こんにちは、ネギです。
もうすぐ2学期も終わりというとき、ようやく石化治療魔法が完成しました。
ただ、消費魔力が多いので今すぐウェールズに帰って村の皆の治療というわけにはいきません。
これから毎晩マグナム弾に石化治療魔法を詰め込む作業が始まります。
年明けには数も揃うと思うので、アーニャとアルちゃんを迎えに行くときに村の皆の治療も行います。
いや、良かった良かった。ヴィルさんには感謝してます。紅茶の淹れ方も上手になってきましたしね。
「それは良かったのぉ。
伯爵級悪魔による石化の治療方法の確立なんて前代未聞じゃよ」
「はい、ありがとうございます。学園長。
これも学園長がエヴァさんたちと一緒にヴィルさんと“お話し”してくれたおかげです」
うんうん、あれはあくまで“お話し”です。
けっして拷問とかじゃナイデスヨ。
現在学園長室でお茶を飲みながらの経過を報告中。
ウェールズに一時帰省する許可も貰わないといけませんし、ちょうどタカミチも緊急の出張とかで修行の時間が空いたのです。
それにしてもさすが学園長室。
以前の羊羹みたく、いいお茶といい和菓子。
「ほっほっほ、なあに。たやすいことじゃよ。
ところでそのヴィルさんはどうかね? 何か悪さをしていないかね?」
「いえ、毎日一生懸命働いてくれてますよ。
チャチャゼロさんも遊び相手が増えたと喜んでいます」
ごめんなさい、ヴィルさん。
自分はあなたを見捨ててます。
「しかし、その若さでたいしたものじゃ。ネギ君は治療魔法に適正があるのかの?
今回のことはネギ君にもいい経験となったじゃろう。
ナギのような英雄と憧れるのもいいが、治療魔法使いとして人々の役に立つのも“偉大な魔法使い”への道じゃ。
今回のことを糧として、より自分に向いた道を探すとよかろう」
「そうですね。そちらの道もいいと思います。
ただ今はやること全てが新鮮に感じるため、色々なことを経験してみたいという気持ちがあります」
「そうじゃろうな。
まあ、若いのだから今のうちに色々なことを経験してみなさい。
焦ることはないのじゃ。君はまだ10歳にもなってないのじゃからな」
その後はエヴァさんのことやタカミチのこと、それに2人の修行でどんなことをしてるかも話しました。
いいですね、この感じ。落ち着きます。
…………何で学園長やヴィルさんみたいなジジイやオッサンの側が一番落ち着くのか? という疑問は心の奥深くに閉まっておきましょう。
エヴァさんマジで“お母さん”って呼ばれること諦めてくれないかなぁ。茶々丸さんは“坊ちゃま”言うの止めてくれないかなぁ。
………………フゥ、マズイ。
心が疲れてます。
「大丈夫かね、ネギ君?
何だか疲れているようじゃが、修行がそんなに辛いのかね?
君はまだまだ幼いんじゃから、過剰な修行は最終的な成長の妨げになるので程々にしなさい」
「いえ、修行で疲れている、というわけではないです。
ただ気が抜けたといいますか…………正直、麻帆良に来てこんなに早く石化治療魔法が完成するなんて思ってもいませんでしたから。
現実感があまり感じられませんね」
「ふむ、そうなのかね。まあ、あまり無理はしないようにお願いするぞい。
今日がせっかくの休日なら、ゆっくり休むとしなさい。
…………おお、そうじゃ。このあと何か予定はあるかの?」
「? いえ、特にありませんね。夕飯までに家に帰ればいいだけです。
エヴァさんは料理クラブの集まりだし、茶々丸さんは定期メンテナンス。
ヴィルさんは留守番で、チャチャゼロさんは僕のカバンで寝てますから、久しぶりにゆっくり一人で麻帆良でも巡ろうかと思ってました」
「麻帆良巡りか。それならワシの孫娘達と一緒にどうかね?
今ちょうど見合い用の写真を撮っていてな。もうすぐこちらに顔を出すじゃろう」
学園長の見合い好きは並行世界でも相変わらずなんですか…………。
孫娘達ということは刹那さんも一緒ですかね?
「学園長のお孫さんというと2-Aの近衛木乃香さんですか?
僕自身としては構わないのですが、僕は担任補佐とはいえ3学期から教師となります。
教師と生徒が遊びにいくというのは問題ないのですか?」
「フォフォフォ、大丈夫じゃよ。まだ教師になったわけじゃないし、9歳の君と遊びに行っても問題あるまい。
まあ、さすがに特定の生徒を贔屓したように思われたら困るから赴任した後では困るがの。
予行演習と思ってくれればよいのじゃ。
木乃香達は騒がしい2-Aの中では比較的大人しいほうでの。もし木乃香達だけを相手するのでも駄目だとすると、3学期に2-A生徒全員相手するのは無理じゃろう。
聞いたところによると、ネギ君は幼馴染の女の子ぐらいとしか女の子と過ごしたことはないそうじゃないか。
ここは一つ練習と思って、木乃香達と麻帆良巡りを楽しんできなさい」
「アハハ、確かにそうかもしれませんね。
では木乃香さん達が了承していただけたらお願いします」
「こちらからお願いするのじゃよ。
木乃香は女子校育ちでの。男に慣れてしまっても困るが、無菌培養では将来が心配なのじゃよ。
すまないが練習相手になってくれい」
「いえいえ、構いませんよ。
僕も木乃香さん達に2-A生徒を相手取る練習台になってもらうのですから」
木乃香さん達と会うことになりました。
さて、木乃香さんと刹那さんはどう違っているのでしょうか?
刹那さんはアルビノであることを隠してないようでしたが、それでも木乃香さんが魔法を知っているとは限りません。
ここは慎重に行きましょう。
このちゃんLOVEな刹那さんの前で変なことしたら斬られてしまうかもしれません。
何も知らない子供を装っていきましょう。
コンコンとノックの音がしました。
おお、木乃香さん達でしょうか? さーてどういう人達なのかなー?
「入りなさい」
「失礼します。学園長。本国でこの前の政変の続きが起こったようです。
何でも大部分の元老院議員が拘束されたそうです」
………………ナンデスカ、ソレ?
明石教授らしき人が言ってることがわかりません。
「これっ! 入ってきていきなりなんじゃ!?
ここにはネギ君もおるのじゃぞ!」
「え? ネギ君が?
ああ、すみません。椅子に隠れて見えませんでした」
…………どうせ僕は小さいですよ。何も知らない子供ですから。