━━━━━ ジャック・ラカン ━━━━━
おうおう、随分と綺麗に光ってやがんなぁ。
あれが膨大な魔力で編まれた超大規模積層魔力障壁か。確かにあれを突破するのは面倒臭そうだ。
ようやく“完全なる世界”の拠点、墓守り人の宮殿を肉眼で確認できる地点まで近づいた。
リカードの奴が言っていたように、魔力の奔流の影響で20年前に墜落した島があらかた浮かび上がってしまっている。
歴史と伝統のウェスペルタティア王国、麗しき千塔の都、空中王都オスティア。
まあ、魔法の使うことの出来ない不毛の大地になってからもう20年間経っているんで、魔法はそろそろ使えるようになる頃だったんだが………………まさかこうやって再びオスティアが浮かんでいるところを見れるなんてなぁ。
墓守り人の宮殿までは、このままのペースで行けば残り30分ってところだが…………。
「魔力レーダーに感アリ。召喚痕多数。前方に極大規模の魔力震です」
「数はわかるか、茶々丸?」
「敵集団…………総数計測不能です。概算で50万を越えています。主に“動く石像”タイプのようです」
早速スゲェ数の出迎えがきやがった。20年前の“宮殿上空の戦い”に匹敵しやがる。
あのときはセラス達、帝国・連合・アリアドネー混成部隊に召喚魔を抑えてもらって、俺達“紅き翼”が本丸に突入したんだったな。
奴らの狙いは造物主を復活させるまでの足止めか?
自分達ではぼーずには勝てないってことはわかっているだろうから、それこそ逆転を狙うとしたら造物主を復活させるぐらいしか手はねぇだろうよ。
しっかしこの数は厄介だな。全部相手にしてたら造物主復活阻止には間に合わないぜ。
20年前のように他の奴らにアレの相手を任せて、俺達で本丸に突入するって方法は味方の数が少ないから無理だしよ。全部で二隻だぜ。もう少し時間をかければ五十隻ぐらいは用意出来たらしいけど。
…………とは言っても、魔法世界人の部隊を連れてきてたとしても、“造物主の掟”相手には戦力にはならないからいっそのこと置いていこう、っていうぼーずの考えは間違っているわけじゃねーんだよな。
俺やセラスは“造物主の掟”の簡易版を持っているから鍵持ち相手にしても戦えるけど、ぼーずの使うグランドマスターキーを含めても全部で16本しかねぇからなぁ。
ぼーずはどうやって攻める気なんだか?
「とりあえずアレらを全滅させてから考えます」
…………身も蓋も無い返答をありがとな。
「色々と調べてみた結果、いくら“造物主の掟”とはいえ万能というワケじゃないことがわかっています。グランドマスターキーを含めて所詮は簡易タイプですしね。
とりあえずアレらを全滅させて敵が沈黙したら良し。性懲りもなく再召喚してきたら………………墓守り人の宮殿ごと吹き飛ばしましょうか?」
「やめてください、ネギ君。あの宮殿にはオスティア王家初代女王の墓など、ネギ君のご先祖の墓があります。
今後のことを考えましたら、なるべく壊さないようにしていただけた方がありがたいのですが…………」
「冗談ですよ、冗談。いくら何でもそこまで乱暴なことはしません。
まあ、再召喚された場合は僕もこのグランドマスターキーで召喚魔を大量に呼び出して、召喚魔同士で戦わせたらいいんじゃないですか?
