━━━━━ 近衛近右衛門 ━━━━━
「3……2……1…………六ヶ所の魔力溜まりに待機中の新しいちびネギ達とのリンク確認。
魔力供給開始。…………新しい僕達への幻術を使用しての世界樹発光の隠蔽結界の制御権委譲を確認しました。
保有魔力が減少した古い僕達はそのままスリープモードに移行し、魔力溜まりの魔力を用いての魔力回復を試みます」
…………ふむ、何とか間に合うようじゃの。
昨日、いきなり世界樹が発光し始めたときは驚いたが、ちびネギ君達が幻術でいつもの世界樹に見えるようしてくれた。
幻術を使う前から多少は光ってはいたが昼の明るい時間だったから、一般人には気づかれなくてすんだようじゃな。
とはいえ発光が始まってからもう丸一日。
ちびネギ君達の消耗が激しくなってきたので、そろそろ何とかせんといかんが…………。
「これで動けるちびネギ君達は残り何人かね?」
「現在、稼動可能のちびネギは僕を含めて52体。48体がスリープモードで魔力回復中です。
それとやはり世界樹から漏れ出る魔力のせいで幻術に乱れが生じます。それを防止するためにも大規模な幻術を展開していますが、やはり魔力消費量が大きすぎますね。
しかも魔力溜まりの魔力は学園祭のときに散らしてしまいましたので、魔力回復の具合があまり芳しくありません」
「かといって生徒達に気づかせるわけにはいかんしの。
麻帆良には勘が鋭い生徒が多いから、アレほど大量の魔力ならば何か不審に思うかもしれん。少なくとも違和感は感じるておるじゃろう。
さっきはこのままのペースならまだ丸一日は持つと言っておったが、何か変化はあったかの?」
「いえ、今のところは計算通りに進んでいます。
6人の僕で大体2時間は維持出来ますので、スリープモードで魔力回復中の僕も考えたらそれぐらいでしょう」
丸一日…………か。それぐらい持てば大丈夫かの。
昨日から明石教授達が対応策を練ってくれているから、今頃何らかの策は出来ているじゃろう。
それに何より、ネギ君が魔法世界の方で始末をつけてくれるじゃろうしな。
「ウム、今はそのまま幻術の維持に努めておいてくれんかの。
ワシは他の先生達から一度報告を受けて現状を再確認する。時間に余裕があるのなら、どうするかを決めるのはそれからでも遅くはあるまい。
…………それと、あれから魔法世界のネギ君からの連絡はあったかね?」
「10分前の“墓守り人の宮殿への突入開始”という通信が最後です。
………………といっても、地球と火星は光の速さでも5分はかかりますし、今の現実世界と魔法世界では時間差がありますので、今頃どうなっているかはわかりません」
「いや、大丈夫じゃよ。それは仕方があるまい。それではちょっと席を外すがよろしく頼むよ。
ああ、お菓子とかは好きに食べていいからの」
「はーい」
やれやれ、わざわざムコ殿がこっちに顔を出しているときにこんな事件が起こらなくてもいいじゃろうに。
ま、今のところは特に問題は表面化しておらん。
麻帆良はいつもどおりの日常を過ごしているのじゃが…………表面化しておらんだけもしれんな。
麻帆良とオスティアのゲートがある以上、膨大な魔力が強引に向こうとこちらを繋げてしまう可能性も否定出来ん。
ちびネギ君のおかげで混乱は起きていないが、逆に取り返しのつかないことになってから問題が表面化するかもしれん。
あまりにもちびネギ君に頼りきりというのも、あまりよくない状況じゃの。
かといって取れる手を取らないということは出来んし、こういうことの匙加減は難しいわい。
「お義父さん」
「学園長」
おや? 婿殿に…………それにアルまで? それと婿殿の肩にはちびネギ君が1人。
アルが上に出てくるなんて珍しい。上でも活動出来るなんて、やはり世界樹のあの膨大な魔力のおかげかの?
