━━━━━ デュナm「『リロケート』――――――『リライト』」
━━━━━ 墓所の主 ━━━━━
「「「「「デュナミス様ぁーーーーーーっ!?」」」」」
「「何だとぉっ!?」」
「クックック、“造物主の掟・最後の鍵”…………」
いきなり『リロケート』で“造物主の掟・最後の鍵”の側に現れたネギ・スプリングフィールドは。何も言わずに『リライト』をたまたまその一番近くにいたデュナミスに向かって放った。
不意を突かれたデュナミスは『リライト』を避けることが出来ずに消え去ってしまった。
如何にデュナミスも“造物主の掟”を持っていたとはいえ、所詮は造物主によって作られた人形。『リライト』を受けたらさすがになす術はない。
というか我が末裔が心底容赦なさすぎるんだが、本気でいったいどうすればいいのだろうか?
しかも何だか隕石を降らせそうな黒い笑みを浮かべておるし…………。
それにしても…………初っ端から“造物主の掟・最後の鍵”を奪われ、戦力の一つを失ってしまったぞ。
3番は結局昨日の総督府襲撃のときに負った怪我で戦うことの出来ない状態になっている上に、デュナミスがこれで消えた。
残った戦力はテルティウムの従者を除いたら、4番と5番しかおらん。
しかもどうやらネギ・スプリングフィールドは本当に“黄昏の御子”の力を十全に使えているようなので、『リライト』を使って攻撃されたら魔法世界人であるテルティウムの従者は言うに及ばず、クゥァルトゥムやクゥィントゥムまでもが一撃死になってしまう。
対抗出来るのは現実世界人である剣士の小娘と………………私は奴らの仲間というわけじゃないから違うな、ウン。
対するネギ・スプリングフィールド側は、ジャック・ラカンや高畑・T・タカミチ、クルト・ゲーデル、犬上小太郎、カゲタロウ、ジャン・ジャック・リカードと腕利きが勢揃いしている。
しかも全員“造物主の掟”持ちじゃ。
いくら簡易版のマスターキーとはいえ、これで彼奴らに弱点は無くなっ………………あ、ネギ・スプリングフィールドが“造物主の掟・最後の鍵”を自分が装備して、今まで持ってたグランドマスターキーをジャック・ラカンに渡したぞ。
それにしても彼奴らは男ばっかりじゃな。
テルティウムの話によるとネギ・スプリングフィールドは自らの従者を溺愛しているということなので、彼女達を危ない目に遭わせたくないと思っているのか………………そもそも必要ないということか。
ネギ・スプリングフィールド一人でも手に負えないのに、ジャック・ラカンなどが加われば他に必要ないということじゃろう。
これではネギ・スプリングフィールドに勝つことは出来んな。
まあ、私は魔法世界が崩壊しないのならそれ「ちょっと待つポヨーーーーーッ!!!」…………ぬ、そういえば援軍を呼んでいたんじゃった。
彼女なら『リライト』が効かないから………………効かない?
例え『リライト』が効かないからといって、それで何か戦況を引っ繰り返せるとでもいうのか?
「ちょっと待つポヨ、ネギ・スプリングフィールド!!! 先ほど上空で展開した“ゲート・オブ・ヴィ「『リライト』」ってポヨッ!?
…………ひ、人の話を聞くポヨ!」
「ん? 『リライト』が効かない? …………これなら幻術とかでも消去出来るはずなのに。
となると、ザジさんに似てて魔法世界人じゃないってことは…………“我 汝の真名を問う”」
「お願いだから話しを聞いてほしいポヨ!
魔法世界が崩壊しないということがわかった以上、私は君と争う気はないポヨよっ!!!」
「本名が“ザジ・レイニーデイ”? 本物?
でもキャラが明らかに違うし………………『来れ』、“いどの絵日記”。
えー、ザジ・レイニーデイさん。僕の知っている麻帆良学園3-A生徒であるザジ・レイニーデイさんとの関係を簡潔に教えてください。それと貴女の素性、立ち位置、能力も教えてくださいね」
何というマイペース。
「…………ふーん、同姓同名の双子のお姉さんですか。そして…………魔族の王女様?
へぇ~、それで“ゲート・オブ・ヴィーナス”…………“僕-金星間魔法輸送扉”がどうかしましたか?」
「やはり本物ポヨかっ!?
…………と、とにかく今も展開し続けているあのゲートをすぐに閉じて欲しいポヨ!