向こうがやってきてることですから、別に同じことを仕返しても問題ないでしょう。そしてその間に墓守り人の宮殿に突入します。
………………怪獣大決戦か。胸が熱くなってきますね」
「「「……………………」」」
…………テオドラやリカード、セラスの顔色が悪くなってやがる。
要するに今のぼーずの台詞って、ぼーずは50万に匹敵する戦力を簡単に呼び出せるってことだもんな。
ぼーず一人でも手に負えないっていうのに、そのぼーずが軍隊をも手に入れたら、そりゃあ焦りもするか。
「じゃ、ちょっと甲板に出ます。
僕が砲台役をやりますので小太郎君、ラカンさんは僕の壁役をお願いしますね。あ、それとそのコピー紙束も持ってきてください
アスナさん達はまだ待機していてください。タカミチとゲーデルさんはアスナさんの護衛。
残りの魔法世界人組はスヴァンフヴィートに移動。全員マスターキーは忘れずに持っていって、艦を守ることに集中してください」
「わかったで」「おうよ」
「頑張ってね~、ネギ」「いってらっしゃい、ネギ先生」
「…………私が来た意味はあるのだろうか?」「お前さんはまだマシじゃ、カゲタロウ」「本気でこれからどうすればいいのかしら……」
遂に最終決戦の始まりか。本当に20年前を思い出すぜ。
隣にいるのがナギのヤローじゃなくて、ナギの息子ってのが変な感じするんだけどよ。
ま、ずっとイイ所見せられなかったし、大人の責任ってのもあるから精々頑張るとしますかね。
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「ごめん、フェイト。僕は君の配下を倒さなきゃいけない。
それが罪というかもしれないけど、そもそも敵同士なんだからその責任を背負う必要なんかないよね」
甲板に出てみたが、敵召喚魔達はまだ遠い位置にいる。まだ豆粒ぐらいにしか見えねぇな。
そしてア~イ、キャ~ン、フラ~~~イ! と叫びそうなまでの真剣な顔を見せているぼーずだが………………言ってることはヒデェ。
…………やっぱり変なガキだよなぁ、このぼーずって。
俺に試合で勝っても俺に対する態度変わんなかったけど、普通のガキだったらもうちょっと調子に乗ったりすんじゃねぇのかね?
まあ、元々俺への態度はセメントだったんだけどよ。
羞恥心とは程遠い俺だが、さすがにナギの息子に軽蔑されたりすんのは勘弁して欲しいぜ。
パッと見はナギにホントそっくり。
でもちょっと注意して見ると、性格はナギよりはアリカ似。
そしてもっと観察してみると、結局は二人共に似てるんだよな。
あいつらに育てられたわけじゃないっていうのに、ここまでくると血なのかねぇ?
頭が良いところはアリカに似てるし、逆に馬鹿っぽいところはナギに似ている。
10歳なのにあれだけ強いってのはマジで驚いたが、ナギはもちろんのこと、世界最古の王家の血を受け継いでいるせいかアリカも結構強かったからなぁ。
あの二人の血がうまい具合に掛け合わさって、ぼーずはあんな風になったんかね?
それとぼーずのアスナやコノカちゃん達に対する執着はちょっと違和感を感じたが、よくよく考えたらそこはアリカに似てんだろうな。
それこそナギがエヴァンジェリン相手に浮気したりしてたら、アリカはぼーずみたいな反応をするだろうぜ。
………………むしろもっと酷いことになりそうか? アリカはアリカでナギにベタ惚れだったからよ。
それ考えたらぼーずはアリカの息子だなぁ…………って思っちまうんだよなぁ。
しっかし…………このぼーずは将来どうするんだろうな?
ここまでやっちまったんならもう今までの生活に戻れねーぞ。
MMもヘラスもアリアドネーも“完全なる世界”もこれからはぼーずの行動に注視するだろう………………けど、“完全なる世界”の命運は今日で終わるだろうから、奴らのことは考えなくていいな。
…………いや、それ考えたらMMもヘラスもぼーずに手を出せねーか。
特にヘラスは亜人の国だし、ぼーずと敵対しても勝ち目はゼロだ。
MMも6700万人の人間はいるが、その中でもぼーずに対抗出来るのは………………いねぇよなぁ。つかマジで“紅き翼”全員でかかっても勝てそうにねーし。
魔法世界にはぼーずに勝てる国はないから、ぼーずに喧嘩売るってことはないだろう。
ぼーずがアリカのようなことにならなくても済みそうなのは幸いだ。
もし魔法世界とぼーずが争うようになるとしたら、それこそ魔法世界の全てがぼーずを危険視したときぐらいか。
リカードもテオドラもセラスも戦々恐々としてぼーずの行動を見守っている。
今はまだ“完全なる世界”のことがあるし、ぼーず自体が敵というわけじゃないから問題になってない………………わけじゃないが、ぼーずのことは後回しになっている。
ぼーずのことを調査しなければならねーだろーし、何より手を出したら破滅するとわかっているから迂闊にぼーずへ手を出したりはしないだろう。
…………けど、ぼーずの力はハッキリ言って異常だ。いつでも自分達を滅ぼせるという状況で、MMもヘラスも冷静な判断をし続けることが出来るか?