「ちびネギ君がいるということは、2人とも状況はわかっているんじゃよな?」
「ええ、このちびネギ君から聞いています。大変なことになりましたね」
「フフフ…………どちらかというと、この事態よりもネギ君自身の方が大変になっていると思いますけどね」
…………せっかく目を背けていたことなのに、どうしてお主はそうやって思い出させるんじゃ、アル。
ネギ君が魔法世界に行くときが決まったときには、こんな状況になるなんて思ってもおらんかったぞ。
拳闘大会で活躍したのはいい。
拳闘大会で活躍したことでネギ君が知名度が上がったので、“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”を実施するときの大きな助けとなるじゃろう。
ネギ君もそれを狙って拳闘大会に出場したのだから、まさにネギ君の狙い通りじゃな。
ジャック・ラカンと戦ったのも別に構わん。
やはり“ナギ・スプリングフィールド杯”でジャック・ラカンと戦ったおかげで、ネギ君の知名度が更に凄いことになったしの。
それにジャック・ラカンもナギの息子であるネギ君には興味があったのじゃろうし、ネギ君がナギの知り合いと伝手が出来るのは今後のためにもなるじゃろう。
ジャック・ラカンからも“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”協力の約束を取り付けたようじゃしの。彼ならネギ君の力になってくれるじゃろう。
………………MMのゲートポートまで迎えに来るのはサボったらしいがの。
それと元老院議員でもあるクルト・ゲーデル総督の協力を得られたことはよかった。
ゲーデル総督ならば“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”のみならず、対元老院でもネギ君の助けになってくれるじゃろう。
魔法世界の崩壊を救うことが出来ても、元老院がチョッカイをかけた結果で魔法世界が滅んでは元も子もない。
ゲーデル総督はアリカ様のこともあるので、それこそ嬉々として全面的に協力してくれるそうじゃな。
MMのリカード議員、ヘラスのテオドラ皇女、アリアドネーのセラス総長とも面識が出来た上に、彼らの目の前で“完全なる世界”のテロを未然に防ぐという功績も立てもした。
これならいずれの国もネギ君のことを粗末には出来んし、“火星-水星間魔法輸送扉プロジェクト”実施のときの貸しにもなるじゃろう。
ネギ君はアリカ様のように、いい様に使われて最期はポイ捨てされてしまうのを警戒しているらしいが、この状況ならその心配はあるまい。
というか元老院が相手でも………………むしろ元老院の方がピンチじゃな。彼らはいったいどうなるんじゃろうか?
何より魔法世界の秘密に繋がる力…………造物主の力を手に入れたことは決め手じゃな。
これでネギ君に魔法世界で敵う者はいなくなった。
ゲートポートでのテロや、木乃香がネギ君と離れて行動していたというのは心配じゃったが、これで木乃香の身の安全は保障されたも同然じゃ。
…………。
……………………。
………………………………一つ一つは問題ないのに、全部合わさっただけでどうしてこんなことになったんじゃろう?
今回のことはネギ君のせいで、本気で魔法世界の歴史の大転換点になってしまったぞい。
マジであの子これからどうすんじゃろうか……?
「そんなに気にされなくても良いと思いますけどね。
ネギ君は他人からチョッカイかけられない限りは、基本的に人畜無害の性格ですし…………」
「性格が人畜無害でも、行動が人畜有害ならどうしようもないわい。
…………いや、ネギ君が真面目な良い子だということはわかっておるのじゃがな。
でもそのネギ君のせいで、お主だって痛い目を見たんじゃろうに…………」
「フフフ、確かにまほら武道会のときは驚きましたよ。その後に招待したお茶会の時も驚きましたけどね。
でもネギ君は確かにナギの息子ですよ。捻くれているように見えて、実は誰よりも真っ直ぐですからね」
「ああ、話は聞きましたよ、アル。
まさかネギ君がナギに勝つとは………………まあ、驚きもしますけど、どこか納得もしてしまうのが不思議です。
ネギ君はエヴァンジェリンをドラゴンと形容したらしいけど、ネギ君自身がドラゴンみたいなものですよね」