君は知らないのかもしれないが、我ら魔族が住んでいる“魔界”という異界はこの魔法世界と同じように、現実の金星を依代にして構成されているポヨ!
その金星から魔力を奪われたら、魔法世界みたいに魔界が滅びてしまうかもしれないポヨよっ!!!」
「は? …………嘘はついていないみたいですね。魔界が金星…………ですか。
でも“力ある者の責務”って…………余所者が余計なことを。“余計なお世話”って言葉知ってます?
そもそもこんな簡単なことを解決するのを諦めて、楽な手段に逃げようってのが面白くないんですけど…………」
「あんな方法を思いつくのは君ぐらいポヨよっ!
というか何で妹から聞いていた性格と全然違うポヨ! 麻帆良では猫被っていたポヨか!?」
「? 貴女は自分にとってどうでもいい人に対して、自分にとって大切な人と同じように接するんですか?」
目が本気じゃ。相変わらず性格がシビア過ぎる。
ネギ・スプリングフィールドのように“いどの絵日記”を使っていなくても、アレが心の底からの本音だということが理解出来るぞ。
オスティアを受け継いでいた我が末裔達は、さながら魑魅魍魎が跋扈するような陰謀渦巻く宮廷で暮らしていたというが、ネギ・スプリングフィールドはオスティア王家とは関わりを持たずに一般家庭で育ったはず。
それなのにこんな性格に育つとは………………血なのか?
…………何かもう始祖の血筋も駄目かもしれないの。
考えてみればこの魔法世界が成立してから2600年。
その始祖の末裔とはいえ、もう何百世代も世代を重ねている。如何に始祖の血脈が強大であったとしても、それだけ世代を重ねればおかしくもなろう。
始祖の血を受け継ぐウェスペルタティア王家が小国の王に成り下がり、MMやヘラスのような者共がこの世界を牛耳っている。
それと同じように、始祖の血脈もいつかは変わっていくのじゃろう。
………………じゃから私はネギ・スプリングフィールドとは似ておらんぞ。
ネギ・スプリングフィールドが我が末裔とはいえ、私はあんな滅茶苦茶ではないぞ。
「そもそも“僕-金星間”ってところが………………と、とにかくあのゲートを閉じて欲しいポヨっ!
魔法世界が崩壊しないとわかった以上、アレを閉じてさえしてくれれば私は敵対する理由は無「ネギ・スプリングフィールドっ!!!」ポヨっ!?」
お、クゥァルトゥムがネギ・スプリングフィールドに魔法を放った。
火で出来た蜂の大群がネギ・スプリングフィールドに襲い掛かる………………が、そんなもの効くわけなかろうに。
火のアーウェルンクスであるクゥァルトゥムの火力は、確かにアーウェルンクスシリーズでも最強じゃろう。
しかしネギ・スプリングフィールドは『完全魔法無効化能力』を持っているんじゃぞ。
現にそのネギ・スプリングフィールドが蜂の大群に向かって手をかざし、自分の周り一帯にフィールドのようなものを張った。
そして火の蜂達はそのフィールドにぶつかり、サラサラと魔力に霧散してしまう。これでは魔力の無駄遣いじゃな。
次にクゥァルトゥムは“造物主の掟”のグランドマスターキーで『リライト』を放ちながら再び魔法も放った。
『リライト』でネギ・スプリングフィールドの魔法無効化フィールドを消してから魔法を届かせようというつもりなのじゃろうが、あいにくネギ・スプリングフィールドが持っているのは“造物主の掟・最後の鍵”。
更にはネギ・スプリングフィールドは“黄昏の御子”であることから鍵の力を最大限に扱えるためか、クゥァルトゥムの『リライト』がネギ・スプリングフィールドの無効化フィールドを突破出来ていない。
…………魔法無効化魔法と魔法無効化魔法のぶつかり合いって変じゃの。
「…………ザジさん?」
「っ!? わ、私は別に彼らと組んで君の注意を引くなんて考えていなかったポヨよっ!
あのアーウェルンクスが勝手にやっているだけポヨっ!!!」
「………………いいでしょう。“いどの絵日記”を信じるなら嘘はついていないようですし。
とはいえ“いどの絵日記”も対応策があるので、妄信するのは危険ですから…………武装解除して小太郎君達のところで大人しくしててください。
しかし“僕-金星間魔法輸送扉”を閉じるのはこの戦闘が終わったらにします」
「えっ!? …………い、今すぐ閉じるのは駄目ポヨか?