ヘタしたら暴走することも有り得るからなぁ。
暴走してぼーずに挑んで、その結果ぼーずがキレて魔法世界を滅ぼしました…………なんて結末は勘弁して欲しいんだけどよ。
何というか…………ぼーずは強さの割には心が不安定というか、そもそも年齢的に考えたら当たり前に不安定というか………………まあ、何をするかわからないぐらいには不安なんだよな。
ぼーずの年齢を考えたら責めることは出来ないってのはわかってるんだけどよ。
せっかくぼーずのやり方次第では全てが上手い具合に収まりそうだっていうのに、一歩間違えば魔法世界崩壊に繋がりそうってのはマズイよなぁ。
ここまで関わっておいて放っておくのはさすがに………………俺が引退するのには、もうちっと時間が必要かねぇ。
「とりあえず『リライト』」
あ、始まった。
━━━━━ 長谷川千雨 ━━━━━
ネギ先生無双…………っていうか“造物主の掟”とやら無双。
50万いた敵があっという間に塵に還っていったぞ…………。
「ネギ君がビーム撃ったら、射線上には何も残らんかったなぁ……」
「しかも最初の一射目は威力調整を失敗したのかわからないけど、明らかに射線の先が荒れ果てた荒野になってたわね。
元に戻ったからまだ良いけど、もしかして魔法世界の依代の火星がむき出しになったんじゃないのかしら?」
「ネギが持っているのはグランドマスターキー。そして敵召喚魔が持っていたのは更に簡易版のマスターキーだろうから、この結果は当然なんだろうな。
しかもネギは“黄昏の御子”だから、あの“造物主の掟”の力を最大限に引き出せるんだろう」
「…………ネギ先生はいったいどこまで逝くんだろうか?」
「初めて会った頃のネギ君が懐かしい。
………………超君、6年……いや、10年前に戻れるタイムマシン作ってくれないかい?
過去を改竄するのは駄目だとわかっているけど、常識的なネギ君を見てみたいと思ってしまうのは仕方がないと思うんだ。ネギ君をあんな風にしないためには、もう生まれた頃から教育しなきゃ駄目だと思うんだよ」
「無茶言わないで欲しいヨ」
ガンドルフィーニ先生も高畑先生も遠い眼をしないでくれよ。
何だかんだいってネギ先生は二人のことを目上の人と見なしているんだから、これから頑張ってネギ先生を矯正してくれよ。
ネギ先生は公的と私的のどちらの付き合いが強いかで、その人に対する態度が全然違うんだよなぁ。
私達とは………………まあ、そういう私的な付き合いなんだけど、それと同時に教師と生徒という公的な付き合いでもある。
しかし、もちろん私達の付き合いは私的な関係の方が強い。9:1ぐらいにはな。
そういう私的な関係の方が強い人に対しては、ネギ先生は極々普通の一般人のような付き合い方をする。
目上の人や年上の人には礼儀を弁えた態度をとるだろうし、例えネギ先生の方が圧倒的に優れていても“そんなのは友人付き合いには関係ねぇ”と言わんばかりに普通に付き合う。
ネギ先生は高畑先生やガンドルフィーニ先生達のことも私的な付き合いと見なしている。
同じ麻帆良の先生同士という関係だから普通は公的な付き合いになるかもしれないけど、二人とはプライベートでも付き合いがある。
だからネギ先生は二人に対しては公的な付き合いより、私的な付き合いの方が強いんだろう。
高畑先生に至っては昔からの付き合いだ。
逆に昔からの付き合いのせいで、高畑先生に対する遠慮がないから苦労しているけどな。
要するに“同僚”というより“仲間”って認識だ。
ガンドルフィーニ先生が一身上の都合で教師を辞めたとしても、ネギ先生のガンドルフィーニ先生への態度は変わらない。そういう関係だな。
私達(そういう関係)>(越えられない壁)>高畑先生や学園長(遠慮ナシの関係)>ガンドルフィーニ先生(目上の関係)>瀬流彦先生(対等な関係)>クラスの皆(何だかんだでバカ騒ぎする関係)
私的な付き合いが強いのはこんな順だろう。
クラスの他の皆が低いかもしれないが、私達が私的な付き合いが強すぎるのに対して、クラスの他の皆は“あくまでも生徒だから”むしろ公的な付き合いが強いって感じだな。
教師としての責任を果たすためだろう。
そして逆に公的な関係が強い場合、要するにゲーデルさんみたいな人に対する態度なんだが………………“ドライ”の一言に尽きる。
例えば付き合うこと、付き合わないことで利益不利益があるんなら、相手がどういう人間なのかは関係ない。
付き合って利益があるんなら付き合うし、付き合って不利益があるなら付き合わない。
付き合わないで利益があるなら付き合わないし、付き合わないで不利益があるなら付き合う。
そして付き合うにしても、これまた相手がどういう人間なのかは関係ない。
友好的に付き合って利益があるんなら友好的に付き合うし、友好的に付き合って不利益があるなら友好的に付き合わない。
敵対的に付き合って利益があるんなら敵対的に付き合うし、敵対的に付き合って不利益があるなら敵対的に付き合わない。
…………今まで狭い村で育ってきたのが原因なのかはわからないが、そんな感じに公私で線引きを強くするところがネギ先生にはある。村社会って奴か?
