来た。
ネギ先生と一緒にコッチの世界に来て良かったな。
━━━━━ 後書き ━━━━━
とりあえず、魔法世界の賭け方式は“ブックメーカー方式”にしておきました。
実際はどうなっているかわかりません。
それとカゲちゃん南無。
『幻想殺し』
ヘ(^o^)ヘ 『完全魔法無効化能力』を
|∧
/ /
(^o^)/ 手に入れてから
/( ) 前世をあわせて20年
(^o^) 三 / / >
\ (\\ 三
(/o^) < \ 三 修行の結果、直接触れる必要はあるけれど
( /
/ く とりあえず幻想をぶち殺せるようになりました
これで魔法世界人相手なら無敵
…………ダメだこいつ。もう何とも出来ない…………。
でも『リライト』は『完全魔法無効化能力』を応用・強化したようなものみたいですので、普通に『完全魔法無効化能力』持ってれば使えそうですよね。
あ、作中で実際には使いませんよ。そもそも『完全魔法無効化能力』自体は服が脱げるのでネギは積極的に使いません。
使うとしたら『無極而太極斬』とか無効化フィールドとかの応用の類です。