君とゲートを繋げている魔力糸から、現在進行形で君に魔力を供給しているのがわかるポヨが…………」
「大丈夫ですよ。金星の魔力を全部使うわけでもありません。
別に僕とて魔族とわざわざ本格的なケンカをしたいとは思っていませんので、この戦闘が終わったら未来志向で話し合いをするつもりはありますけど………………如何せん、貴女は“完全なる世界”の協力者だったようですからね。
少しは信用出来るというところを見せて欲しいのですが?」
「………………クッ、わかったポヨ。君を敵にまわすのは得策ではないし、協力する相手を間違った私達の判断ミスでもあるポヨ。
どうせ力づくで止めるのは無理だし…………でも無駄遣いはしないで欲しいポヨ」
「それ以前に個人で扱える魔力なんて、金星の魔力総量に比べたら微々たるものですよ。安心してください」
さすがのレイニーデイもネギ・スプリングフィールドを敵にまわすのは避けたか。無理もあるまい。
私としてもそのつもりだしの。
私もレイニーデイも“完全なる世界”に協力していたのは、魔法世界の崩壊が不可避だと思っていたからじゃ。
しかしネギ・スプリングフィールドの策で魔法世界の崩壊を避けられるのならそれでよかろう。
確かに生きるもの全てを“完全なる世界”に誘えば、この世界から理不尽によって起こる悲しみは存在しなくなるじゃろう。
だが、ネギ・スプリングフィールドのように「幸せになりたいなら勝手になれ」という極論とまではいかないが、理不尽なことが起こる残酷な現実もまた人の世の常。
残酷な現実を悲しいとも寂しいとも哀れだとも思わないでもないが、それを否定してもどうにもならぬ。
そもそもそれが人が二本足で立つ前からの自然の摂理じゃ。
それをどうにか出来るのが“完全なる世界”じゃったがの。
しかし正直言って、私みたいにここまで長く生き過ぎると、残酷な現実であろうと“完全なる世界”であろうとどっちでもよくなるのじゃ。
造物主は逆に長く生き過ぎたせいでこんなことを企んだようじゃがの。
自らが作り上げた世界ということもあって“何とかしなければならない”という強迫観念を持ってしまったのかもしれんが、アレは下手したらとっくに亡霊の類にまで成り下がっているかもしれんな。
「私を無視するなぁっ!!!」
そして無駄なことをし続けているクゥァルトゥム。
今のネギ・スプリングフィールドとレイニーデイの会話中もずっと魔法を撃ち続けていたが、何故そんな無駄なことを?
せめてクゥィントゥムと連携して………………ム? そういえばクゥィントゥムはどうした?
確かデュナミスが消されたときまではいたはずだが、その後から姿が見えない。
かといって造物主の使徒たるアーウェルンクスシリーズが逃げるとは思えん。
だから姿が見えないとなると…………。
「クゥィントゥムッ!!!」
魔法を撃ち続けたいたクゥァルトゥムが叫ぶと同時に、視界のはるか奥から一瞬で光が走った。
その光はネギ・スプリングフィールドが展開しているフィールドにぶつかり、パシュッ! とデュナミスのように霧散した………………え?
…………えっと………………なるほど。これが二人の作戦か。
あの光が姿の見えなかったクゥィントゥムだったのじゃろう。
クゥィントゥムは風のアーウェルンクス。その特性からおそらく自らの身体を雷化したのじゃ。
そしてクゥァルトゥムが正面から挑んで気を引いているうちにネギ・スプリングフィールドの気配察知範囲外に逃れ、そこから一気に雷の速度で不意打ちを行なう。
例え1km離れたところからの不意打ちでも、雷の速度ならば0.01秒未満で攻撃に入れる。
無効化フィールド内では雷化が解かれるかもしれないが、加速した速度が緩まることはないから150km/sの速度でネギ・スプリングフィールドとクゥィントゥムが激突することになるじゃろう。
そんなことをしたらお互いに無事では済まずに木っ端微塵になってしまいそうじゃが、それでもネギ・スプリングフィールドは仕留められる。
クゥィントゥムの犠牲でネギ・スプリングフィールドを仕留められるのなら釣りが有り余る。
その後のジャック・ラカンなどの相手がつらくなるが、そもそもネギ・スプリングフィールドを仕留めなければ勝機はないから仕方がないのじゃろう。
いや、考えも無しにクゥァルトゥムが突っ込んでいったように見えたが、あの一瞬でお互いの役割を判断して阿吽の呼吸で実行するとは、さすがはアーウェルンクスシリーズじゃな。
…………でも何であんな風に霧散した!?