「それはわかるんじゃがのぉ。
確かにネギ君は真っ直ぐに進み過ぎるせいで、誰もが回り道をするはずの道を気にせずに突っ切ってしまうだけじゃからな。
それが逆に他人の目には変な風に見えるだけじゃろう」
「それに学園長が恐れているのはネギ君が何を仕出かすかではなくて、ネギ君にチョッカイをかけた誰かのせいでネギ君がどういう反応を示すかでしょう。
元老院がネギ君に…………ネギ君の従者に何かするなら魔法世界の崩壊も有り得るでしょうが、何もしなかったらネギ君も何もしないということはわかっているはずです」
「…………そうじゃの。ネギ君自身は普段の平穏な生活のみで満足出来る性格じゃ。それ以上のことはむしろ面倒臭いと思うじゃろうて。
そういう意味では安心しておるのじゃが…………」
「何だか本体がえらい言われような気が…………」
「ハハハ…………まあ、ネギ君がまだ子供なのは確かですし、これからまだまだ勉強していこうという向上心を持っています。
10歳ですし、長い目で見ていけば良いではありませんか、お義父さん」
いや、わかっておるんじゃよ。ネギ君が良い子だということはわかっておるんじゃよ。
ただネギ君のやっていることが“子供のすること”の範疇に収まっていないのが問題なんじゃよ。
ネギ君のすることは納得出来ることでもあるし、何よりワシら大人の後始末という点が大きいからの。
決してワシらがネギ君を非難出来る立場じゃないのはわかっておるが………………もうちょっと上手くやってくれんかのぉ。
━━━━━ 高畑・T・タカミチ ━━━━━
祭壇に赤毛の小さな子供…………初めて会った頃のネギ君の姿が見える。
アレがネギ君の血を利用して造られたホムンクルスか。本当にネギ君ソックリだ。
騒ぎが起こっても中空を焦点の合っていない目で見つめているだけで特に動きはないけど、もしかしたら彼はまだ意思が出来るほど成長していないのかもしれない。
…………あの頃のネギ君は僕に「タカミチは『咸卦法』を使えるんですよね!? 見せてください!」ってせがんできたりして、素直で純真だったんだけどなぁ。
いや、今でも素直で純真なんだけどね。むしろ素直過ぎて純真過ぎるんだけどね。
でもよくよく考えたら、ネギ君があそこまで強くなるきっかけを作ったのってもしかして僕なのか?
『咸卦法』を見せたりしなければ『闇の咸卦法』を開発したりしなかっただろうし、“紅き翼”の話をしなかったらネギ君が“紅き翼”のことを調べて技を自習しなかったかもしれない。
そう考えたら僕が困っているのは自業自得ということなのか…………。
「やめてくださいよね。本気で戦ったら、月詠さんが僕に敵うはずないでしょう」
「…………いや、スイマセン。ホント無理ですわ。
というか首刎ねても一瞬で治る人を倒すとかって絶対無理ですって……」
「刀で今の僕を殺したければ、一瞬で全身を細切れにするぐらいしないと無理ですよ。
“僕-金星間魔法輸送扉”のおかげで魔力使い放題ですからね。一瞬で殺されなければ強引に治癒可能です。
手っ取り早く僕を殺したければ…………そうですね。核ミサイルでも持ってきてください。肉体ごと蒸発させられたら、さすがに復活は無理だと思います。
………………本当に持ってこられたら転移魔法で逃げますけどね」
「あいにくそういうのは趣味じゃないんです………………というか、そんなの手に入れられるとお思いで?」
「無理でしょうね………………うん? …………ムリデスネ。
…………フム、これが妖刀“ひな”ですか。神鳴流を調べたときにこの名前を見たことありますけど、まさか実際に手に取る機会があるとは………………刀は持ってなかったからちょうど良いかな。
いつまでも杖で神鳴流の技を振るうのは何ですし……」
でもあそこまで極端に強くならなくても良いと思うんだけどなぁ……。
それ以前に核ミサイル手に入れる方法を真面目に考えないでくれ。
それにしてもネギ君の右手には妖刀、左手には“造物主の掟・最後の鍵”。背中にはナギの杖。
しかも月詠という女の子の一太刀で首を刎ねられたけど、刀が通り過ぎた端から首が繋がっていったので、首を刎ねられはしたけど首が刎ね飛ばされたりはしなかった。
………………ネギ君が順調にラスボスへと化していく。明らかに良くない気を発している妖刀を持っても平然としているし…………。
本当にコレどうするんだろうか?