まあ、大抵の人々は敵対的に付き合っても利益があるわけじゃないから、普通に友好的に付き合っているのでわかりにくいんだけどな。
でもネギ先生はどこか人を信用していない………………いや、“知らない人”を信用していないところがあるな。
まあ、“知らない人”を信用するってのは元から難しいんだろうけど、“知らない”という理由だけでその人のことを他人と認識するというか…………言葉にしにくいな。
ネギ先生が大人になるまでに少し矯正して欲しいところでもあるんだが………………アスナ辺りに言わせると“ツンデレ”の一言で終わっちまうのが悲しい。
確かに気を許した人にはトコトン気を許すところがあるから間違っちゃいないけどさ。
「墓守り人の宮殿から召喚魔が出てきました。
数は…………約5千です」
「? やけに少ないな。それは確かか、茶々丸?」
「やはりネギ先生の言った通り“造物主の掟”も万能ではないということなのでしょう。
少なくとも出力に制限はあるようですね」
「でも5千で少ないってのが、感覚が麻痺している証拠でござるな」
今度の召喚魔はさっきみたく固まって一直線に進んでくるのではなく、低空から分散してバラバラにこちらに向かってきている。
さっきみたいに『リライト』の掃射で終わるのを防ぐためだろう。
この位置関係なら敵に向かって『リライト』を撃ってしまえば、撃った『リライト』が召喚魔を消滅させた後に地表に当たってしまう。
そうすればさっきみたく火星がむき出しになってしまい、ヘタしたらそれをキッカケに魔法世界が滅びるかもしれないからな。
…………世界を救うと言ってる奴らが魔法世界を人質にとってんじゃねーよ。
『…………メンドクサイな。
小太郎君、持って来た紙束の袋開けて取り出して』
『ええけど…………コレ、ただのA4のコピー用紙やん。1000枚包みの。
印刷前の何も書かれてない奴やけど、何に使うんや?』
『紙で作ることなんて決まっているだろう。式神を作るんだよ』
『は? ………………お前が式神作れるんは知ってるけど、魔力どうすんのや?
あの召喚魔の後はフェイトとかの相手もせなアカンのやで。お前の魔力が大きいのはわかっとるけど、ある程度の力を持った1000体分の式神を作るぐらいの魔力を使ったら、フェイト達の相手はどうすんのや?』
『またあの『魔力吸収陣』とやらか、ぼーず?
確かにここら辺は自然魔力量が凄いことになってるけど、一度にそんな大きな魔力を集めるには時間がかかるんじゃねーのか?』
『大丈夫大丈夫。先日のラカンさんとの試合では見せなかった切り札その三を使いますから。あの試合場は狭くて使えなかったんですよね。
それではいきます。『固有時制御』発動………………魔力糸展開、『魔力吸収陣』敷設………………並びに“僕-金星間魔法輸送扉”開放っ!
さあ、火星と金星よ! 僕に魔力をわけてくれっ! ………………ただし拒否権は無い!!!』
『『ちょっと待て』』
ネギ先生が魔力の糸を使って複雑な魔法陣を中空に描いていく。
魔法陣と言っても平面的ではなくて立体的で、あっという間に魔力糸が私達が乗っている船の上空に広がっていった。
直径が1kmぐらいありそうだな。これは前の試合では出せなかったわ。
確か前の試合のときの闘技場の広さが直径300mだったはずだし。
それにしても“ゲート・オブ・ヴィーナス”って、金星にまで手を出しやがったのか?