「ク……クゥィントゥムッ!?」
「ん? 何かぶつかった?
…………ま、いいや。『リライトフィールド』って便利だなぁ」
\(^o^)/
…………イカン。思わず私のキャラに合わないことをしてしまった。
しかしそれは反則じゃろう。
『リライトフィールド』ということは、おそらく自分の周りに『リライト』の効果を常時展開しているのだと思うが、そんなことをされたら打つ手が本気で無くなったぞ。
『完全魔法無効化能力』のせいで魔法による遠距離戦が出来なかったのに、更にこれで近距離戦すら出来なくなった。
本格的に魔法世界人や造物主の使徒では勝てない。
勝てる可能性を持っているとしたら…………月詠のみか。他は全滅じゃな。
「それにしてもアーウェルンクスシリーズ…………か。
確かに量産されたら少し危険なことになるな。消しておこう」
「…………い、いったい何なんだ貴様はっ!? 何故そのような力を!?」
「ただの“ラスボスって何で勇者が強くなる前にやっつけに来ないの?”を実践してみようと思い立っただけのラスボスだよ。
現実はゲームじゃないんだから、別につまらなくても文句を言われる筋合いは無いからね。
それじゃあ、さようなら。『リライト』」
だから一人だけで戦っているのか。
ジャック・ラカン達は戦闘態勢を崩していないが、どちらかというと私達の逃走防止のためにいるようじゃ。
“完全なる世界”は死んだフリをして残党狩りから何とか生き延び、雌伏のときを経て今のように再起したので、今度こそ根こそぎに殲滅して再起不能にするつもりなのじゃろう。
そして遂にクゥァルトゥムも消されてしまった。これでアーウェルンクスシリーズは全滅じゃ。
この場に残っているのは…………テルティウムの従者達と私のみ。
詰んだ………………というかこっち向いた。
「……………………」
「……………………」
「……………………フム?」
「っ!?」
ネギ・スプリングフィールドがこっちを向いて、不思議そうに首を傾げただけなのに何故か身構えてしまった。
マズイ。私の中の何かがネギ・スプリングフィールドに対して怯えを感じている。
…………というか元からネギ・スプリングフィールドを敵にまわすつもりはないし、素直に降伏するとしよう。
降伏したなら危害は加えてこないはず。
私が何故“完全なる世界”に協力していたのかを説明しようとしても「話は後で聞きます」で終わるじゃろうし、ネギ・スプリングフィールドの先祖であることを教えても「それが?」で終わって無駄じゃろうな。
私としてはこの魔法世界が滅びなければそれでいい。
だから戦おうとは思っておらんのじゃ。
…………。
……………………。
………………………………とりあえず両手を上げて、戦闘の意思がないことを伝えてみよう。
「……………………」
「……………………」
「……………………あっちに」
…………ホッ、助かった。
ジャック・ラカンの方へ向けて指を差したので、レイニーデイのように武装解除して大人しくしておけ、ということじゃろうな。
「ぼ……墓所の主……っ」
ジャック・ラカンの方へ行こうとした私を縋るような目でテルティウムの従者が私を見てくるが、そんな目で見られても困る。
元々私は彼女達の仲間であったつもりはないから………………別に私は悪くないと思うのじゃ。
「おはようございます。皆さん。
…………そういえばフェイトはどちらに? ラカンさんのデカイ一撃を喰らったとは聞きましたが?」
「「ヒッ!?」」
「あ……貴方に言うことなどありません……」
「…………大丈夫。貴女達はここで死ぬ訳じゃありません。先に消えた彼らと同じ、永遠の園へと移り住むだけ。
安心して身を委ねて良いですよ。フェイトとも愛する者とも、いずれあちらで会えるでしょう」
「な……何を勝手なことを……っ!」
「? 元々貴女達だって、それをこの世界の人々にやろうとしていたのでしょう?
だったらその貴女達が目指した幸せな夢を永遠に見続けると良いです。
灰は灰に。塵は塵に。夢は夢に。幻は幻に。望む者には永遠の安らぎを…………」
「つ……月詠さん……っ!」
「ウチですかぁっ!?」
どう考えても本物のラスボスじゃな。
何で10歳の子供があんな風に育ったのじゃろうか?
━━━━━ トサカ ━━━━━
「いつまで寝てんだい、トサカ!