ネギ君は、戦闘が始まったと思ったら有無を言わずにデュナミスを消滅させ、アーウェルンクスシリーズの二人もあっという間に消滅させた。まあ、一人は自滅だけど。
アーウェルンクスシリーズの一人であるフェイトがいないのは気になるけど、昨日ラカン・インパクトが直撃していたから動けないのかもしれない。
これで敵の主力は撃破出来た。
それとレイニーデイ君の双子のお姉さんという魔族の子と、墓所の主という人がこちらに投降した。
レイニーデイさんが魔族だということには驚いたけど、墓所の主を含めてネギ君のプロジェクトが実行されるのなら敵対する理由はないらしいから問題はないだろう。
…………で、残ったのがフェイトの従者の女の子達なんだけど…………どうしよう。滅茶苦茶怯えているよ。
しかもどう見ても怯えている理由は『リライト』で消えることではなく、ネギ君の存在自体に対して怯えているようにしか見えない。
それは無理はないと思うんだけど………………ネギ君がしているのは弱い者虐めにしか見えないのが困る。
いや、確かにここに来る前にネギ君は「弱い者虐めに行ってきます」って言ってたけどさ、ここまで一方的になるとは思わなかったんだよ。
少しぐらい僕達にも出番があると思っていたんだけど…………やっぱりあの『リライト』がなぁ……。
テオドラ皇女達があの力を警戒している理由がよくわかる。
ネギ君だけでなく、そんじょそこらの魔法使いが“造物主の掟”を持っただけでも、魔法世界人ではあの力に対抗する方法がない。
あの力は魔法世界人にとってはまさしく天敵だ。
「避けりゃどおってこたねぇんじゃね?」
「そのりくつはおかしいです」
「ラカンさんの感覚で言わないでください」
幸いネギ君が“造物主の掟”の全てを回収することになったし、あの力が一般に出回ることは無いだろう。
MMやヘラス、アリアドネーなんかは他の国を出し抜いて調べたがるだろうけど、ネギ君のことだから
「別に(僕達には害はないので)良いですけど、とりあえず皆さんで話し合って研究してくださいね」
とか言うだろう。興味のないことは丸投げするからね。
そうなれば結局はお互いに牽制しあって、話は立ち消えになるんじゃないかな。
そこまで上手くいかなくとも、クルトの方で何らかの手を打つだろう。
ネギ君の味方をすると言ったときのクルトは本心だったろうし、アリカ様が関わっていることでならクルトが変なことをすることもないだろう。
政治関係のことならクルトに任せておけばいい………………けど、アレ? そしたら僕は何を手伝えばいいんだろうか?
「月詠さんはどうします? “完全なる世界”に行きますか?
どうせ貴女のことですから戦うためだけにこんなことに関わっていると思うんですけど、“完全なる世界”に行けばいつまでも戦い続ける夢を見れますよ」
「あ……相変わらずみたいですねぇ、ネギ君。
他人をゴミのようにしか見ていないであろうその目………………私は自分のことを異端だとわかっていますけど、ネギ君は私以上の異端ですなぁ」
「ハッハッハ、僕が異端な訳ないじゃないですか。異端や極端なんかじゃなくて、僕はど真ん中に位置していますよ。
…………ただし横方向ではなくて、上下方向に突っ切ってる感は否めないですけどね」
あ、それわかる気がする。
ネギ君が取っている行動は変だとしても、決して間違っているわけじゃないのが困りものなんだよね。
「それにしても貴女も難儀な性格をしていますね、月詠さん。
ヤンデレ風味な戦闘中毒なんて今時流行らないですよ」
「ハッ! ネギ君に言われたくはありませんよ。
私が求めるのが血と戦のみだとしたら、ネギ君はお嬢様達のこと以外はホンマにどうでもええんでしょう」
「まあ、否定はしませんね。“完全なる世界”や貴女にとって重要な局面であるこの今は、僕にとって昼下がりのティータイムと何ら変わらない平穏なものでしかありませんから。
でも僕と月詠さんでは決定的に違うところがありますよ。月詠さんは斬る相手のことなんて考えていないでしょうけど、僕は叩き潰す相手のことを考えた上で相手の事情を無視して叩き潰します。
相手のことを考えている分、僕の方が優しいです!」
「ネギ君は何を言うてはるんですか?」
「ま、いいです。それに考えてみれば貴女は神鳴流の一員ですからね。
僕が始末するのは西の人にとっては面白くないことかもしれませんから、素直に西に引き渡すことにしましょう。
…………詠春さんに挨拶しに行くときの土産になるでしょうし」
「ちょっ!? 私は結納品ですか!?」
「ハハハ、自分がそんな縁起の良いものだと思われているんですか?」
ネギ君のその言葉と共にバチバチィッ! っと電撃が流され、月詠君が気絶する。
そして転移魔法が開かれて月詠君がどこかに送られた。きっとエヴァ達のところだろう。
あそこなら例え月詠君が目覚めたとしても、エヴァ達で取り押さえることが出来るからね。
これでネギ君に勝ち目がある人間はいなくなった。
残るは怯えているフェイトの従者達だけなんだけど…………何だか怯えて震えている彼女達を見ると、どっちがテロリストなのかわからなくなってくるから困る。
コレ、どうしようか?