いい加減に自重というものを覚えろよ、ネギ先生。
そう思ったのも束の間、ネギ先生と魔法陣を繋げている魔力糸が光り出す。
アレで魔力とか吸収してんのかなー。なーんかその光が魔法陣からネギ先生の方へ流れ込んでいくように見えるんだよなー。
ネギ先生が置いた紙束に向かって二回手を振ると、紙束が四等分にされる。
そしてその紙に向かって手を翳すと紙に複雑な文字…………お札に書かれているようなグニャグニャな文字が染み込んでいき、そしてその紙がちびネギに変わる。
文字が書かれた紙がちびネギとなり、出現したちびネギは中空に浮かんで整列し、その下の紙がまたちびネギになっていく…………というのがドンドン続いていく。
「…………本当にネギ先生はいったいどこまで逝くんだろうか?」
「もう諦めてもいいよね?」
「…………紅茶でもいかがですか? ガンドルフィーニ先生、高畑先生」
諦めんな二人とも。
『火星と金星の二つの惑星の魔力ともなると…………さすがの僕でもこれは食い切れるかわかりませんね。
…………アレ? 今“僕-金星間魔法輸送扉”から「助けてっー!」って悲鳴が聞こえませんでした?
初めて使ったから、どこか別の場所と混線しているのかな?』
『…………俺にもそんなの聞こえたで』『(…………今は関係ないけど、魔界はどっか違う星にあるって話し聞いたことあるなぁ)』
そうこうしている間に4千のちびネギが誕生した。
ネギ先生が召喚魔と墓守り人の宮殿に向かって手を振り下ろすと、ちびネギ達が半々に分かれて召喚魔と墓守り人の宮殿に殺到していく。
そして召喚魔に接近したちびネギ達が笑い声を上げながら自爆していく。
墓守り人の宮殿の中に入っていったちびネギ達もいたが、しばらくすると宮殿の一部で爆発が起こるのが見える。
「…………昔のパソコンゲームでさぁ。“レミングス”ってゲームがあったんだよ。
“集団自殺”をするレミングっていうネズミの生態をモチーフにしたゲーム」
「…………ああ、知ってるよ。瀬流彦君が暇潰しに遊んでいたのを見たことがある。
今ではブラウザゲームでもあるみたいだね」
「そうなんですよ。あれって時間忘れて熱中しちゃうんですよね。
………………あのちびネギ達を見てたら、何だかそれを思い出しました」
「ちなみにレミングっていうネズミ…………旅鼠は集団自殺する習性があるなんて言われているけど、実際はそんなことしないみたいだね。
周期的に大増殖と激減を繰り返したり、崖から海に落ちる個体がいたりとか、そういう描写をした映画とかが原因でそんな説が広まったらしいけど…………」
でも私達が見ているレミングスがやっているのは“自殺”じゃなくて“自爆”だ。しかも敵を巻き込んでのな。
何て嫌な習性を持っているんだよ、あのレミングスは。
ドッカンドッカンと花火が爆発し、召喚魔が塵へと還っていく。
そりゃ追尾機能を持った素早い自爆鼠からあんな鈍重そうな召喚魔が逃げられるわけないよなぁ。
スヴァンフヴィートに移動していたセラスさんとかリカードさんが別モニタに映っているけど………………もうイロイロと諦めた目をしているな。
無理もない。
『終わったかな? ………………お、ちびネギがデュナミス達発見。
それではこれから弱い者虐めに行ってきますけど…………アスナさん達も行きますか?』
『『『『『行かない』』』』』
異口同音に答えるアスナ達。あんなもん見せられても一緒に行こうなんて思うわきゃねーよな。
弱い者虐めしているところ見て楽しむ趣味もないしさ。
『了解です。
それじゃあ………………行きますよ、野郎共』
「……えっ!? もしかして私もかね!?」
『ん? …………ああ、ガンドルフィーニ先生はアスナさん達の側にいてください。
僕が言ったのは小太郎君、ラカンさん、タカミチ、ゲーデルさん、カゲタロウさんですよ。リカードさんはどっちでも良いです』
「相変わらず俺の扱い酷くね?
…………ところで超大規模積層魔力障壁はどうすんだ、ぼーず?」
『? 『リライト』があるじゃないですか』
ネギ先生の言葉に絶望する小太郎やラカンさん達。
まあ、精々頑張ってくれや。
━━━━━ 後書き ━━━━━
Q.何故ネギは火星への魔力供給に一番近い金星ではなく水星を使ったのでしょうか?
A.金星の魔力はネギが使うから。
『リライト』が強過ぎる。そしてポヨが涙目過ぎる
久々にブラウザゲームのレミングスをやったら面白かったです。
失敗したと思ったら全自爆させてやり直すのはデフォ。
そしてネギの切り札その三、“僕-金星間魔法輸送扉”です。
ネギの原作知識は32巻までですので、もちろん魔界が金星にあることなんて知りません。
それと決して拘束制御術式零号ではありません。あえて言うなら元気玉です。
………………元気玉です。拘束制御術式零号ではありません。
大事なことですから二回言いました。