さっさと起きて仕事やんなさい!」
うえっ!? …………もう朝か。勘弁してくれよ、ママ。
寝たのは今日になってからだったんだぜ。
…………まったくネギの野郎。舞踏会出席者避難の手伝いなんてめんどくせー仕事を押し付けやがって。
いくら主体が総督府の警備隊達だからって、下っ端の俺達に押しかかる雑用の量は半端じゃなかったぜ。
「おう。起きたか、トサカ。
ちょうど良かった。ネギの連絡先知らねーか?」
「ああ、おはよう。兄貴。
ネギの連絡先? 確か昨日の夕方、出立の挨拶に来たときに“ゲーデル総督を通して連絡してくれ”って言われなかったっけ?」
顔を洗っていたらバルガスの兄貴が来た。
…………目の下にクマが出来てるな。
最近はネギのことで忙しかったし、何より“ナギ・スプリングフィールド杯”が終わってネギがウチの拳闘団から出て行ったから、これからの方針を決めるのが大変なんだろう。
今でもネギのファンから問い合わせが来るけど、「もう辞めました」って言ったら何でかウチの拳闘団が責められるんだよな。「ネギに対して何か不義理をしたんじゃないか?」って…………。
もちろん事情を説明したら大抵のファンはわかってくれるけど、熱狂的なファン(特に女)はそうもいかねぇ。
女共があんなに厄介だったとは…………ネギがやけに女を苦手にしていた理由がわかったぜ。あいつも苦労してんなぁ。
それに確かに忙しくてとんでもないことになってるけど、その分以上に利益は上がっているから文句は言えねぇし…………何よりラカンさんの直筆サイン!
ネギがラカンさんに会いに行ったときに貰ってきてくれたけど、これはもう一生の宝にするしかねーな!!!
こんなもの貰えるだなんて、ネギ様様だぜ!!!
「出来たら直通で連絡出来たらいいんだが…………ホラ、ネギに貸していた部屋があるだろ。
ネギが出て行ったんで片付けを始めたんだが、片付けしていた奴がネギの忘れ物を見つけてな」
「それこそゲーデル総督に言えばいいんじゃねーの?」
「…………いや、その見つかったものってのがこんなんでよ。
あんまり表に出していい物かどうか不安で…………」
? 何なんだよ…………って、 “RAKAN FILM”……“紅の翼戦記”のエピソード1、“旅経ちのラカン”!?
いったい何なんだこの映画は!?
「あ……兄貴、これはいったい?」
「いや、俺もわからねぇ。
でもこのタイトルの文字って、お前がネギから貰ったラカンさんのサインにソックリじゃねぇか?」
…………言われて見れば確かに。
それに“RAKAN FILM”ってことは、もしかしてこれってラカンさん公認映画か何かなのか!?
やべぇっ! すげぇ見てみてぇ!!!
「見るか? タイトルは書かれてないけどエピソード2もあるぞ。
…………っていうか、一緒に見て共犯になろうぜ!」
「い、いいのかよっ!? ネギは怒ったら怖えぞ!」
「馬鹿野郎! ネギが怖くてラカンさんのファンをやってられっかよ!
そもそも何でお前だけラカンさんのサイン貰ってんだよ! しかも昨日は俺に仕事押し付けてネギの奢りでたらふく食ってきやがって!」
「オーケイオーケイ! わかったから落ち着いて兄貴!」
俺だってネギの担当で苦労してたんだけどなぁ…………。
ま、いいや。黙ってればわからねーだろうし、そもそもネギはこんな小さなことで怒ったりはしねーだろ。
アイツは本当に大事にしているもの以外にはあまり執着心とか持ってないからな。
忘れていったってこと自体が、ネギにとってこの映画はそんなに大事じゃないってことだろしな。
何よりも俺がこの映画を見たいんだよ!
あとでネギに怒られようが、知ったことかぁっ!!!
…………あ、せっかくだからチンとかピラ達も呼んでやるか。
共犯は多い方が良いしな。
━━━━━ 後書き ━━━━━
デュナミスゥゥゥーーーーーっ!!!
…………このネタは第二章が始まったときから場面展開を━━━━━ 人名 ━━━━━でやり始めたときから決めてました。
そしてとりあえず『リライトフィールド』で魔法世界人による暗殺防止はバッチリです。その内本拠地を作ったら、丸ごとフィールドで覆います。
それにしても忘れ物をするなんて、ネギったらうっかり屋さんだなぁ。もちろん忘れたのはコピーですけどね。
しかもドンドンと順調にラスボスと化していくし…………。