「? “完全なる世界”に送るのじゃ駄目なんですか?
彼女達はこの魔法世界で起こっている理不尽な出来事を無くすために頑張っているみたいですが、それも“完全なる世界”に行けばもう気にしなくていいわけですし」
「ネギ君、わかってて言ってるだろ?」
「…………まあ、そうですけどね。しかしこれは僕達と彼女達の戦争だったんです。それで彼女達が負けてしまったんだから仕方がないでしょう。
それに逮捕して法の裁きを受けさせる手もありますけど、そっちの方が彼女達にとっては辛いんじゃないですか?」
ああ、なるほど。一応ネギ君も色々考えてはいたんだね。
確かにこのまま捕まえてもいいけど、そうしたら彼女達はテロリストとして扱われる。
デュナミスやアーウェルンクスがいなくなって彼女達しか残っていない以上、騒ぎの責任を全て彼女達に押し付けることになってしまうかもしれない。
それだけのことだと彼女達もわかっててやっていたんだろうけど、必要以上に彼女達が貶められる可能性もあると考えているんだろう。………………アリカ様みたいに。
それならいっそ“完全なる世界”に送って楽にしてあげるというのも間違っては………………アレ?
本当にそれでいいのかな? 何だか僕もネギ君の影響で感覚がおかしくなっているような気が……?
そう思った瞬間……
「まつんだ!」
!? 馬鹿なっ!?
祭壇にいたネギ君のホムンクルスが喋った!?
「まにあった…………ようやくインストールがしゅうりょうした…………」
「……………………」
「クゥァルトゥムとクゥィントゥムもやられたか。
だけどまだぼくがのこっている…………」
「……………………」
「ネギくん、きみはたしかにつよい。しかも“ぞうぶつしゅのおきて”までもたれたらぼくらにかちめはなかっただろう。
でも…………いまのぼくなら『リライト』はきかない。これでじょうけんはごぶだ」
…………えっと、これは……。
「君…………フェイトだろ」
「? よくわかったね?
かおはまったくきみとおなじのはずだけど…………」
わかるって。確かに顔は小さい頃のネギくんだけど、明らかに別人だよ。
幼い可愛らしい顔してるのにフェイトのような無表情なんだけど、どこかキリッ!とした顔がジョークにしか思えない雰囲気を醸し出している。
こういう場合はいったいどんな反応をすればいいんだろうか?
「(か……顔はネギ・スプリングフィールドなのに……)」
「(表情でフェイト様ってことがわかる……)」
「(何か可愛い……)」
「(舌っ足らずなフェイト様……)」
「(持って帰りたい……)」
フェイトの従者の子達がネギくんを前にしたときのアスナ君や木乃香君みたいな顔をしているな。
ネギ君はネギ君でこんな展開は予想していなかったらしくて、どうしたらいいかわからないみたいだ。
いくらあのフェイトが敵とはいえ、さすがのネギ君も見た目3~4歳の子供に攻撃するのは躊躇うんだね。少し安心したよ。
「…………え、なに? 僕のホムンクルスにフェイトがインストールされたの?
確かにそれなら『リライト』は効かないかもしれないけど………………とりあえずその舌っ足らずをやめてくんないかな」
「む、きこえづらいかな? ちしきやぎじゅつはインストールできたけど、からだじたいはまだうまくそうさできていないか。
あー……アー……阿ー…………これでいいかな、ネギ君?」
「うん…………聞こえやすくなったよ。
(…………アスナさん達から見た僕ってあんな感じだったんだろうか?
ヤバイ。何だかやけに恥ずかしくなってくるんだけど…………今度からちょっと自重しよう)」
━━━━━ 後書き ━━━━━
ネギを染めたければ妖刀“ひな”を300本は持ってきてください。
もうすぐこの作品も完結です。
第二章をやけに長くしすぎた気がしましたが、もうしばらくお付き合いください。